あらすじ
財、貨、賭、買……。義、美、善、養……。貝のつく漢字と羊のつく漢字から、中国人の深層が垣間見える。多神教的で有形の財貨を好んだ殷人の貝の文化。一神教的で無形の主義を重んじた周人の羊の文化。「ホンネ」と「タテマエ」を巧みに使い分ける中国人の祖型は、三千年前の殷周革命にあった。漢字、語法、流民、人口、英雄、領土、国名など、あらゆる角度から、斬新かつ大胆な切り口で、中国と中国人の本質に迫る。
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Posted by ブクログ
当たり前のことではあるが、中国人と日本人は違う。顔つきや肌の色は似た黄色人種で二者共に漢字を操る民族であっても、考え方も言葉も多くは異なる。誰も疑いようない事実ではあるが、最近化粧や食べるものが近づいてきた(グローバル化による均一化)せいなのか、黙っていればどちらが日本人か中国人か見分けがつかない事もある。気候までも日本と近いからなのか、沖縄出身の方は見分けても中国人の方を見分けられないことさえある。だが違う。
本書は中国に暮らした筆者が、日本人との違いについて中国人の成り立ちから辿っていく一冊である。タイトル「貝と羊」は中国人の気質をよく表した言葉だ。貝は農耕が生み出した余剰生産物を貨幣を用いて売買する所から、お金や経済を表す。殷の時代にそれらは発達したから殷人的。羊は読んで字の如く狩猟や遊牧を中心とした生活で周の時代、周人的な側面を表す漢字だ。
中国という国は長い歴史の中でたくさんの周辺民族が侵略し治めてきた土地だ。各年代、王朝によって様々な考え方や暮らし方、文化が発達し、それに応じた知識人や権力者が集まり様々な色合いに発展してきた土地だ。四千年の歴史とはいえ同じ王朝が長く続くことも少ない。今の中国に至っては僅か80年にも満たない歴史しかない。その様な変化の激しい国だからこそ、土地への繋がりも疎遠で他者との繋がりも深くならない。
その様な国が我が国の隣にあるのだ。私は中国はプライベートもビジネスも何度も訪れて、人の多さには驚いたが、食べ物も人も良くて世間一般で言うような悪いイメージは持っていない。国内にも中国人の知り合いは多数おり、皆、日本人の友人同様に良い人たちばかり、何よりビジネスやお店で出会う中国人は皆働き者だ。そんな中国と日本は頻繁にすれ違いを起こす。政治の問題は靖国訪問、台湾や沖縄、原発処理水放出は日本からの魚貝類農産物の輸出に大ダメージを与えるような問題が山積している。すれ違いは今はまだ殴り合いの喧嘩に至っていないが、対話・沖縄・尖閣問題はいつ武力衝突に発展しないか緊張状態が続く。まさかお互い手を出すことはないだろうとたかを括っている人も多い。だが歴史を振り返れば、そうした国民性の違いやひょんなすれ違いから何度も戦火を交えてきた。元寇然り日中戦争もたったこの数百年の間に衝突している。
先ずはお互いの国民性の違いは認めなければならない。生まれも育ちも経験もまるっきり違う2つの国家が分かりあうためには互いの歴史に学ぶのが一番である。その知識なしにニュース報道やネット動画に悪戯に踊らされ、面白がっていると、そのうちに引き金は引かれるだろう。
中国人が本音と建前を貝と羊の様に使い分け、どんな変化の中でも逞しく生き延びてきた事を忘れてはならない。そして我々日本も太平洋戦争の惨禍から劇的に復活を遂げた民族だ。2つの強力な民族同士が心の底から相手を信じ、笑って手を取り合える時代がいつか来る。そう信じて本書を閉じる。
Posted by ブクログ
自分は中高時代の歴史の授業で、第二次世界大戦の辺りの教え方にだいぶ違和感を抱いていた。
そこにはもちろん、あの戦争に関する「全て日本が悪うございました」という姿勢に対する情けなさや怒りもあったけれども、かといって、2chなどにある過激な反中的言説にも共感できかねた。
あまりに勧善懲悪的すぎるじゃないか、世の中そんなにシンプルではないんじゃないか、もとをただせば、そういう種類の違和感だったからだ。
こうした違和感の大本はたぶん三国志から得たのだと思う。
というのも、三国志という歴史を眺めてみると、歴史というのは嫌でも政治的にならざるをえない側面というか、それを余儀なくされる面があるんだとも思ったからだ。
魏と蜀いずれが正統かという問題は、結局のところ政治的なテーマとならざるをえない。
連合国と枢軸国、いずれが正義かといった問題も、その勝敗の影響を免れない(言わずもがな、その行為を正当化するわけではございませんよ。連合国を正義とし、枢軸国を悪とする見方をもってしても、原爆投下は非難されるべきでしょう)。
かといって、歴史教師の立場もやはりよろしくないし、それに2ちゃんねらーの所見はもはや顧みるまでもなかった。
