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トム・リプリーは天才画家の贋物事業に手を染めていたが、その秘密が発覚しかける。トムは画家に変装して事態を乗り越えようとするが……名作『太陽がいっぱい』に続くリプリー・シリーズ第二弾。
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Posted by ブクログ
ミステリーというのか犯罪小説というのか。 悪事を働いて置きながら、自分本位な理屈で、解決方法として簡単に人を殺める。 露見しそうな時にでも、逆に、隠しごとを誰かと共有できることすら、ギリギリのラインでどこか喜びを感じていたり、 すべては自らの脚本、監督、主演による劇の一幕。 生まれながらの悪党が覚醒...続きを読むしたかのよう。
『太陽がいっぱい』のリプリーに、続編があったなんて。前作から6年後を描いた第二作。 舞台は前作の明るいイタリアから一転して、太陽の少ない冬のフランスへ。 リプリーはフランスの大富豪の娘と結婚し、優雅な生活を手に入れた…はずなのに、またしても悪事に手を出し、天才画家の贋作販売をしている。 え?なん...続きを読むでよ?せっかく憧れの生活を送れるようになったのに…。 お金と幸せを手に入れても、リプリーの本質部分は全く変わってなかった。 それにしても、またもや大富豪の娘に気に入られるとは、やっぱりその才能はすごい。 「贋作を描こうとする努力が、最後には努力の域を脱し、その作品が第二の本性になるのではないだろうか?」 そんなリプリーの独特の論理が炸裂する。 正当化というより、心からそう思っているんだろうな。 前作では、憧れの富豪の息子ディッキーになりすまし、そのセンスと財力を取り込み、理想像をつくりあげたリプリー。 自分は「贋作」であっても、努力によって「本物」になったと信じているのかもしれない。 リプリーとは対照的に、贋作者の画家は罪悪感に押しつぶされていく。 リプリーと贋作者とのちょっと理解できない奇妙な関係は、ハイスミスならではの世界観。 今回も行き当たりばったりで利己主義のリプリーは、死体を運ぶ時に「何でこんなに重いんだ!」とまさかの逆ギレ。 死んだ後まで文句を言われるなんて被害者が気の毒すぎる…罪悪感ゼロのリプリーは容赦ない。 そんな全く共感できないリプリーなんだけど、常に彼の頭の中を覗かされているので、人間くさいところも見えてきて、なぜだか気になってしまうんだよな…。 驚いたことに、リプリーシリーズは全部で五部作もあるらしい。 ここまで悪事を積み重ねてきたリプリーを、ハイスミスは最後にどうするのかが気になる。
ディッキー事件のあと、結婚しパリ郊外に住んでいるトムの元にロンドンから「至急来てくれ」と一本の電話が入る。トムの一言からはじまった現代画家の贋作事業が、コレクターの一人に勘付かれたのだ。死んだ画家のダーワットに変装しコレクターのマーチソンと対峙したトムは贋作疑惑を晴らすため画策するが、仲間の一人であ...続きを読むるバーナードが罪悪感から思わぬ行動にでてしまう。「太陽がいっぱい」で逃げおおせたトムが新たな詐欺に手をだし、自ら境地に追いこまれていく、トム・リプリーシリーズ第二作。 死ぬまで売れなかった現代画家を、その悲劇によって売りこみ、贋作でビジネスをするというのが皮肉で面白かった。ダーワットが有名になったのは贋作仲間たちがつくりあげたストーリーゆえであり、人びとはその虚構に金を払うのだということをトムは掴んでいて、そこに罪悪感は微塵もない。 しかし、生前ダーワットの友人であり、今は彼の贋作画家になってしまったバーナードが苦しんでいる理由はトムには痛いほどわかるのだ。ディッキーとの日々となりすましの逃亡劇を直接振り返ることはないが、トムはバーナードに過剰な共感を寄せ、己に重ねている。 だが、トムの思いはバーナードには伝わらない。バーナードにとってトムは贋作事業の言いだしっぺであり、己の罪をより大きくした張本人だ。トムは自分を殺そうとしたバーナードを許していると伝えたくて追いかけていくが、その行為がむしろバーナードを追い詰めていく。 トムの悲劇は、自分も誰かを愛することができると信じたいと願っているのに、結局は保身と引き換えに孤独を選んでしまうことにある。演じるのが癖になっていて、自己開示が下手なのだ。なのに相手には過剰に感情移入してしまうから暴走していく。 今作ではそんな〈役者〉トムのことを少ない言葉で理解してくれるキャラクター、妻のエロイーズが登場したのも嬉しかった。表面上は浮ついた感じのする女性だが、トムが本当にケアを必要とするときには思いやり深くなり、鋭い助言もしてくれる魅力的なキャラクター。トムが強く愛したいと衝動を感じるのは男性なのかもしれないけど、一緒に生活するならエロイーズみたいな人がいいよね。ハイスミスは現実的だなぁ。 当の殺人のきっかけはバーナードのためというよりトム自身がいらんこと言ったせいだったり、そもそもディッキー事件で顔が知られている描写がありながら簡単に変装して警察まで騙しおおせるのは都合がよすぎるなど、前作同様、犯罪小説として緻密というわけではない。だがハイスミスの真骨頂はトムの心理描写にあるというのを今回もまざまざと感じられた。読者もトムと一緒にバーナードの行動に翻弄される分、サスペンスとしては前作を上回っている。 緊張感にあふれた死体遺棄の共同作業、地下室に残された身代わりの首吊り人形、殺人未遂とトムの仮死、自殺を見届けて一人で無理やり火葬など、好きな展開が次から次へと続くのでご褒美のような小説だった。終盤はややグダつくが、ザルツブルクでの追走劇は〈幽霊視点の怪奇小説〉のような幻想的な書き方がされていて、ホフマンみたいで好きだった。そのあと森でガンジス川のほとりみたいに雑に死体を焼く。この雑さがほんと最高。 犯罪もののBLが好きな人でまだ読んでない方は、ぜひトム・リプリーシリーズを読んでみてほしい。全然相互Loveにはならないので、〈二人だけの短く甘い記憶〉のパートは全くないけど。 そう思うと『黄昏の彼女たち』と本書は対照的な共犯関係を描いているなぁ。
『太陽がいっぱい』から6年後の話。 リプリーはいまや自信もあり、贋作に関する仲間もいて、金持ちの妻や気の利く家政婦もいるという最高の身分になっていてびっくりした。 前作より登場人物が増え、サスペンス色も強まって面白かった。 殺人、自殺偽装、殺人未遂、生き埋め、自殺、死体を焼く…などの衝撃的な場面...続きを読むが散りばめられていて先が気になってどんどん読めたが、終盤は行ったり来たりする場面が多くすこし冗長に感じたかもしれない。 警察はだいぶリプリーを疑ってはいたけど、もっと頑張れなかったか?という感じ…。 当時だとネットとかもないから色々証明するの難しかったりするのかな? こんなにいろんな罪を犯しておいて、ディッキーについて話をふられたときが内心一番動揺してるのがよかった。 ディッキーのいとこのクリスが出ててたのでなにか起きるか!?とおもったら、そこはたいして何もなかったのはちょっと拍子抜け。 今後も出てきたりするのかな…?
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