小野上明夜のレビュー一覧
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悲鳴系(?)ヒロインのエリッセと俺様ナルシスト自信過剰ヒーローのディガンによる、ラブコメファンタジーの第一作。
ビーズログでも売れ筋作品の作家が書かれたということですが、批評のところでちょっと気になる話もあったものの、意を決して読んでみました。
結論言えば、ヒロインの会話文4割くらいは悲鳴で占めているじゃなかろーかという位の悲鳴ヒロインです。悲鳴の例で言うと、
「きゃきゃきゃのきゃー!?」(*あらすじより)
「きゃきゃー! きゃーいたたたた! 痛いっ、きゃーのきゃー!」(*P129あたりより)
と、まぁ悲鳴にバリエーション(きゃーの変化形的な)がありますが、とにもかくにも文章のどこもかしこも悲鳴文。
……ってことで、苦手な方はとことん目が滑ると思います。悲鳴がここまで占有してなければ個人的には好みなのですが……。
実際(悲鳴を除けば)喜怒哀楽の激しい年頃の女の子、という印象です。ちょくちょく突込みしながらも、めげずに頑張ってるところは応援したくなりました。
ヒーローのディガンは唯我独尊ナルシスト的俺様であり、実力も相当なキャラですので、戦闘シーンなどは結構さくさくと見れます。
ファンタジー且つ戦闘シーンが目玉、というところに点を置くと、個人的に戦闘などさくさくっとしてて読みやすかったですし、ファンタジーならではの設定や魔法詠唱が非常に好みでした。
ヒーロー&ヒロイン以外のサブキャラも個性的な性格で、とりあえず、ハーシエル君の性格が大変びっくりでした。期待を裏切らない性格の方が多い印象というべきか……w
次巻はもう少しヒロインの悲鳴度が下がるといいな、なんて期待しつつ、(悲鳴を許容できるのでしたら)ファンタジー話や俺様ヒーローが好きな方にはお勧めします。 -
Posted by ブクログ
没落貧乏貴族の娘で『死神姫』と噂される天然系・アリシアの再婚相手となったのは、アズベルグの暴れモノと悪名高い強公爵カシュヴァーン・ライセン。一風変わった新婚生活は相変わらず甘いムードとは無関係な模様・・・のように見えてどうやら微妙に進行中?ある日、カシュヴァーンは「俺たちの結婚報告をしにいく」とアリシアを連れ立って、アズベルグの前領主・ディネロのお屋敷を訪れることに。久々の外出とお泊りを、旅行気分で無邪気に喜ぶアリシアだったが、そこにはカシュヴァーンのある企みがあるのだった。しかし、待ち受けていたのは思わぬ罠と、意外にも暴君夫の焼きもちで――!?
相変わらずほのぼの独自の思考回路で大抵のことは受け流してしまうアリシアがかわいい。妻に対して大切だという気持ちを抱き始めているカシュヴァーンとのちょっとズレた会話も思わずニコニコしてしまいます。「お腹が痛い」事態はこれから増えていくのかなーとそこも楽しみ(笑)
新キャラも増えますが、個人的にはディネロが結構ツボでした。最初は得体の知れない人だったけど、言葉をじっくり選んで話すところやアリシアに対して温かい姿勢なのは好感が持てます。しかもイケメン!まだまだ領地は問題有りのようですが、いろんな人と力を合わせて平和な土地になればいいですね。 -
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Tenth installment.
I was excited that the next one came out faster than expected. And then I came to the crashing realization that this one is more of a collection of side stories rather than a continuation of the book before. It was still good, but i was looking forward to the main action.
