三木笙子のレビュー一覧
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三木先生の今までのシリーズ(帝都探偵絵図やクラーク巴里)では、探偵役とその相棒との間には揺るがない信頼関係があり、その関係性の中で描かれる物語だったのですが、今回の待宵と桂との間にはそれがまだない。この本に収録されてる4つのお話を通してそれが徐々に構築されていっていく途上、みたいな感じですね。
その結果、二人の捜査行動がバラバラで(桂の手のひらの上で待宵が踊らされているだけのようにも見える……)、男同士の友情に悶えたい私としてはちょっと物足りない(笑)
ミステリのネタ自体は三木先生お得意の、史実と人の心の機微・思惑が絡み合った結果発生する物語、といった感じで。(あとこれは完全に個人の趣味ですが -
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発売日に買いに行ったら見つからなくって、
店員さんが「さっきあたし販売したんです。だからもう一冊はあるはずなんですぅぅぅ」
二人で必死で探したけどやっぱり見つからなくって、すぐに支店から取り寄せてもらうという、手に入れるのに一手間かかった人気本!(以降、予約することにしました)
このシリーズは、他の作品と違うところがひとつあって。
たとえばお話って一つの円みたいに収束しますよね。
ぐるっとめぐって、円になって終わる。結末は動かない。しっかり読者に結果をしらしめる。
でも、巴里でのお話は完全には終わらない。神様の気まぐれで変わっちゃうかもしれない。流れから言うとこうなるはずだけど、(実際そう -
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前作で一度帰国した晴彦が三年半ぶりに那須一座へ復帰。パリでの孝介との活躍再び。
今回、晴彦がちょっと大人しいなぁ(影が薄いなぁ)と思いながら読んでました。(晴彦の世話を焼くのと、人に気に入られやすいキャラを生かしての必要な情報収集のためのツールみたいな使われ方……一方通行ぎみだしね)そこら辺をふまえてのこの連作(?)短編の4作目を読むと、ここへ至るための布石だったのかなぁとも思いつつ、ちょっと二人の関係を楽しみにしてたので物足りない部分も。
でも毎度のことながら、この時代の出来事などを上手に事件や物語に組み込んでくる手腕は流石です。(飛行機とか、ルビーの話の奴はレーヨンですかね)
オンブルと孝 -
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どうか、この心を、誰かがわかってくれますように。
超絶美形の天才絵師・有村礼と、雑誌記者・里見高広の“帝都探偵絵図”シリーズ第一作。礼がこよなく愛するホームズの物語を翻訳する、それが高広の役割。そして、二人が出会った謎を、優しく解き明かす高広。ちょっと不思議なホームズとワトソンの物語。短編集で、どの物語も、切なさと優しさに満ちている。ままならぬ浮世で、それでも優しく、誠実に生きようとする、不器用な切なさに。
「人魚は空に還る」浅草で話題の興業「蝋燭座」の出し物の目玉は人魚。しかし、人魚を買い取る人が現れ――。空に還った人魚の秘密とは。さりげなく小川未明が登場する表題作。真相を見抜いた高広は -
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ネタバレ謎の背景には、親子の絆。
お得意の分野、明治+美形+ホームズ&ワトソン。〈帝都探偵絵図〉シリーズの第二弾。とはいえ、実は小説で読むのは初めて。会話中心で読みやすかった。主人公コンビである雑誌記者の里見高広と美貌の天才絵師有村礼が直接かかわらない話もあり。何組かの親子が出てきて、それぞれの関係がある。優しいものも、厳しいものも。親が子を、子が親を、思っている、だけではない。でも全体的な雰囲気は、優しく、後味もよい。
「第一話 世界記憶コンクール」まさに「赤毛組合」でした。似たような条件が揃ったらわくわくしちゃう有村先生の気持ち、わからんでもないホームズファン。
「第三話 黄金の日々」過去の -
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この物語は、三世代に渡る少年同士の友情の物語です。(そしてその三世代、三組の少年同士がそれぞれ血縁関係でないのに、結果的に巡り会うという因業めいた展開がニクい)
お互いがお互いを思う故、あのような結果に終わってしまった「伝」の世代、「航」の世代、そしてその連鎖を断ち切ろうとする徹と大地の葛藤。
ラストのあの展開には、賛否両論出そうなのには納得。ただ、あえて描かない選択をした事について、私は好意的に受け止めています。読者の心の中で続きが展開していけば良いのでは、と。
蛇足ですが、せっかく地学部なんだから、もっと石の種類出して貰えると、石マニアとしては嬉しかったかな…w -
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ネタバレ読み始めた時は、心が躍るのをとめられなかった。
石に宿る 遠い過去を生きた人の記憶。
このモチーフだけでも展開に強く思いを馳せてしまう。
さらに冒頭の地学部の部室がある旧校舎の描写や
登場人物がとても魅力的で 期待が高まった。
しかし後半は急ぎすぎたのだろうか。
しっくりこないままで終わってしまった。
伝と良治の繋がりはとても強い。
第三者の立場で見ていても 良治のしたことを
伝が恨んでいるとは思えなかった。
仮に恨んでいたとしても そのことを
後悔しているはずの良治の記憶が
そこから逃れたいと思っているとは
やはり考えられなかった。
むしろ あえて伝の前に進み出て
ひれ伏して詫び