逸木裕のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ビジネスホテルチェーン〈ラ・フォレ〉の創業者である森栄莞爾が死去して4年後、彼が生前行っていたある行為の記録が流出した。彼はAID(非配偶者間人工授精)のドナーで、彼が提供した精子によって105人もの子供が生まれていたのだ。流出したのは彼らの個人データだった。森栄の右腕だった支倉により連絡のついた12人が呼び出され奇妙な依頼を受けるが……。
男はいかにして父親になるかという命題の変形か。ミステリー仕立てではあるものの、いささか苦しい。最後に明らかになる真相も突飛すぎてついていけなかった。
テーマは重いのに文体は軽く、キャラクターの厚みも全然物足りない。逸木さんの本領が発揮されていない印象だった -
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて購入。
物語のなかで主人公は、父親とは?という問いに動かされているように見えるが、結局のところ私は彼のアイデンティティ探しに付き合っている感覚でした。
まぁ自分のルーツたる親について考えることは、自分のアイデンティティの一部にもなるわけで当然ですが。
で、こちらの作品は本当に色々と考えさせられます。良い意味で突っ込みどころが多々ある感じ。
正直、誰の気持ちも理解できませんでした。
12人と、彼らに関わる人物たちについて、私なりの解釈がほぼ出来なかった。私の読みが浅いだけなのかもですが。終始、12人が座る円卓を上から俯瞰して見ている感じでした。
ただ、ある人物が「出産がすごく -
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ネタバレ大手ビジネスホテルチェーン<ラ・フォレ>の創業者である森栄莞爾は生前、精子提供によって105人もの子供を作っていた。そのリストが漏洩したことで、そのうちの12人が<自助活動>と称して集まることに。「森栄莞爾を父として認める」ことへの賛否をめぐり、12人の心理戦が始まる。
『六人の嘘つきな大学生』を彷彿とさせるようなミステリで、テンポのよい会話劇に引き込まれるようにして一気に読めた。
森栄莞爾の真の目的は、腎臓を患う<本当の子ども>に臓器提供をさせることであった、というラストは既視感のあるものという気がし、大きな驚きはなかった。
ほとんどがすでに大人になっている12人が、数週間のうちにこんなに何 -
Posted by ブクログ
「祝祭」とは何だったのか?何の目的があったのか?どんな背景や理由があったにしても、石黒望という人間の思考回路はなかなか理解、納得することが難しく、この作品の最大の弱点だと思う。どうしてもそこだけは納得できなかった。ただ、その世界観を前提とした上で紡がれる彼らの物語(特にわかば)には興味を惹かれ、最後まで面白く読むことができた。著作の前後関係は知らないけれど、「銀色の国」をさらに刺激的に現実世界に持ち込んできて発展させた物語のような印象を受けた。実際には現実的ではない事柄があまりに多く起こるので、これに共感できる人は少数派だろう。倫理的にも受け入れられない人はいかにも多そうだ。
なのに、僕はやは -
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※
主人公は、洞察力と論理的思考に優れた
有能な探偵。
自分の特性を余すことなく探偵業に活かす
強靭な心臓を持つ一方で、謎に興味を惹かれて
周りが見えなくなることで家族に不安や負担を
かけていないか思い悩む繊細な一面もある。
真相解明のためなら他人の隠している秘密や
抱えている傷を抉ったり、ほじくり返すことを
全く厭わないのに、これまでの自分の行いが
原因で家族に被害が及ぶ可能性に気付いた時の
動揺する姿が主人公をより魅力的に感じさせる。
探偵だって生身の人間だと色と温度をつけて
描くことで、物語に奥深さと面白みが増した
ように感じた。
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Posted by ブクログ
他人が被った皮を剥いで、その奥にいる〈人間〉を
探らずにおれない森田みどり。
初めて探偵業の昏い楽しさに目覚めた高校2年の時から、結婚して子供も産んで、サカキエージェンシーの女性探偵課長になった16年後までを描いた前作「5つの季節に探偵は」の続編。
古い防空壕に閉じ込められた時計職人が助けを呼べた訳「時の子」
千里眼を持つという少年、食い物にされたのは誰か「縞馬のコード」
父親殺す計画をノートに書き綴る少年の真の狙い「陸橋の向こう側」
クルド人料理店のシャッターに描かれた大きな赤い❌印「太陽は引き裂かれて」
陶芸家母娘の確執と探偵父娘「探偵の子」
五つの短編はどれもちょっとした謎をみどりが