アーシュラ・K・ル=グウィンのレビュー一覧

  • いまファンタジーにできること

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    ゲド戦記のル=グィンによるファンタジー評。
    寓話やメッセージを分かりやすく伝えるツールとしてのファンタジーではなく、もっと本質的なファンタジーでしか描くことができないことを語るウィットに富んだテキストはとても素晴らしい。
    動物物語について語る章が特に興味深く、いくつかの類型に小説の中の動物の描き方を区分けした上で人間と動物、自然の繋がりを眺めていく。紹介されているどの本も読みたくなってきてしまうこと間違いなしに評されている。

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    2022年03月04日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    ゲド戦記の著者という事だが今の時点でゲド戦記は読んだことがなく、ジブリのアニメを一度観ただけで「あらすじ」の様なものしか理解していない自分にとっては、先入観もなくタイトルが気になって手に取った。
    いろんな事に触れている。この人のきっぱりした口調が好きだ。経済の成長については全く同意見で、同じ意見がある事に安心もし、ウルフが好きだというのを読んで嬉しく思う。ヘミングウェイは私は嫌いではないけどね。

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    2021年05月29日
  • ラウィーニア

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    ネタバレ

    ローマの詩人、ウェルギリウスの『アエイーネス』に発想を得た作品。トロイアから逃れたアエイーネスがローマの建国の前史に関わったというが、本作のタイトルとなっているラウィーニアという女性については詩人ウェルギリウスの言及は少ないという。ラティウムの王女のラウィーニアは兄弟を失い、否が応でも王国の後継者としての役割が期待され、あまた求婚者が現れるなか、お告げによってアエイーネスと結ばれる。男優位の社会の中での彼女の主体的な選択の模索が未来につながるという物語となっている。
    そのきっかけになったのが、ラティウム王家の神託の森でラウィーニアがウェルギリウスの死ぬ間際の霊魂に出会ったことにあった。というこ

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    2021年05月29日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    ひさびさに骨太なエッセイを
    読みました。

    高校生の頃ゲド戦記を読み、
    作者が作り上げる世界や
    言葉遣いに感銘を受けたことを
    おぼえています。

    今回のエッセイを読んでいても
    付箋を貼りたい箇所が、たくさんあり
    手元に置いて何回も読み返したい
    一冊になりました。

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    2020年10月19日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    ジブリアニメとして制作された『ゲド戦記』の著者として有名な、K・ル=グウィンさんのエッセイ。猫との生活(バード日記)や、年齢を重ねてたどり着いた生活について、作家としての思いや、人生の一コマについてだったり、様々なテーマで語っている。
    一番印象に残ったエッセイが『ファーストコンタクト』という題名のもの。
    ガラガラヘビとの緊張感ある対峙で共有した瞬間を語った一編。
    彼女の作品を未だに読んでいない。読むとすればヒューゴー賞、ネビュラ賞を取った『闇の左手』から、続いて『ゲド戦記』へと歩みたいと思っている。

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    2020年10月12日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    ゲド戦記はわが青春の愛読書だが、エッセーは初読。
    彼女の作品に出てくる、老いた聡明な龍のような
    鋭い言葉が印象的。

    余暇という言葉の裏にうかがえる
    「大切なもの」が見えない愚か者(現代の大多数の大人)への辛辣な批判、ファンタジーの意味が「そのありかたでなくてもいい」ことを問いかけること、など卓見に富む。

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    2020年10月10日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    格調高い文章で、脳細胞が刺激されました。老いや怒り、といった身近なトピックでもルグウィンにかかると哲学チックです。噛み締めて読みました。

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    2020年08月16日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    言葉の使い方にとても厳格で大切にしているのが心に残る.ル・グウィンに言葉にしてもらうと今まで何となく感じてたことがクリアに整理されて目の前が広がっていくような気がする.時々挿まれる猫との風景にも,生きる姿勢のようなものが見えて,ただ微笑ましいエピソード以上のものがある.私も「本当に大切な本を読むのに忙しくて暇なんてないわ」だ.

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    2020年08月14日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    相当長い間、積読していたのだが、東京モーターショウに行った東京のホテルで読んだら、面白すぎて一気に読み終えてしまう。続編を大至急買わないと!
    それにしても、ル=グウィンは、独特の世界観を作るのがうまい、うますぎる。

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    2019年10月29日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    ネタバレ

    ファンタジー
    サンリオやハヤカワ文庫で知ったSF作家ル=グウィンと、『ゲド戦記』や『空飛び猫』の作者が一緒と気付いたのは、21世紀になってからだ

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    2019年05月07日
  • ヴォイス 西のはての年代記II

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    西のはての年代記Ⅱ~南のサル山を望む港町アンサルは東の砂漠から押し寄せたアスダーに占領され,多くの住民が殺され,書かれたものは悪だと多数あった書物を破棄され,17年が経過している。アンサルの実質的中心地のガルヴァマンドの主・道の長は悪魔の穴を教えなかったために拷問にかけられて両足を折られ不自由な生活で,館に住む人間も少ない。メマーはカルヴァ家の女性がオルド兵に乱暴された結果生まれた女の子だが,母から秘密の扉を開けて書庫に入る秘密を伝えられており,この書庫の存在を通じて道の長と館の秘密を共有し,文字の読み書きも習っている。オルドのガンドに招待され高名な詩人であるオレックがアンサルを訪れ,妻のグラ

