板谷敏彦のレビュー一覧

  • 日露戦争、資金調達の戦い―高橋是清と欧米バンカーたち―

    Posted by ブクログ

    高橋是清による日露戦争時の海外公債発行の模様について、当人の自叙伝や世の中に広まった「通説」によらず、複数の資料を基に、著者が真実と考えるところが書かれている。高橋の苦労話だけでなく、当時のファイナンスの中心であるロンドンやニューヨークの金融プレイヤーの実態なども分かりやすく紹介されていて、興味深い。
    それにしても、国を運営するというのは大変だ。今よりもずっと非民主的だと思われる明治時代においても、正貨が足りないから悪条件でも起債しなければならないのに、新聞には条件が悪いと書かれ、だからといって、資金不足の実態をさらけ出せば、ますます資金が集まらなくなって条件が悪化したり、戦争を止められなかったりする。そんな国民の不満を浴びながら、国の置かれた条件の下でベストを尽くすという明治の男は、高橋にしろ、小村寿太郎にしろ、みんな偉いなと改めて思う。
    また、本書のメインではないが、あの児玉源太郎が、満州に関しては満鉄を使った植民地経営を志向し、「国民の血を流して獲得した」との理由で欧米資本を排除して、後の戦争の遠因を作ったという著者の指摘も、中々興味深く、人物に対する色々な評価があり得ることを思い知らされた。
    高橋是清の自伝など、読みたくなる本が増えるという点でも、読んでよかった一冊。

    0
    2012年06月07日
  • 日本人のための第一次世界大戦史 世界はなぜ戦争に突入したのか

    Posted by ブクログ

    第一次世界大戦の大きな流れを、技術革新や地政学、金融やメディアなど、様々な視点から学ぶことができました。

    第一次世界大戦は、今現在の世界の始まりであり、第二次世界大戦をふくめて、今もまだ続いていると考えてもいいと思いました。

    4.2

    0
    2026年05月27日
  • 国家の命運は金融にあり 高橋是清の生涯 上

    Posted by ブクログ

    日露戦争では軍事力はもちろんのこと、その裏では戦艦や物資を輸入するための資金調達の巧拙も鍵を握っていた。
    学生の頃の歴史の授業ではこの部分にはほとんど焦点は当てられておらず、その頃の自分は金融や財政面はわかるようでわからない点も多かったが、本作はある程度財政の知識を持った上で読めばとても面白かった。

    当時の日本の資金調達はかなりギリギリのところで行われており、是清が各国でどのように外債発行に奔走したのかや、そこに至るまでの幼少期の過ごし方などが興味深く記述されていた。

    0
    2026年01月17日
  • 日本人のための第一次世界大戦史 世界はなぜ戦争に突入したのか

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    後の第二次世界大戦へずるずると引きずり込まれたスタートは、中国への21か条の要求にあった。ここでの失敗がずっと尾を引きずっている感がある。
    1)外交音痴。ドサクサ紛れの要求を入れてしまった。リークされて、最悪の結果を招く。2)日本国内でキチンと外交の意思をまとめず、一部のものが押し切って進めてしまう。結果、日本の内部事情を知らない外部からみると、意思の荒さだけが目立つ。
    山東省の青島攻略において、おそらく世界最高水準にあった軍隊だった。それが兵站を無視し、精神論の一辺倒に落ちていく。この歪みのプロセスは検討する必要があるだろう。

    0
    2025年03月23日
  • 国家の命運は金融にあり 高橋是清の生涯 下

    Posted by ブクログ

    嘉永7(1854)年に生まれ、昭和11(1936)年の二・二六事件で非業の死を遂げるまでの81年間におよぶ高橋是清の生涯は、掛け値なしに波瀾(はらん)万丈と言ってよい。前半生のクライマックスは、日露戦争時の外債発行に奔走し、それを見事に成功させる場面である。まさに「国家の命運」を握った是清の国際金融の舞台での大活躍に読者は手に汗を握ることになる。 

    しかし、是清は金融の天才では決してない。それどころか、青年期の放蕩(ほうとう)三昧の生活や怪しい投資話に手を出しての失敗など、普通であればそこで終わってしまうようなエピソードに事欠かない。そこがまた人を惹(ひ)きつけてやまない魅力となっている。 

