逸木裕のレビュー一覧
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ネタバレ十二人の怒れる男をモチーフにした作品はたくさんあるので、何となく議論して意見がひっくり返っていくのかな、というくらいの感覚出読み始めた。
元々興味のある分野で、精子提供だけではなく特別養子縁組とか、まだまだ歴史が浅いので、当事者が大人になり子どもや孫をもつ年齢になったら、出自を知る権利について、どう感じるのか知りたいと思っていた。
議論を重ねる中で変化していく主人公や兄弟たちの心情も、育ての親の健一郎の言葉もとても興味深かった。今後も正解なんてないだろう。
逸木さんのミステリは、ともすれば軽いテンポで進められる設定なのに、内面にうずまく言語化できない感情とか、深いところまで描いているなぁ -
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アンソロジー作品『Jミステリー2023 FALL』を読みました。
全篇書下ろしの短篇を収録した贅沢なアンソロジー作品です。
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ミステリー界の最前線で活躍する作家陣による、全編書き下ろしの超豪華アンソロジー「Jミステリー」。
この秋も誰もがよく知るあの作家たちが競演! 大好評だったあの作家の再登板も……これを読まずして日本ミステリーを語ることなかれ。
『Jミステリー2023』もお見逃しなく。
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2023年(令和5年)に刊行された作品で、以下の6篇が収録されています。
■どうして今夜の彼女は魅力的に映 -
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父と子の関係性、センシティブで極深い課題に挑戦した問題作 #森栄莞爾と十二人の父を知らない子供たち
■あらすじ
大手ホテルチェーンの創業者森栄莞爾。彼は生前に精子提供を行っており、百人以上の子どもを作っていた。ある日、転職活動中である三ツ橋健太のもとに、ラ・フォレの相談役の支倉から手紙が届く。森栄の子どもたち十二人が邸宅に集められ、とある提案を受けることになるのだが…
■きっと読みたくなるレビュー
私は何故この世に存在するんだろう?
物心をつくと誰もが一度は思い悩む疑問ですよね、でも結局は答えなんて見つからない。でも近くには両親や兄弟がいて、愛情に包まれながら楽しく過ごしていると、そんな -
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五つの短編のうち、『スケーターズ・ワルツ』が、日本推理作家協会賞(短編部門)
初読みの作家さん。
『彼女が探偵でなければ』という短編集の前編ということで読む。
とても読みやすい文章でさらさらっと読み終えた。
主人公のみどりは、高校生の時、あるきっかけから人間の裏側を暴く興奮にのめり込んでいき、京都大学卒業後、探偵業につくことになったのだが、誰かを傷つけることになっても、謎を解かずにはいられないという性癖を持つ。そこには思いやりなどない。
みどりは好きになれないが、次作も読んでみたいと思わせられた。はたして、年齢を重ねて、みどりに人間味が出てくるのだろうか。
『龍の残り香』という短編は、香 -
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女性探偵もの。単に事件を重ねていく連作ものかと思ったら、五つの短編は2002年から2018年まで16年にわたり、主人公のみどりも高校生から、やがて子どものいる大人になっている。この小説で面白いのは、みどりの仄暗い性癖。ふだん他人には見せない、対象者の心の奥や裏の表情を垣間見ることをやめられず、そのお陰で友人を無くし、信頼関係を壊すこともしばしば。そんな性格は探偵業が天職なんだろうな。物語も殺人のような派手な事件はなく、いじめ、窃盗、ストーカーなど心の闇をテーマにしたものが多かった。謎はそこまで複雑ではないので、ミステリを読み慣れた人なら、だいたい解けるんじゃないだろうか。ともあれ、共感とかない
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連作集。全5篇。作中で時は2022年の夏から2024年の夏に向け流れていて、その時々の時事問題が各作品に取り入れられ、かつ、主人公であるみどりさんとその夫、そして二人の子供の成長が感じられるようになっている。巻末の参考文献一覧をみると、クルド人についての文献が圧倒的に多く、それらの文献の知見が活用された『太陽は引き裂かれて‐2024年 春』(pp181-270)はたしかに見事なんだけど、好みだったのは巻頭に置かれた『時の子‐2022年 夏』(pp5-68)。この連作集のテーマ(時間・周縁を生きる人びと・家族のあり方)が一番自然に描かれているように感じた。ついこの間、ある古本屋さんのエッセイで
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止まらない好奇心が事件を解決する
探偵みどりの第2弾。
帯の「本格ミステリ大賞受賞」に惹かれ手に取ったが、まさかの前段があるなんて、そちらも読まねば。
でも、前段がなくとも本著は本著として読めました。
探偵という職業で、2児の母である主人公みどり。 自らの好奇心を満たさずにはいられず、家庭を顧みないとしばしば自らの習性に嫌悪する。だが、だからといってその習性や探偵という職業を辞めることは出来ない。
ただひたすらに真相を追い求める根っからの探偵。
まさしく、彼女が探偵でなければ…何を探偵というのか。はたまた彼女のような者こそ探偵でなければならないのか。
何かを追い求めること、大なり小なりあ