Anxiously awaiting the next book. -
Posted by ブクログ
“「――結構。みな、顔を上げなさい」
ひざまずいた人々のただ中でひとり静かに立っていたグラネウスは、おもむろにそう命じた。無言で顔を上げたカシュヴァーンに微笑みかけ、
「ライセン。いや、カシュヴァーンと呼ばせてもらおうか。カシュヴァーン、貴公はよき夫であり、よき『父』であり、よき主であるのだな」
「……よき妻であり、よき『息子』であり、よき使用人たちであるだけのことです」
かすかに背後を振り返りながらの謙遜には、隠しきれない感謝の念が含まれていた。
「相分かった。貴公が必要とする王として、できる限りのことをすると私も誓おう」
誓いを返したグラネウスは、カシュヴァーンに立つよううながした。
「ところでカシュヴァーン。貴公も知っているとおり、人は変わる。良くも悪くも」
言わんとしていることを感じ取ってか、片眉を上げたカシュヴァーンを見上げてグラネウスは尋ねた。
「ゼオ……ゼオルディスがもしも良き王となった暁には、あれにひざまずけるかね」
「……良き王となって下さるのならば」
真っ向否定した訳ではない。しかしその答え方には明らかな棘がある。
尋ねたグラネウスも、カシュヴァーンの答えは分かっていたのだろう。それ以上追求することもなく、「そうかね」とだけうなずいた。”
表紙のアリシアが可愛すぎてやばい。
ゼオ関連の話はいつ締まるかなー。
ノーラには幸せになってほしいよ。
“「元気でな、ティル、セイグラムも。レイデン地方をよろしく頼むぞ。ではアリシア、俺たちは戻ろう」
短く声をかけたカシュヴァーンは、アリシアの手を取ってさっさと踵を返した。
「ええ、ではノーラも」
「ノーラは少し遅れるらしい」
含み笑いをしてつぶやいたカシュヴァーンは、アリシアの手を引っ張って歩き出す。
逆らわず歩き出したアリシアと入れ替わりに、ノーラが決心した顔で馬車へと足を踏み出したのが分かった。
「カシュヴァーン様、どうしてノーラは遅れますの……?」
途中までは素直に従ったアリシアだったが、どうしても気になってそう尋ねながら背後を振り返る。
ちょうどその時、馬車から身を乗り出したティルナードがノーラを抱き寄せ、ぎこちない口づけをした。
「出発しますよ」
ごく乾いた口調でセイグラムが言い、馬車が動き出す。
ぽかんとしてその様を見送ってしまいながら、アリシアは赤い顔をして自己完結した。
「……よ、用事が、あったん、ですの、ね」
「そのようだな」
すまして答えるカシュヴァーンとアリシアが、まだその場にいたことにノーラも気づいた。一瞬逃げ出しそうな顔をしたが、必死に冷静を装う。
「あ、カシュヴァーン、様、奥様、も、戻りましょう、早く」
「そう、ね、よ、用事は、終わった、みたい、だもの、ね、ノーラ」” -
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“「ゼ、ゼ、ゼ、ゼ、ゼ、オ……!?」
「ああ、本当にティルだ!会えて嬉しいよ、ティル!!」
ティルナードの愛称を連呼しながら親しげな笑顔を見せるのは、アリシアは知らない黒髪の青年だった。
顔立ちはそれなりに整っており、着ている服も王宮に相応しい襟高の華美な貴族服だが、そんな者はこの王宮内にどれだけいるか分からない。だがゼオと呼ばれた彼には、別のはっきりとした特徴があった。
額から頬にかけ、右目を通って斜めに走る醜い傷跡。
刃物によるものだろう。それもああり手練とは言い難い相手から受けた傷らしく、左右にぶれた傷口はよじれ、周辺の肌を引っ張っている。そのせいで唇の右側が少し持ち上がり、笑っていなくても笑っているように見えた。
だが今、ゼオは間違いなく心から笑っていた。傷を受けた右眼にも傷のない左眼にも、無邪気な喜びがあふれている。