    魅力的な個性のまわりにこれまたさまざまな才能をもった人々が躍動する。その代表格が、日銀の深井英五、大蔵省の森賢吾といった人々である。またグイド・フルベッキやアラン・シャンドといった「お雇い外国人」たちとの長く深い交流、森有礼、前田正名からの影響も大きい。とくに前田の紹介で知遇を得た日銀総裁の川田小一郎は、是清の人生を大きく変えた。これらの人々から重層的にネットワークが形成され、最後にクーン・ローブ商会のヤコブ・シフを動かす力へとつながっていく。 

    後半生のクライマックスは、老骨にむち打ちながらの金本位制即時停止の断行と昭和恐慌からの脱却、そして軍部の要求に屈せず、公債漸減策へ転換する場面である。しかし、この一連の政策はあくまで表面のことにすぎない。是清がなぜデフレ不況の根本治療をおこなえたのか。その核心は次の言葉に集約されている。曰(いわ)く「人 の働きがすなわち富である。人の働きをあらわすものが物資である。物資の高くなるのはすなわち自己の働きが高くなることである。(中略)この働きにいかにして相当なところの価をもたせるかということの政策が根本政策である」と。今、これをきちんと言える政策担当者はいるのであろうか。

    『産経新聞』2024.7.14朝刊掲載

    0
    2025年01月29日
  • 日本人のための第一次世界大戦史

    Posted by ブクログ

    あらすじに政治・経済・軍事・金融・メディア・テクノロジーなど幅広い観点から、戦争の背景・内実・影響を読み解く、日本人のための入門書、とあるがまさに。特にテクノロジーのとこを時間軸を合わせて並べられると戦争の功罪を改めて考えさせられる。

    0
    2024年08月23日
  • 国家の命運は金融にあり 高橋是清の生涯 上

    Posted by ブクログ

    嘉永7(1854)年に⽣まれ、昭和11(1936)年の ⼆・⼆六事件で⾮業の死を遂げるまでの81年間におよぶ⾼橋是 清の⽣涯は、掛け値なしに波瀾万丈と⾔ってよい。前半⽣のクライマック スは、⽇露戦争時の外債発⾏に奔⾛し、それを⾒事に成功させる場⾯である。まさに 「国家の命運」を握った是清の国際⾦融の舞台での⼤活躍に読者は⼿に汗を握ること になる。

    しかし、是清は⾦融の天才では決してない。それどころか、⻘年期の放蕩三昧の⽣活や怪しい投資話に⼿を出しての失敗など、普通であればそこで終わっ てしまうようなエピソードに事⽋かない。そこがまた⼈を惹きつけてやまない 魅⼒となっている。

    魅⼒的な個性のまわりにこれまたさまざまな才能をもった⼈々が躍動する。その代 表格が、⽇銀の深井英五、⼤蔵省の森賢吾といった⼈々である。またグイド・フルベ ッキやアラン・シャンドといった「お雇い外国⼈」たちとの⻑く深い交流、森有礼、 前⽥正名からの影響も⼤きい。とくに前⽥の紹介で知遇を得た⽇銀総裁の川⽥⼩⼀郎 は、是清の⼈⽣を⼤きく変えた。これらの⼈々から重層的にネットワークが形成さ れ、最後にクーン・ローブ商会のヤコブ・シフを動かす⼒へとつながっていく。

    後半⽣のクライマックスは、⽼⾻にむち打ちながらの⾦本位制即時停⽌の断⾏と昭 和恐慌からの脱却、そして軍部の要求に屈せず、公債漸減策へ転換する場⾯である。し かし、この⼀連の政策はあくまで表⾯のことにすぎない。是清がなぜデフレ不況の根 本治療をおこなえたのか。その核⼼は次の⾔葉に集約されている。⽈く「⼈ の働きがすなわち富である。⼈の働きをあらわすものが物資である。物資の⾼くなる のはすなわち⾃⼰の働きが⾼くなることである。(中略)この働きにいかにして相当な ところの価をもたせるかということの政策が根本政策である」と。今、これをきちん と⾔える政策担当者はいるのであろうか。

