加藤徹のレビュー一覧

  • 日中戦後外交秘史―1954年の奇跡―(新潮新書)

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    日本と中国は隣国であるが故、古くは卑弥呼の時代の魏志倭人伝にあるように国同士の外交が行われてきた。それより時代をずっと遡れば、日本自体が大陸と地続きであるから、我々日本人の祖先が彼の国中国とは同一の血筋(モンゴロイドという広い括りにおいては)であったとも言える。厳密に言えば、縄文人の祖先は約1万8千〜3万8千年前に中国大陸の集団と分岐したと推定され、その後は渡来人の別集団が再び大陸を渡り混血した事で、現在の民族としての日本人である弥生人が形成された流れである(縄文人はシベリヤ方面と遺伝ゲノム的には近い)。話は逸れたが、国家としての中国と日本は前述した通り、古くから外交関係を築いてきたことは間違いない。近年その関係性が大きく崩れつつあることは日々のニュース報道からも伝わってくる。習近平氏と高市早苗氏の関係もそうだが、台湾情勢を巡っては互いに牽制し合い、歴代首相の靖国参拝で日本製品不買運動が巻き起きるなど、何かに付けて関係悪化が叫ばれる。元を辿れば全てはかつての日中間の戦争に行き着く。
    本書はその戦争により中国国内に取り残された日本人の帰国問題を中心に、戦後の両国関係を外交面から見ていく内容となっている。その中心的な役割を果たしたのは李徳全(り とくぜん)という1人の女性である。外交とは国と国が行う政治的行為であるから、李徳全の来日に始まる、一連の日中交流は民間レベルのものであり、外交ではない。彼女は中国政府の要人(衛生部長)という立場にありながら、当時未だ国交が無い日本を中国の赤十字の代表(紅十字会会長)として訪れている。訪問団のメンバーは10名。その中には後々の日中関係に大きく影響を及ぼすメンバーが多数含まれ、特に副団長である廖承志(りょう しょうし)は江戸っ子並みに日本語を自由に扱える知日派として、日中国交正常化交渉では通訳の役割も果たすなど、現在に至る日中関係構築に大きく寄与した人物だ。訪問団の主な目的は、日中戦争(太平洋戦争)後に崩壊した日本との関係を修復し、共産党(周恩来)率いる中国のプレゼンスを西側諸国に示すことにある。その手土産として、戦後中国に取り残されていた日本軍の捕虜たちの帰国事業を起こす約束があった。当時未だ数万人の戦犯捕虜が中国国内に残留していたが、李徳全一行はそれら戦犯の名簿を携え訪日した。わずか14日間という短い期間ではあったが、その間に政財界民間問わず多くの人々と触れ合い、会話を繰り返ししていくことで、中国と日本の間の蟠りを解消し、その後の関係性の修復と発展に寄与することになる。当時熱烈に歓迎して受け入れた日本であったが、未だ中国に対して敵愾心を持ち、台湾を(唯一の)中国と認める保守的な人々も多く存在していた事から、表向き民間レベルの交流とは言え、警察予備隊(現在の自衛隊)なども出動し、一団を強固に護衛するといった厳戒態勢が敷かれる。実際に正体不明の車両が一団の移動時につけ回す、右翼団体が講義行動やビラを撒くといった妨害行為も行われ、李徳全だけでなく、訪問団メンバーは常に命の危険と緊張感に晒されていた。その様な中で、日本戦犯の帰国に向けた様々な行動や経済界との交流が、その後の日中経済関係の改善に齎した影響は測り知れない。
    本書は李徳全を題材に戦争という過去の過ちから現在に至るまでの日中関係確立の背景と、それに大きく寄与した出来事、人物にフォーカスしていく。近年は日本は経済的には中国に追い越され、経済規模的にも世界における存在感としてもアメリカに次ぐ世界第2位の巨大な国家になった中国。隣の国でありながら、我が国日本は過去を引きずり同国との関係性は必ずしも良好ではない。同じアジアの隣国として、将来に渡り重要なパートナー、関係国であり続けることは間違いない。これからの日本が中国に対してどの様な外交政策を執り、良好な関係を再構築すること急務である。古の時代から常に関係を持ってきた両国の間に、再び平和的にも経済的にも強固な信頼関係を築いて維持していく必要がある。これまでの両国関係に於いて重要な出来事や人物を追いかけていく事で、多くのヒントが得られる一冊である。

