あらすじ
太平洋の海洋文化圏、中国・朝鮮半島の遊牧・農耕文化圏、北方狩猟文化圏と接する日本列島。先史時代より、いくつもの波のように日本に到来した人々がいた。我々のルーツはどこなのか。日本神話は、東南アジア地域ばかりか、印欧語族の古神話と、同一の構造を備えていることも明らかになった。日本神話の起源・系統、その全体構造や宗教的意味を、比較神話学で徹底的に解読する。(講談社学術文庫)
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Posted by ブクログ
正直、薄いので期待していなかったが、いきなりやられた。
直前に読んでいた大林太良著「日本神話の起源」で、
日本の文化がいろいろな文化の影響を受けた「るつぼ」(236頁)と紹介されていた。
しかし、私の個人的感覚では「吹き溜まり」なんだよなぁと思っていたところ、
まさに最初の部分でその言葉があった。
そうそう、「るつぼ」という言葉の持つ混沌や熱気よりは、
地理的条件で受動的に寄せられてきましたという「吹き溜まり」の方が、日本文化の形容にはぴったりくる。
内容がうまくまとめられて、かなりわかりやすかった。
他の本で読んだ「日本の神話には、世界各地の神話が含まれている」という説明が、決して大げさでなかったことがよくわかる。
現代社会で先進国といわれる日本で、
鹿の模型を射て、その中に納めた食物を食べるという祭りが、
伝承されており、
ハイヌウェレ型神話(かなり残酷な形で具現化されることこともある)、そのまんま、という不思議さには、本当に感心した。
日本は、渡ってきた文化をどういった基準で選択してきたのか、
同一感を何によって保っているのか、
まだまだ謎はつきない。
Posted by ブクログ
日本の神話がギリシア神話などに似ていることが書かれていると知り、手に取る。本当は「日本神話の起源」を読もうと思ったのだが、同じ作者で新しい本があったのでこちらを手に取った。
日本は昔から物流の末端として位置していて、物とともにお話も伝聞で伝わってきているというようなことを各所に残る神話や昔話とともに解説してあった。ギリシアだけではなく、北からの影響、点在する島と潮の流れに沿った南からの影響と三方向からの影響を受けており、「吹溜まりの文化」として形成されてきている。南方の文化との比較の方があまり意識したことがなくて特に興味深かった。ハイヌウェレ神話というもの、それを具現化したような文化があまりにも生々しく、印象に残った。また、単語だけ知っていた「ナルト叙事詩」も日本神話に多大な影響を与えていると知り、初めて聞いた「スキュタイ神話」等とともに、吹溜まりを意識しながら神話の本や文化の本を読んでみたいと思った。
Posted by ブクログ
一気読み。現在日本列島に暮らす人々の祖先や言語については分子人類学等々の研究があり、最近も国際研究チームがNatureに寄稿していたので、これはもはや古いかもしれないけど、吉田先生のテンポとキレ味のいい文章の語り口がとにかく面白いです
Posted by ブクログ
日本の文化・神話は吹き溜りによって形成されており、天岩屋戸〜天孫降臨に見られる支配者/被支配者の関係性は印欧神話から輸入されたイデオロギーだという説。面白かった。
世界は最初からグローバルだったのかもしれない。と思った。
ともかく、吹き溜りの国という表現が気に入った。
Posted by ブクログ
日本神話と南洋地域との共通性は面白かった。
古事記、日本書紀は朝廷が権威付けの為に編纂したものだろうけど
それよりも古来から伝わる口承なんかもたくさん取り入れたんだろうなぁと思う。
ギリシャとの共通点はよく分からなかった。確かに編纂時期より少し後に天平文化なんかもあるし。伝わってきたのかあるいは。
Posted by ブクログ
古事記とギリシャ神話に似たような話があるのはなんでだろう?と思っていたところ見つけたぴったりな本。
海外の神話の概要が紹介されていて、違う国でもその文化の根底に日本の神話と似たような神話があると思うとおもしろい。
とはいえ、例えばなぜ桃が聖なる果実とされてるのか?みたいはそういう神話の細かいパーツに対しての疑問は解消されないので、今度はそのあたりがわかる本を探そう。
Posted by ブクログ
日本の神話が、近く朝鮮や中国だけでなく、南方諸島やまた北方の遊牧民族の神話との共通点が見られることがわかった。しかし実際にどのようにして伝わっていったのか。交易や民族の移動?その伝播ルートや方法に興味を覚える。
Posted by ブクログ
比較神話学の立場から、日本神話の起源について考察している本です。
著者は、日本神話のなかの海幸彦と山幸彦の話や、オオゲツヒメが食物を生む農耕の起源に関する話などが、南洋の神話と共通点をもっていることを指摘し、中国江南地方にそのルーツを求める見かたを示しています。その一方で著者は、イザナギとイザナミの黄泉の国の話が、ギリシア神話におけるオルフェウスが冥界に赴く話との共通性を指摘し、スキタイ神話や朝鮮の檀君神話などとの比較を通して、アルタイ系遊牧民を仲介する印欧語族の神話とのつながりを見いだせると主張しています。
さらに著者は、デュメジルの比較神話学の観点から、日本神話と印欧語系諸民族の神話のあいだに個別的な共通点が見られるだけではなく、それらを統一的な神話へと組織するイデオロギーに共通の特徴が見られることを明らかにしています。
河合隼雄も神話の比較をおこなうことで、日本神話のうちに「中空構造」という性格を見いだし、ヨーロッパ諸民族の深層心理との対比的な側面を強調していましたが、そこには母性社会と父性社会という河合独自の文化論が反映されていたように思います。これに対して本書は、デュメジルの神話学が下敷きになっていますが、日本神話の源流を印欧諸民族の神話に求めるのではなく、その構造的な類似性に注目することも可能だったのではないかという気がします。