アーシュラ・K・ル=グウィンのレビュー一覧

  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    出だしからもうおもしろくてこの先に書かれていることであろうことにわくわくしている。
    お気に入りの猫パードについての「パード日記」、自分が書いた文章が誤って引用されていたことから展開する「内なる子どもと裸の政治家」など。

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    2020年05月10日
  • パワー 下 西のはての年代記III

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    まやかしではない本当の自由。しかし、それを得るためには、矛盾した、かりそめの自由、権力をいくつもくぐり抜けなければならなかった。読後、深い深いところからの静かな喜びがこみ上げてきた。

    3部作を通して、本当に多くのものを感じた。主人公と共に生き、私も成長したのだ。物語の力がここにはあった。

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    2013年09月09日
  • パワー 上 西のはての年代記III

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    上巻だけでは何とも言えない。ただ前2作と比べて、奴隷制というさらに難しいテーマをどう料理していくのか興味深く思う。それにしても善悪を完全に二分せず、残酷さも、幸福感も描ける手腕はさすが。

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    2013年09月06日
  • ヴォイス 西のはての年代記II

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    前作ギフトと同じく葛藤の中を生き抜く物語。神秘性は少ないが、人間社会に対する深い洞察がある。無血に近い革命、書き言葉の文化性、言葉の了解の深度、憎しみ、ジェンダーと色々なテーマが読み取れた。スリルや躍動感もあった。人に対する信頼を描いたのが名作の所以か。

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    2013年09月01日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    葛藤、試行、対決、触れ合い、悲しみ、悼み。一人の青年の中に嵐が吹き荒れる。それはまさに思春期か。最終盤の引き込みは凄かった。グライがとびきり魅力的だ。

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    2013年08月26日
  • パワー 上 西のはての年代記III

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    ああ読み終わってしまった。またしばらくしたら三部作通して読みなおしたい。幼い頃に姉とともに兵士にさらわれ、エトラという都市の館奴隷として暮らしていた少年、ガヴィアの物語。ゲド戦記では自分自身の内面の葛藤が主に描かれていたのに対し、こちらは自分だけではどうしようもない部分をも含む社会の制度や偏見や価値観を、どう把握してどう消化してどう向き合って乗り越えるのか、、、ということが描かれているように思いました。

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    2012年07月19日
  • ヴォイス 西のはての年代記II

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    ギフトの物語からだいたい20年後の、アンサルという都市が舞台。交易で栄えたアンサルの人々は、長らく戦争をしておらず文字を持たず唯一神のアッスを信じるオルド人に攻め込まれて久しく、占領下の町で道の長に仕える少女が自分の存在と役割を理解し成長してゆくお話です。一作目『ギフト』に出てきたオレックとグライも出てきます。ルグウィンらしい静かな雰囲気の作品ですが、ダイナミックなドラマもあり、読みやすかったです。何度もじっくり読み込みたいお話。

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    2012年07月12日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    静かで示唆的なお話。自然環境の厳しい高地に住み続け、長(ブランター)の家族に代々受け継がれる異能(ギフト)をもって一族を治める人々は、低地の町で暮らす人たちからは魔法使いと恐れられています。ギフトはその部族ごとに様々な働きをし、父から息子へ、母から娘へと伝わり、部族同士の相性により強く伝わったり弱まったり。これは低地の娘を娶った長の息子、オレックの物語。一族が持つ「もどし」のギフトはその命が無かったことにしてしまう破壊の力。オレックの幼なじみの少女グライがとても魅力的でした。ゲド戦記と同じく、繰り返し何度読んでも面白いと思います。

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    2012年07月10日
  • ヴォイス 西のはての年代記II

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    魔法の存在する世界を描きながら、不思議な力よりも言葉の力に重きがおかれている。西のはて3部作の中でも特にこのヴォイスがいい。女の子が主人公だからか‥それにしてもオレックとグライがでてくるとなんとも言えない安心感。