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    2026年05月16日
  • 後宮 宋から清末まで

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    上巻の「殷から唐・五代十国まで」ほど破天荒な人物は出て来ないものの、変わらず面白い
    宋から清までは、古装劇の舞台やモデルになっていることが多く、馴染みがある

    ところで、何度か本文に紹介されている北方謙三の「楊家将」、なぜ蕭太后の夫が穆宗ということで話が進んでいるのかが不思議だったのだが(時代的に穆宗の次の景宗が夫のはず)、この本で少し謎が解けた
    それはそれとして、「楊家将」は続編の「血涙」も含めて面白いです
    女傑蕭太后が主役の古装劇「燕雲台」も見応えのある大河ドラマ

    古装劇では、ドロドロのいかにも後宮愛憎劇の舞台になりがちな清代が、最も後宮としてのシステムが整っているというのも興味深かった

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    2026年01月15日
  • 後宮 殷から唐・五代十国まで

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    中国古装劇を見ていると、ちょいちょい故事の引用がある
    過去の偉大な皇后や太后、後宮からまつりごとを引っかき回した妃嬪や宦官などの例も出て来る
    歴史の流れとして、いつどういった人物が存在していたのか、ちゃんと把握できていない時代もあったので、読んでみた

    後宮に焦点を当てているので、中国の歴史そのものについてはそんなに詳しく書かれてはいない
    が、ざっくり知識があればとても面白く読めると思う
    時々著者の方の語り口がフランクになる時があって、物知りおじさんの面白い話を聞いている気分になった

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    2026年01月14日
  • 後宮 殷から唐・五代十国まで

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    本当なのか信じ難い内容もありましたが、そこが知りたいと言うことがちゃんと買いてあります。
    傀儡は近代だけでなく、ずっと昔からあって、翻弄された人たちがたくさんいた。
    歴史の長い国だからこそかも知れないが、どれが本当かわからないことがいっぱいなんですね。

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    2025年12月03日
  • 後宮 宋から清末まで

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    「後宮 殷から唐・五代十国まで」の続き。本作は北宋から清末まで。過去の中華帝国で繰り返された失敗を防ぐため、宦官や外戚の影響力を削いだり、優秀な後継者を得るための内面重視の后妃選び、太子密建による新しい皇位継承などにより優秀な皇帝を多く輩出し安定した清も制度疲労や世界情勢に飲み込まれる。歴史の無常感を楽しんだ。

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    2025年11月08日
  • 後宮 殷から唐・五代十国まで

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    皇帝が統治する古代中国王朝の歴史を、外たる朝廷と内たる後宮が相互に影響を及ぼしながらつくられるものという観点から、皇帝や廷臣がいかに後宮を制御しようとし、それが性欲、権力欲という強大な人の業の前に繰り返し敗れてきたかという流れを見ることができた。また、陳舜臣先生の作品に関する言及があったのが良かった。

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    2025年10月31日
  • 漢文の素養~誰が日本文化をつくったのか?~

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    課題のために読みましたが、中学生レベルの漢文の知識しか無い人間でもとっても面白かったです。
    文章が硬すぎず、いろんな歴史のエピソードが組み込まれており楽しく読み終わりました!

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    2025年01月04日
  • 西太后に侍して 紫禁城の二年間

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    フランス人の母と清朝外交官の父との間に生まれ、西太后に仕えた徳齢の書いた本。徳齢が女官を辞め西太后の死後、辛亥革命が起こった年に出版された。他より聞くところによれば事実誤認や実際には起こらなかったことも彼女の経験として書かれており相当程度割引て読まねばならないだろうがそれでも宮廷内のことは外へ漏らさないという決まりを厳しく守らせていた中国にあって日々の西太后を描出したこの著作は貴重。

    歴史上では三大悪女のうちに数えられる西太后であるが、日々の生活の中でよき主人であろうとしていた気持ちが端々から感じ取れ、また徳齢もそのことを知り慈禧太后を慕っている気持ちに全編が覆われ、それがこの書を優しいものにしていると感じる。

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    2024年07月17日
  • 漢文の素養~誰が日本文化をつくったのか?~

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    かなり読みやすかったし、最初から最後まで面白かった。漢文あっての今の日本なのだということがよくわかる。
    漢文の素養が政治的にここまで影響しているとは思わなかったし、日本史に不可欠であった漢文が今の教育では軽んじられていることへの筆者の危機感にも共感した。文化的な面よりは、漢文による外交の話が個人的に興味深く感じられた。

