逸木裕のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
若林さんがガンガン踏み込んで面白い話を引き出してくださるので楽しかった。「こうではないですか?」と斬り込んで「そうじゃないですね」と返される場面も多かったけど、それはまあご愛嬌。
印象に残っているのはこの辺▼
・円居さんの「推理漫画よりも早く展開する頭脳バトルやギャンブル漫画のテンポが求められていると感じている」という話や、FGO他ノベライズの裏話。
・SFミステリと特殊設定ミステリの違いと阿津川さん・逸木さん・方丈さんのスタンスの違い。
・澤村さんの「ジャンルの書き手でないからこそジャンルあるあるなシチュやキャラに頼りたくない」スタンスはそういう考えもあるんだと新鮮だった。
・呉さんの「理不尽な暴力そのものでなくそこに抵抗する人々の姿を描きたい」という話は直前に読んだ「爆弾」の答え合わせを見るような気がした。 -
Posted by ブクログ
タイトルだけではまったく想像もつかないが、素晴らしい音楽小説だった。
フルート奏者の陽菜は、あることをきっかけに演奏することができなくなり、音大の受験にも失敗してしまう。失意の陽菜は、奥瀬見でカフェを営む姉からの誘いに乗りその地を訪れる。そこでオルガンを製作中の芦原と知り合い、協力することになる。
前半は陽菜の、後半は芦原の娘でオルガン製作者の朋子の視点で紡がれる。オルガンという特殊な楽器の構造や歴史、演奏法など、初めて知ることが多くて興味深く読んだ。2人の主人公の成長譚としても読み応えがあった。
いろんな楽曲が登場するが、オルガン=バッハとならない点も高評価。大好きだったサン=サーンスの交響曲第3番(オルガン付き)を久し振りに聴きたくなった。 -
Posted by ブクログ
「Jing」というAIによって、これまでの音楽は全て喰らい尽くされていく。
作曲家としての仕事が減り、安価に音を生み出す機械が重宝される時代の中で。
ある天才作曲家が、「遺作」の一部を自らの指紋に残し、壁に貼り付けたことから、波が起こり始める……。
AIが台頭する世の中では、これまでの「仕事」はなくなってしまう、そんな話を何度も耳にする。
だから、私たち人間にしか出来ない創造的な内容や、答えが一つではない問題にトライしていくことが“必要”になってくるのだと言われている。
けれど、この作品を読んでいると、仕事を「奪われること」の重みをとても感じる。
それは、今までだって同じで、機械化・情報化されて「奪われた」ことも多くある。
今の自分が、それを当たり前と感じているだけ。
それは分かっていて、でも、少し寂しくもある。
いつか、見えなくなって、当たり前になるんだな。
扱いきれない膨大な情報を前にして、いかに、足元と目の前で良しと出来るか。
高速を前にして、いかに深淵に留まれるか。
欲望への抗いにこそ、生きることへの活路を見いださせるような、そんな矛盾した感想を抱いた。 -
Posted by ブクログ
既読作家のインタビューは面白く読めたが、それ以外の方のは上滑りする感じで読んだ。しかし、作家さんたちや、書評家の方々は本当に本を読み込んでいるのだなぁと思う。澤村伊智と阿津川辰海は読もうと思っていた作家で、更に早く読まねば、と思った。あと、大学のミステリ研で、ミステリーよりも「ジョジョ」「カイジ」「ガンダム」が会話に出るというエピソードや、京大ミス研にはジョジョ全巻置いてあるのとか面白かった。デスノートもインタビューのあちこちにでてきたし、マンガ・アニメのストーリーがミステリー界に与えている影響も大きいのですね。
今、高校生だったら賢い大学行ってミステリ研入る目標も楽しそうだなぁ。読み仲間が増えそう。 -
Posted by ブクログ
祖父から受け継いだ力により、見たい風景を「見る」事ができる主人公・駿。その彼に興味を持った転校生でクラスメートの真夜。いつしか「空想クラブ」を作るようになった。
しかし、ある日を境に「空想クラブ」は解散。みんな中学生になり、メンバーはバラバラになっていた。
そんな時、真夜が川で命を落とした。現場を見ようと駿は川へ。そこには、死んだはずの真夜がいた。
主人公だけが真夜が見えることやバラバラだったメンバーを集結しようと試みるというキーワードを聞くと、どことなく「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。」が浮かびました。設定はもちろん違いますが、この作品は、よりミステリー色が強い印象でした。真夜の事故の謎だけでなく、メンバーが抱える問題がでてきます。なぜ、今こうなってしまったのか、主人公や真夜と共に謎を解いていきます。
ミステリーとしても楽しめますが、青春小説としても楽しめました。メンバーとの再会やお互いの気持ちが甘酸っぱく、時にビターに描かれていて、青春っていいなとか仲間っていいなと思わせてくれました。
他にも情景描写の描き方が多彩で、透明感のある雰囲気にさせてくれるので、ダークな部分もありましたが、終始どんよりとした気持ちにはなりませんでした。
色んな謎が回収されてからのラストは、感動を誘いました。
帯に書かれている「ラスト16ページの奇跡をあなたは体験する」は、今までの様々な話があったからこそ、グッと来るものがあるので、最後だけ読むのではなく、最初からぜひ読んんで見てください。