「まあ、もがもが」
額にこのような傷があれば、眼帯などで隠すのが普通だ。ティルナードと知り合いらしいところも含め、聞きたいことが一気に唇からあふれそうになったが、カシュヴァーンとの約束がある。なんとかそれを思い出し、アリシアは自主的に口元を押さえて我慢した。
ゼオも一瞬ちらりとアリシアあを見たが、あえぐようにティルナードが漏らした声に、再び彼のほうに向き直る。
「はは、まるで幽霊でも見たような顔だな、ティル。まあ幽霊扱いには慣れちゃいるが」
「なんで、なんでお前が、なんでここに…..!」
顔面蒼白のティルナードに対し、ゼオは快活な笑顔で改めて名乗った。
「俺が王子だからだよ。ゼオルディス・フィラル・ド・シルディーン」”
ゼオの性格の悪さといったら。
ゼオとフロリアンとミューゼ。
この三人の関係はまだ謎のまま。気になるなー。
“「なあカシュヴァーン、お前も父親をとても尊敬しているようだな」
一度は緩んでいたカシュヴァーンの表情が凍りつく。
「……馬鹿な」
「だって父親と同じ事をしているじゃないか。名家の女を金で買い、自由を奪って無理やり我が物とする。正に男の浪漫<ロマン>だ。おまけに調教も完璧、まったく羨ましい」
その言葉はまるで、一条の雷のごとくカシュヴァーンの精神を貫いた。
落雷に幹を裂かれた大木のように、彼は声もなくその場に立ち尽くしている。
「ゼオ様、だめ、お父様の話はだめなの!」
二つも約束を破って大声を出したアリシアを見て、ゼオルディスは笑う。明るく快活に。捕まえた虫の足を無心にちぎる幼児のように。
「心配するなアリシア。お前の夫のこともジス義兄様のことも、俺がうまくとりなしてやるから。だって俺はカシュヴァーンの友達で、ジス義兄様の弟なんだからな」
カシュヴァーンを庇うようにその前に立ったアリシアを見ながら、ゼオルディスはきつい眼をしているフロリアンに話しかけた。
「久しぶりにお前以外の友達ができたぞ。もちろん喜んでくれるよな?フロリアン」
嘘がつけない性格らしいフロリアンは、何も答えようとしなかった。” -
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“簡素な白い法衣をまとい、無造作に髪を伸ばした硬質な聖女の姿が自然と眼に浮かぶ。背にある巨大な翼が風に揺れ……でも、その翼は、偽物なのだ。
「そうだね、きれいで……そしてなんだか、少し寂しそうに見えた」
「寂しそう?」
「うん……それは、アリシアもだけど」
「私が?」
そんなこと、今まで一度も言われたことがないので驚いてしまった。
まじまじとリュクを見つめれば、リュクは自分のほうこそ寂しそうに笑う。
「アリシアもさ、いつもにこにこいい笑顔してるのに、たまにすごく寂しそうな、切なそうな顔をしてる時があるよね。……あれ、ライセン公爵のこと、考えてるんだろ?」
カシュヴァーンの名前を聞いたアリシアが表情を曇らせつつ、「ライセン<強>公爵様よ」と訂正すると、リュクも一層寂しそうな、切なそうな笑みを浮かべる。
「あんなに美形のアズベルグ公爵と、あんないい条件出されても結婚したくないなんて……アズベルグの暴君、だっけ。ライセン、えーと、強公爵閣下って、きっとものすごくかっこいいんだろうね」
「……ええ、そうよ、とってもかっこいいの。強くて、やさしくて、お金持ちで、寛大で……」
時々ひどく、もろくも見えて。
「……私の、理想の、旦那様なの……」
カシュヴァーンからは一番遠いはずの木彫りのアーシェルを見てまで、彼の姿が脳裏に浮かんできた。そのうち何を見てもカシュヴァーンに見えてくるかもしれないわ、とアリシアは思った。
そういう形でもいいから、会いたいとも。”
リュクの性格もまた楽しいなー。
仲間が増えたようでなにより。
ユーランの件には思わず泣いたり。
