板谷敏彦のレビュー一覧
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下巻は案の定、高橋是清が落ち着いていって波乱万丈という雰囲気ではなくなっていく。だが、それと相反するように国勢や日本が落ち着かなくなっていき、個人というよりも世界全体の狂騒状態に視点が移っていく。
国家とは、通貨と戦争によって運命を決する存在である。そう痛感させられる。特に勉強し直しだったのは「金本位制」や「金解禁」が何故、重要な議論であったのか。19〜20世紀初頭の世界では、国家や通貨への「信用」を担保する手段がまだ十分ではなかった。印刷すればいくらでも作れる紙幣は、裏づけがないと誰も信用がない。つまり金(ゴールド)と交換できる状態を約束する事で、ようやくその紙幣を信じて使うようになってき -
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明治時代の金融政策の基礎をつくり、日露戦争では外国から巨額の戦費調達、昭和恐慌を乗り越えた“日本版ニューディール”の立役者など、高橋是清は「金融のスゴイ人」である。
だが、その昭和恐慌後の経済再建で軍事費が膨張して財政が破綻しそうになったため軍事費削減を主張したことが軍部の反感を買い、二・二六事件(1936年)で青年将校に暗殺された。
さらりと流すとこんな感じ。あまり覚えていないが、教科書でもこの辺のエッセンスが語られるだけだったはず。だが、それだと勿体ない。高橋是清の人生は波瀾万丈、奴隷として売られたり、放蕩生活の末、ヒモ生活を送ることになったり、至る所に子供を作っていたり、酒に溺れ、 -
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ネタバレ後の第二次世界大戦へずるずると引きずり込まれたスタートは、中国への21か条の要求にあった。ここでの失敗がずっと尾を引きずっている感がある。
1)外交音痴。ドサクサ紛れの要求を入れてしまった。リークされて、最悪の結果を招く。2)日本国内でキチンと外交の意思をまとめず、一部のものが押し切って進めてしまう。結果、日本の内部事情を知らない外部からみると、意思の荒さだけが目立つ。
山東省の青島攻略において、おそらく世界最高水準にあった軍隊だった。それが兵站を無視し、精神論の一辺倒に落ちていく。この歪みのプロセスは検討する必要があるだろう。 -
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嘉永7(1854)年に生まれ、昭和11(1936)年の二・二六事件で非業の死を遂げるまでの81年間におよぶ高橋是清の生涯は、掛け値なしに波瀾(はらん)万丈と言ってよい。前半生のクライマックスは、日露戦争時の外債発行に奔走し、それを見事に成功させる場面である。まさに「国家の命運」を握った是清の国際金融の舞台での大活躍に読者は手に汗を握ることになる。
しかし、是清は金融の天才では決してない。それどころか、青年期の放蕩(ほうとう)三昧の生活や怪しい投資話に手を出しての失敗など、普通であればそこで終わってしまうようなエピソードに事欠かない。そこがまた人を惹(ひ)きつけてやまない魅力となっている。 -
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嘉永7(1854)年に⽣まれ、昭和11(1936)年の ⼆・⼆六事件で⾮業の死を遂げるまでの81年間におよぶ⾼橋是 清の⽣涯は、掛け値なしに波瀾万丈と⾔ってよい。前半⽣のクライマック スは、⽇露戦争時の外債発⾏に奔⾛し、それを⾒事に成功させる場⾯である。まさに 「国家の命運」を握った是清の国際⾦融の舞台での⼤活躍に読者は⼿に汗を握ること になる。
しかし、是清は⾦融の天才では決してない。それどころか、⻘年期の放蕩三昧の⽣活や怪しい投資話に⼿を出しての失敗など、普通であればそこで終わっ てしまうようなエピソードに事⽋かない。そこがまた⼈を惹きつけてやまない 魅⼒となっている。
魅⼒的な個性の -
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下巻は高橋是清の日露戦争後の政治家としての半生を綴っている。日銀総裁から大蔵大臣、そして短期間の総理大臣経験を経て数度に渡る大蔵大臣再登用。普通、総理大臣の経験が政治家人生の絶頂期となりそうなものだが、高橋是清の場合は大蔵大臣としての八面六臂の活躍の方が際立っているのが面白い。
下巻のハイライトは金融恐慌時の金本位制からの離脱と、赤字国債の日銀引受による積極財政であろうか。いずれもこれまでの慣例にとらわれず、状況に即した政策を是々非々かつスピーディーに実行に移している。意思決定の基準軸をしっかりと持ち、経済社会を丹念に観察することの大切さを本書から学んだ。 -
