板谷敏彦のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
波瀾万丈な高橋是清の生き様を描いた下巻。是清の自伝が大体上巻の範囲内なのでここからが自伝後の話となる。普通だと老人の自伝の終わりの後は波風も立たない様なイメージがあるが、この人の場合は下巻から日銀総裁、大蔵大臣、政党党首、総理大臣と寧ろ日本史に関わってくるところが並外れている。大蔵大臣としては歴史に残る人だが政治的駆け引きや人の名前を覚えないとか政治家としてはどうかと思う。「君の事嫌いだから辞めてくれない?」とか直球すぎる。でも裏を返せば正直な人とも言える。勿論能力も本書にあるように「今まで起こった事がない事態があった時は翁に聞け、必ず打開策を出してくれる」様に高い。
年齢を重ねて聖人になった -
Posted by ブクログ
思いつくだけでも、寺の小姓、奴隷、お尋ね者(所属藩が賊軍のため)、教師、芸者のヒモ、翻訳家、相場師、仏教研究者、特許局の役人(創業者に等しい)、ペルーとの鉱山合資会社の現地代表、ニート、日本銀行総裁、貴族議員、大蔵大臣、総理大臣と職業の振り幅が大きい偉人の伝記上巻。この巻だけで自伝を網羅しているかなりのページ数。
この人の自伝がめちゃくちゃ面白くて愛読しているのだが著者によると「盛っている」らしい。それでも自伝との差はかなり小さい気がする。奴隷事情や日露戦争の公債の件なども本人でない故か客観的で奥行きがあった。
一見すると周り道だが全部人生経験としてどんな境遇からも必ず頭角を表すのが凄い。偉人 -
Posted by ブクログ
上下巻合わせて1000ページ超、非常に読み応えのある2冊だった。
是清の後半生を書くこの巻では金融恐慌の収拾と金輸出再禁止という彼の独壇場を除くと日本近代史を詳しく紐解く巻と言っていいかもしれない。是清が主役でないどころか、出てこない話も多い。
是清が原敬の元どのように政治に関わったのか、原遭難後政友会総裁としての立ち居振る舞いはどうだったのか、本来経済観念を共にした井上準之助との確執はいつ起きたのか、これらの背景を細かく描いていくとどうしても時代背景の説明が長くなり、是清本人の登場が少なくなってしまうのだろう。恐れずに書き切った著者を褒めたい。
高橋是清という人物は財政家として決して無辜では -
Posted by ブクログ
高橋是清の評伝。上巻だけで500ページ超とかなりの長さだが、その長さに見合うほどの波瀾万丈な人生である。
元々昭和初期の名財政家程度の認識だったが、若い頃ここまで破天荒な人物だったとは…あの財政家としての力は好奇心と生存力に裏打ちされたものなのかもしれない。日露戦争において公債発行を一手に任され、WASPやロスチャイルド(と聞くと陰謀論の香りしかしないがそんなものは一切ない)相手に丁々発止で渡り合う姿は「もう一つの日露戦争」と言って差し支えないものであろう。
…しかしこの本を読み進めれば進めるほど日露戦争は戦闘・財力においてギリギリの戦いであったことを痛感させられる。なぜ日本はこんな(ある意味 -
Posted by ブクログ
Podcast番組「コテンラジオ」、第一次世界大戦回で紹介されていたので購入した。
わかりやすく丁寧に書かれているとの話だったが、元々歴史が大の苦手で基礎知識のない私は何ヶ月もかけて読むことになった。けれどどうにか読み終えたし、内容もわずかだろうが吸収できたと思うので、やっぱりわかりやすく丁寧な本だったと思う。
兵器、流通、金融など様々な視点から戦争の流れと長期化の理由が説明されていて非常に興味深かった。特に流通に関して、兵士や糧食の移動を考えれば当然大きな課題になるはずではあるが、その視点が全くなかったのでとても新鮮に思った。それにそれぞれの指導者の意見がこんなにも大勢に影響するのだなと。 -
Posted by ブクログ
回避しようとして回避できなかった、政治エリートはだれも望まなかった戦争。戦争は本来金にはならないはずで資本家達は皆避けるものである。が馬鹿なメディアと民衆が見る幻想により均衡が削り取られ砂上の楼閣のように脆弱な秩序が生まれる。そして一気に崩れ落ちるようにしてふとしたきっかけで秩序が崩壊し戦争が起きる。