ノーラ可愛いよノーラ。
“「あら?ノーラ、泣いてるの?」
「なっなんですか奥様何をおっしゃるの泣いてなんかいませんわ泣いてるんだとしたら何が理由で!?」
目元をぬぐいながらものすごい勢いでまくし立てられ、きょとんとしたアリシアはごく普通に答えた。
「レイデン伯爵様が無事に戻られたからでしょう?ノーラが一番長く、レイデン伯爵様とお会いしていなかったんだもの。嬉しいわよね」
まともに言い当てられ、二の句が継げずノーラが押し黙る。
「……ノーラ。本当に?」
ティルナードがそっと尋ねると、ノーラはむきになって首を振りかけ……途中で思い直して、渋々うなずいた。
「……そりゃあ……なんだかんだで結構お付き合いも長くなりましたし……あなたはカシュヴァーン様の被後家見人なんですから……い、生きていたほうが、カシュヴァーン様のお役に立ちますもの」
「……そうか」
素直さのないノーラの回答に、ティルナードは素直に言った。
「僕も、嬉しいよ。お前も僕も無事で。……生きてまた会えるって、本当にいいことだな」
その途端ノーラは真っ赤になって押し黙り、リュクといえば「ああ、この子も売却済みかあ」とぼやいてルアークににこやかに口をふさがれた。” -
Posted by ブクログ
“「何って、カシュヴァーンおにいちゃんがいなくてアリシアが暇そうにしてたから、オルガン弾いてもらってただけだけど?で、ついでにノーラを弾いてみよーかなーなんて。でもごめんねぇティルぼっちゃん。ぼっちゃんが来るんなら、遠慮すべきだったね」
ルアークがわざとらしく名前を呼んだのは、カシュヴァーンではなく、ちょっとほっとした顔になっていた先の茶色い髪の若者。
ここアズベルグの山脈を挟んで東隣、肥沃な大地に恵まれたレイデン地方の領主ティルナード・レイデンである。とはいえ、シルディーン王国で成年と認められる十八歳に満たないため、領主としての権限は後見人のカシュヴァーンに握られている状態だ。
「な、なんだ、お前らがどうなろうと僕には関係ないだろう!?」
「そ、そっ、そうですわよレイデン伯爵のおっしゃるとおりですわ!前から言ってますけど、私はこんなへなちょこおぼっちゃんに本当に興味はないんですのよ!?」
声を揃えてティルナードもノーラも無関係を強調するが、二人仲良く頬は薄赤く染まり声音には動揺の色が濃い。
「あらノーラ、レイデン伯爵様のほうがいいのなら私はそれでも構わないわよ?なんならレイデン伯爵様と結婚して、ルアークを愛人にする?でもカシュヴァーンの愛人は続けてね。でないとなかなか会えないもの」
身勝手な提案を始めたアリシアに、ノーラは眼を吊り上げて「そんなただれた関係はごめんです!」と叫び返した。”
ノーラ弄りがすごく楽しい。
エルティーナは何とも面白そうな性格のようで。
次にユーランがどう動くのやら。
“「オーデル侯爵夫人が何を……?あ、アリシア様」
怪訝そうなトレイスの横をすり抜け、アリシアはまっすぐカシュヴァーンへと向かう。
どうした?と言うように優しい眼をしているカシュヴァーンにぴとっと体をくっつけ、さすがに驚いているその顔をじっと見て、
「嫌いです」
カシュヴァーンが大きく眼を見開いた。
一方アリシアはすぐにカシュヴァーンから離れ、硬直しているトレイスを尻目にまた部屋の外に出た。そして室内のカシュヴァーンを見つめてこう言った。
「好きです」
カシュヴァーンは、どうしていいのか分からないのだろう。黙ったままぴくりとも動かない。
石化したような状態の夫と、手元の書簡を交互に見ながらアリシアはつぶやいた。
「あら、反応がないわ、逆だったかしら?でも逆は普通よね……」
「なになにアリシア、なんの遊びしてんのー?」
そこへひょこっと顔を覗かせたのは、言わずもがなのルアークだ。