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    2024年05月20日
  • 漢文の素養~誰が日本文化をつくったのか?~

    購入済み

    漢文の教養を持つ人々が日本という国家の転換期にどのような影響を与えてきたのか。特に明治期以降の漢文の素養を持ちつつ西洋語にも親しんだ日本知識人が近代以降の日本を成り立たせてる西洋由来の諸概念を適切に漢語に訳していった歴史は面白く読めました。

    #カッコいい #タメになる

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    2024年08月17日
  • 貝と羊の中国人

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    当たり前のことではあるが、中国人と日本人は違う。顔つきや肌の色は似た黄色人種で二者共に漢字を操る民族であっても、考え方も言葉も多くは異なる。誰も疑いようない事実ではあるが、最近化粧や食べるものが近づいてきた(グローバル化による均一化)せいなのか、黙っていればどちらが日本人か中国人か見分けがつかない事もある。気候までも日本と近いからなのか、沖縄出身の方は見分けても中国人の方を見分けられないことさえある。だが違う。
    本書は中国に暮らした筆者が、日本人との違いについて中国人の成り立ちから辿っていく一冊である。タイトル「貝と羊」は中国人の気質をよく表した言葉だ。貝は農耕が生み出した余剰生産物を貨幣を用いて売買する所から、お金や経済を表す。殷の時代にそれらは発達したから殷人的。羊は読んで字の如く狩猟や遊牧を中心とした生活で周の時代、周人的な側面を表す漢字だ。
    中国という国は長い歴史の中でたくさんの周辺民族が侵略し治めてきた土地だ。各年代、王朝によって様々な考え方や暮らし方、文化が発達し、それに応じた知識人や権力者が集まり様々な色合いに発展してきた土地だ。四千年の歴史とはいえ同じ王朝が長く続くことも少ない。今の中国に至っては僅か80年にも満たない歴史しかない。その様な変化の激しい国だからこそ、土地への繋がりも疎遠で他者との繋がりも深くならない。
    その様な国が我が国の隣にあるのだ。私は中国はプライベートもビジネスも何度も訪れて、人の多さには驚いたが、食べ物も人も良くて世間一般で言うような悪いイメージは持っていない。国内にも中国人の知り合いは多数おり、皆、日本人の友人同様に良い人たちばかり、何よりビジネスやお店で出会う中国人は皆働き者だ。そんな中国と日本は頻繁にすれ違いを起こす。政治の問題は靖国訪問、台湾や沖縄、原発処理水放出は日本からの魚貝類農産物の輸出に大ダメージを与えるような問題が山積している。すれ違いは今はまだ殴り合いの喧嘩に至っていないが、対話・沖縄・尖閣問題はいつ武力衝突に発展しないか緊張状態が続く。まさかお互い手を出すことはないだろうとたかを括っている人も多い。だが歴史を振り返れば、そうした国民性の違いやひょんなすれ違いから何度も戦火を交えてきた。元寇然り日中戦争もたったこの数百年の間に衝突している。
    先ずはお互いの国民性の違いは認めなければならない。生まれも育ちも経験もまるっきり違う2つの国家が分かりあうためには互いの歴史に学ぶのが一番である。その知識なしにニュース報道やネット動画に悪戯に踊らされ、面白がっていると、そのうちに引き金は引かれるだろう。
    中国人が本音と建前を貝と羊の様に使い分け、どんな変化の中でも逞しく生き延びてきた事を忘れてはならない。そして我々日本も太平洋戦争の惨禍から劇的に復活を遂げた民族だ。2つの強力な民族同士が心の底から相手を信じ、笑って手を取り合える時代がいつか来る。そう信じて本書を閉じる。

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    2023年09月22日
  • 西太后に侍して 紫禁城の二年間

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    上半期一番のノンフィクションにして読み物だった。
    パリ帰りで西太后に仕えた令嬢の回顧録だが、当時の清朝廷の文化や風習が克明で、着るもの食べるものという私の好物も満ち満ち。150品の食事、一日何度もの着替えとその都度のアクセサリー選び、謎のしきたりに女同士、また宦官から受ける嫉妬…。大奥だぜー。
    かなりワガママで難しい西太后というばあさまに、忍耐と機知でもって接し、お気に入りの女官になった主人公・徳齢だが、2年ほどの職務の後はまた海外に出、この手記をものして自らプリンセスと名乗り豪奢な生涯を送ったそうで、心からのもののように描かれる西太后への慕情は果たして心からのものだったのか、などなど、後々まで考えて楽しめる。

