池上英洋のレビュー一覧
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神話、聖書、叙事詩、碑文。メソポタミアやエジプトの古代の物語的要素が取り込まれた記録物を基に、ピラミッドやウルのスタンダードなどの考古学的遺物の話も交えつつ、古代オリエント文明の実相を広く描いた一冊。少しまとまりがない気もしたが、メソポタミア文明がシュメール→アッカド→アッシリアと続き、エジプトをも征服したアケメネス朝ペルシアのもと、現在のイランからエジプトまでの領域を支配するオリエントの一大帝国が成立し、それが更にギリシャを支配下に置いたマケドニアのアレクサンドロス大王によって征服される事で、現在の西洋文明における文化的礎となった事が改めて学び直せて良かったです。メソポタミア南部のシュメールの洪水伝説がのちのオリエントの民族の物語にも引き継がれ、ユダヤ教の旧約聖書やオウィディウスの『変身譚』に記された事、ハンムラビ法典が「損害に見合う罰の相場を示しただけの、非常に冷静で客観的な法典」である事など始めて知る事も多く、肩の力を抜いて楽しく読む事ができました。
個人的にはシュメールについてもう少し詳しく知りたいと思ったので、機会があればまた関連の本を探して読みたいと思いました。あと、ヘロドトスの『歴史』を読みかけているので、それを促す契機となりそうです。ただ通史として知りたい方は、別に山川出版社から出ている教科書的な書籍に一度目を通した方が良いのかな、という気がしました。オリエントの故事を楽しく知りたい方には最適だと思います。 -
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直近読んだマンガの影響などもあって、「残酷」「残虐」の概念、あるいはもっと個別に「死」や病い、拷問、刑罰、それらに起因する身体の損壊、変形、腐敗のイメージを(あえて)描くことの意味、それを(あえて)観たり想ったりすることの意味について何となくの関心を覚えていて、本書を手にとった。
副題は「西洋世界の裏面をよみとく」。多くの絵画や図像を取り上げて短いコメントを付すものだから、学術的な分析を示すものではなく、したがって「裏面」という表現に端的に表されるようなアナクロニズムを非難しても仕方ないとは思う。
残念なのは「残酷」ということばの意味の曖昧性にもよるのだろうけれど、今日私たちが嫌悪感や恐怖心とともに観ることとなるグロテスクなもの(「Histroy of Grotesque Art」というもう一つの副題が指すもの)と、人間の生の儚さなどを思われる悲劇的な光景とが本作の中で区別立てされていないことか。
ともあれそうした「残酷」表現もその題材となった処刑や拷問といった現実のできごとも、同時代を生きた人びとにとっては、私たち(という範疇で括られるのが具体的にどのような人びとなのかも問題だけど)が感じる嫌悪や恐怖とはことなる感情とともに受け取られていたのではないかと思う。
ややマクロな視点で見れば、不思議なくらい興奮状態に陥りやすい、他人の痛みに底知れぬ鈍感さを示す群衆がおり、よりミクロな個人レベルで見れば、死や身体の腐敗・分解に対して今日ほどの忌避感を感じていないし実際仮に感じようとしてもそれが許されない状況下にある精神が示す死生観がある。──そういったことをあれこれ考えながら読むにはページ数も手頃なよい本である。 -
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ネタバレこの方の本は『恋する西洋美術史』に引き続き2冊目。
全図版がカラーで、しかも魅力的。
新書は大抵読んだらすぐ手放してしまうけど、これはとっておこうかな。
女たちの物語の章、フェッラーラで、ルクレツィア・ボルジアが出てきたので、このあたりの物語をいつか惣領冬実さんの絵で(チェーザレ/KCモーニングコミックスのこと)読めるだろうか、とニヤニヤ。
イザベラ・デステは塩野七生さんの本でしか読んだ事が無いから、頭の中でそちらも思い出しながら読む。
唯一行った事のあるフィレンツェ、やっぱり一度でも行った事、実物を見た事があると、文章を読んでいてもイメージが広がる。
以前、付き合っていた人にフィレンツェとヴェネツィアに行くのが夢なんだ、と言ったら、どこにあるか知ってるの?と返されて心底げんなりしたものだけど、斯く言う私だって、ここに出ている都市の事、知らないことばっかり。
