あらすじ
ある日、萬朝報に載った『記憶に自信ある者求む』という求人広告。昔から見た物を瞬時に覚えてしまう力に長けた博一は、養父の勧めもあって募集に応じ、見事採用となった。高い給金を受け取りながら、大学教授から記憶力の訓練を受けていた博一だが、あるときから教授と全く連絡が取れなくなり、友人の高広に相談を持ちかけたところ――(表題作)。明治の世に生きる心優しき雑誌記者と超絶美形の天才絵師、ふたりの青年の出会いをはじめ、明治の世に生きる人々の姿を人情味豊かに描いた5篇を収録した作品集。〈帝都探偵絵図〉シリーズ第2弾。
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Posted by ブクログ
シャーロック・ホームズが縁で知り合ったふたり、という前提を思い出させるような第2巻。
1巻同様にふたりが中心となった日常の事件を解決していくのかと思いきや、1巻で登場した人物の視点で描かれる作品あり、時系列の異なる作品ありで動きがあって面白い。
まだ親しくなる前のふたりも描かれるこの巻で、恵少年から見た「そばで見ていても眩しいくらいの信頼関係」というふたりの距離感も描かれるのが面映ゆくて良かった。
どの話も良かったけれど特に印象に残ったのは『生人形の涙』かな。あえてすべてを描かず余韻を残す結末。
時間の流れと信頼や絆を感じさせるお話がまとまっている巻だなと思う。
Posted by ブクログ
高広と礼の出会いの話とか高広の義父の話など時系列的には前作よりも前の話が入っていたり、恵の話は時系列的には前作よりも後のものなど入っていたりと、時系列は飛びますが、あまり気になりませんでした。
特に高広の義父の話や恵の話は殆ど高広は出てこなかったりするのですが、私は高広や恵が出てこない事にイライラする事なく、楽しく読めました。
二人の出会いの話はさりげなくて、あとがき読んで気がつきました。そう思って読むと、確かに、出会いです。そう思うと、ちょっと変な感じのした場面がキラキラするので不思議です。
『人形遣いの影盗み』も読みたいのですが、なかなか見つからない…店頭じゃなくて、ネットで探した方が良いのかなぁ?
Posted by ブクログ
高広と礼がメインの物語も面白かったけど、高広の義父の若かりし頃の――危機に陥り、さらにはその刃を突きつけてくる相手に指摘されるまで、よし乃への自分の気持ちに気付かない、生真面目ぶりというか鈍ちんぶりがとても愛しく感じました。初めて出会ったとき、陽の光が射して思えた…なんて、素敵な一目惚れですよね。恵のその後のお話も――学生時代って、本当に何にも変えがたい時代だなぁ…と。よき友よき仲間たちと、謳歌してほしいと思いました。
Posted by ブクログ
恵と、その友人幸生の物語が一番好きかな。
全体的に、優しい風がふいているような物語群。
でも、この人の文章・・・私、時々見失いそうになるんだけど、
私の読解力が低すぎるのかな?