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COTEN RADIOの第一次世界大戦編がめちゃくちゃ面白くて好きなんだが、そこで超オススメされていた本がこちら。
なかなか硬派な見た目。
中身も硬派。
日本人にとっては馴染みの薄い第一次世界大戦。
本書はそこに至る前からの時系列で、各国の政治、経済、軍事、メディア、テクノロジーなど、幅広い観点から網羅的に描き出し、この戦争の背景、内実、影響を読み解いている。
全然関係ないけど、こういう内容だと語尾が、〜だ。とか、〜である。とかが多い気がするんだが、全てをですますで締める文章が印象的だった。
それにしても本当にめちゃくちゃ学びが多い1冊。
特に大戦に向かって進んでいくテクノロジーや各国 -
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日本人にはあまり馴染みのない、第一次世界大戦についてわかりやすく解説してくれている。第一次世界大戦はその規模だけでなく、戦争の中身としても人類が未経験の大戦であった。その背景には科学技術の発展があり、主に以下の要素が挙げられていた。
・軍事技術(機銃掃射や戦車の登場)
・鉄道網の構築による兵站・兵士の補給といったロジスティクスの進化
・通信技術の発達による参謀本部への指揮機能の集中
第一次世界大戦は経緯を辿ると勃発は必然に見えてくる。普仏戦争を経て帝国を樹立したドイツは鉄血宰相ビスマルクの体制のもと平和を保っていたが、ビスマルクの穏当な方針に不満を抱くヴィルヘルム二世が権力を握った後に綻びが -
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社会人になってから30年以上経過しますが、その間ずっと取り組みたいと思っていた歴史上の事件は、日本人が知っておくべき第一次世界大戦でした。この本のはしがきにもあるように、第二次世界大戦は日本でも多くの本が書かれてきましたが、それと比較して、第一次世界大戦について書かれた本は、私が目にする限りは少なかったように思います。
この本は2017年に単行本として発刊されたものですが、この度それが文庫化されて持ち歩きがしやすくなりました。コロナ後は在宅・出勤勤務が混在していますが、会社のノートパソコンを持ち歩くことになったため、文庫本は有り難いです。
500ページ強の大部な本ですが、興味深く読むことが -
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数年前の第一次世界大戦勃発百年の時期に関連書籍がかなり出るなどしたものの、なかなか全体像を理解することは難しかったが、本書はそのような思いに応えてくれる一冊である。
一話読み切りのスタイルで全73話から成っているが、
特に技術関係の記述が具体的で分かりやすく、戦争が一変してしまった背景が良く理解できる。特に、それまでの馬や刀槍、銃の戦争に代わって、軍艦と鉄道、銃器の発展、毒ガスや戦車、航空機の登場など、「20世紀の戦闘システム」が出現に至った経緯が平易に語られていて、あまり詳しくなかった技術関係の進歩について興味深く追いかけることができた。
個々の戦闘について名前は聞いたことはある -
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前半から中盤は、時代時代における金融がどういったものだったのかの説明。この辺りは通貨や利子の話なので、歴史が好きな人であれば素直に楽しく読めると思う。
中盤で株式や債券が出始めたあたりから、歴史と金融の実態の解説が半々になって来る。株式や債券が何なのかわからない人には辛くなってくる。
後半、デリバティブズやファイナンス理論のあたりまで来ると、一通りの簡単な金融と経済学の用語を知らないと、多分読めない。殆どの単語の説明が不足してるので。
前半と後半で大分趣きが違う。
誰であろうとも前半は読んで置いて損は無い。面白いし為になる。
後半は、金融の意味はわかるがピンと来てない人(自分)の、教養の醸 -
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世界史的に見て第一次世界大戦はどう位置付けることができるのか、全13章73話から成る本書は、大戦前のグローバリゼーションの進展、国民国家意識の高まり、兵器産業をはじめとする新しい産業の勃興、第0次世界大戦としての「日露戦争」などの前半の叙述を経て、後半は第一次世界大戦勃発から終戦後までが詳細に記述される。
第一次世界大戦はとにかく長い戦争であり、その間にいくつもの有名な戦闘などがあり、それらが全体の流れのなかでどのように位置付けられるかはなかなか難しいところがある(もちろん、第二次世界大戦も同様の面がある)。しかし、本書はそうした個々の戦闘などもやや詳細に叙述し、全体像がイメージしやすいよう