逸木裕のレビュー一覧
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高校生から大人になって出産後に仕事を再開する、探偵人生の物語という形式の連作ミステリー。設定自体どうということもないし、成長したからこその事件解決能力が上がっていくようでもない。そういう意味では物足りないこともないではないが、主人公の根本的なところは変わらないというのが話の根幹でもあるから、じっくりとこの探偵と付き合っていくための連作というところ。
それぞれの話は面白くできているし、どんでん返しもあったりするので十分楽しめた。どうということのない高校生、自分を常温水に例えるくらいの無味無臭かもしれないが、どうしてどうして色々なところでいい味を出している。最初の話が高校生時代の探偵業に入っていく -
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部活や習い事でクラシック音楽の世界に片足突っ込んでいた私にとっては、内省的でとても響くテーマでした。火事で亡くなった知人の謎に関して言えば、結構あっさりめなので、ミステリー分野として手に取ると、退屈に感じるところがあるかもしれません。
YouTubeを開けば、再生回数による良し悪しも測れるし、他人のコメントも、いいねの数も、指標になる。「私の感覚間違ってないよね?」と知らないうちに示し合わせていたかもしれないなと考えさせられた。名演奏に模倣も錯覚もきっとあると思う。それでも、いくつもの時代を超えて伝わってきた曲・作曲者が込めた思い・有名演奏者によるドラマ・聴いている自分、もしくは弾いている自 -
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ネタバレ★4.5
物語としては面白い、みどりさんの知りたがり癖のおかげで、いろんな謎や人の秘密に触れることができて大変面白い探偵小説。
奥行き深くなるのは夫である司さんと、二人の息子の存在。知りたい欲求だけを突き詰めるだけなら普通の探偵小説だけど、家族がいることで生まれる葛藤がリアルで胸に迫る。
333項「私とお前、ふたりとも大丈夫だったじゃないな。理もきっと、大丈夫だよ」大丈夫かもしれないけど、そこにいきつくまでに、司さんが大丈夫じゃないかもしれない未来も想像してしまう。シングルマザーの探偵小説が生まれてもおかしくない。が、どんなものになるか、心のどこかで期待してもしまう。 -
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ネタバレVRで自殺を引き起こす。
商品化実現の可否は別として、現実にも充分あり得そうで恐怖を覚えました。
プレーヤーをじわじわと確実に死へ誘っていく手法も身の毛が立ちます。
死を望んでいる人に手助けしてやっているという恐ろしい思想にも思わず引き込まれそうになるほどでした。
リアリティがありすぎて夢中で最後まで読みました。
終盤は周りに助けを求める事の大切さを軸に描かれていきますが、序盤中盤で誰もが人生一度は感じたことのある喪失感や孤独を描いているので、より身に染みて心に入ってきます。
周りに助けを求められていたら苦労しないよ。とどこか批判的に思いながら読み進めましたが、誰かに少しだけ話してみるというだ -
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久しぶりに読むことができた逸木裕さんの本。今回は探偵もの。単なる謎解きとしても予想外に良くできていたけれど、僕が期待していた通りに、ちょっと変わった人間の性(さが)のようなものを背負った主人公の設定がいつもながらにとても面白かった。コンプレックスを抱えつつも、それを否定的にとらえるばかりではなく、自分の根底にあるものとして認め、つきあっていく主人公像はいつも興味深く読ませてもらっている。
5つの短編がつまった連作集となっており、途中がちょっと中途半端になってしまっているきらいはあるものの、最初と最後がうまくまとめられているので読後感は極めて良く、感動すら覚えた。最終話がまさか別視点になるとは思 -
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ネタバレ2024/9/24
ヒリヒリする話。
先が気になって止まらない。止めたけど。
環境が悪すぎるけど子供は抜けれないよ。憂鬱になるよ。
悠斗んとこは論外としても主人公のとこもひどい。
やたら突っかかってくるクラスメイトの沙苗ってのもなんなんだ。その彼氏の意思のなさもなんなんだ。
でもこんな人達おるんやろうな。存在してしまうんやろうな。
中学生やしな。
私だって中学時代には一番戻りたくないもん。
でも大人はもうちょっとなんとかならんか。
警察くらい呼んだれよ。
主人公も悠斗も前途多難やけど成長して自由になって力抜いて生きていけるようになるといいよな。