だから面白いんだけど、物事知った気になるものじゃないな、と反省。
あと、学者さんの文章って、正確に書こうとして回りくどくなったり、ってありがちだけど、この本はそんなことなくて、ワクワク感を掻き立ててくれる気がする。 -
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「西洋画」が苦手だった私。現代美術はある程度解釈の仕方を観る側にゆだねてくれている感じがある一方で、西洋画は「観るルール」だとか「正しい解釈」が存在しているというイメージから。恋愛という身近なキーワードで西洋美術史をひもといていくというこの本を読めば、少しでも理解が深まるだろうか、という期待から購入。
読んで思ったのは、昔の人も、昔の神様も、性にまつわるあれこれに翻弄されていたんだなあということ。現代の自分たちと何ら変わりなく。ただそこに時代背景の違いが顕著に表れていて、そのギャップが面白い。
現代には性の記録や妄想を、あんなにはっきりとキャンバスに残している画家はいるんだろうか?未来の人にもこんなシンパシーを感じてもらうために、ぜひ取り組んでいただきたいものです。
たぶん同じシリーズで、食事から西洋美術史を見るというものもあったので、次はそれを読みたい。 -
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恋愛を画題にした名画にまつわるお話。
新書であるからして、それほど体系だった感じではなく、エピソード的。絵画から紐解く(あるいは垣間見る)西洋性愛史、といった趣き。
前半は比較的お行儀よい印象だが、後半は肉食系色恋のすさまじさの片鱗も漂わせる。
巻末の参考文献が親切だ。奥深そうな分野であるし、この森に入りたくなったら、こうした文献が手引きになるのだろう。
*新書なので仕方ないとは思うのだが、絵が小さくて、白黒のものがほとんどなのが残念。「画面右端にこれこれこういう男がこんな表情をしていて・・・」って言われてもわかりません、先生。こういうのは、大教室でスクリーンにスライドを大きく映しつつ講義してもらえばよいのかもなぁとちょっと思った。
*巻頭の『ピュグマリオンとガラテア』(ジャン・レオン・レジーム)が好きだ。ニューヨーク・メトロポリタン美術館にあるらしい。 -
Posted by ブクログ
西洋美術史というか、
『絵画を通して学ぶ西洋文化史』
といったほうが適している内容だと思った。
私はギリシャ神話とか世界史には興味が無いんだなーと実感した。。
でも昔の思想や出来事が今の美術に与える影響って大きいし、強制的に詰め込まなきゃいけないのかもしれぬ。
「接吻」をテーマにした絵画を何作か考察している部分で、最後の1作として紹介されていたマグリットの《恋人たち》が衝撃だった!
布で顔を覆った二人の男女がキスしていて、昔にはなかったキスの「匿名性と、その盲目性」を象徴しているんだそう!!
「唇は直接触れることなく、ただ行為としての、ただ形式としてのキスだけが描かれている」。。。
確かに、現代は軽い気持ちでキスする人が多いと思う。私も流されてしちゃったことが多々あるし(/_;)
キスの神聖性が薄れてきているのは確かだと思う。
まさに、「キスの美術史の最期を飾るにふさわしい作品」です!!!!!
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ダンビーの《愛の絶望》は見た瞬間にぐっと引き込まれた。
女本位に描かれている作品がやっぱり好き。
実物を見てみたいなぁ。
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あと、フュースリっていう画家の《男と三人の女たち》っていう作品は…刺激的すぎでした。刺激っていうか吐き気が…笑
ただ、「ここでは男性は自主性を持たず、女たちのなすがままである。彼は奉仕を強いられ、その報酬として快感が与えられる。」という解説にはなるほどと思った。
ふとボーヴォワールの『第二の性』に「絶頂の快感を経験しないで死ぬ女は多い。しかし、男にとって快楽は求めれば必ず到達できるものである。」って書いてあったのを思い出した。たしか女性の9割がイケないまま人生を終えるんだっけ。
自分だけイッちゃう分、女の人をいたわれってことなのかしら。。
ともかく、私は女性をファム・ファタール(※)として扱ってくれる男の人が好きですっ
※男の運命を握る女。男を破滅し、堕落させる。