松下隆一のレビュー一覧
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愛する息子を喪い、未来をなくした夫婦は悲しみの果てに離別。平和だった家族は崩壊した。
それから数年を経た命日の前日、夫は過去を忘れるために、息子の骨壺を抱え、心が凍てつき暗い家に引き籠る妻を訪ねる。だがその途上、夫は実の両親を亡くした少年と出会い、妻の家に一緒に泊まることに。
その日から心に仄かな灯が生まれた。
3人の孤独な魂が寄り添う時間のなかで、それぞれの絶望が希望に変わり、夫婦は再生の路に立ち、少年は未来に向かって歩みはじめる。
子供を事故で失った男と女が、訳アリの少年と出会って生きる希望を見出すという物語。子供の事故死、児童虐待、東日本大震災、そして新潟水俣病というあまり触れたくない話題に触れている。概ねハッピーエンドで心はホッコリしたんだけど、終わり方が都合が良すぎるところが残念だったかも。面白かったし、良かったです。 -
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普段あまり時代小説は読まないのだが、フォローしている方々のレビューを読み、『最期に挑むは自らの生を賭した大博奕』てな惹句にも惹かれて買って来た。
かつては凄腕の博奕打ちで、今は足を洗って蕎麦屋を営む銀平。60歳になり、腹の病気に残る寿命が長くないことを自覚しながら送る日々。
前半、寂れた蕎麦屋の様子がじりじりと描かれ、その中で浮かび上がる銀平の過去もだが、常連客の岡っ引き、夜鷹、浮浪者の親子、それぞれが垣間見せる顔がなかなか面白い。
突然現れた元女房や店に逃げ込んできた清太との関わりを通して生きる気力を上げ下げする銀平の心情には、もどかしくてやや焦れる。
終盤の八州博打の描写は魅力的。森の中にこつ然と現れる賭場、それを仕切る貸し元の一家、ギリギリまで研ぎ澄ませて挑む勝負、その後に続く親分との因縁めいた話など、描かれる絵面と息もつかせぬ展開は期待通り。
ひとり、清太が場違いで、普通なら一度飛ばしたところで勝負に綾がつくところ。いかに銀平が彼に自分を重ねようとも、ああまでして命を懸けるにはちょっと弱いような気がして、やや残念。 -
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★3の上。
これはいいな。
さすがはみんみんさんのお勧め作家さん。
ことぶきジローさんのレビューも大変参考になりました。
m(__)m
流行り病や治安の悪化で人がごろごろと死んでゆく平安の都。
そこで二人の仲間と獣のように生きるは元孤児で奴婢だった片目の醜い男。齢十九。
親は知らず、売られて奴婢になったときも名前すらなく、憐れんだ奴婢の女たちにイチと名付けられた。
腹が減れば奪い、気が向けば殺し、欲しくなれば犯す。
あるとき屋敷の押し込みに失敗し、ついに捕らえられたイチは……。
舞台はあまり馴染みのない平安時代ですが何も難しいことはなく、スッと物語の中に入っていけます。
検非違使ってのは警察みたいなもん。奴婢ってのは奴隷だなぐらいの知識で平気。
宗教は嫌いだが、これはいい使い方。
なむあみだぶつ。
悪党でも赦されて極楽浄土へ行けるという都合の良い念仏。
なむあみだぶつ。
心に湧いてくるものを塗りつぶすように唱え続ける。
それでいっぱいにしないと頭と心がどうにかなりそうだから。
求めるな。与えるのや。
悪党として生きてしまった、そう生きざるを得なかった男の物語がわずか200ページに凝縮されています。
生きるのは、ただそれだけで辛い。
安全な時代に生まれ、安穏と暮らす我が身にもブッスリ突き刺さる良作でした。
さあて。
タイトルの羅城門。
自分は学がないもんで、は? 羅生門じゃないのー? なんて思ってしまったが、実はこっちが正解らしい。
もともとは羅城門。
有名な羅生門は芥川のおっさんの創作物であり、今昔物語の羅城門から着想を得たらしい。
ふむう。
創作を本物と思い、本物を偽物と感じるなんて、名が広まるって凄いな。
有名な方を真実と思いがち。
羅城門(事実)
↓
羅城門(今昔物語)
↓
羅生門(芥川龍之介、映画)
↓
羅城門(今作)
おかえり羅城門。
で、さらにおまけ。
本作作者さん。雲霧仁左衛門などの脚本家でもあるらしい。
なるほど読みやすいしエンタメ風味で難しくない。
本作で京都文学賞受賞。
ちょっと調べてみたら賞に文字制限があった。
2万8千字以上16万字以内。
400字詰めの原稿用紙だと400枚以内か。
本にしたら200ちょいくらい?
それでか。
ずいぶんと遊びがない真っ直ぐなストーリーだなと思ったら制限があったんだなー。
なるほど、なるほど。 -
Posted by ブクログ
大河ドラマと合わせて読みました。
歴史は勝者が作るとはよく聞く話ですが、正史はそうなのだろうなとつくづく思います。そして、それだけではなく、歴史とは解釈なのだなと深く思います。特に歴史小説を読んだ後には。そして、このようなアンソロジーを読むと、一編ごとに少しずつ変わっていく(あるいは観点を変えていく、ずれていく)解釈が実に面白いものです。
一冊の長編を読み通すのも面白いのですが、これはある観点からの物語を深くしていくことだと思います。アンソロジーには多観点から読み解いていく、そして、一編ずつを積み重ねて一冊の流れを読み解いていく楽しみがあります。
私は背表紙に「高田崇文ほか」とあったので購入しました。さすがに高田崇文、掉尾を飾るにふさわしい面白さです。しかし、そこに至るまでの一編一編が良い味を出していました。
「実朝の猫」(砂原浩太朗)が異色な感じでお気に入りになりそうです。
結構、はやく読み進めます。すいすい読みました。その中で、「実朝の猫」と「修善寺の鬼」はじっくりと読みました。
アンソロジーは誰が編んだのかが気になります。
雑誌に載ったものを文庫化したようなので、アンソロジーという見方をしないのかもしれません。しかし、編者の視点を意識しながら、この1冊を読みました。
今年が旬の本でしょう。