よく、遡って読みかえしている^^;
Posted by ブクログ
話は相変わらず面白いし、雰囲気も好きなんですけどやっぱり文章がちょっと読みづらいなあというのが残念です。
でも登場人物は皆魅力的で、好きです。
Posted by ブクログ
前作のぎこちない感じが抜けて、いろんな視点からの帝都ミステリー。
あんまり深刻にならないのは良さかな。とっても人情的。
前のを読んだときは現代ミステリ寄りだと思ったんだけど、古い用語を使い倒した回りくどさが時代小説っぽい。でもまだ次作も読みたい。
Posted by ブクログ
てっきり主人公固定と思いきや前作と違い主人公と時系列が1話毎に変わるので、また違った面白さがありました。巻末の解説にもありましたが、里見&有村シリーズではなく帝都探偵絵図だから帝都の人ならだれでも主人公になりうるって感じなんですかね
Posted by ブクログ
静謐で、それこそ竹のようにすっと背筋を伸ばして
凛と冷えた空気が流れ
小説って作者による音楽がずっと奏でられているものだけれど
このシリーズでは音のない音楽があって
登場人物の動作による音しかきこえない。
あと風景の音と。
風であったり舗装されていない土の上をゆく足音や
大八車、紙に鉛筆を走らせる音、
ため息や白菜の芽が顔を出す音。
気持ち良い男たちによる清々しい物語。
やっぱ好きだなあ、このお話たち。
そう、意外に礼ってかわいいらしいんだ。
聞き耳たててたんだね。
Posted by ブクログ
シリーズ2作目。
今回のテーマは親子の恩讐という感じか。
文庫化で追加された5話以外は親子関係が物語りに深く根ざしている。
『世界記憶コンクール』
一目見ただけで文章を覚えることが出来る質屋の息子。
父に勧められ、新聞広告の求人に応募し記憶力を鍛える訓練を受けるが、その内容がいかにも怪しく雑誌記者の高広に相談を持ちかける。
ホームズの『赤毛商会』を下敷きにしている。
2組の親子を通して子を思う親の心も表現されていて味のある話である。
ミステリとしてはうまくいきすぎか。
今回は1巻と時系列が逆転している2話が収録されていて
『氷のような女』は高広の義父基博の話、
『生人形の涙』は高広と礼の出会い。
『氷のような女』
製氷とその販売が行われるようになった明治初期、安全基準に満たない悪水氷流通の黒幕を高広の義父基博が探る。
基博は高広よりも一枚も二枚も上手なひとである。
ほのかに恋愛要素もあり。
『生人形の涙』
かつて日本に滞在していたイギリス貴族が若かりし頃遭遇した”動く人形”の謎と、
30年後の(この本で言う)現在、貴族の勲章を盗んだ相手を見つけ出し、在り処を探り出すという2つの事件を高広が解決する話。
動く人形の謎は切ない展開。
ハッピーエンドかは微妙なところ…。
現在の話はこれまたホームズの『ボヘミアの醜聞』に着想を得ている。
動く人形のトリックを使って隠された勲章を探すという繋がりはおみごと。
相変わらずうまくいきすぎだけど。
『黄金の日々』は第1作で出てきた少年が主人公となり謎解きをする変り種。
違った視点で面白かったものの、犯人を疑った理由がちょっと切ない。彼はいつか報われるのだろうか。
『月と竹の物語』
白昼堂々小間物屋のディスプレイから金塊を盗んだ犯人を探す。
文庫化で追加されたエピソードで短いお話。高広の礼への愛を垣間見る回。
礼はかぐや姫ですか、そうですか。
確かに美しく、高広に謎解きとホームズの新作の翻訳をねだる姿はかぐや姫でございます。
今回礼の影はかなり薄い。
シリーズ全体としての動きは緩やかである。
ミステリとしては平凡だけれど物語としてはよい。
今回から各話に表紙がついたのがよかった。
Posted by ブクログ
謎の背景には、親子の絆。
お得意の分野、明治+美形+ホームズ&ワトソン。〈帝都探偵絵図〉シリーズの第二弾。とはいえ、実は小説で読むのは初めて。会話中心で読みやすかった。主人公コンビである雑誌記者の里見高広と美貌の天才絵師有村礼が直接かかわらない話もあり。何組かの親子が出てきて、それぞれの関係がある。優しいものも、厳しいものも。親が子を、子が親を、思っている、だけではない。でも全体的な雰囲気は、優しく、後味もよい。
「第一話 世界記憶コンクール」まさに「赤毛組合」でした。似たような条件が揃ったらわくわくしちゃう有村先生の気持ち、わからんでもないホームズファン。
「第三話 黄金の日々」過去の事件の関係者・東京美術学校予科の森恵と、その学校で出会った西洋風の顔立ちの同級生・唐澤幸生。これまた主人公コンビとは違うけれど、興味深い二人。西洋の血を引き、養父に有名な陶工を持つ、しかし家族の縁には薄い幸生。二人に共通するのは、彫刻への愛情と、家族への複雑な想い。でもきっと情熱を注げるものと、一緒に精進する仲間が、二人を守ってくれる。
ホームズ&ワトソンっていうと、ホームズ(=探偵役)が傍若無人の天才肌っていうイメージになりがちだけど、高広はむしろ礼のために(そして関係者のために)事件を解いている感じがあるよね。優しいホームズは苦労するんだろうな、と。