日本を代表する電器メーカー、パナソニック。
この企業については、創業者自身による著作も含め、関連する本が多く出版されていますね。
でも僕はこれまであまり、読んできませんでした。
この会社の起源と気風については、雰囲気だけでも知っておきたいと思い、先に感想を書いた『神様の女房』とともに、この本を読んでみることにしました。
著者はパナソニックの元社長で、出版時点では会長。
2000年に社長に就任するも、2001年度には4千億円を超える赤字決算。
この状況に対して、「創造と破壊」というスローガンによる経営改革を進め、2005年度には千五百億円の黒字を生み出し、パナソニックの「V字復活」を成し遂げた、敏腕経営者です。
この本は、「自分ひとりの力で実現できたわけではない」という元社長を、松下政経塾、PHP研究所が説き伏せて、「V字回復にあたってどのような信念で経営を行っていたか」「それにあたり創業者、松下幸之助の言葉、教えをどのように解釈して実践していたか」という視点で中村氏にインタビューした内容を中心にまとめられています。
各章とも、編者による導入文章(質問事項)、中村氏のインタビュー、そして創業者の過去の著作の引用という3部構成になっています。
「同行二人」という言葉で表している通り、創業者の過去の著作を読み返し、経営に反映した姿勢が、感じ取られる内容でした。
社長当時も、”破壊”という部分に注目が集まりましたが、「変化に即応する」ということは創業者も重ねて発言しており、その意図を汲んで改革に適用したのだと、理解しました。
「実際にこの方の部下として仕事をしていたら大変だろうなあ」とは想像しましたが、会社経営とは何か、経営理念とは何かについて、深く考えさせられる一冊でした。