板谷敏彦のレビュー一覧
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前作日露戦争資金調達の戦いが面白かったので読んでみた。古代メソポタミアのハムラビ法典では貨幣より先に利子の概念が定められていた、ところから始まり、現代のリーマン・ショック後に至るまで金融の歴史を追っていく。範囲が広いだけにやや教科書的な簡素さもあって、のめりこんで読む、って感じにはならなかったが、それでもチャップリンの映画「街の灯」にまつわるエピソードや、筆者がニューハンプシャー州の土産物屋で買った「月へ行く鉄道」というビデオの舞台がブレトン・ウッズだったり多様な観点から結びつけてストーリーを紡ぐ博識さはさすが。そして思ったのは、〇〇GDPだとかの用語や株価のグラフの見方など、超基本的な知識は
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「はじめに」に書いてあるけど、御多分に洩れずわたしも、第一次世界大戦に関する知識が浅い。と言うかほぼない。ドイツが負けてハイパーインフレになったんでしょ程度。なんとなくそれも、と言うことで購入。
背景から戦後まで一通り分かる本になってて、素人が読むには十分。
金融の方が書いた本らしく、経済に関する記載が詳しいのは良い視点だった。変遷を後追いするだけでなく、その時のデータを並べると、結果が理解しやすくなる。
第一次世界大戦を通じて、技術がとてつもなく進歩したこと、経済の捉え方が大きく変化したこと、そして各国が社会の過渡についていけなくなっていった様子が、とっても分かりやすかった。
地政学的な -
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昨年(2017)末に読んだ本で、日本ではその後に多大な影響をもたらせた第二次世界大戦(太平洋戦争)が有名なので、その陰に隠れていますが、それまで世界を牽引してきた欧州にダメージをもたらせた「第一次世界大戦」を中心に解説された本です。
本来はすぐにでも終了すると考えられた戦争が、なぜ長引いてしまったかは、この本によれば戦争が、それまでのものと性格を変えて「総力戦」になったからだとされています。
戦争を遂行することで後に成長をもたらせる「技術革新」や「効率的な研究」が行われたメリットもあったのかもしれませんが、それにしても多大な人的な犠牲を伴った一大事件であることには変わりありません。
その -
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13章以降、金融の基礎知識がないため挫折気味。しかし、前半の大航海時代などの話は胸踊る楽しさだった。金融の世界史
世界史をお金の観点から考える本。自分自身来年から金融業界で働くことに決まったので、金融の起源に興味をもって読んだ。大航海時代が、いまでいうベンチャー投資のような時代であったという話が面白い。航海を志す人々が、資金力のある王家にプレゼンをして、資金援助をもらい、航海が成功した場合に香辛料などの売買で生まれた富を配当金として受け取るという仕組みであったという。コロンブスはインドへの計画を様々な王家にプレゼンテーションをして何とか資金援助を受けて航海に出ていった。そうした歴史的航海の数 -
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久しぶりに読み応えのある本に出会えた。「日露戦争」といえば、司馬遼太郎の「坂の上の雲」が国民文学として有名で、その批判的本も数多く出版されているが、日露戦争の歴史的経緯や当時の政治情勢の推移をも詳細に扱っている点ではなんといっても「司馬遼本」は抜きん出ている。
本書は、その戦争の「資金調達」というもうひとつの戦いに焦点を絞っている点が実に面白く興味深い。
また「高橋是清」については、何冊もの本がでているが、「日露戦争時の活躍」に焦点を絞って取り上げた本は他に見当たらないのではないか。
「戦争」に必要な「補給」と「兵站」一つ取り上げても「資金」がなければ何一つできないことはわかるが「国家的 -
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ネタバレ・学校の教科書で習った「日露戦争」。司馬遼太郎『坂の上の雲』で描かれる英雄的な明治期の日本人たちの雄姿は記憶に新しい。本書は華やかな戦物語の裏で戦費調達の使命を帯び欧米に向かった高橋是清と深井英五を中心に、当時の金本位制を元に為替レートを安定させた20世紀初頭の国際金融市場の動きを追う。二人は、当時二流以下の扱いだった日本国債発行をいかにして可能にしたのか?この物語は資金調達に奔走した人々の軌跡、金融版「坂の上の雲」だ。
・当時、日露のGDP/人は大体同じ水準だった(しかし人口や国土の広さ等国力のその他要素はロシアのほうが上)というのが意外だった。
・この本を読んでユダヤ資本(JPモルガン等) -
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金融の観点から書かれた世界史の通史です。金融にかかわる部分については、当然、日本に関する記述もあります。古代において貨幣の考え方がすでに出来上がっていたのも興味深かったのですが、株式会社が歴史に登場してきた大航海時代辺りの解説が一番面白かったです。
イギリスがまだ新興国だった時代、スペインから独立したばかりのオランダが実力をつけて、アムステルダムとロンドンの関係が、ニューヨークと上海・インド辺りの関係だったころのイメージが私の中ではダブりました。江戸幕府がオランダとのみ交易したのは、つい最近までアメリカとメインに貿易していたのと重なりますね。
国債や紙幣がなぜ発行されてきたか、その背景には -
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日露戦争と言えば坂の上の雲のイメージしか持ってない人は読んでおかないとダメといえるテーマ。
戦争といえば兵隊の話ばかりが目立つがお金がないと話は始まらない。近代戦は以前より格段にお金が重要になるのだが、当時の日本は生産力も資源も不足していたので外貨がなければ戦争どころか国家の維持すら困難。そんな日本政府(高橋是清)が金融面でどのように立ち回っていたのかを当時の資料や状況を調べて書かれている本でした。
特に当時の国際金融市場の変動から国際社会は日露戦争の行方をどのように見ていたのかを推察しているのは興味深かったです。
明らかに国力を越えた借り入れをしているのだが、それを公表してしまうと必要な借 -
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日露戦争を資金調達という視点から見た本。
国際利回りという視点からみた当時の日露に対する評価や、資金調達を行った高橋是清のリレーションの範囲・深さ等、興味深い内容だった。
当時の国債発行市場や主要な投資銀行の情報なども楽しめた。
現代の日本への教訓にも富んだ本であると思う。
筆者があげている教訓としては以下の3つである。
1.公債の発行は増税の先送りでしかない。
2.市場へのアクセス、流通市場でなく発行市場へのアクセスは別個であるということ。
3.インベスター・リレーションの重要性、投資先・調達先の分散によるリスク回避が重要であるということ。 -
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ネタバレ著者の板谷氏は、証券業がバックグラウンドの方。海外駐在や機関投資家営業等を経験し、キャリアの最中に著述も始めた模様。
本作は、そのような板谷氏による、金融史を世界レベルで見たまさに金融世界史の本。
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まず読んで感じたのは、良くも悪くも広範な守備範囲、ということ。
よく言えば包括的となるのでしょうが、悪く言えばまとまりがない、という事になりましょうか。また、証券業出身の方らしく、株式マーケットに関する記述が多かったという印象です。
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上記の印象は、私の過去の読書から来ております。
先ず、米国金融史でいうと『アメリカ金融革命の群像』をかつて読みました。こちらは米国の近代金融史