「ああ、エルティーナ様に『子悪魔な振る舞い』というのを教えてもらったから、実践してみようと思って。これをするとね……カシュヴァーン様が、私のことをもっと好きになって下さるんですって」” -
Posted by ブクログ
“カシュヴァーンの後を追って隠し部屋に足を踏み入れたアリシアは、「あの野郎」と夫が吐き捨てるのを聞いた。
かつてカシュヴァーンの父が使っていた年代物の文机の上に、二人が送った守り石が並べられ、降り注ぐシャンデリアの光に虚しい輝きを返していた。
「ルアーク、今ごろどうしているのかしら……」
ぽつりとつぶやくアリシアの口の中に、鶏肉が規則正しく運ばれていく。
悄然と肩を落とし、ルアークのことを心配しているのは嘘ではない。しかしここで食欲は落ちないのがアリシアだ。
「ああ、それにしてもこのお料理はおいしいわ……やっぱりもうひと皿いただこうかしら……」
途中から違うことを考え始めたアリシアに、ノーラは呆れた顔をしたがエリクスは瞳を細めて微笑んだ。
「アリシアは、いつでも本当においしそうに食事をするなあ……」
冷めたスープに視線を落とした後、エリクスはいきなりアリシアに尋ねかけた。
「ねえアリシア。アリシアはカシュヴァーンのことが好き?」
カシュヴァーンとノーラとトレイスが同時に吹き出す。
「あ、ごめんカシュヴァーン、大丈夫?」”
アリシアの調子が楽しい。
「玩具の兵隊」の醜悪なネーミングセンスに感嘆したり。
ノーラは最終誰とくっつくかな。
本文と絵が合ってない時がある……。
“「心配ない。死ぬほどは殴っていない。大体こいつは今、殴られるために座り直したんだ」
自分が殴られでもしたかのように顔を歪めて、カシュヴァーンは否定することのないエリクスを見下ろす。
「俺は弱い者いじめをする奴も嫌いだが、弱い奴はある意味それ以上に嫌いだ」
「……弱い者いじめって言葉はおかしいよ。弱いからいじめられるんだよ」
唇付近まで腫れが広がっているらしく、エリクスの声はこもってひどく聞き取りにくい。
「だけど弱い奴には、弱い奴なりの生き方ってものがある。君に会って、ブライアンの話をした時の反応で、すぐに分かった。君は人を殴っても、人を見捨てられない男だってね。だからきっと、僕を放り出したりしないだろうって思った。僕のような人間が大嫌いだって自覚していて、なお、ね」
カシュヴァーンはもう一度拳を握った。
しかし握られた拳は空を切ることはなく、エリクスはそんな彼を見て微笑んだ。
「みんな、君みたいに強くはないんだよ」
「強い」という言葉に、カシュヴァーンの握った拳にさらなる力がこもる。
「みんな、君が怖いんだ。国王陛下も、<翼の祈り>教団も、あのオーデル侯爵でさえも」
いつしか涙も引いたらしく、エリクスの瞳は乾いていた。
「みんな、みんなが、怖いんだよ。下克上の風潮は収まったようでいて、いまだにシルディーンの中に残ってる。少しでも隙を見せれば、もっと強い誰かに大事な物を奪われるかもしれないって、みんな怯えてるんだ」
そこまで言ってエリクスは、唇の端を歪めて笑った。” -
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“「ライセン?な、なんだ、僕は、ただ……」
青い瞳を大きく開けて、ティルナードは眼の前の男を見返している。
しかしカシュヴァーンの問いに込められた真意は、世間知らずのおぼっちゃんであるティルナードの胸にも次第に染み通っていったようだった。
「……僕を……疑っているのか?お前は……」
唇を震わせ、ティルナードはかすれた声で小さく言った。
「お前も僕を……いらないって言うのか……?」
言うが早いか、ティルナードは乱暴なしぐさでカシュヴァーンの腕を振り払った。
「レイデン伯爵様!」
アリシアの呼び声も無視して、素早く伏せられた瞳の縁がきらりと光る。服の袖で顔を覆うと、ティルナードは廊下を一直線に駆け戻っていった。”