    ※『産経新聞』2024年7月14日朝刊書評欄に掲載いただきました。なお書評の内容は下巻も合わせてのものです。

    0
    2024年08月21日
  • 国家の命運は金融にあり 高橋是清の生涯 下

    Posted by ブクログ

    下巻は高橋是清の日露戦争後の政治家としての半生を綴っている。日銀総裁から大蔵大臣、そして短期間の総理大臣経験を経て数度に渡る大蔵大臣再登用。普通、総理大臣の経験が政治家人生の絶頂期となりそうなものだが、高橋是清の場合は大蔵大臣としての八面六臂の活躍の方が際立っているのが面白い。

    下巻のハイライトは金融恐慌時の金本位制からの離脱と、赤字国債の日銀引受による積極財政であろうか。いずれもこれまでの慣例にとらわれず、状況に即した政策を是々非々かつスピーディーに実行に移している。意思決定の基準軸をしっかりと持ち、経済社会を丹念に観察することの大切さを本書から学んだ。

    0
    2024年05月26日
  • 日本人のための第一次世界大戦史

    Posted by ブクログ

    COTEN RADIOの第一次世界大戦編がめちゃくちゃ面白くて好きなんだが、そこで超オススメされていた本がこちら。

    なかなか硬派な見た目。
    中身も硬派。

    日本人にとっては馴染みの薄い第一次世界大戦。
    本書はそこに至る前からの時系列で、各国の政治、経済、軍事、メディア、テクノロジーなど、幅広い観点から網羅的に描き出し、この戦争の背景、内実、影響を読み解いている。

    全然関係ないけど、こういう内容だと語尾が、〜だ。とか、〜である。とかが多い気がするんだが、全てをですますで締める文章が印象的だった。

    それにしても本当にめちゃくちゃ学びが多い1冊。
    特に大戦に向かって進んでいくテクノロジーや各国の思惑、動き…。
    渦中にいたら絶対に見えないであろう、史上最大規模の戦争に至る構造がよく理解できる。
    でもマジで今まで全然知らなかった情報が多くて、初読ではうまくまとまらないな。COTEN RADIO聴いてなかったら理解も難しかっただろう。

    今回1番印象に残ったのは、言い出しっぺのアメリカが国際連盟に加入しなかった理由。
    そう言えばその事実は知っていたけど、なぜなのかを知らなかった。
    民族自決が叫ばれたり、国民国家で国の意思が統一されているように見えても、国家はやはり個々人の集まりであり一枚岩ではないということ。これは当たり前だけと連盟に加入しなかったアメリカだけに言える話ではないというのを改めて感じた。

    この戦争が、今現在にも継続的に影響があるのは勿論、はるか昔の世界歴史はダイレクトに今に繋がっているということを思い出させる良書。
    面白かった!

    0
    2023年09月15日
  • 金融の世界史―バブルと戦争と株式市場―

    Posted by ブクログ

    実務家が書いた歴史の本なので、あまり期待はしなかったけど、面白かった。特に筆者の現役の頃の話は、エビデンスはともかく、当事者の記憶なわけで、時代の雰囲気が分かる。

    0
    2023年05月16日
  • 日本人のための第一次世界大戦史

    Posted by ブクログ

    日本人にはあまり馴染みのない、第一次世界大戦についてわかりやすく解説してくれている。第一次世界大戦はその規模だけでなく、戦争の中身としても人類が未経験の大戦であった。その背景には科学技術の発展があり、主に以下の要素が挙げられていた。
    ・軍事技術(機銃掃射や戦車の登場)
    ・鉄道網の構築による兵站・兵士の補給といったロジスティクスの進化
    ・通信技術の発達による参謀本部への指揮機能の集中

