アーシュラ・K・ル=グウィンのレビュー一覧

  • いまファンタジーにできること

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    これを読んで、ますますルグウィンを好きになった。

    優れた小説に書く際に必要なのは、直接的な体験とことばを紡ぐ技だった。

    ルグウィンはファンタジーの匠である前に、文体の魔術師。

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    2025年10月18日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    アーシュラがブログを始めたのは80歳を過ぎてから。本書はそのうち43篇を収める。
    暇潰しのブログエッセイではない。歳をとるほどにno time to spare、しなくちゃいけないこと・考えるべきことはたくさんある。
    どのエッセイもよく練られ、ユーモアを湛え、ウィットに富む。若い頃に書かれたエッセイが見劣りするほどだ。夫チャールズや猫のパードも登場し、アーシュラの日常も身近に感じられる。

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    2025年05月02日
  • いまファンタジーにできること

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    ネタバレ

    アーシュラ・K・ル=グウィンによる、読み手たち(または書き手たち?)への講義録。とても面白かった! まだ生きていらして、「文体の舵をとれ」のような講義を行なっていらしたら! と心から思う。わたしはファンタジーが大好きで書いているので、不注意にならないようにやっていきたい。封建制度もどきの量産なんてもってのほかですよ、ええ!

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    2024年01月22日
  • 文体の舵をとれ

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    実際に作家志望者向けのクラスを持っていたル=グウィンによる、文法から徹底的に学ぶ文章講座。練習問題も多数掲載。


    はじめにル=グウィンの作品を一つも読んでないことを懺悔しつつ、本書は大変面白かったです。
    ル=グウィンの教えは「独りよがりな文章を書かない」という点に重きを置いていて、そのために文法を学び、描写や構文や語り手の視点が読者にどんな影響を与えるかを知ろう!という趣旨。タイトルの通りずっと文体の話をしていて、〈何を書くか〉ではなく〈どう書くか〉を学ぶための本だ(そのため、練習問題ごとにそれにふさわしい設定を考えるのがめんどくさい人間のためにアイデアをだしてくれてたりする。親切)。自分の

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    2023年11月01日
  • 文体の舵をとれ

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    小説を書く人向けの文章指南本。より良い文章を書くための技術を様々な角度から教えてくれる。原文が英語なので日本語への置き換えだと理解が難しい箇所もあったが(特に時制の辺り)、視点(POV)など基礎的な部分から、文の響きや繰り返し表現など日本のハウツー本ではあまり見られないような内容もあり、自分の文章に積極的に取り入れていきたいと思った。内容が濃く一回読んだだけでは咀嚼しきれていないので、読み返しつつ、練習問題にも取り組んでみたい。

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    2023年08月26日
  • ラウィーニア

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    ネタバレ

    語り手としてのラウィーニア、生きているラウィーニア。読者として物語に向き合ったが、両者は、一体化したり離れたりを(よく練られた語りに!)感じさせすぎることなく、ただ、「ひとり」の人間として在ったと思う。ときどき冷静な視点が内省するところは読者/わたしにも良い振り返りどきになったし、終わりの語り手としてだけのラウィーニアの出現にはどきりとした。それにしても、後代の詩人の登場と、それによって「未来を知っている」ためのラウィーニアの嘆きや恐怖、さらにはそれを超えたところで、自分が知っていることを利用できる強かさ、その描かれ方が素晴らしい。あくまで想像だけれど、「神」と向かい合う行為から、土と血と礼拝

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    2023年01月20日
  • パワー 下 西のはての年代記III

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    ネタバレ

    読者を呑み込む、というのだろうか。いやそれでは乱暴に過ぎる。けれどわたしは、この物語を読んでいるあいだずっと、主人公とともに歩んでいたように思う。信じては裏切られ、また、助けられ助けてという旅路。奴隷であり、追われるものであったという「鎖が切れたと思う」という表現は前後の文脈含め完璧にひとつの「流れ」の終わりを示しているようだし、最後の機知に富んだやりとりは物語を総括して「支配」という「暴力」について見事に結論づけている。鉤括弧が多くて申し訳ないが、この物語を読んだ方ならば納得してくださると思う。そして解説がいうようにこのシリーズの原題はすべて複数形で、ちからが働くもの、働かせるもの、その働き

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    2023年01月02日
  • パワー 上 西のはての年代記III

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    ネタバレ

    この物語には、アーシュラ・K・ル=グウィンの頭のなかには、わたしたちが自分が属すると思っている以上の集合体の声が、流れているにちがいない。
    わたしは、大きな絶望感と空虚感の最中に、ほぼ偶然これを手に取って読んだ。グウィンは、むろんその腕を最大限伸ばして知識を得ただろうが、それのみに留まらず、実際に起こったであろう(グウィン自身には起きていないだろうが)ことをしずかに聞いたのだと思う。「奴隷」という人びとの受ける扱い、かれら自身が思い込むことで耐える拠り所……わたしとておおよそは本で伺い知った(そうでないところも、いちおうあるが)その考え方の構造のようなもの、そして残酷さを、ゆっくり誠実に、内な

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    2022年12月31日
  • いまファンタジーにできること

    購入済み

    原点回帰の書

    「童心に返る」まさにそんな気持ちにさせてくれる本。
    ファンタジーとは何か、その根本にある動物物語とは何か?を繰り返し真摯に問うエッセイ。
    夢中になって物語を読み耽った頃を思い出し、やっぱり読書っていいな、ファンタジーが好きだな、と改めて感じる一冊。

    #感動する #深い #タメになる

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    2022年11月18日
  • ヴォイス 西のはての年代記II

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    ネタバレ

    グウィンの作品の中でどれが好き? という(ある意味とても酷で厄介な)問いを投げかけられたら、いまの私は「ゲド戦記」や「闇の左手」よりもこの本(「西のはて年代記」二巻)をえらんでしまうかもしれない。そのくらい気に入りで、また、わたしにはまだおぼろげにしかわからない深い霊性を湛えた本のように思う。物語そのものは、高い地位の生まれの母を持ちながら「侵略の落とし子」として生まれた少女メマーを主人公に、その目を通して進んでいく。メマーは豊かな感性の持ち主で、その考えのくるくる踊るところーーたとえば客人のための食材を用意したり、自分に半分血を入れた侵略者に強い憎しみを露わにしたり、そのひとりと「男の子」と

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    2022年10月27日
  • ラウィーニア

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    あとがきまで愛に溢れて少し切ない。幅広い読者層に受け入れられると確信!