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    2023年06月10日
  • 西太后に侍して 紫禁城の二年間

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    たまたま並行して読んだ「地図と拳」で中国三昧の読書になりました。
    この本を読むまで、西太后という人がどんなに歴史に影響を及ぼした人が忘れていた。
    大国である清の宮廷がどんなだったか興味を持ったのですが、筆者の徳齢と西太后そして清の皇帝やその人事を大変興味深く読みました。

    日清戦争で日本がなぜ勝利できたか、その賠償金で次に向かったこと、諸外国が中国との貿易で得たもの。史実とは異なった平和と共同で進む道はなかったのかと残念に思う。

    それにしても戦争の予算よりも西太后の予算が多く優先順位も高いとは、どうかしているとしか思えない。ホントか嘘か妃殺しや、朝鮮の閔妃事件など、この大陸は賄賂と寝返りが染み付いているとしか思えない。

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    2023年05月05日
  • 本当は危ない『論語』

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     コロナ巣ごもりで再読する。
     高島俊男師が鬼籍に入られた今、加藤徹先生を中国古典の水先案内人と頼んでいる。
     巻末に諸星大二郎『孔子暗黒伝』への言及があるのは嬉しい。

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    2021年06月08日
  • 絵でよむ漢文

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     加藤徹教授をNHKの番組で知って、弁舌は達者な上、アコーディオンまで弾きこなす姿に、高島俊男以来の逸材が現れたという感慨を覚えた。
     加藤教授の本なら間違いなし、と本書をひもとく。合間のコラムがいずれも面白い。
     「英米人が読める最も古い英語は、400年前のシェークスピアあたりである」(引用)
     わが国では1300年前の『万葉集』、中国の学生に至っては3000年以上前の古文が学べるというのは素晴らしい。エジプトのヒエログリフの如く古い象形文字がいまだに使われているのだから、現在進行中の奇跡である。

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    2021年02月03日
  • 漢文の素養~誰が日本文化をつくったのか?~

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    日本人が漢字とどう向き合って来たかという切り口から日本の歴史の流れを古代から現代までを分析さたもの。先人が中国との距離を確保しながら漢字を自らの血肉に変えて行った過程が良く理解できる。

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    2020年05月08日
  • 漢文の素養~誰が日本文化をつくったのか?~

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    言語とはその民族の文化そのものだと改めて認識した。日本人がどのように文字を獲得し、古代中国の深淵な哲学を自分たちの血肉にしていったのかが、丁寧に解説されている。古の日本人が中国と微妙な距離を取りながら、幸運にも恵まれて中国の属国化を免れた事情もよく理解できた。呉音と漢音は日本に入ってきた時代の差と勘違いしていたが、地域差(方言)だったのね。それも新しい知識となった。
    最後に著者は現代日本人が漢籍を学ばなくなったことを嘆いているが、中国古代語を学ぶよりも外国語を学んだ方が圧倒的に実利的なのだから、限られた授業時間を英語学習に充てるのは仕方のないことだろう。だからこそSBIの北尾CEOのように英語もできて、なおかつ中国古典にも造詣が深い人には憧れる。

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    2020年04月29日
  • 西太后 大清帝国最後の光芒

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    本書は大変上手に読ませていく。読みはじめると止まらない。
    まず、西太后を理解しなければならない理由が明確に述べられる。それは西太后が現代中国を知る上で如何に重要だからである。清朝末期が領土的にもナショナリズム的にも現代中国の原点であり、清朝末期こそが西太后の時代であった。実質的な建国はアメリカ合衆国より短いとまで言われている。
    また、西太后をめぐる俗説の紹介が多数ある。史実ではないにしても西太后の人となりや当時の雰囲気をイメージすることができ面白かった。解説のなかで比喩や比較に中国史の有名人物を多用することも読んでいて面白い理由のひとつである。ヴェーバーの統治形態の類型をつかうことも理解をたすける。

    西太后のグロテスクなまでの理想の生活への欲求と、近臣のあまりのやる気のなさがシンクロして、奇跡的な西太后長期政権が現れたように見える。しかし何よりも、他を圧倒するオーラなりカリスマ性がすごかったのだろう。