    第一次世界大戦は経緯を辿ると勃発は必然に見えてくる。普仏戦争を経て帝国を樹立したドイツは鉄血宰相ビスマルクの体制のもと平和を保っていたが、ビスマルクの穏当な方針に不満を抱くヴィルヘルム二世が権力を握った後に綻びが生じ始める。ドイツはヨーロッパ列強の中では比較的後進であったため植民地が少なく、国力増強のために植民地の拡大に動き始める。1905年、鉱物資源が豊富なモロッコへのフランスの進出に対して、ヴィルヘルム二世が軍艦を率いてモロッコに上陸して抗議を行った(タンジール事件)。6年後の1911年には、モロッコの内乱を鎮圧するため派兵したフランスに対して、モロッコの自国民保護を名目として軍艦を派遣する(アガディール事件)。実際モロッコにはドイツ人はいなかったため、工作としてドイツ人を送り込んだが、到着したのは軍艦が到着した後だったらしい・・・。タンジール事件/アガディール事件を経て、独仏の対立が先鋭化すると共に英仏の結びつきも強化され第一次世界大戦勃発の土壌が培われていく。ビスマルクはこの事態を予想し植民地の確保には慎重だったのだが、若きヴィルヘルム二世にはそのビジョンは理解できなかったようである。
    第一世界大戦はザックリ、英仏露の三国協商、独墺伊の三国同盟の衝突の構図だが、勃発の最後のダメ押しとなったのは墺(オーストリア=ハンガリー帝国)によるバルカン半島への進出であった。バルカン戦争を経てオスマン帝国による支配が弱まる中、ボスニアではセルビア人による国民国家樹立の機運が高まっていた。このような背景の中、ボスニアを訪問中のオーストリア皇太子が過激派集団のメンバーにより暗殺される事件が起きる(サラエボ事件)。暗殺の背景には大セルビア主義があると見たオーストリアは反オースリア的なプロパガンダの禁止やボスニア政府へのオーストリア側の代表者の参画等を盛り込んだ最後通牒を出したが、ボスニアには到底受け入れられる内容ではなく事実上の宣戦布告であった。この際、オーストリアは同盟国ドイツの軍事支援の確約を取り付けてから最後通牒を出しているが、ヴィルヘルム2世はこの時、ロシアとの衝突になる事も予想しておらず、すぐに事態は収まると考えていた(ロシア皇帝はヴィルヘルム2世の親戚でもあったためどこか安心感を抱いていたという説もある)

    0
    2023年02月23日
  • 日本人のための第一次世界大戦史

    Posted by ブクログ

    コテンラジオで深井さんが薦めていたので読みました。
    とてもよくまとまっていると思いますが、不勉強のため理解できないところもままあります。
    ラジオを聴き返したり、別途本を参照して理解を深めたいと思います。
    良い資料をありがとうございます。

    0
    2022年05月03日
  • 日本人のための第一次世界大戦史

    Posted by ブクログ

    今こそ、(少し遅かったか?)読むべき本。
    100年前の世界とリンクする動きがこの本を読んでよく分かり、世界が破滅の道にまた突き進んでいくのではないか、と恐ろしさを感じた。

    0
    2022年03月23日
  • 日本人のための第一次世界大戦史

    Posted by ブクログ

    社会人になってから30年以上経過しますが、その間ずっと取り組みたいと思っていた歴史上の事件は、日本人が知っておくべき第一次世界大戦でした。この本のはしがきにもあるように、第二次世界大戦は日本でも多くの本が書かれてきましたが、それと比較して、第一次世界大戦について書かれた本は、私が目にする限りは少なかったように思います。

    この本は2017年に単行本として発刊されたものですが、この度それが文庫化されて持ち歩きがしやすくなりました。コロナ後は在宅・出勤勤務が混在していますが、会社のノートパソコンを持ち歩くことになったため、文庫本は有り難いです。

    500ページ強の大部な本ですが、興味深く読むことができました。特に、なぜ第二次世界大戦が終わるまで、各国が国家予算においてかなりの部分を使って軍拡競争をすることになったのかが、この本で理解できました。技術革新により、既存軍備が陳腐化することが繰り返されてきたからなのですね。技術発達も使い方を誤れば、皆を幸せにできないこともあるのだと痛感しました。

    以下は気になったポイントです。

    ・電信ケーブル網は1866年に大西洋横断を果たしていて、71年には日本や香港にまで延長されていた(p23)

    ・江戸末期には日本の知識人達の間ではヨーロッパの軍隊との圧倒的な戦力差は認知されていた、幕府はアヘン戦争の翌年1842年に異国船打払令を排して、薪・水の便宜を図る、薪水給与令を発令している(p31)イギリス軍は蒸気軍艦だったので、布陣した清国の大部隊を避けて上陸地点を任意に選択できた。鉄道普及以前の陸上部隊の歩行による移動速度は、蒸気船に叶わない(p33)