そうした自分の中の「極端な考え方ではないけれどもかといって居心地のいいわけでもない」状態、このモヤモヤした状態を何よりもスッキリさせてくれたのはこの本だと感じている。
歴史を政治から解放してくれたわけではないけれども、しかしだいぶその固執からは逃れていると思う。優れた文明論。
Posted by ブクログ
良書。中国人を理解するということ、異文化を理解すること、歴史に学ぶとはどういうことか、これらを全てを学べる本。
トピックへの切り口も多面的で興味をそそられるものが多い。
中国を理解するにあたって、読んでおきたい本。
Posted by ブクログ
貝と羊は本音と建前。国土の広さゆえの自分のテリトリーの広さと領土問題。よくよくわかっていないとお互いに誤解を招きそうだ。6千万人の人口の壁による王朝の崩壊の繰り返し、士大夫という歴史の黒幕など面白い考え方だった。分量は少なめで、非常にわかりやすくコンパクトにまとめられていて、とても読みやすかった。
Posted by ブクログ
-2006.09.12記
京劇が専門だという著者、加藤徹の「貝と羊の中国人」新潮新書。
任期満了でやっと退陣する小泉首相の靖国参拝への頑なな執着で、この数年、中国からの批判がずいぶん過熱したものだったが、その中国の開放経済による経済成長至上主義と、一党独裁の官僚的支配に過ぎない共産主義が矛盾しないで同居できる不思議を、中国史に詳しい著者が、古代より連綿とある貝と羊の文化の対比で読み解いてみせるが、その手際はなるほど判りやすく、時宜にも適った書で、ひろく読者に受け容れらるだろう。
中国の有史は殷・周にはじまる。ほぼ3000年の昔、中国東方系の民族であった殷と大陸西方系の民族の周がぶつかりあって、現在中国・漢民族の祖型を形成してきた。殷最後の紂王を周の武王が倒し、周王朝が樹立されるのが、殷周革命(殷周易姓革命)だ。
殷は農耕民族系であり、早くから流通経済が発達、子安貝を貨幣に用いていたという。王朝を「商」とも呼び、人々は「商人」とも自称していたというほどだから、商業的気質に富み、商人文化を発達させる。宗教も多神教で、神々はいかにも人間的な存在となる。この殷人的気質や文化の傾向を、著者は「貝の文化」と呼んで類型化する訳だ。
他方、周は遊牧民族系に属し、厳しい自然とたえず対決しながら暮らす生活習慣は、「天」は至上となり、唯一至高の絶対神となる。人々もまた理念的・観念的傾向を帯び、主義を重んじ、善行や儀礼に無形の価値をおく。著者はこの周の文化を「羊の文化」と名づけ、対比的・対照的な二つの系譜が、3000年の歴史を陰陽に脈々と受け継がれ、現代中国の国民性をも規定しているという著者はいい、中国の分かり難さは、この構図をもって読み解けというのである。
余談ながら、後の春秋時代に登場した孔子は、この周の文化伝統を重んじ、その復興を提唱し、「儒教」を創り上げたのだが、その孔子自身は遠く殷人の末裔だったというから、中国文化の深層を読み解くうえで象徴的なエピソードだと、紹介されているあたり面白い。
私にとって印象にのこる知の発見は、中国問題からは逸れるが、江戸時代の佐藤信淵がすでに説いていたという近代国家日本の帝国主義的戦略のシナリオだ。以下はほぼ著者記述のまま書き置く。
文政6(1823)年、農政学者の佐藤信淵(1769-1850)は、「混同秘策」という本を書いた。別名「宇内混同秘策」とも呼ばれる。この本の中で、佐藤は、日本が世界を征服する青写真を示した。まず江戸を東京と改称して「皇国(日本のこと)」の首都とし、幕藩体制を廃止して全国に道州制を敷き、天皇中心の中央集権国家を作る。そして、まず「満州」を征服し、それをかわきりに「支那」全土を征服して、世界征服の足がかりとする。そのいっぽう、フィリピンやマリアナ諸島にも進出し、日本本土の防備を固める。そして、彼が「産業の法教」と称する神国日本の精神によって、世界各国の人民を教化し、全世界(宇内)の大統一(混同)という大事業を達成する‥‥、と。
明治維新から1945(S20)年の敗戦までの日本の国家戦略は、佐藤信淵の「混同秘策」の構想を、ほぼそのまま実行したものだったということになるが、著者によれば、この「混同秘策」の書は、戦前は各種の版本が出版され、国民のあいだでも広く読まれていた、とされ、石原莞爾が昭和初期に提唱した「世界最終戦論」も「大東亜共栄圏」の構想も、江戸時代のこの「混同秘策」の思想の延長線上にある、という訳である。
Posted by ブクログ
著者が語る中国観を日本と比較したり、事例をふんだんに使ったりと、非常に分かり易く説明されており、これまで色々中国紹介本を読んできましたが、一番人に薦めたい本かなと思います。
これからも付き合う必要がある以上、彼らの考え、彼らの力強さの源をこの本を振り返りながら知っていきたいなと。
Posted by ブクログ
中国と関わりのある人は、必読です!