どのキャラも個性が出てて生き生きしてる。楽しい。
ルアークの性格好きだなー。
“「ア、アズベルグ公爵をお助けになるのは結構ですけど、私たちは大丈夫ですの!?戦えそうな人はみんな行ってしまいましたけど、他に伏兵がいないとは限りませんのよ!」
「あらそうねえ。お屋敷の中に入ったほうがいいかしら?でもまだ煙が充満しているし、中は中で危なそうよノーラ」
ノーラにもアリシアにもさり気なく戦力外扱いされたティルナードが叫んだ。
「僕がいますよアリシア様!ご心配なく!」
「僕がいますから余計にご心配ですのよ!そんなに腕も足も震えているのに、一体どうやって戦うおつもり!?下手に剣など振り回されたら、こっちが逆に危ないですわ!おまけにその剣さえ持ち出せてないじゃないですのあなたは!」
半ば八つ当たりのように叫び返したノーラの言葉に、アリシアは少し考え込む。
「確かにレイデン伯爵様は、あまりお強くはないかもしれないわね。だけどノーラ、そういう人にも戦い方が……ええと、何だったかしら。弾避け?」
「アリシア様その扱いはあんまりです!」
戦力というより一種の防壁扱いされたティルナードが絶叫した。” -
Posted by ブクログ
“「あなたが成り上がりでお金と地位しかない方で良かったわ。だっておっしゃる通り、うちにはもう名誉と歴史しかありませんもの。私、ライセン様がなんで私と結婚して下さるのか全く分かっておりませんでしたけど、今の説明で全て分かりました!」
はっきりとしたカシュヴァーンの言葉を、アリシアははっきりと復唱してみせた。カシュヴァーンはさすがに口の端を引きつらせたが、ぺこりと頭を下げたアリシアにはそのさまは見えなかったようだ。
「傷物で申し訳ありませんけど、どうぞ末永くよろしくお願いしますわ!誓ってライセン様を殺したりしませんのでご安心下さいませ。あなたほど私にぴったりの旦那様、もう二度と見つからないと思いますもの」
顔いっぱいの笑顔で笑う彼女は、あいかわらず特に美人というわけではない。着古したドレスの裾が長旅で更によれよれになっていることもあり、およそ名高き地方伯の令嬢という風情ではない。
しかし裏表のない喜びにあふれた姿には、見る者の心を捕らえる何かが確かにあった。
怖い話と金。
両親にもヘイスダムにも散々やめろと言われてきたこの二つの趣味が話題に上がるたび、アリシアの笑顔はいつもまぶしい光を放つ。
魅入られるように花嫁に視線を注いでいたカシュヴァーンは、自分でもようやくそのことに気づいたのだろう。はっとしたように軽く首を振り、表情を取り繕ったが、彼の瞳からは先ほどまでの意地悪い光はだいぶなくなっていた。”
あら可愛い。いや、もちろん死神姫が。
奇抜な題名にどんな中身かと思ったけど、ストーリー結構良かった。
とっつきやすいし読みやすい。
岸田さんのイラストも素敵だー。
続編読むのが楽しみ。
“「さて、悪いが俺はまた出かけなければいけない。せっかく来てくれたのに悪いが、お前はもう部屋に戻れ」
アリシアの頭から手を退けると、カシュヴァーンは退出を促した。
「あら、残念ですわ。お時間があるようでしたら、お食事をご一緒して頂けないかと思っておりましたのに」
まだ室内に漂っているシチューの匂いに誘われて、鳴ってしまいそうなおなかを押さえてアリシアはつぶやく。本当に残念そうな言葉を聞いたカシュヴァーンは、ふっと天井の方に目を向けてこう言った。
「悪いな。だが今は時間もないし場所も悪いようだ。しかし夕食は……確約は出来ないが出来るだけ一緒にしよう」
「嬉しいです。やっぱり食事って、誰かと一緒に食べた方がおいしいですものね」
本当に嬉しそうに表情を明るくした妻の頭にカシュヴァーンはもう一度手を伸ばし、子猫にでもするように撫でてやった。”