パトリシア・ハイスミスのレビュー一覧

  • 死者と踊るリプリー

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    リプリーシリーズの5作目であり、最終作。
    2作目『贋作』の続編にあたるため、3、4作目をすっ飛ばして、つい読んでしまった。

    「ディッキー・グリーンリーフだ。おぼえてる?」リプリーが若き日に殺したディッキーを名乗る者から電話がかかってきた。一体誰が?なぜ…?

    今まで殺人を犯しても罪悪感ゼロで過ごしてきたリプリーが、最終作では嫌がらせを受ける立場になる。
    じわじわと追い詰められるリプリーを見ていると、最初は嫌いだった彼が可哀想に思えてきた。
    シリーズを追うごとに、リプリーへの感情が「嫌悪」から「共感」へ、最終作では「応援」へと変化していったのは、自分でも驚きだった。

    家政婦マダム・アネットの

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    2025年09月12日
  • キャロル

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    4.7

    軽い気持ちで読み始めたのに読み終わった時にはすごくいい気持ちになったし、傑作!と思ってしまったことが自分でも意外でした。
    この時代の小説は車で逃避行(のような)するシーンが描かれたものが多いような気がします。トレンドだったのだろうか。

    映画版も観なければ!

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    2025年09月12日
  • キャロル

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    半世紀以上前のニューヨークを想像しながら読んだ。古き良き時代。しかし、現代以上に、偏見や差別も酷かった時代。愛するとは何か、愛されるとは何か。愛とは理屈ではない。この本を読んで、強くそう思った。

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    2025年08月26日
  • 太陽がいっぱい

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    The Talented Mr. Ripley
    Patricia Highsmith, 1955

    有名な映画「太陽がいっぱい」の原作。映画も見てストーリーは知っているのにそれでも面白い。
    いかに彼が冷淡で神経質で、いかにイタリアの広い青い空と対照的か、

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    2025年08月06日
  • 太陽がいっぱい

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    映画『リプリー』が大好きなので、原作をずっと読んでみたいと思っていた。

    イタリアに行ったまま帰らない息子ディッキーを連れ戻して欲しいと、富豪に頼まれたリプリーだったが…

    読んでいると、マット・デイモンとジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウの映像が自然と脳内再生される。

    倒叙が大好きなので、「バレる!バレる!もうダメだ!」と何度も叫びたくなるような、ハラハラどころではない緊張感がたまらない。
    肩が凝るほどの張りつめた空気に、「早くバレて、楽にしてくれ」と何度も願ってしまった。

    イタリアの明るくて美しい景色と、リプリーの内面に渦巻く劣等感や不安が対照的。
    リプリーは、あれほどの知性と鋭い

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    2025年08月03日
  • 太陽がいっぱい

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    素晴らしい…
    なぜも、こんなに、惹き込まれるのか。
    まるで動く絵画を観ているかのような小説。

    しかし、二度と叶わない望みとしては、、
    映画を観る前に原作を読みたかった。
    私は『リプリー』→『太陽がいっぱい』→『原作本』の順だったのだけど、
    リプリーの印象があまりにも強烈すぎて……
    終始マットデイモンとジュードロウ、ホフマン、パルトロウの姿で物語が進行していく笑笑笑
    かなり不思議な感覚だったなあ

    もしかしたら、このイマジネーションは映画を観た故のものだったのか……
    ガチ記憶喪失でもしない限り、映画の影響ゼロで読むことは叶わないというもどかしさ。

    しかし逆に言えば、だからこその楽しみ方ができ

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    2025年08月01日
  • サスペンス小説の書き方

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    ネタバレ

    世界的に有名なサスペンス小説家パトリシア・ハイスミスの作品。具体的な、もしくは小手先のテクニックではなく、すべての物語りを作る人に向けて書かれた指南書だった。
    ハイスミス自身はサスペンス小説家という枠に捉われることなく、自身の心にある世界をただ描き続けていただけだったようだ。

    第1章 アイディアの目
    第2章 主に経験を用いることについて
    第3章 サスペンス短編小説
    第4章 発展させること
    第5章 プロットを立てる
    第6章 第一稿
    第7章 行き詰まり
    第8章 第二稿
    第9章 改稿
    第10章 長編小説の事例『ガラスの独房』
    第11章 サスペンスについての一般的な事柄