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    2013年02月05日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    「ゲド戦記」以来のル=グウィン作品。

    彼女は心に闇を抱えた少年を描くのが上手いなぁと思う。ゲドもそうだけど、この本の主人公オレックもまたそんな少年の一人で、家族との関係とか、幼馴染との関係とか、いろいろ自分に関わる人との中で闇を抱えざるを得ない状況になっていく姿が痛々しいながらもそっと後ろから応援したくなるような気持ちになった。

    このオレックと幼馴染のグライがどうなるのか、気になります。

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    2012年06月07日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    子どもの頃から
    ハイファンタジーをあまり好まなかったので、
    児童書の中で、1番、腰の上がらないジャンル。

    読もうと思ってから、数年経過し・・・
    ようやく手に取りました。

    前半の回想部分(というか、すべて回想なのだけど)の、
    部族の名前やら、その力やら、地名やらが、頭に入らず、進まず、
    こんなに読解力なかったっけ?と思いながら、
    読むのをやめなかったのは、ひとえに、ル・グウィンへの信頼ゆえ。

    そうこうしているうちに、半分も過ぎた頃には、
    いつのまにか、ひきこまれ、大きな満足とともに、読み終えました。
    さすが。

    もうちょっと、わかりやすい地図とか
    登場部族の説明とかが、巻頭にあればなあ・・

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    2012年02月22日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    ネタバレ

    「ゲド戦記」以降久々に読み応えあるファンタジーに仕上がってると思う。
    「ギフト」に翻弄されるオレックが自らの力を封じるために目隠しをしつつ、それでも冷静な判断と精神的な成長を果たしていくのは読んでてすごく引きこまれた。翻訳もそんなに気にならず、細かい表現部分で却って原書を読みたい気がした

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    2011年09月14日
  • パワー 下 西のはての年代記III

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    ネタバレ

    原題が、powersであると、訳者のあとがきを読んで知る。
    なるほど、と思う。
    この本は、主人公の力について書かれた本ではなく、世の中に存在するすべての力について書かれたものであったか、と腑に落ちる。

    なかでも物語中、たくさん出てくるのは信頼の力についてだ。
    主人公の少年は、人を信じやすい。そして、裏切られる。何度も。
    今度は気をつけよう、と彼は思うのだが、しかし、やっぱり彼は信じ、そして裏切られる。

    だが、物語の最後、オレック・カスプロに会い、そして、少年は手に入れたかったものを手に入れる。
    自分を信じる、という力を。

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    2011年05月28日
  • パワー 上 西のはての年代記III

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    ネタバレ

    ギフト、ヴォイスと言葉の力、本の力にまつわる物語が語られて、そして、最後はパワー。文庫版だと、上下2巻。西の果ての年代記の最終巻。

    奴隷として、幸せな(!)生活を送る少年が、自由と自分に目覚めていく物語。
    西の果ての年代記は、ゲド戦記にくらべると、著者が今の世界の比喩として生み出した世界ということがちょっとわかりやすい気がする。
    『パワー』でも、奴隷制で描かれる世界を読みながら、自分自身の精神の自由について考えてしまって、ときどき苦しい。

    例によって、少年は特別な力を持つが、その力が少年の人生を決定的に助けてくれたり、英雄的行為に導いてくれたりはしない。
    ル=グウィンの物語はいつでもそうだ

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    2011年05月28日
  • パワー 下 西のはての年代記III

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    さまようガヴィア。クーガに拾われ、森の心臓で暮らし、水郷にたどり着く。そこも違う。
    本当の自分の場所を求めて、再び出発する。オレックのいるメサンを目指して。
    居場所が見つかって一安心したけれど、彼の旅はまだまだ続くのだろう。未来へ

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    2011年05月04日
  • パワー 上 西のはての年代記III

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    都市国家でよい待遇とは言え奴隷として育ったガヴィア。
    姉を喪った事がきっかけで、お館を出て行ってしまう。
    心も身体も放浪する彼が、時間によって、出会った人々によって少しずつ癒されていく。
    悲しいことがあったら、ちゃんと泣くんだよガヴィ

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    2011年05月03日
  • ヴォイス 西のはての年代記II

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    声の持つ力を感じさせると同時に本の持つ力も考えさせる。
    長い間 書物を、書く事を認めない者にねじ伏せられている町に住むメマー。
    オレックとグライがやってきたことで、転機が訪れる。創り人で語り部であるオレックは朗誦に力を持つけれど、読むことが創ることに繋がっている。読むことも話すことも力になると知っている。

    本が語る声を、どれだけ聞き取ることが出来るだろうか、私は。

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    2011年04月29日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    ゲド戦記以来、何年経ったのかわからないけど、ひさびさにル=グウィンの新作が児童書コーナーに並んでいるのを見つけたときは興奮した。
    「早く文庫になれ」と念じてたら、文庫になったので、さっそく購入。
    既存の価値観に立ち向かうル=グウィン。ゲド戦記は、海と島に、黒い肌の人々たちが暮らす世界だった。今回は、「西の果て」が舞台。
    これはヨーロッパがモチーフかなあ。
    『ギフト』では、西の果てのなかでも、「高地」という貧しい場所が舞台になっている。海と島ではなく、陸地を舞台に選びながらも、やはり「辺境」を感じさせる物語は、ル=グウィンだなあと思う。

    「低地」の人々が半ば伝説に「魔法使いの住むところ」と言う

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    2011年04月09日