「中国人の暗黙知」、中国人の語るタテマエとかくされたホンネをわかりやすく解説した本です。
同著者の「本当は危ない『論語』」もおすすめです
Posted by ブクログ
殷の文化と周の文化の融合が、後の中国人(現代も含めて)の価値観の土台となったという説をベースに進む。
随所に現れる、日本との比較が大変興味深い。
「東アジア」について考えさせられる一冊。
Posted by ブクログ
中国の歴史や現状を人口、地理などさまざまな側面から分析しており、20年前に書かれた本なのでちょっと古い部分もあるが、なるほどと思うことがたくさんあった。三国志ネタもあり。
個人的には中国語を勉強しているので、第三章「中国人の頭の中」が面白かった。中国人の考え方がわかると中国語の理解にも大変役立つので興味深い。
匿名
大掴みに中国という国、中国という社会、中国人という人々のことを説明しようとする本書。タイトルにある貝と羊の対比はおもしろく、この部分をもっと掘り下げて書いてほしかったかな。
中国に「羊の論理」を持ち込んだ北方の遊牧民の存在を常に念頭に置いて、中国の歴史を考えて、現代中国を捉えてみでもいいかもしれない。
Posted by ブクログ
中国の文化を殷周の違い、貝と羊から書き起こし2000年代まで中国人の考え方、行動原理、習慣が書かれている。
特に中国の大雑把な捉え方は参考になった。「春望」の一節で、二通りの解釈ができるところ等。
Posted by ブクログ
ちょっと古いので、今の中国とはまたちょっと違うんだろうな。と思うところもありつつ、非常にスラスラ読みやすい本です。例えも分かりやすい。
改めて、お隣の国が、大陸ならではの歴史背景をもった国民性なんだな。と。で、ありかながら、ホンネとタテマエを持つところなど、日本人と同じところもありつつ、欧米圏の人から見た中国人の人物観が、まんま日本人と同じやんけ。やっぱグローバルで見たら似てるんだなぁ。
Posted by ブクログ
小飼弾氏の「新書がベスト」でおススメされていなかったら手に取る事も無かったですあろうが、非常に良かった。
中国の歴史を俯瞰し、中国人の精神構造、政治、日本との関係等についてとても分かりやすく書かれてある。またここに書かれてある内容は、私個人の中国・中国人との交流における経験とも一致する。
何だかんだ言っても日本と中国は歴史的に1番長い関係にある。近代化の流れの中で必ずしも同じ価値観を共有出来なくなってしまった。今でもそのギクシャクした関係は残っているが、相手の事を理解して大人同士の交流をスタートさせるための手引書として非常に優れていると思う。
Posted by ブクログ
加藤徹『貝と羊の中国人』(新潮新書)は、新しい観点が豊富につまった中国人論。
民族とは2つの異質な集団がぶつかりあって生まれる例が多いとしたあとで、中国もまた平原の農耕民である「殷」と、西域の遊牧民族である「周」の衝突によって「漢民族」ができたと指摘。そのうえで「貝」=多神教的な「殷」の文化=実利を重んじるホンネ主義 「羊」=一神教的な「周」の文化=義を重んじる建前主義 と整理。金儲けと共産主義の共存する中国の複雑さを、この「貝」と「羊」を使い分けに求める。まさに「一筋縄ではいかない」中国人のしたたかさを、すこーんと腑に落ちるように説明してくれているなぁ。なんか、すっげぇ使えそう。
他にも、中国語には「泊まる」と「住む」の区別がないとか。「餃子を食べる(我喫餃子)」も「食堂で食べる」(我喫食堂)も文法的には変わらない大まか言語(食堂を食べたりしないのは、文脈判断)だとか。言語と国民性はもちろん密接につながっていることを考えると、中国的な合理主義というのも、なるほどなーと思えてくる。
著者は本来、「京劇」の専門家とか。歴史うんちくもたーっぷりでたのしい。
Posted by ブクログ
中国文学研究者による、中国人の特徴、ものの考え方などについて論じた本。
