パトリシア・ハイスミスのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
リプリーシリーズの5作目であり、最終作。
2作目『贋作』の続編にあたるため、3、4作目をすっ飛ばして、つい読んでしまった。
「ディッキー・グリーンリーフだ。おぼえてる?」リプリーが若き日に殺したディッキーを名乗る者から電話がかかってきた。一体誰が?なぜ…?
今まで殺人を犯しても罪悪感ゼロで過ごしてきたリプリーが、最終作では嫌がらせを受ける立場になる。
じわじわと追い詰められるリプリーを見ていると、最初は嫌いだった彼が可哀想に思えてきた。
シリーズを追うごとに、リプリーへの感情が「嫌悪」から「共感」へ、最終作では「応援」へと変化していったのは、自分でも驚きだった。
家政婦マダム・アネットの -
Posted by ブクログ
映画『リプリー』が大好きなので、原作をずっと読んでみたいと思っていた。
イタリアに行ったまま帰らない息子ディッキーを連れ戻して欲しいと、富豪に頼まれたリプリーだったが…
読んでいると、マット・デイモンとジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウの映像が自然と脳内再生される。
倒叙が大好きなので、「バレる!バレる!もうダメだ!」と何度も叫びたくなるような、ハラハラどころではない緊張感がたまらない。
肩が凝るほどの張りつめた空気に、「早くバレて、楽にしてくれ」と何度も願ってしまった。
イタリアの明るくて美しい景色と、リプリーの内面に渦巻く劣等感や不安が対照的。
リプリーは、あれほどの知性と鋭い -
Posted by ブクログ
素晴らしい…
なぜも、こんなに、惹き込まれるのか。
まるで動く絵画を観ているかのような小説。
しかし、二度と叶わない望みとしては、、
映画を観る前に原作を読みたかった。
私は『リプリー』→『太陽がいっぱい』→『原作本』の順だったのだけど、
リプリーの印象があまりにも強烈すぎて……
終始マットデイモンとジュードロウ、ホフマン、パルトロウの姿で物語が進行していく笑笑笑
かなり不思議な感覚だったなあ
もしかしたら、このイマジネーションは映画を観た故のものだったのか……
ガチ記憶喪失でもしない限り、映画の影響ゼロで読むことは叶わないというもどかしさ。
しかし逆に言えば、だからこその楽しみ方ができ -
Posted by ブクログ
ネタバレ世界的に有名なサスペンス小説家パトリシア・ハイスミスの作品。具体的な、もしくは小手先のテクニックではなく、すべての物語りを作る人に向けて書かれた指南書だった。
ハイスミス自身はサスペンス小説家という枠に捉われることなく、自身の心にある世界をただ描き続けていただけだったようだ。
第1章 アイディアの目
第2章 主に経験を用いることについて
第3章 サスペンス短編小説
第4章 発展させること
第5章 プロットを立てる
第6章 第一稿
第7章 行き詰まり
第8章 第二稿
第9章 改稿
第10章 長編小説の事例『ガラスの独房』
第11章 サスペンスについての一般的な事柄
本書を読むとパトリシア・ハ -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白いミステリー書かれるだけあって、話の展開がとても秀逸。特にニョーヨークで2人が再会した場面からラストにかけて。
幸せの絶頂から一気に地に落ちて、神様のような存在だったキャロルは自分と変わらないただの人間だと気付いて…
そうしたテレーズの変化を察しながらも一緒にいたいと願うキャロルの純粋な思いに胸が締め付けられるほど切なくなった。
前半は超然とした、余裕のある大人の女性だったけど、だんだんと人間味が出てきて、臆病なところも垣間見えてくるキャロルのことが読んでいて大好きになってしまった。
別れを経て、華々しい世界に足を踏み入れようとするテレーズは、キャロルとの経験を踏み台にできる若さがあっ -
-
Posted by ブクログ