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    2012年08月13日
  • ヴォイス 西のはての年代記II

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    物語の持つ力、そして詩や物語を語ることの持つ力についてル=グウィンが精緻な筆で語っている。

    大いなる変革は言葉によって可能である。それも勇ましい言葉やわかりやすい言葉ではなく、人々が自分で考えてそれぞれの言葉で語り、互いの意思の疎通をはかっていくことで可能になる。と伝えたいようだ。

    アンサルやオルドを現実の世界の特定の国や宗教と結びつけて考えることは容易いが、それはこの物語の世界を矮小化するだけだ。

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    2011年11月20日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    ル=グウィンといえばゲド戦記だろうけれど、「ギフト」シリーズも好きです。

    「ギフト」と呼ばれる能力を受け継ぐ領主が治める世界。
    主人公の少年オレックは領主の跡継ぎでありながら、その能力がなく……。

    ル=グウィンの描写にはいつも圧倒されます。
    私たちの前に見せてくれる物語の世界もそこに息づく人間も、力強さと確かさを持って現れてきて、引き込まれてしまいます。
    自分の存在に苦悩するオレックの幼馴染みの少女グライが、とてもいいキャラクター。彼女の強さに救われるのはオレックだけでなくて読者もそうなんじゃないかと。

    物語の世界に酔いたい方にとてもおすすめです。

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    2011年11月03日
  • ギフト 西のはての年代記I

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     ハイ・ファンタジー。
     三部作です。ギフト、ヴォイス、パワー。ハードカバーでどうだったか確認してませんが、購入した河出文庫版では、パワーだけ上下巻になっていて、合計4冊。

     まさにこういうファンタジーを読みたかったのだ、という異世界ファンタジーでした。生きているうちに出会えたことを感謝したい。ル・グウィンはゲド戦記から入って、SF作品を中心に読みすすめてきましたが、この作品がまちがいなくいちばん好きです。

     第一部は、西のはての高地を舞台にはじまります。その辺境の地に住む人々がもつ特別な魔法、「ギフト」。誰でもそれがつかえるわけではなくて、その力を持った人々が、そうでない人々を農奴として抱えて、貧しい土地で暮らしている。
     その中でも、とりわけ恐ろしいギフトをもった一族に、主人公は生まれる。一人息子である彼は、父親から受け継いだはずのギフトを、なかなか発現させることができず、その期待にこたえられないことに悩んでいた。だがある日、恐ろしい形でそれは発現し、彼は自分の制御できない力に怯えて暮らすことになる……
     第二部以降は主人公を変えつつ(第一部の主人公も重要なキーパーソンとして登場しますが)、それぞれの目を通して、ひとつの世界が描かれている。その世界と、そこに暮らす人々の、血の通っていることといったら! 魔法や風土や、文化や歴史や信仰が、人々の生活に密着して活き活きと描かれて、なおかつそれが、壮大で魅力的なストーリーと絡み合っている。

     異世界ファンタジーがお好きな方で、もし未読の方がいらっしゃったら、ぜひとも読んでいただきたいシリーズです。

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    2011年08月12日
  • ヴォイス 西のはての年代記II

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    ネタバレ

    「西の果ての年代記」の第二部、『ヴォイス』。
    これは名作だった。『ゲド戦記』を読んだときの感動がよみがえって、涙が出た。
    一神教の軍事国家に侵略された自然崇拝に近い多神教の国が舞台。
    文字が邪悪なものとされ、禁書の地となっている。

    ル=グウィンは、自身の問題意識をふんだんに盛り込みながら、ファンタジーとしての魅力を損なわずに空想の世界を描き出している。
    アンサルという都市で起きていることは、しかし、あきらかに現実の世界に存在する多くの矛盾を意識して書かれている。
    軍事に対する弁論の力。
    女性に対する理不尽な差別。
    一神教の強靭さと、多神教の柔軟さ。
    不可思議なものへの畏敬の念と、商業に携わる者たちの粘り強さ。

