加藤徹のレビュー一覧
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西太后の人生に触れるだけでなく、清の国の統治のあり方、何故、日本と比べ、近代化が遅れたのか等、筆者の個人的見解も含めて踏み込んだ考察もあり、学ぶこと多し。
以下引用~
・「選秀女」は、清朝独特の后妃選定制度である。
秀女とは、皇帝の妃や側室の夫人の候補のことである。清朝では、適齢期の旗人の少女たちの集団面接を皇帝自らが行い、秀女を選んだ。
・臣下どうしを対抗させ、臣下の勢力を分散すること。これは中国の政治の常道であった。毛沢東が鄧小平を失脚させたのち復権させたのも、みな同じ理由である。
・西太后にとっての権勢とは、ずばり崇慶太后の再来になることに尽きた。彼女の夢は、息子の同治帝が無事に成 -
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小飼弾氏の「新書がベスト」でおススメされていなかったら手に取る事も無かったですあろうが、非常に良かった。
中国の歴史を俯瞰し、中国人の精神構造、政治、日本との関係等についてとても分かりやすく書かれてある。またここに書かれてある内容は、私個人の中国・中国人との交流における経験とも一致する。
何だかんだ言っても日本と中国は歴史的に1番長い関係にある。近代化の流れの中で必ずしも同じ価値観を共有出来なくなってしまった。今でもそのギクシャクした関係は残っているが、相手の事を理解して大人同士の交流をスタートさせるための手引書として非常に優れていると思う。
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加藤徹『貝と羊の中国人』(新潮新書)は、新しい観点が豊富につまった中国人論。
民族とは2つの異質な集団がぶつかりあって生まれる例が多いとしたあとで、中国もまた平原の農耕民である「殷」と、西域の遊牧民族である「周」の衝突によって「漢民族」ができたと指摘。そのうえで「貝」=多神教的な「殷」の文化=実利を重んじるホンネ主義 「羊」=一神教的な「周」の文化=義を重んじる建前主義 と整理。金儲けと共産主義の共存する中国の複雑さを、この「貝」と「羊」を使い分けに求める。まさに「一筋縄ではいかない」中国人のしたたかさを、すこーんと腑に落ちるように説明してくれているなぁ。なんか、すっげぇ使えそう。
他に -
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『貝と羊の中国人』(新潮新書)がよかったので続けて読んだが、これが全編あますところなくおもしろかった。「日本」とか「日本文化」が成立するうえでの「漢文」の役割を、漢字伝承の昔からさかのぼって検証していくというスタイルだが、トリビアのカタマリとも読める。
そもそもヤマト民族は、漢字文化を吸収するで「日本人」になった。「日本」という呼称自体が和語ではなく、日本人の価値観そのものが漢文から多大な影響を受けている。
考えてみれば今自分たちが使っている現代日本語の語彙のうち、「和語」の割合は「漢語」に及ぶべくもない。日頃あまり意識しない「日本」の輪郭、日常なにげなく使っている「日本語」の別の顔が、 -
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『中国人とはなんぞや』
を語るには、自分たちの生活体験からかたっても・・・
なかなか、中国は見えない。
というか・・・中国は語れない。
ニンゲンであることは、変わりない
と最近はよく思う・・・。
この『貝と羊の中国人』は、
歴史をさかのぼり・・・
中国の深奥にまで踏み込み(私もだいぶ踏み込んできているが)
中国の国の本質をまるごと大きくとらえる。
ことをしている・・・本である。
それが・・・簡単に言うと『貝と羊』だという・・・
この大胆さ・・・シンプルさに
アッと驚く・・切り口が新鮮だ・・・
あつかましい中国人、騒々しい中国人、不思議な中国人
というより・・・
中国人は、『貝と羊』だ。と -
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読みやすくて、おもしろかった!
気になったことをメモメモ。
・中国の美意識・・・一極集中だという。なるほど。
・海外に流出する中国人。リスク分散のハシュ(←携帯で漢字が出なかった)本能で、どこかがやばくなったら、そうではない親族のもとに逃げるという考え。
・「自分たちは先祖と同じ民族」
・日本は江戸基準 中国は清朝基準
・歴史的な経緯で染み付く、身体感覚・・・トラウマみたいなものか。過去こういうことがあったから、それを避けようとする。今読んでいる『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(加藤陽子)にもそういうことが書いてあったなぁ。感情と感覚。・・・あれ?感覚と感情?
・日本化する -
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「西太后」は「せいたいこう」と濁らずに読むのが正式な読み方だそうだ。まず最初にそこを確認しておきたいところだ。
筆者は前書きにおいて、本書の目的として「従前の誤った俗説や偏見を排し、彼女の生涯の真実を浮き彫りにすることにある」と宣言しているとおり、「稀代の悪女」というイメージを払拭する内容となっている。私はこの本のよって、西太后のイメージはいかに作り上げられた話や俗説などによって歪曲され、現実とかけ離れたものになっていることに気付かされ驚いた。確かに彼女は独裁者ではあったが、政治的に全く無能だったわけではない。結果的にかもしれないが、西太后こそが近代中国への扉を開いたといえるという。特に -
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かなり面白かった。
知ってるようで知らない隣人のこと。
彼らが血縁を大事にするのは、
中国の歴史が国家的な大虐殺が繰り返されてきたから、
「国」というものを信頼していないところにあるらしい。
これはユダヤ人も似たようなところがある。
ユダヤ人は国を持たないけれど、
代わりに律法というもので共同体を維持している。
このあたりは「私家版ユダヤ論(内田樹)」に詳しい。
ぼくの知識はだいたい内田樹先生の引用である。
さてさて、
日本語と中国語の違いというのも興味深く、
実例として「彼は嬉しい」という一文を出していて、
日本語では「彼は喜んでいる」「彼は嬉しがっている」とは言 -
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「この停滞感に満ちた日本の現状を打破するには、強力なリーダーが必要だ」
最近では、上のような物言いは、もはや誰が首相になっても耳にするようになった。
私などは、首相に選ばれるたびにいちいち西郷隆盛とか、高杉晋作とかの明治の英傑と比較されてむしろ可哀想だ、と感じる。
だって皆薄々感づいているのではないだろうか?平成のこの世に、坂本龍馬はもう現れない、ということを。
何故現れないのか、という話になれば、それは平成の政治家と明治の英傑との違いは何か、を考えなければ始まらない。
多年の熟考の末、私は近年、それが「漢文の素養」の有無なのではないか、との仮説に至った。
そこで、そのまんまのタイ -
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本書から得た内容から判断して歴史としてカテゴライズした。
自分としては基本的に「国民性」という概念に少々懐疑的な気持ちを持っている。間違いなく多様性が増して来ている最近の世界において、特定の民族に「このような特徴がある」と単一的に論じる事はできないと考えているからだ。この考えはある程度正しいと思われるが、逆の考えが成り立つ訳でもない。そういった中で民族を理解する上で歴史から学ぶ事は非常に重要な事となってくる。
著者は中国文化、とりわけ演芸が主な研究らしいが中国の歴史についてかなり詳しくまとめられている印象を受けた。また著者独自の解釈が本書の通じてしっかりしているので非常に読みやすい一冊である。