親中でも反中でもなく、いたってニュートラルな立場で書いているのも感じがいい。とはいえ、あくまでも日本人の目から見た主観の入った見方なので、これを中国人が読んだら面白くない部分も多いと思う。中国人のこういうところ、日本人から見るとこういう風に見えるけれど、こんな風な見方をすると理解の一助になるのでは?というスタンス。
Posted by ブクログ
『中国人とはなんぞや』
を語るには、自分たちの生活体験からかたっても・・・
なかなか、中国は見えない。
というか・・・中国は語れない。
ニンゲンであることは、変わりない
と最近はよく思う・・・。
この『貝と羊の中国人』は、
歴史をさかのぼり・・・
中国の深奥にまで踏み込み(私もだいぶ踏み込んできているが)
中国の国の本質をまるごと大きくとらえる。
ことをしている・・・本である。
それが・・・簡単に言うと『貝と羊』だという・・・
この大胆さ・・・シンプルさに
アッと驚く・・切り口が新鮮だ・・・
あつかましい中国人、騒々しい中国人、不思議な中国人
というより・・・
中国人は、『貝と羊』だ。といったほうが、
よっぽどわからなくておもしろい。
中国人は、昔々・・・いまから3000年前。
『殷』と『周』という二つの民族があった。
『殷』は、東方系の農耕民族で、高度な文明を持っていた。
交易の貨幣は・・子安貝だった。
『殷』の文化は、貝の文化で・・・
寶(宝の旧字体)、財、費、貢、貨、貧、販、貪、貴、貯、買・・・
など、貝にまつわる漢字が 殷の気質の名残という
『殷』人は、自分たちの王朝を『商』とよび・・・
『殷』が、『周』に滅ぼされて・・・亡国の民となり・・・
商人となった・・・。
彼らは、有形の物財を重んじた・・。
それは道教的でもあった
『周』は、遊牧民族と縁が深く、血も気質も・・・遊牧民だった。
そして、羊に縁が多く・・・・。
羊を大切にした・・・
羊は・・・義、美、善、祥、養、儀、犠、議、羨、洋、様、痒・・
など、羊にまつわる漢字が 周の気質の名残という
うつくしい、善い、義理、議論、教養・・・
など、イデオロギー的なモノをこのみ・・・
彼らは、無形の『主義』を重んじた。
それは、儒教的でもあった・・・
中国人は、この二つの流れが入り交じり・・・・
タテマエとしての羊の文化と・・・
ホンネとしての貝の文化を・・・使い分けるようになった。
ふーむ。
なんという見事な・・・ストーリー。
この本をよみおわって、
貝の中国人と羊の中国人・・・・が、いりみだれていた。
声が大きくなっているのは・・・貝の中国人でした。
ハイ。
しかし、
美しいとは・・・羊が大きいと書く。
羊が大きいのが・・美しかったんですね。
Posted by ブクログ
かなり面白かった。
知ってるようで知らない隣人のこと。
彼らが血縁を大事にするのは、
中国の歴史が国家的な大虐殺が繰り返されてきたから、
「国」というものを信頼していないところにあるらしい。
これはユダヤ人も似たようなところがある。
ユダヤ人は国を持たないけれど、
代わりに律法というもので共同体を維持している。
このあたりは「私家版ユダヤ論(内田樹)」に詳しい。
ぼくの知識はだいたい内田樹先生の引用である。
さてさて、
日本語と中国語の違いというのも興味深く、
実例として「彼は嬉しい」という一文を出していて、
日本語では「彼は喜んでいる」「彼は嬉しがっている」とは言うのが一般的。
またそれが忖度であることを明示して、
「彼は嬉しいはずだ」「彼は嬉しいに違いない」という風には言えるけれど、
「彼は嬉しい」とは言えない。
そんなこと言ったら「彼はお前じゃないやん?」というツッコミが入るはずだ(忖度)。
でも、
中国語では「彼は嬉しい」と言うのが一般的なのだそうな。
これはつまり「縄張り意識」の違いであり、
日本語は境界線がかなりキッチリ引かれているのに対し、
中国語はほぼジャイアニズムであるわけだ。
ちょっと違うのは「俺のものもお前のもの」が加わっているところか。
ちょくちょく話題になる中国のパクリ事件というのも、
この感覚から来ているようである。
