逸木裕のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
音楽家の苦しみ喜び、その人生の一部分を書いているところがとても面白かった。
オーケストラで弾く一チェリストが、オーケストラの他の楽団員をどんなふうに見て捉え、後ろから聴こえてくる音がどんなふうに聴こえているのか、なども興味深く読んだ。
ある天才的技巧を持つ鵜崎というチェリストは、「人間は音楽なんて理解していない。すべて錯覚だ」と言う。人々が魅了される演奏とは、よい演奏の模倣と、演技力や先入観による「錯覚」を上手く使えば出来上がるとする考えかた。
主人公の英紀も、鵜崎のこの考え方にはまっていきそうになる。そして、それを読んでいる私もはまっていく。この考えに同調すると、全てが無意味に思え、人間 -
Posted by ブクログ
どんな演奏なのか、何を感じるどんな音なのか…を文字で伝え記すのは本当に難しいことだと思います。こちらは、はじめましての作者さんでしたが、音色を表す言葉のチョイス・表現の仕方に響くものがあり、前半部分一気読みでした(*°∀°)=3
『闇の中に光を灯すようなフルートとは違い、オルガンは光の塊を放出しているようだった。神に捧げるはずの賛美歌が、神の言葉そのもののように重厚に響いていた。』
『拍子が変わり音楽は疾走する。オルガンを含めたあらゆる楽器が鳴り響きフィナーレに向かって突き進む。大音量のオケを丸ごと包み込むように〈怪物〉は歌った。』
サン=サーンスの「交響曲第3番・オルガンつき」がより魅力