吉田敦彦のレビュー一覧
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ソポクレスの『オイディプス王』についてより深く知ることができた。また、分かりやすい解説のおかげで『オイディプス王』の面白さや真髄を発見できた。
「ペリぺテイア(どんでん返し)」と「アナグノリシス(発見)」が優れた物語にはあるということを知り、確かにと思った。人気のある漫画や小説には必ずある要素だと気づくことができた。
現代でも通用する物語の構成に必要な要因が、何千年も前に規定されていたということがしみじみと凄いと思う。
スフィンクスの謎かけの答えである「人間」に関する考察に目が覚めるような心地がした。特に四本足に関する言及だ。
四本足とはすでに人間以下である四本足の獣と同等の本質を兼ね備え -
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日本人の精神がどう西洋の精神と違っているのか分かりやすく解説されている。
「これから二十一世紀に世界の人々が、不必要な争いをせずに仲良く共存しながら、どのように生きどんな世界を作って行かねば成らならぬかを考えるために、意味と価値をあらためて見直す必要がある、とても大切な知恵が含まれていると思えるのです。」
と表紙に小さく書かれている。
日本神話にはあり得ないことができたり、信じられない見た目だったり、びっくりするような多様な神様がいる。それぞれが役割を果たして日本を作ってくれた。
我々現代人だって、他者の尊重とか共存が大切ということくらい理解している。しかし、実践できていない。自然、人間 -
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正直、薄いので期待していなかったが、いきなりやられた。
直前に読んでいた大林太良著「日本神話の起源」で、
日本の文化がいろいろな文化の影響を受けた「るつぼ」(236頁)と紹介されていた。
しかし、私の個人的感覚では「吹き溜まり」なんだよなぁと思っていたところ、
まさに最初の部分でその言葉があった。
そうそう、「るつぼ」という言葉の持つ混沌や熱気よりは、
地理的条件で受動的に寄せられてきましたという「吹き溜まり」の方が、日本文化の形容にはぴったりくる。
内容がうまくまとめられて、かなりわかりやすかった。
他の本で読んだ「日本の神話には、世界各地の神話が含まれている」という説明が、決して大げさで -
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日本の神話がギリシア神話などに似ていることが書かれていると知り、手に取る。本当は「日本神話の起源」を読もうと思ったのだが、同じ作者で新しい本があったのでこちらを手に取った。
日本は昔から物流の末端として位置していて、物とともにお話も伝聞で伝わってきているというようなことを各所に残る神話や昔話とともに解説してあった。ギリシアだけではなく、北からの影響、点在する島と潮の流れに沿った南からの影響と三方向からの影響を受けており、「吹溜まりの文化」として形成されてきている。南方の文化との比較の方があまり意識したことがなくて特に興味深かった。ハイヌウェレ神話というもの、それを具現化したような文化があまりに -
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ギリシア神話の中でも特に有名なプロメテウスと、オイディプスの悲劇を、時代順にテキストが書かれた社会の状況とともに詳説しています。
「入門」となっていますが、神話のあらすじに終始せず、多義的な語彙の解説などテキストの読みに踏み込んだ記述もあって、読み応えがあります。
古典ギリシア語やギリシア神話の解釈について知識のある人にも新しい発見があるのではないでしょうか。(わたしは不勉強にして、著者の解釈の妥当性・新しさはよくわからなかったのですが、たぶんきっとすごいに違いないと思います。)
ただ・・・「入門」としているので仕方がないのかとは思いますが、語彙の解説をするとき、ギリシア語をカタカナで書くのは