    本書を読むとパトリシア・ハ

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    2025年06月18日
  • キャロル

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    ネタバレ

    面白いミステリー書かれるだけあって、話の展開がとても秀逸。特にニョーヨークで2人が再会した場面からラストにかけて。

    幸せの絶頂から一気に地に落ちて、神様のような存在だったキャロルは自分と変わらないただの人間だと気付いて…
    そうしたテレーズの変化を察しながらも一緒にいたいと願うキャロルの純粋な思いに胸が締め付けられるほど切なくなった。
    前半は超然とした、余裕のある大人の女性だったけど、だんだんと人間味が出てきて、臆病なところも垣間見えてくるキャロルのことが読んでいて大好きになってしまった。

    別れを経て、華々しい世界に足を踏み入れようとするテレーズは、キャロルとの経験を踏み台にできる若さがあっ

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    2024年09月20日
  • サスペンス小説の書き方

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    60年前の著書と思えないほど古びない内容でした。題名で誤解を生みそうですが、サスペンスという分野はほぼ関係なく読めます。一般的にフィクション小説を書こうとしている人なら普遍的に通じる話がほとんどだと思います。
    著者の考え方、感じ方がとても自分には合っていて、読後は付箋だらけになりました。特に行き詰まった時や失敗についてどう捉えるか、というのを扱った指南書はなかなかなく、他の人がどうしているのかとても気になっていた部分でもあり、非常に参考になりまた勇気づけられました。いつでも読み返せるよう本棚に置いておきたい一冊です。

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    2024年08月17日
  • キャロル

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    解説にある通り、眠い目を擦りながら夢中で読み切ってしまった。どうしてやめられないのか不思議~。
    「見知らぬ乗客」で初めて著者の作品を体験し、二作目がこちらで、途中までサスペンスと思い込んでいた。裏表紙の梗概を見て魂消たが、それはそれでホッとした。
    河出文庫のハイスミス作品の装丁、全て良すぎる。手に取らずにいられない。

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    2024年05月10日
  • 太陽がいっぱい

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    ネタバレ

    2023年一番の作品でした。
    初めはグレート・ギャッツビーと同じ系統かと思ったものの、まったく違うものでした。
    トムの行動や、できごとにどう思ったかということは細かく書かれているものの、心情についてはあまり書かれていないよう思う。けれども、トムの閉塞感や焦燥感、嫉妬なんかがじわっと迫ってくる。トムとフィリップとマージの関係が、よくある痴情のもつれた三角関係におさまらないとことが興味深い。

    映画も見てみたけれども断然こっちがいい。
    アラン・ドロンの色男ぶりはすごいですけど。
    リプリーも見てみたい。

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    2024年01月30日
  • キャロル

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    “恐れていながら人を愛することなんて出来はしない。恐れと愛は両立しない。ふたりでいることで日ごとに強くなっているというのに、なぜ怯える必要があるのだろう? 昼だけではなく夜ごとにも。同じ夜は二度となく、同じ朝も決して訪れなかった。ふたりは一緒に奇跡を紡ぎ続けていた。” 

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    2023年06月19日
  • キャロル

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    「見知らぬ乗客」でサスペンス作家として世に名を轟かせたパトリシア・ハイスミスが、1952年に匿名(別名義)で出版した恋愛小説。

     心情描写の詩的比喩が多く、若く主観的なテレーズが成長していく姿とリンクしていて美しい。
    印をつけて大事にとっておきたい文章がいくつもあった。
    映画も小説も忘れられぬ作品。

    " 古典とは時代を超越した、人間の業を描くものだと思います "






    *余談 : 当時は「ザ・プライス・オブ・ソルト」として出版され、後に「キャロル」と改題されている。

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    2022年02月21日
  • 贋作

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    ネタバレ

    ディッキー事件のあと、結婚しパリ郊外に住んでいるトムの元にロンドンから「至急来てくれ」と一本の電話が入る。トムの一言からはじまった現代画家の贋作事業が、コレクターの一人に勘付かれたのだ。死んだ画家のダーワットに変装しコレクターのマーチソンと対峙したトムは贋作疑惑を晴らすため画策するが、仲間の一人であるバーナードが罪悪感から思わぬ行動にでてしまう。「太陽がいっぱい」で逃げおおせたトムが新たな詐欺に手をだし、自ら境地に追いこまれていく、トム・リプリーシリーズ第二作。


