沢木冬吾のレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
結も爺さんも逞しい!
結が逞しく日々過ごし生きているところも素敵だった。いろいろあった家庭、そして超田舎暮らしと通学。そのような中、多くの大人が関わり自然に頼る結、一昔前にはあっただろう日本の支え合う社会が垣間見れたような世界観が引き込まれた理由の本でした。そして日本兵として戦地経験がある爺さんが強く逞しい。ずっと山で暮らすその理由も最後にはわかるのだが、そういう生き方を貫く、その意思の強さが生き方の強さに繋がっている。ドンパチの行動・戦略は、昔の戦地経験とずっと暮らしてきた山、気候も地形も熟知しての戦い、戦争経験者として負けるわけにいかない意地、最後の敗者へのセリフが、生きてきた達成感やり切った人生ってところに繋
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ネタバレフィリピン大統領の隠匿したい過去、戦時中の秘密を巡って、日本東北地方の山奥で繰り広げられる壮絶な死闘…
背景はそういう話なんだが、この本の核心部は旧日本軍兵士のじいちゃん達とクズチンピラたちの死闘シーンと、じいちゃんの孫の愛情物語である。
後期高齢者の伊沢と猫田のカッコ良さ、伊沢の孫娘結の健気さとツンデレ感。彼らの敵として現れる連中のクズっぷりとこいつらが狩られていくシーンのスッキリ感。
沢木冬吾の文章は少々個性的で好みがわかれるが、タメが映える文章が、じいちゃんたちの粘りの戦闘シーンにはしっくり合っていて俺は好きやなぁ。
孫のために死力を尽くす、俺もそういうじいちゃんになろうと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ裏切らないなぁ、沢木冬吾。この小説も沢木節全開。会話はミニマム、描写はしつこい(笑。書き込みする箇所のメリハリがいちいち俺の好みなんだなぁ。
文庫みっちり700P、なぜか捕らわれの身の主人公が、子供時代に父と祖父から切りつけられるのを避けた追憶を、縛られたまま思い出すという異色のスタート。
そっからの話の転がり方、登場人物の理不尽な不幸、ちんぴらのくそっぷり、悪役のグロいまでの悪さ、警察官たちの苦悩と活躍…、敵役が二転三転し、主人公とともに物語に翻弄される心地よさ(いや主人公はたまったもんじゃないのだが)
そして怒涛の後半。抜刀術VSフェンシングの決闘シーンのすごいこと。だがそんな決闘シー -
Posted by ブクログ
ネタバレ「約束の森」が良かったので、沢木冬吾の過去作読んでみようと、まずはデビュー作を手に取ってみた。さすがに荒っぽい部分も目立つが、熱い小説である。ハードボイルドであり、冒険小説であり、家族小説。
時に家族小説としての側面が興味深い。「約束の森」では疑似家族が大きなテーマとなるのだが、その兆候はこのデビュー作でもちょっと複雑な過程を経て萌芽している。主人公と息子慶太の親子愛再生の物語がその主軸になるのだが、それだけではなく、引きこもりの従妹との関係や、探偵会社の同僚とも家族同然の付き合いをしているし、敵役の街の顔役とその息子、誘拐事件を追う警察官の家族や同僚との関係、殺人鬼とその相棒…、どこを切り -
Posted by ブクログ
ネタバレまったくノーマークだった作品であり、ノーマークだった作家。本屋大賞候補だったらしいがうかつやった。これは想定以上の大傑作!
中年男の再生、家族小説、犬との親愛物語…俺の好物があちこちにちりばめられていて、その上で良質のハードボイルドであり、活劇アクションであるのだ。初期の高村薫、清水辰夫の良作のニオイガプンプンする。
しかも、キャラクターがみな個性的で深い。主要登場人物だけでなく、嫌なキャラはイヤなりに、端役であっても見せどころがあるし、個性を極力コロした設定の通名だけで出てくる連中までもが手を抜かれず描写されている。読んでる間はその描写にドキドキし、読後に「スゲーな」と感動する。
搭乗 -
Posted by ブクログ
ネタバレ*警視庁公安部に属していた奥野侑也は、妻を殺人事件で亡くし、以降人知れず孤独に暮らしていたが、かつての上司から北の寂れた土地でモウテルの管理人を務めてほしいと依頼され、任地に向かう。そこで待っていたのは、見知らぬ若い男女と傷ついた一匹のド―ベルマンだった…*
面白過ぎて、徹夜で一気読み!文句なし、まさに『ザッツ・エキサイティング!』。公安、闇の組織、囮作戦、騙し合い等々ハードボイルドが主体ですが、疑似家族の面々との人間ドラマあり、マクナイトやどんちゃんたち動物部門の癒しありで、色々な側面から多彩に物語を楽しめる。とは言え、やや都合が良すぎたり、強引だったり、後半詰め込み過ぎだったり、と色々突