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    2019年01月23日
  • 漢文の素養~誰が日本文化をつくったのか?~

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    著者は、
    (以下引用)
    十九世紀までの漢字文化圏で、強力な中流実務階級が育っていたのは、日本だけだった。
    武士道的な行動倫理と、漢文的教養、そして「やまとだましい」という三点セットが、近代国家におしあげた。

    と言います。
    今の日本人には、行動倫理(行動規範と呼べるもの)も、漢文的教養も、ほぼありません。
    捨て去ったと言った方が正しいかもしれません。
    しかし、日本文化を形成する上で、漢文ほど、役に立ったものもありません。
    また、日本が近代化する上で、西洋の概念を理解するのにも、非常に役立ちました。

    今現在、漢文的教養、つまり中国古典等の知識を学ぶのは、
    「時代に合わない」と思われています。
    知識は、すぐに役立つもの、実学を重視するようになりました。

    しかし、すぐに役立つものは、すぐに役立たなくとも言えます。
    漢文のバックボーンとなる中国古典は、数千年の人間の知恵が詰まっています。
    すぐ役立たないかもしれないけど、長い目でみたら、
    これほど、役に立つものもないかもしれません。

    確かに、漢文の中には、難解な言葉や、思想、概念が多数含まれていて、
    とっつきにくい部分があります。
    ただ、そのとっつきにくい部分が、価値あるのかもしれません。

    日本は、昔、大陸から漢字を輸入して、自国の文化を作り上げました。
    そして、今は不幸なことに、
    東アジアの二国(中国、日本)は、互いに誹謗中傷、
    罵詈雑言を言い合うようになりました。

    自分は悪くない、相手が悪い。自分には関係ない。
    このような、一方的な言い分と価値観、そして、無関心と差別的感情が二者間の、
    基本的態度となりました。生産的な関係ではなく、
    いかに足を引っ張るかに、関心が向くようになりました。
    子供の喧嘩のように思えます。

    私は中国語を長年、学んでいますが、学べば学ぶほど、
    中国古典の知識が必要になると痛感しています。
    中国人の教養のバックボーンは、今も、昔も、古典に置いています。
    それだけ、古典(日本でいう漢文)に価値をおいています。
    今、日本には、そう呼べるものはありません。
    個人的非常に残念だと思います。

    加藤氏の漢文教育における並々ならぬ熱意(言ってみれば、絶対に学んだほうがいい!)を、
    この著作から、感じとれます(理系漢文の必要性にも言及しています)。
    「漢文を学ぶと良いことあるよ!」と直接言わずに、
    漢文が日本文化や日本人を形成する上でどれほど、役にたったかを、
    語っています。この著作を読むだけで、
    あっ、漢文って、面白いかもと思えます。
    その文章力には、やはり脱帽します。

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    2017年10月01日
  • 貝と羊の中国人

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    自分は中高時代の歴史の授業で、第二次世界大戦の辺りの教え方にだいぶ違和感を抱いていた。

    そこにはもちろん、あの戦争に関する「全て日本が悪うございました」という姿勢に対する情けなさや怒りもあったけれども、かといって、2chなどにある過激な反中的言説にも共感できかねた。

    あまりに勧善懲悪的すぎるじゃないか、世の中そんなにシンプルではないんじゃないか、もとをただせば、そういう種類の違和感だったからだ。

    こうした違和感の大本はたぶん三国志から得たのだと思う。
    というのも、三国志という歴史を眺めてみると、歴史というのは嫌でも政治的にならざるをえない側面というか、それを余儀なくされる面があるんだとも思ったからだ。
    魏と蜀いずれが正統かという問題は、結局のところ政治的なテーマとならざるをえない。
    連合国と枢軸国、いずれが正義かといった問題も、その勝敗の影響を免れない(言わずもがな、その行為を正当化するわけではございませんよ。連合国を正義とし、枢軸国を悪とする見方をもってしても、原爆投下は非難されるべきでしょう)。

    かといって、歴史教師の立場もやはりよろしくないし、それに2ちゃんねらーの所見はもはや顧みるまでもなかった。
    そうした自分の中の「極端な考え方ではないけれどもかといって居心地のいいわけでもない」状態、このモヤモヤした状態を何よりもスッキリさせてくれたのはこの本だと感じている。

    歴史を政治から解放してくれたわけではないけれども、しかしだいぶその固執からは逃れていると思う。優れた文明論。

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    2017年03月16日