    死ぬまで売れなかった現代画家を、その悲劇によって売りこみ、贋作でビジネスをするというのが皮肉で面白かった。ダーワットが有名になっ

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    2020年12月24日
  • 太陽がいっぱい

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    ネタバレ

    ニューヨークで国税庁職員のふりをして詐欺をはたらいていたトム・リプリーは、かつての友人ディッキー・グリーンリーフの父親から「ヨーロッパへ行って帰ってこない息子を呼び戻してほしい」と依頼を受ける。トムがイタリアのモンジベロを訪ねると、ディッキーはマージという女性と共に悠々自適に暮らしていた。トムは徐々にディッキーと距離を縮め一つ屋根の下で暮らすまでになるが、二人のあいだには常にマージがいた。そしてある決定的な事件を境にトムはディッキーから疎まれてしまい、傷心のトムはディッキーを殺し彼になりすますことを思いつく。サンレモへの二人旅の途中、ディッキー殺害計画を実行したトムの危険な逃避行がはじまる。映

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    2020年07月25日
  • キャロル

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    舞台美術のデザイナーになる夢を追いながらNYのデパートで働く19歳のテレーズは、ある日接客した女性客を忘れられず、伝票から割り出した住所宛にクリスマスカードを投函する。それがキャロルとの運命的な出会いのはじまりだった。交際中の恋人リチャードとの関係に違和感を抱いていたテレーズは、キャロルへの燃えさかる感情に自分はやっと本当の恋を知ったのだと感じる。キャロルは夫と別居中で、一人娘の親権をめぐって争っている最中であることを明かし、娘を夫に預けているあいだの気晴らしとしてテレーズを車での旅行に誘う。旅中、ついに二人は心を打ち明けあい結ばれるも、キャロルの夫に雇われた探偵が二人を尾行していることが判明

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    2020年05月22日
  • 見知らぬ乗客

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    ヒッチコックの代表作の原作。映画とは大きく異なるストーリーだがスリル満点の展開は原作も負けず劣らず。

    ヒッチコックの映画のイメージで前知識なく読み始める。良い意味で期待を裏切る展開。

    交換殺人、今で言うサイコパスとストーカー的な話。追い詰められていく主人公の心情。そして嫌悪しつつも引き寄せられていくアンビバレントの感情。

    おおむねの展開は予想がつくものの文章だけでこれだけの緊迫感、サスペンスはそうはないだろう。

    映画とは全く別に楽しく読めました。映画も久々に再視聴してみようかな。

    筆者のもう一つの代表作がフランス映画の原作「太陽がいっぱい」だとか。映画としては全く異なるジャンルに思え

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    2020年02月22日
  • キャロル

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    クリスマスも近づいて参りましたので、「キャロル」を。
    実は映画化された当時に購入したまま、積読となっておりました。

    イヤミス(嫌なミステリー:読後感が良くない)の祖と呼ばれるパトリシア・ハイスミスの作品ですが、今作は異例の恋愛小説だそうで。
    主題としてはNYに住む女性二人の恋愛模様と紆余曲折……と言ったところでしょうか。

    この作品の時代背景と詳しい経緯については「あとがき」や他の方のレビューにもある通りなので割愛させていただくこととして、途中で中だるみというか、読んでいてつまらないなと(個人的にですが)思える箇所を少しずつ挟みながらも、やはり最初とクライマックスから最後までは一気に引き込ま

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    2019年12月16日
  • キャロル

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    恋愛小説
    デパート働くテレーズはお客のキャロルに一目で恋に落ちる。夫と子供がいるキャロルとの交際はテレーズに多くの葛藤をもたらす。一度はキャロルとの別離を決意し、仕事を選ぶテレーズだが、やはりキャロルのもとへ。

    先に映画を見たのだけど、セリフが少なく表情や背景で心情を折っていかなければならないので、彼女たちの気持ちがわからなかった。
    小説はテレーズの視点で描かれる。人を恋い慕い欲する心情が丁寧に書かれている。


    アメリカを車で旅するって疲れそう。

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    2019年05月27日
  • キャロル

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    とんでもなくよかった。控えめに言って最高。
    映画を見て、次の日に原作を購入した。
    映画では描かれていなかったテレーズの想いが書かれていてすごく共感した、キャロルと出会った時のテレーズと同い年の私。


    最後キャロルの同棲の話を断った後のパーティで、美人な女優さんに好意を抱かれているのを見てやっぱりテレーズは相当美人なんだなと思ったし、映画のキャストさんであるルーニーマーラで当てはめると、そりゃあモテる…と思った。テンション上がる。今でさえそうなんだから昔はかなりLGBTへの差別がキツくて、相当辛かっただろうし葛藤しただろうなと思う。今でさえ、同性で付き合うってなった時に間違ってるとか言わせてし

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    2019年01月21日