    ・1853年シノップの海戦において、ロシア側はペクサン砲による炸裂弾を搭載した戦列艦に蒸気軍艦が随行、オスマン帝国は旧式の帆走木造戦列艦であった、ロシア艦隊はオスマン艦隊をほぼ全滅させた(p42)

    ・千葉県の本八幡駅では、軌道の異なる3つの鉄道が乗り入れている、JRは1067mm(日本最初の鉄道)、都営新宿線は京王線との接続を優先したために、馬車鉄道由来の馬車軌である1372、京成線は以前は京王線と同じだったが、1959年に都営浅草線と接続する関係で1435mm(新幹線と同じ標準軌)なので、接続できない(p49)

    ・普仏戦争において、戦勝国ドイツのビスマルクはドイツ側の戦費を約20億フランと見積もり、フランスに払わせた。金本位制採用後のレートで計算すると、1ポンド=約10円=25フランなので、当時の8億円、約20年後の日清戦争の戦費が2億3千万円で日露戦争が18億円、ドイツはライヒスマルク金貨を本意貨幣とする金本位制を採用した(p71)

    ・普仏戦争当時、フランス軍は革命以来の徴兵制を採用していたが、時とともに除外規定が増えて代人を立てることも認められていた、代人には兵役経験者が多かったので、プロの傭兵的な要素が強かった、一方プロイセンは厳格な国民皆兵性を採用して平等に徴兵されていた(p75)

    ・国家が常時維持できる兵力には歴史上の鉄の法則がある、そレは人口の約1%である、原則全員に兵役の義務があった紀元前2000年のエジプトでも、300万人の人口に対して2万人の兵を持ったに過ぎない(p76)日本では1873年から徴兵令が施行された、入営は甲乙丙丁の4つのランクの中の兵隊適格である甲種の中から抽選、日清戦争までは5%、以降でも10%、満州事変直前でも15%。第二次世界大戦では8−9割の根こそぎ動員となった(p77)

    ・新聞の記事中に挿絵に替わって写真が掲載されるようになったのは日露戦争から、新聞記事の口語体化は1918年の大阪毎日から(p92)

    ・1873年のウィーンとニューヨークの金融恐慌に端を発する「大不況」以降に各国が保護主義に方針を変えて、帝国主義のもとに植民地を囲い込みそれが原因で第一次世界大戦に至ったと見られたが、世界貿易のグラフを見る限り貿易量は20世紀に入って加速している(p96)

    ・イギリスは1717年に銀のアジアへの流出を止めるべく公定金銀比価を、1:15.21とした。これは当時の相場と比べて金が過大評価されていたために、人々は銀貨を退蔵して金貨を使うようになった、これが実質上イギリスを金本位制にしてしまった原因とされている(p98)

    ・日清戦争では速射砲を装備した軽快な巡洋艦を揃えて、大型艦を揃えた清国北洋艦隊に打ち勝った(p109)

    ・世界初の近代的戦艦である「ロイヤル・ソヴリン」級と基本設計が同じ1893年発注の戦艦、富士・八島の健造費は、1隻1050万円、現在の国家予算に例えると10兆円余りの船を2隻購入することになる(p117)

    ・上下運動のレシプロエンジンでなく、回転運動のタービン・エンジンを装備した「タービニア」号は、イギリスのいかなる警備艇も寄せない高速で逃げ回った、このためそれまではタービンの採用に消極的だったイギリス海軍はタービン推進の駆逐艦を2隻発注する、その後10年もしないうちにタービンは駆逐艦だけでなく主力艦のエンジンとして採用される。日本海海戦は戦艦「三笠」など蒸気レシプロエンジン同士の最後の戦いとなり、第一次世界大戦では、タービンエンジンが主力となる(p142)

    ・1853年のペリー艦隊来航は、日本に捕鯨船の補給基地が欲しかったからと教わったが、実はその直後に高価な鯨油は灯油にとってかわり、捕鯨船は北太平洋では不採算となった(p170)

    ・産業革命の先進国イギリスは1865年に出された赤旗法(馬車屋を守る法律)が障害となり、1896年にこの法律が失効するまで自動車の開発は活発に行われなかった、イギリスは鉄道で世界をリードしながらも、自動車の生産については、ドイツ・フランスに対して10年ほど遅れをとることになった(p184)

