【感想・ネタバレ】後宮 殷から唐・五代十国までのレビュー

あらすじ

歴史は、夜にこそ動く。三千年以上も存続に成功した国家システム。
巨大な密室から歴代王朝を見た、ありそうでなかった類書なき中国史。上巻は古代から五代十国まで。

歴代王朝は後宮制度を改良し続けた。
中国的な後宮はハレム等と違い、中国の歴代王朝にしか存在しない。「国」と「家」、公的な外廷政治と密室的な内廷政治の二本立てという中国式国家システムは、三千年以上も存続に成功した。中華帝国の本質は後宮を見ることでわかるのだ。この巨大で濃密な人間関係の装置の中で、男たちと女たち、そして宦官という「第三の性」は、どの様な生きざまを見せてきたのか?
■当初、宦官は去勢とは無関係だった
■秦の趙高は宦官だったのか疑わしい
■中国史上初の皇后は、始皇帝の妻ではなく、前漢の高祖劉邦の正妻・呂后
■呂后の暴力が宮廷を出ることはなかった
■前漢時代、同性愛こそが自由恋愛だった
■五回廃位され、六回皇后に返り咲いた西晋の羊皇后
■宗族というインフラ抜きに中国史は語れない
■美女は人間兵器だった
■皇帝の姉妹は後宮に女性をすすめる役目だった
■実子を殺した北魏の霊太后
■隋の独孤皇后、事実上の一夫一婦制を行う
■中国の帝王学の要諦は分割統治である
■士大夫、宦官、外戚のトリレンマ
■日本での後宮のイメージを決定づけた楊貴妃

【目次】
序章 後宮とは何か
第一章 太古から秦帝国まで
第一節 夏・殷・周
第二節 春秋時代
第三節 戦国時代と秦帝国
第二章 漢の後宮
第一節 前漢初
第二節 前漢中期
第三節 前漢末
第四節 後漢
第五節 三国時代
第三章 大分裂時代の後宮
第一節 西晋
第二節 五胡十六国と南北朝
第三節 隋
第四章 唐の後宮
第一節 初唐
第二節 盛唐
第三節 晩唐
第五章 五代十国時代

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Posted by ブクログ

皇帝が統治する古代中国王朝の歴史を、外たる朝廷と内たる後宮が相互に影響を及ぼしながらつくられるものという観点から、皇帝や廷臣がいかに後宮を制御しようとし、それが性欲、権力欲という強大な人の業の前に繰り返し敗れてきたかという流れを見ることができた。また、陳舜臣先生の作品に関する言及があったのが良かった

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2025年10月31日

Posted by ブクログ

非常に読みやすく、わかりやすいお話の展開で中国史の一面を見ることができます。特に三国志のあたりはよく知られた話なので、イメージが湧きやすいのではないでしょうか。

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2025年11月02日

Posted by ブクログ

後宮を中心に据えて夏・殷・周から五代十国までの歴史を描いた中国の通史。流石に今から中国史を学ぼうという人は本書を選ばないだろうという前提だろうか、古代中国通史で絶対に語られる人もほぼスルー。項羽も名前ごチラリと出る程で、唐の太宗李世民と必ずセットで語られる貞観政要も触れない程、割り切って書かれている。裏側から見た中国史という趣があり、ある程度中国史に馴染みのある人には面白く読める一冊。中国史あるあるの「繰り返し」は後宮の世界でも同じ。面白みというか諸行無常感を感じる。間も無く刊行される次巻の「宋から清末まで」も楽しみ。

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2025年09月30日

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