この本を読むまでは、
ぼくはてっきり儒教的な「まねぶ」という感覚かなぁ、
と思っていたのだが、
まぁニュースなんかを見るに敬っている感じは全然しないので、
本書の説のほうが正しい気がする。
こういった民族別に感覚が異なるのは、
かなり地政学的なところが大きいんではないかしら
Posted by ブクログ
本書から得た内容から判断して歴史としてカテゴライズした。
自分としては基本的に「国民性」という概念に少々懐疑的な気持ちを持っている。間違いなく多様性が増して来ている最近の世界において、特定の民族に「このような特徴がある」と単一的に論じる事はできないと考えているからだ。この考えはある程度正しいと思われるが、逆の考えが成り立つ訳でもない。そういった中で民族を理解する上で歴史から学ぶ事は非常に重要な事となってくる。
著者は中国文化、とりわけ演芸が主な研究らしいが中国の歴史についてかなり詳しくまとめられている印象を受けた。また著者独自の解釈が本書の通じてしっかりしているので非常に読みやすい一冊である。中国の歴史を民族や文化等の側面から眺めたい場合に最適の一冊であると言える。
その中でも著者が語る「士大夫支配」という議論については大きく注目した。あまり他で見る事の無い理論ではあるが、言われてみれば納得する内容であり非常に示唆に富んでいる。この考え方は更に詳しく中国史(特に政治)について学ぶ際の一つの方向性として面白いだろう。
Posted by ブクログ
中国人と接する機会があったとき、もう一度読み返すべき本。
中国人の考え方・文化・歴史からなぜ日本に敵対心を向けるのか?ということが文化的に理解でき、また、日本人として腹を立てる必要も無いことが納得できる。
中国人の実利の追求には凄まじいものがあるが、その反面、儒教に代表されるイデオロギーに殉じるのも同じ中国人である。現在中国の政治は共産主義、経済は資本主義の淵源はここにあるという。
この貝の文化と羊の文化から出発して、著者は流浪のノウハウ、中国人の頭の中、人口から見た中国史、ヒーローと社会階級、地政学から見た中国、黄帝と神武天皇、中国社会の多面性と説き進める。どの項目も非常に深い洞察と示唆に富んでいる。
「支那」がタブーされている理由は、中国が「中華人民共和国」だと自国を言っているのに、中国が「中華」という言葉を使うことに気に入らず日本が中国のことを「シナ」と読んだから、中国の人が怒ったという事から発生しているとのこと。なるほど納得。そりゃ自国を「こう呼んでくれ」って言っているのに勝手に違う言葉で表そうとしたら怒るし、猜疑心が産まれるな・・と理解できた。
Posted by ブクログ
中国人との価値観の違いがどこから生まれてくるのかを知る手がかりにぬる本。書いてあることが本当かどうかはわからないが、納得できる論理ではあったと思う。
結局これが『大陸的・島国的』とか言われるのかな。そして、ヨーロッパにおけるイギリスの立場と東アジアにおける日本の立場の違いは、協力関係に一度もならなかったことにも起因しているのかと発見してみたり。いや、ほんとかどうかはわからんけどね。
Posted by ブクログ
10億以上の人口なので当然十把一絡げにはできないけれども、中国人の国民性をいろいろな側面から見た本である。ある国を知るにはその国の歴史を知るのが近道だが、ここでも歴史的な側面が、現在どのように中国の意識に刷り込まれているか、というのもわかりやすく説明されている。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
財、貨、賭、買…。
義、美、善、養…。
貝のつく漢字と羊のつく漢字から、中国人の深層が垣間見える。
多神教的で有形の財貨を好んだ殷人の貝の文化。
一神教的で無形の主義を重んじた周人の羊の文化。
「ホンネ」と「タテマエ」を巧みに使い分ける中国人の祖型は、三千年前の殷周革命にあった。
漢字、語法、流民、人口、英雄、領土、国名など、あらゆる角度から、斬新かつ大胆な切り口で、中国と中国人の本質に迫る。