    ゲド戦記でもそうだったが、ル=グウィンのなかにある「英雄否定」のようなものが今回もしっかりと描かれている。
    「英雄否定」では不正確か。「スーパーマン否定」かな。
    この物語の最後は、無血革命だ。
    空想上の物語なんだから、どこまでだって劇的に仕上げることはできるし、はっきりいって、そのほうがおもしろい。
    しかし、ル=グウィンはそういうふうに物語を語らない。

    特殊な能力を祖先から受け継いだ人物も登場するが、それは真に物語を決定的な方向に導く要因にはならない。

    葛藤し、怖れ、悩む生身の人間たちの、ほんのすこしの勇気や、誠実なる心が本当の物語の決定要因だ。


    ゲド戦記以来、それが彼女の語りたい物語の大切な部分なのだろう。


    感心するのは、それにしても、話がおもしろいことだ。
    退屈なる純文学の雰囲気は、まったくない。
    緻密に描きこまれた世界観は魅力的で、めまぐるしく変転する物語の流れにはスピード感さえある。



    それと、この第二部『ヴォイス』は、本や詩や、物語や朗誦、朗読といったものも重要な登場物だ。
    本がまだ貴重品で、人々の重要な娯楽を吟遊詩人たちが提供していた時代。
    「読み手」「語り人」「創り人」といった言葉が出てきて、それはある種の神性を帯びた尊敬される人々のことを指す。

    活字離れが言われて久しい現代にあって、思い切り描きこまれた、本や文字、物語の大切さ、美しさに心を打たれた。1000年に渡って大切に保存される書物の存在、そこに書き込まれた詩の数々。


    物語の後半、二十年以上のときを経て、禁書が解かれたときに交わされた言葉をひとつ。
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    「今はもう本を隠す必要なんてないですよね? オレック、聴衆の前で朗読してくれませんか―そらで朗誦するのではなく。そうすれば、本は魔物ではなくて、わたしたちの歴史、わたしたちの心、わたしたちの自由が記されたものだとわかると思うんです」
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    本好きのひとりとして、本が失われ、再生される物語にも静かに感動した。




    そうそう。一神教と多神教についても、示唆に富んだセリフがあったなあ。
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    「オレック、あなたの言うように、彼らには強みがあります」道の長は行った。
    「ひとりの大王、唯一の神、ひとつの信仰をもつ彼らは、ひとつの心で行動することができます。だが、ひとつのものは割れる場合もあります。わたしたちの強みは、たくさんのものとうまくやれることです。ここはわたしたちの聖なる土地です。わたしたちはここで、地つきの神々や霊たちに混じって暮らしています。わたしたちはその方々とともに辛抱しています。わたしたちは傷つき、力をそがれ、奴隷にされました。しかし、オルド人たちがわたしたちの知恵を破壊しない限り、わたしたちは滅びないのです」
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    2011年04月15日
  • ラウィーニア

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    英雄物語の周辺に置かれた姫が自分の人生を語る。
    姫は気高く、運命を受け入れる勇敢さを持つ…んだけど、物語の作者が生霊として現れネタバレしていくわ、作者に作品内で語ってもらえず死ぬこともできないわ、と作者とは碌なもんじゃないな、と思った

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    2026年02月02日
  • 文体の舵をとれ

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    いやぁ、翻訳中に編集者が「あーー…これ日本語で出しても意味ないかぁ」とならなくてよかったよね。ありがとう!! でもこの本、翻訳した翻訳者がいちばん楽しくていちばん為になったんじゃないだろうか。

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    2025年06月05日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    表題の由来となっている「余暇には何を」「二階のお馬さんたち」がよい

    P29 老齢は気の持ちようでどうにかなる問題ではない。それは実存する状況である。【中略】恐怖というものが賢いことはめったにないし、親切であることは決してない。元気づけようとしているのだと言うなら、そもそも誰を元気づけようとしているのか、考えてみるとよい。