ちょっとした野心と希望的観測、不運にも局地では双方に戦勝があったために長引いたが、そういった情報が助燃剤となり感情とともに燃え上がり戦争遂行の動力となったんだと思われる。
大戦史とあるが、有名どころの戦闘のみに抑えて各国をとりまく背景を描くことに力を入れている。そういう意味で世界史そのものである -
Posted by ブクログ
2022/12/23 読み終わった
コテンラジオの第一次世界大戦回で紹介されていた本。概要がいちばんわかりやすいのがこの本だと言うことで。
ラジオ内で言及があった、「日本人にとって第一次大戦は馴染みがない」というくだりが印象に残っていた。確かにフラットに考えて、日本人にとって先の戦争といえば太平洋戦争だし、第二次大戦だと思う。どの国とどの国が戦ってどこが勝ったのか、も知らない人が多いのではないか、と。(自分は三国同盟三国協商ベルサイユ条約くらいは知っていたが、それ以上ではなかった。)ところが、ヨーロッパ人にとってはThe Warは第一次大戦だし、そちらの方がインパクトがあったとのこと。
-
Posted by ブクログ
2010年代の前半頃から、市井の経済学愛好家を中心に「リフレ派」と呼ばれるグループが現れ、財政・金融論壇を賑わせてきた。そのリフレ派の模範として度々名前が挙がっていたのが高橋是清であったが、残念ながら私は経済学徒でありながら日本史や経済史の学習にはさほど熱心でなく、高橋是清が成した財政・金融政策や当時の経済情勢を詳しく知らなかったため、リフレ派vs反リフレ派の論戦をただ傍観しているだけであった。
今般、高橋是清の評伝が出版されたことをSNSで知り、十数年の時を経て改めて学び直そうと思い、本書を手に取った。
上巻は出生から日露戦争終戦までの半生が綴られている。
米国での「奴隷」生活や芸妓のヒモ -
Posted by ブクログ
とても勉強になりました。
序盤にも記載があった通り、日本人にとってあまり学ぶ機会も少ない第一次世界大戦ですが、人類にとって大きな転換点だったのだと感じました。
技術の発展と国民国家の熟成が背景にあるのはなんとなく認識していたのですが、未熟な世界が泥沼な大戦に突っ込んでいったという認識がめちゃくちゃ変わりました。
直近は悲惨な記憶が残るのでしょうが、過去を都合よく解釈したり、客観的に判断できなかったり、メディアに煽られたりなどはいくら時代が進んでも起こりうると思います。第二次世界大戦との間隔の短さが恐ろしいです。現代の状況に重なる部分が大きいだけに恐ろしく感じます。
勝っても負けても悲惨な目に遭 -
Posted by ブクログ
コテンラジオ本編で珍しく書籍名を挙げておすすめしていたので、手に取ってみました。確かに前半の第一次大戦勃発までの通信技術や戦艦の発展、鉄道網の整備による兵站の充実といったバックグラウンドは、高校歴史の授業ではあまり触れられない点。だけど、俯瞰的にこの大戦の成り立ちを理解する上では、非常に大切なトピックだと感じましたね。
そもそも、第一次より第二次が世界大戦といった感覚は、日本的なもので欧州ではむしろ逆といったコメントですが、主戦場が欧州でこの総力戦の被害規模を考えるとさもありあん。塹壕戦の悲惨さだとか、潜水艦無差別作戦での海上封鎖による民間人の食料難→飢餓など、第二次大戦のホロコーストとはま -
Posted by ブクログ
知人で大学の先生から頂き、拝読しました。
非常に興味深かったです。
見通しよく、本質的に重要な関連事項が巧みに整理されていて、尚且つ随所に著者の高い教養が滲み出ていて、大変勉強になりました。
金融の歴史は人間の欲の歴史。人間の営みの歴史。
風が吹けば桶屋が儲かるというような形で、順を追って歴史を紐解く事で、複雑化してみえる金融の本質が見えてくるように、分かりやすく興味深い雑学満載で解説、案内されています。
今ある金融の仕組みには、必ず存在意義があります。
今の金融の様相は、どんなに複雑に見えても、必ず人の欲や営みが生み出すことには変わりはない事、人は必ずしも完璧に合理的でなく、それが複