    ・1911年に、ガソリンとナフサの合計が、灯油を上回った、石油産業がガソリン中心の時代に入ったのは、ちょうど第一次世界大戦が始まる頃だった(p186)ディーゼルは高圧縮のために振動騒音が大きく、乗り心地が悪いが、メリットは、燃費性能とともに、燃料の引火点が高いことにある、被弾しても爆発しにくい(p188)

    ・第一次世界大戦では銃後の本来の発電用のダイナモであっても、逆に電気を通せば今度は電動機として作動することがわかった、これが巷間伝えられるモーターの発明の瞬間である(p190)

    ・クリミア戦争ではオスマン帝国はイギリスとフランスからの借款によって戦費を調達した、オスマンは中央に税収が集中しない制度的な問題もあり、1875年に国家破産を宣言して国際的な発言力を低下させた(p206)

    ・日露戦争後の日本は、日露戦争の戦費のための巨額な債務に苦しんでいた、元利返済のための国債費3割、軍事費3割、残りの4割で国家運営されていた、(p249)

    ・日露戦争後のポーツマス条約でロシアから承継した権益の期限は意外と短い、旅順・大連は1923年、満鉄経営権は1939年に失効(p253)

    ・日清戦争の敗北で、清は日本に賠償金2億両に加え、三国干渉による遼東半島還付金3000万両、合計日本円で3億4500万円支払った、当時の国家予算規模は8500万円、日清戦争戦費は1億5000万円(p264)

    ・戦争の勝敗の決定要因は、産業革命以前の戦争では、作戦の妙や兵士の勇敢さであったが、工業生産能力が鍵となった、フランスでは官僚、ドイツは軍部、イギリスは文民を中心とそれぞれが特色のある国内体制で対応した(p305)

    ・日露戦争において、日本とロシアは開戦後間も無く金本位制の維持を宣言した、これは戦時国債の海外発行に備えて国家としても信用力を維持しておくため(p311)

    ・1868年にはドイツにおいて、ユダヤ人への最後の法的束縛が解かれ、ギルドへの加盟、ドイツ人との通婚、居住地選択の自由が確保され、1871年にはユダヤ人に市民権が与えられた、政府機関、軍隊には差別は残されたままであるが(p320)

    ・絹の場合、原材料のかいこも国内農家から調達できるので、製品を海外に販売しただけで外貨収入となった、綿の場合は綿花の輸入が伴う(p382)

    ・第一次世界大戦中に、航空機において先進国から大きく下り残された、このため陸軍はフランス航空団、海軍はイギリス空軍を招いて学んだ(p402)

    ・ナポレオン戦争後のウィーン会議までは外交文書はフランス語で書かれるのが慣習であったが、アメリカの影響力拡大を反映して、初めて英語も公式言語に加えられた(p454)

    ・日本のスペイン風邪による死者は45万人、日露戦争の戦没者8万4000、関東大震災10万5000よりも大きな災害である(p488)

    ・ケインズの計算した、ドイツが支払うべき妥当な損害賠償額は、20億ポンド程度であった、日本円で200億円(一般会計歳出額14億円)(p490)最終的に、1320億金マルク(=約66億ポンド)となった、30年間に毎年20億金マルクと輸出額の26%の支払いということで決着した(p493)

    ・ドイツは1918年11月に休戦条約に調印したが、その際にドイツが考慮した条件は、米ウィルソン大統領が発表した「14箇条の平和原則」と、2月に同大統領によって議会で語られた「無併合・無賠償・無報復」の原則であった(p491)

    ・毎年の支払い原資には、ドイツ政府の財政黒字が必要、増税し財政支出を減ずると経済規模の縮小となるので、支払額は自ずと限度がある、金や外国通貨での支払いは、対外収支の黒字が必要であるとされた、(p494)1990年の再統一後にドイツは、ドーズ債、ヤング債の元利払いを再開し、2010年10月3日にすべての支払いを完了した(p496)

    ・日本において世界第3位だった商船隊の88%を喪失、乗務員の死亡率は43%(6万人)、海軍の16%、陸軍の23%を遥かに上回る数字である(p500)

    ・日本海軍における潜水艦の戦効は、戦艦・空母撃沈は60点の加点、3000トン以上の商船撃沈は7点、掃海艇や駆潜艇よりも低い評価であった(p501)