[ 目次 ]
第1章 貝の文化 羊の文化
第2章 流浪のノウハウ
第3章 中国人の頭の中
第4章 人口から見た中国史
第5章 ヒーローと社会階級
第6章 地政学から見た中国
第7章 黄帝と神武天皇
終章 中国社会の多面性
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
中国人の長所と短所の両方を、歴史や社会の深層まで踏み込み、冷静に見つめること。
中国の民衆に対して、積極的にホワイトプロパガンダを行い、自分達の真実の姿を知らせる努力をするべき。
外国人には、理解しにくい、中国の本音と建前を、中国の伝統演劇「京劇亅の専門家が、歴史とからめて解説していて面白い。ヒーローと英雄伝観や、貝(ホンネ)と羊(タテマエ)の歴史的な成り立ちの解説がよかった。
Posted by ブクログ
どう見ても中国はでかいし、人も多い。中国語の大雑把さ、士大夫階層、善悪対立好み、などなど「う〜ん」と納得させられてしまった。中国に対して、また違った見方を示唆してくれる本です。
Posted by ブクログ
人口動態と王朝交代を結びつけるのは新鮮だった。天下をとる→社会が安定して人口増加→人口が生産力を上回り混乱・人口減少→王朝交代→以下繰り返し。
Posted by ブクログ
漢民族がが二つの文化、貝←農耕民の「殷」と、羊←西域の遊牧民族「周」の衝突によって「漢民族」とする。「貝」=多神教的の文化=実利主義 「羊」=一神教的文化=建前主義。
日本が発展するためには、どうしても中国とうまく付き合う必要がある。この本音と建て前をうまく使えば良いと思うし、江戸時代までの明らかに中国の国力が上の時代はうまくやってきたと思う。明治、昭和と日本の国力が中国を上回った(と思うのである)時代を経たことで、これがやりにくくなっているような気がするのだ。
Posted by ブクログ
私の通っていた中学の社会の先生は、少しかわっており、
成績はよろしくなかったが、結構好きな先生で、
いまだに年賀状のやりとりをしている。
なぜ変わっているかといえば、中2の世界史で半年以上中国史を扱っていたのだ。
それも大学受験用の山川出版の各国別世界史ノートを使用していた。
その頃から20年以上経つけれども、いまだに
「殷周春秋戦国時代、秦漢魏晋南北朝、
隋唐五代十国時代、宋元明清、民国人民共和国」と
中国の王朝の変遷をそらんじることができる。
大学受験で世界史を選択する常識だけど、
中国史を出題しない大学は無い。
それを、当時中2の私たちに伝え、ある部分では
高校の授業より深く勉強した。(けど成績はよろしくない)
漫画で有名な三国志は、このノートでは3~5行で終わっていたと思う。
(今はわからないけど)
ということで、加藤徹著の表題の本である。
著書によれば、貝は現実主義・本音、羊はイデオロギー性・建前だという。
意外に今の日本社会と似ているなと感じたのが
5章の「ヒーローと社会階級」の内容だ。
士大夫は中間支配階級で、政策を実行にうつす立場だった。
儒教という忠義の美学を活用して、その士大夫が実権を握る。
士大夫は、中央からでなく、少し離れたところからの出身者が、
頭角をあらわし実権を握ることが多い。
なるほど、徳川幕府でも儒教が官学となっていた。
科挙・漢字・儒教が士大夫の権威維持のためのセット。
国Ⅰ公務員試験、漢字ばかりの法令用語もセットだね。
日中の「羊」の部分でのぶつかりは、
全盛時代の清の時代の領土意識と、
明治の頃の領土意識とが、
現代のそれそれと違う点で違和感があるから。ではないか。
著者はこの領土意識を「似ている点」と言っている。
本当は互いに相手国に興味がある日中国民は、
互いの一部の事象を捉えて嫌中・反日を仕掛ける。
予め妥協できる範囲やテーマを設定し、
現実的な接点を積み重ねるのが、よいのかもしれない。
おまけ
(それでも第4章の人口の章は、どんでもないエピソードばかりで、
びっくりすること間違いなし)