    P32 老年における生は次第に衰え、縮小する。そんなことはない、と言っても無駄である。実際にそうなのだから。大騒ぎをするのも、怯えるのも、どちらも無駄だ。誰もそれを変えることはできないのだから。【中略】ちゃんと向き合いさえすれば「ザ・ディミニッシュト・シング(衰えて残り少ないもの)」の使い道はたくさんある。【中略】老齢そのものを「ディミニッシュ(縮小)」使用とはしないでほしい。老例には構わないでほしい。あなたの恒例の身内や友人にも、あるがままにさせておいてあげてほしい。現実否認は何の役にも立たない。誰の役にも立たないし、いかなる目的にも役立たない。


    P41 あるフランス人が、猫は家の魂だといった。私たちはそれに同感だ。

    P62 (物語の意味を考えるのは)それは私の仕事じゃないの。あなたの仕事よ。【中略】あなたにとって「何を意味するか」は、あくまでもあなたにとっての意味だ。

    P100 抜群の、あるいは独特の達成という意味での「グレートネス(偉大さ)」は、ひそかに性別を示唆する語だ。【中略】一般的な抽象概念としての「偉大さ」は未だに男性の領域のものだと考えられている。

    P101 男たちが「本来の姿の二倍のサイズに映る(ヴァージニア・ウルフの”女は男を二倍の姿に映す鏡の役割を果たしてきた”という表現より)」ことを必要とする限り、女の作家は彼らと公開で競争するのは危険だと知っている。

    P118 すべてのユートピアはディストピアを包含し、すべてのディストピアはユートピアを包含する。

    P159 真実を尊重するという考え、物を分かち合うという考えた、私たちの国にとってこんなにも無縁なものになっていなければよかった。もしそうなら、私の国が私にとってよその国のように感じられ始めることもなかっただろう。

    P165 自己憐憫好きの感受性豊かな犠牲者ヅラの子供には、内なる子供と共通する点があるように思われる。どちらも怠惰なのだ。自分が大人になるよりは、大人を責めるほうがはるかにたやすい。

    P197 残酷さというのは、相手の苦しみに気づいていることと、それを引き起こそうとする意図を含意している。残酷さは人間の専門分野で、常にそれを訓練し、磨き上げ、制度化している。

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    2025年01月02日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    ル=グヴィンの生前最後のエッセイ集だと本屋で見て購入。

     でも、最初だけ開いて以降、数年、続きを読む事ができなかった。気力がないという理由で。

     それが久しぶりに開いて見ると、するする読めるようになっているのは、ようやく、人の話をちゃんと聞ける自分になって来たせいなのかもしれない(だといいな)。

     そんな風に、この人のエッセイは軽い話でもどこか「ずん!」としている。読んでいると、エッセイという定義が判らなくなってくる。辛うじて印象でまとめるなら、文学者のというより、それは学者や科学者の書くものの雰囲気がある。それでいて、けして難しい内容で読み手を煙に巻くというところは微塵もない。でも、一文一文で考えさせられてしまうのだ。彼女はそうさせるつもりはないのだろうけれど。

     最初は老いや女性問題などについてのエッセイ。それも事情通の人にはとても響くだろう、ウィットに富んだ筆致でも、他の今まで私が読んだどんな人のエッセイよりも、軽妙なのに中身が濃い。

     後半になってくると、この「ずん!」が「うん!?」に変わる。猫の話など、もっと身近な、でもそれもとても深くワクワクするような思考の広がりにつながっていく。なので、今から読もうという人は是非、最後の方を愉しみにしてもらいたい。

     特に私は、第2部の『世の中を理解しようとすること』の「未完の教育」(グヴィンの猫がネズミを捕る話)、第4部の『報酬』の章の、「その木」(クリス●ツリーについての話)に惹かれた。さらに同じ第4部の「二階のお馬さんたち」については、思考の道筋が面白すぎて、楽しくて足をバタバタ鳴らして喜んでしまった。