    2022年2月5日作成

    0
    2022年02月05日
  • 金融の世界史―バブルと戦争と株式市場―

    Posted by ブクログ

    メソポタミア文明からリーマン・ショックまでの金融の歴史を網羅。当時の政治的背景も併せて述べられており、立体的に理解できる内容となっている。

    0
    2021年08月29日
  • 日本人のための第一次世界大戦史

    Posted by ブクログ

    予備知識がほとんどなかったのもあってか、内容はかなり新鮮だった。とくに経済金融の面から多く知見がしめされているのがよかった。

    500ページ読むのは大変だったけど、読んでよかった。

    0
    2021年08月28日
  • 日本人のための第一次世界大戦史 世界はなぜ戦争に突入したのか

    Posted by ブクログ

    第一次世界大戦に至る国際関係とテクノロジーの関係性、対戦中の流れが1冊に整理されている。
    第一次世界大戦の全体像に、初めて触れようと思って手に取って、ちょうど良かった。

    0
    2021年03月07日
  • 日本人のための第一次世界大戦史

    Posted by ブクログ

     数年前の第一次世界大戦勃発百年の時期に関連書籍がかなり出るなどしたものの、なかなか全体像を理解することは難しかったが、本書はそのような思いに応えてくれる一冊である。

     一話読み切りのスタイルで全73話から成っているが、
    特に技術関係の記述が具体的で分かりやすく、戦争が一変してしまった背景が良く理解できる。特に、それまでの馬や刀槍、銃の戦争に代わって、軍艦と鉄道、銃器の発展、毒ガスや戦車、航空機の登場など、「20世紀の戦闘システム」が出現に至った経緯が平易に語られていて、あまり詳しくなかった技術関係の進歩について興味深く追いかけることができた。
     
     個々の戦闘について名前は聞いたことはあるくらいだったのだが、これも簡潔な叙述で、戦術的な意義や戦闘経過、その影響等がコンパクトにまとめられている。

     ドイツの敗北で戦争は終結したが、その戦後処理の失敗がワイマール共和国の不安定化を招き、ナチスの登場につながったということは良く知られたことである。ただ、休戦時ドイツ軍は疲弊の極みにあったのに、自国の領土を少しも失っていなかったということが、ドイツ国民が敗北を心底からは受け入れられなかったことに繋がった訳で、その辺りについても、本書は目配り良く気づかせてくれる。

     また、第一次大戦では日本軍の山東出兵の史実は知っていたが、地中海遠征のことなどは知らなかった。日本が主要当事者で悲惨な結果に終わった第二次大戦とは異なり、ことほど左様に第一次世界大戦全体を俯瞰することは難しい。

     本書は入門書ではあるが、政治・経済・軍事・金融・メディア・テクノロジーなどの幅広い観点から、戦争の背景・内実・影響を読み解いた(本書カバー紹介文より)、歴史に興味ある者には是非お勧めしたい一書である。

    0
    2020年12月23日
  • 金融の世界史―バブルと戦争と株式市場―

    Posted by ブクログ

    前半から中盤は、時代時代における金融がどういったものだったのかの説明。この辺りは通貨や利子の話なので、歴史が好きな人であれば素直に楽しく読めると思う。
    中盤で株式や債券が出始めたあたりから、歴史と金融の実態の解説が半々になって来る。株式や債券が何なのかわからない人には辛くなってくる。
    後半、デリバティブズやファイナンス理論のあたりまで来ると、一通りの簡単な金融と経済学の用語を知らないと、多分読めない。殆どの単語の説明が不足してるので。

    前半と後半で大分趣きが違う。
    誰であろうとも前半は読んで置いて損は無い。面白いし為になる。
    後半は、金融の意味はわかるがピンと来てない人(自分)の、教養の醸成にピッタリな内容。銀行とか証券会社とか良く分からないし怖い(これも自分)という人にオススメ。

    0
    2020年10月22日
  • 金融の世界史―バブルと戦争と株式市場―

    Posted by ブクログ

    金融が、古くは農業の発達から戦争、グローバル化など、人間活動の結果必要に迫られて発展し現在に至ることが良くわかった。金融の発展により歴史が動いていることもわかり、世界史の見方が変わった。

    0
    2020年10月31日