    ウェルギリウスと『アエネーイス』へのル・グウィンさんの敬意と、彼女に対する翻訳の谷垣暁美さんの敬意で二重に包まれた、温かく素敵な一冊がいま私の手元にある。

    ・とある国のお姫様が男に出会う
    ・その男は未来で叙事詩を書いたウェルギリウス
    ・そう。現代の我々の世界にも繋がっている
    ・お姫様は彼の作品に出てくる登場人物だと告げられる
    ・自分が二次元創作物だったなんて強展開!信じられる?!

    ・古典アエネーイスのスピンオフ
    ・けど原作知らなくてもイケる

    ここらへんまでで、ライトな小説勢も面白そうだと思いませんか?

    ・姫は運命

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    2022年07月13日
  • 文体の舵をとれ

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    「ゲド戦記」「闇の左手」、どちらも大好きで、かつ自分の物語づくりに悩んでいた私は飛びついた。数々の難題が繰り出されてくるが、それでも取り組んで良かったと思う。ただし底に共通設定があるイマドキの「ファンタジー」ではなく、「一から物語を作り(あるいは聞き)語りたいものの話」向け(だからこそ私にはとても合ったのだが)かとも思う。

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    2021年12月19日
  • パワー 下 西のはての年代記III

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    ネタバレ

    『西のはての年代記III』の上下巻。

    表題はパワーだが、原題はもちろん複数形。個人の背景となる「権力」でもあり、個人の持つ「力」でもある。主人公のガヴィアは姉のサロとともに幼いときに水郷の地空奴隷狩りによって都市国家エトラの「アルカマンド」につれてこられて働いている。かれは、ひと目見たものをすぐさま覚えて暗証することができるという能力によって、アルカ家の子供達(主人一族や奴隷をふくむ)とともに学校で学んでいる。姉のサロは、その美貌と性格により、同じ学校で学ぶ主人一族の長男にギフトされる立場となっている。ここの段階でのパワーというのはまさに、権力構造そのものをさすが、主人公のガヴィアは主人一家

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    2021年04月23日
  • ラウィーニア

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    ローマ建国前のイタリア。トロイアから落ち延びた英雄アエネーアスと結ばれた、ラウィーニア姫の愛と冒険の物語。さすがグウィン❗️読み応えたっぷり‼️

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    2021年04月10日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    ネタバレ

    ル=グウィンの『ゲド戦記』シリーズのあとしばらくたった書かれたファンタジー。少年オレックと少女グライの物語。

    オレックはカスプロマントの跡継ぎで、代々「もどし」のギフトを継承することが期待されている。グライは隣国のロッドマントの生まれで、母から「呼びかけ」のギフトを継承している。「呼びかけ」のギフトは動物たちを呼び寄せるもので、動物たちにとって狩られるという負の部分と人間に飼いならされるという正の部分をもっている

    オレックの母のメルは低地の生まれで、オレックの父カノックが「もどし」のギフトと交換に手に入れた低地から贈られた「ギフト」でもある。低地の人々から、カスプロマントなど「高地」の人々

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    2021年03月21日
  • ラウィーニア

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    古代イタリア、ラウィーニア姫の物語。そこかしこに神がいる世界、戦があり平和がある。儀式があり読み解くお告げがある。日常を営む多くの人が共に住む場所に。
    身体を脱ぎ捨てた彼女の意識は、どの時のどの場所でどんな人々を見ているのだろう

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    2020年10月06日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    とても上質なエッセイ。
    こういう本が翻訳され続けるように、知的人でいる努力を重ねたい。
    この本をおもしろいと思える読者が今後も絶えませんように。

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    2020年09月25日
  • ラウィーニア

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    ウェルギリウスの叙事詩「アエネーイス」にほんの少しだけ触れられているアエネーアスの妻ラウィーニアを語り部として「アエネーイス」の物語を描く。
    といってもウェルギリウスの「アエネーイス」なんて、世界史の知識としてしか知らず、トロイの木馬で有名なあの戦争の負けた方の人の話というぼんやりとした知識のまま読み始めたが、これがまたとても面白い。
    ラウィーニアについてウェルギリウスがほんの一言程度しか触れなかったのを逆手に取り、ラウィーニアは自分の意思のまま語り、行動し、時空を超えてウェルギリウスと語る。自分の運命を知ってもただ流されるのではなく、それとは違う方向に(そして自分の望まない方向に)物事が流れ

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    2020年09月23日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    偉大な作家が晩年に始めたブログの記事集。長い?人生を生きていくのにヒントになることがたくさん得られる。

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    2020年08月03日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    あー!それ言っちゃう!という胸のすくようなエッセイが多くあった。著者の正直さ、誠実さが滲み出ている。

    特にうちなる子どもをカルトと言い、酸素だけを食べる人の話しがお気に入りだ。アンケート、信じること、怒りについても示唆に富む。

    『怒りの葡萄』は読もうと思った。

    2018年に亡くなっていたことを本書で初めて知りました。

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    2020年07月27日