     この本は基本的にはグヴィンのブログの文章を再編したものからなっているとのことだけれど、最後まで読んで、さらに訳者の後書きまで読んで、感じていた印象の理由が「あぁ!」と明らかになった気がした。
     彼女と同じ国で、語る元になった事件や本などを身近に知っていたら、もっともっと楽しめたのだろうと思ったし、訳者後書きに、彼女の講演の話や他のエッセイの事などが書かれているのを見ると、自分が英語圏にまったく造詣がないのに悔しさを感じた。いまからでも英語の勉強始めるかな(喋れなくても、読めればいい。笑)

     カッコイイ人だなぁとつくづく表紙を見て、ため息が出る。同じ人間に生れて、光栄だと感じた。心から。

     

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    2022年08月17日
  • いまファンタジーにできること

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    ファンタジーを何らかのメタファーでなくファンタジーそのものとして読むことに意味がある。そのように受け取り、それは日ごろ思い抱いていることなので力強く響いた。
    ファンタジーの魅力を伝えるための大いなる力を得た気分。

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    2022年03月30日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    グウィンの編んだこの物語には、読み終えて符合に気がつき驚くところがいくつもあった。まさに細部に神は宿るといったところか。その人その人でなければ見えないことが語られている、その意味に至って「ああ!」と思うーーその、主人公たるひとりの少年の成長に絡んでいく繰り返しが、かれが決意を定めるシーンに繋がって大いに感嘆してしまった。ドラマ性というものは、派手なところにばかりあるのではないのだろう。それが(今のわたしには)物足りないというだけで……

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    2022年03月26日
  • いまファンタジーにできること

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    ファンタジーを愛するすべての子どもと大人へ。

    ゲド戦記のル=グウィンがファンタジーについて語ったエッセイ集。ファンタジーをよく読む人はぜひ手に取ってもらいたい。なぜ子どもはファンタジーを愛するのか、ファンタジーは子ども向けなのか、ファンタジーとは何か。よくあるファンタジーへの問いかけにル=グウィンが真摯に答えている。

    ハリーポッターから起きたファンタジーブームによってたくさんのファンタジーが手に入るようになったと思う。特にあの頃まさにティーンエイジャーだった自分に、たくさんのファンタジーが流れ込んできたのはよかった。確かにペラペラなものもあったに違いない。けれど自分は力を持ったファンタジーをたくさん読むことができた。もしかしたらそれはハリーポッター以前に書かれたもので、ファンタジーブームと関わりなかったとしても。とにかくファンタジーを読むことで、自分の生きる世界とは違う社会を知り、自分とは違う価値観で生きる人とどうやって手を携えていくのか、自分はどのように何を守って生きていくのかを考えられたと思うから。

    ファンタジーにおけるジェンダーや人種の問題に関して、少なくとも人種に関しては日本語のファンタジーだとアジア系なので著者が指摘する白人の問題は感じない。しかし日本の中ではやはり差別される人種の問題があり、ファンタジーにはそういう人の問題が描かれていたと思う。ジェンダーや善悪に関して、例えば守り人、勾玉三部作や十二国記を思えば、日本のファンタジーは著者が指摘したところからやや進んだところにあるのではないかと思った。

    ところで最近の異世界転生モノとかは英米でもあるのだろうか。なんちゃって中世ではあるけど。あれらはペラペラのファンタジーなのだろうか。それともあの中から力あるファンタジーが生まれて読み継がれていくだろうか。

    動物の出てくる物語についても面白く読んだ。人間が動物をどのように扱っているのか、動物寄りから人間寄りのスペクトルで分類された物語をもう一度見直したいと思った。『ソロモンの指環』で語られていた動物の習性を理解して描かれた物語のことを思い出した。

    日本はファンタジーに恵まれた国だと思う。日本人はアメリカ人ほどドラゴンを怖がっていないのではないか。それでもやはり日本文学研究者の中でファンタジーは認められていないのだろうか。それを語る人の言葉を今度は読みたい。

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    2022年03月22日