ネタバレディッキー事件のあと、結婚しパリ郊外に住んでいるトムの元にロンドンから「至急来てくれ」と一本の電話が入る。トムの一言からはじまった現代画家の贋作事業が、コレクターの一人に勘付かれたのだ。死んだ画家のダーワットに変装しコレクターのマーチソンと対峙したトムは贋作疑惑を晴らすため画策するが、仲間の一人であるバーナードが罪悪感から思わぬ行動にでてしまう。「太陽がいっぱい」で逃げおおせたトムが新たな詐欺に手をだし、自ら境地に追いこまれていく、トム・リプリーシリーズ第二作。
死ぬまで売れなかった現代画家を、その悲劇によって売りこみ、贋作でビジネスをするというのが皮肉で面白かった。ダーワットが有名になっ -
Posted by ブクログ
ネタバレニューヨークで国税庁職員のふりをして詐欺をはたらいていたトム・リプリーは、かつての友人ディッキー・グリーンリーフの父親から「ヨーロッパへ行って帰ってこない息子を呼び戻してほしい」と依頼を受ける。トムがイタリアのモンジベロを訪ねると、ディッキーはマージという女性と共に悠々自適に暮らしていた。トムは徐々にディッキーと距離を縮め一つ屋根の下で暮らすまでになるが、二人のあいだには常にマージがいた。そしてある決定的な事件を境にトムはディッキーから疎まれてしまい、傷心のトムはディッキーを殺し彼になりすますことを思いつく。サンレモへの二人旅の途中、ディッキー殺害計画を実行したトムの危険な逃避行がはじまる。映
-
Posted by ブクログ
舞台美術のデザイナーになる夢を追いながらNYのデパートで働く19歳のテレーズは、ある日接客した女性客を忘れられず、伝票から割り出した住所宛にクリスマスカードを投函する。それがキャロルとの運命的な出会いのはじまりだった。交際中の恋人リチャードとの関係に違和感を抱いていたテレーズは、キャロルへの燃えさかる感情に自分はやっと本当の恋を知ったのだと感じる。キャロルは夫と別居中で、一人娘の親権をめぐって争っている最中であることを明かし、娘を夫に預けているあいだの気晴らしとしてテレーズを車での旅行に誘う。旅中、ついに二人は心を打ち明けあい結ばれるも、キャロルの夫に雇われた探偵が二人を尾行していることが判明
-
Posted by ブクログ
ヒッチコックの代表作の原作。映画とは大きく異なるストーリーだがスリル満点の展開は原作も負けず劣らず。
ヒッチコックの映画のイメージで前知識なく読み始める。良い意味で期待を裏切る展開。
交換殺人、今で言うサイコパスとストーカー的な話。追い詰められていく主人公の心情。そして嫌悪しつつも引き寄せられていくアンビバレントの感情。
おおむねの展開は予想がつくものの文章だけでこれだけの緊迫感、サスペンスはそうはないだろう。
映画とは全く別に楽しく読めました。映画も久々に再視聴してみようかな。
筆者のもう一つの代表作がフランス映画の原作「太陽がいっぱい」だとか。映画としては全く異なるジャンルに思え -
Posted by ブクログ
クリスマスも近づいて参りましたので、「キャロル」を。
実は映画化された当時に購入したまま、積読となっておりました。
イヤミス(嫌なミステリー:読後感が良くない)の祖と呼ばれるパトリシア・ハイスミスの作品ですが、今作は異例の恋愛小説だそうで。
主題としてはNYに住む女性二人の恋愛模様と紆余曲折……と言ったところでしょうか。
この作品の時代背景と詳しい経緯については「あとがき」や他の方のレビューにもある通りなので割愛させていただくこととして、途中で中だるみというか、読んでいてつまらないなと(個人的にですが)思える箇所を少しずつ挟みながらも、やはり最初とクライマックスから最後までは一気に引き込ま -
Posted by ブクログ
とんでもなくよかった。控えめに言って最高。
映画を見て、次の日に原作を購入した。
映画では描かれていなかったテレーズの想いが書かれていてすごく共感した、キャロルと出会った時のテレーズと同い年の私。
最後キャロルの同棲の話を断った後のパーティで、美人な女優さんに好意を抱かれているのを見てやっぱりテレーズは相当美人なんだなと思ったし、映画のキャストさんであるルーニーマーラで当てはめると、そりゃあモテる…と思った。テンション上がる。今でさえそうなんだから昔はかなりLGBTへの差別がキツくて、相当辛かっただろうし葛藤しただろうなと思う。今でさえ、同性で付き合うってなった時に間違ってるとか言わせてし