小倉孝誠のレビュー一覧
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死刑囚である語り手は、残りの一週間の生で重ねた思考を独房内で綴っていく。
「死刑囚の思考を細かく示したこのノートには、死刑判決を下す連中に対する教訓が含まれている。思考する頭、人間の頭を司法の天秤に乗せるとき、今よりは慎重になるはず。死刑という手っ取り早い制度に苦悩は傲慢に続いていく」
「今わたしがこうして書を綴っているが、今の自分の命を救うことなど出来はしない。自分が登った後の死刑台を壊すのは何の意味があるのか。自然も自由も何もかも、わたしのモノではなく、未来の同じ立場になるはずだった人間のモノ」
「自分が罰せられるのは当然だが、自分か居なくなることによって寡婦となる母や妻や娘は何をしたというのか」
死刑囚という立場が確定する前、彼は言った。終身強制労働の徒刑囚になるのなら、百回死刑にされた方がまし。この言葉は、この考えは、彼の限りある生の中で変化する。首が宙を舞うまでの間、彼は死刑制度というモノのおぞましさ、愚かさを幾度も胸に抱き、言葉へと変換していくが、その根源にあるモノは自身の命を奪われたくないこと。再び自由を手にしたいこと。人より限りのある生を人並みに戻したいこと。どこまで行っても彼は、自身を最も大切にしている。
本書は死刑制度への疑念をテーマに描かれている。しかしながら、ユーモアも忘れちゃ居ない。現在を忘れるために、輝きを放っていた過去を思い返した後、この記憶は一生涯忘れないだろう。と綴り、繰り返すように、一生涯! と書いた。
死刑制度というのは語り手が語ったように、最も手っ取り早い形式だろう。命を奪ってしまえば、そこに当てられるはずだった人員をほかの事象に割り当てられる。遺族の気持ちを第一に考えています的な印象を与えられる。それでも、加害者にとって一番堪えるのは無期限の懲役であったり終身徒刑であろう。そんな単純な話ではないだろうが、そうしてほしいな。
あなたは死刑です、そう判決された暁には、本書の語り手のように死への恐怖が最大になるだろう。その時死刑囚は、この際無期限の懲役や徒刑でも構わないから殺さないでくれと望む。その瞬間を見計らって、やっぱりきみは終身徒刑で、と告げる。喜ぶ元死刑囚は、限りある生をすべて労働(強制)に当てる。そして、その時はまた、わたしを殺してくれと願うのではないかな。
そんなことを思ったりもした。 -
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フランス文学の概念や位置付け、どうやって形成されてきたかの学問的な解説。
普仏戦争での敗北やパリコミューンを経た社会の混乱により、フランスの政治的劣等性を教育に問題があるととらえた。
文学は社会の表現であり社会を補足するものとして、国民文学としての文学を教育に取り入れ小論文と原典解釈を制度化することにより、教育の抜本的改革を行なった。ブルジョワなどの限られた人々だけではなく、国民全体の教育に力を入れて地方にも総合大学を作った。
第三共和制のもとではミソジニー思考だったので埋もれていた女性文学に今日が当たっている。
難しくて読み進めるのに時間がかかったが、社会をよりよくしていくための教育の重要性とそれにフランス文学がいかに紐付いているのか、文学を学習する意味がわかった気がする。 -
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フランス文学の歴史ではなく、「フランス文学」という概念がいつ、どのように誕生したかを解き明かす
一般的に認識される「国民国家が成立した時期に、それを反映するものとして国民文学が誕生した」という見方は、部分的にはあっているものの、その誕生を正確に言い表したものではないと主張する
文学が、政治や社会の影響を受けるだけでなく「来るべき社会の夢想や欲望を予言するという意味でも、文学は社会の実現であり、社会を補足する営み」として、反対に社会を変革することもできる、という主張は非常に希望がもてた
個人間でのディスコミュニケーション、社会の分断が問題となる現代こそ、文学を通じて「社会を補足」することが求められるのかもしれない
以下まとめ
フランス革命を経て王政から共和政へと政治体制が移ったことは啓蒙思想家(フィロゾーフ)らの言説のおかげだとして、政治・社会を変革する存在としての「作家」の地位が定立される
その一方で、ナポレオンの皇帝就任によって革命が終結し新たに帝政が始まると、こうした十数年での政体の劇的な変化を受け、フランスの民衆は自分たちが歴史の過渡期にいると直感した
このため、それまでの「教育に資して、レトリックを凝らして描く」という歴史観から一変し、見通せない未来を見据えるために歴史の意味・解釈を求めるようなっていった。
こうして生まれた歴史学が、普仏戦争の敗北で誕生した第三共和政において作家の仕事と、国民精神を涵養するという点で融合し「国民の歴史そのものをあらためて把握」し、「国民の精髄の変化をたどる」ものとして「フランス文学史」が誕生した -
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ネタバレ[ 内容 ]
ブルゴーニュ地方の山中に源を発し、ル・アーヴル近くで英仏海峡に注ぐ。
全長七七六キロに及ぶ堂々たる大河、セーヌ川。
パリ市の紋章には、「たゆたえども沈まず」とあり、パリとこの川の浅からぬ縁を証言している。
昔日のガイドブック、文学作品などの歴史的証言の数々を繙いて、この都市の錯綜したイメージを読み解いてゆこう。
著者とともに、河岸を散策し、船に乗り、橋に佇めば、見知らぬパリの相貌に出会えるだろう。
[ 目次 ]
第1章 川を通過する
第2章 運河に生きる
第3章 川を楽しむ
第4章 川を描く
第5章 川に死す
第6章 橋を架ける
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
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『紋切型辞典』これがまた面白い。ついでにフラ語の勉強にもなる。
岩波さんの書物案内によると
--ここに編まれたおよそ1000の項目は,衣服,飲食物や動植物に関するもの,礼儀作法の規範,身体と病気についての俗説,芸術家,歴史的人物の逸話と彼らの評価など,多岐にわたる.フローベール(1821-80)はその記述に様々な手法を駆使して,当時流布していた偏見や言葉の惰性,硬直した紋切型の表現を揶揄し,諷刺してみせた--
と、まぁ、このとおりなのであるが、『紋切型辞典』の着想をフローベールは早くから抱いていたらしい。
ジュリアン・バーンズが『フロベールの鸚鵡』という本を20年ほど前に書いているが、このなかに、『紋切型辞典』の形式を真似、アルファベット順にユーモアたっぷりの簡単な『紋切型辞典』を書いている。こちらもアイロニーが効いていて楽しい。 -
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文明が川とともにあるように、都市には必ず川がある。すべての都市は水利が必要なのだから当然なのだ。
その上でパリという極めて魅力的な街を川から描くという素敵な思いつきが今までなかったことにこの本を読んだ今となっては驚く。実際、パリに行って、セーヌ川を橋の上や歩道からぼーっと眺めたことのない人はいないだろう。
面白いのはこの本の章立て。同じ主題が何度も出てしまう歴史順ではないのだけれど、さりげなく時代を今に向かわせつつ、より人生に密着した内容に持ち込んでいる。これは見事だと思う。
多分、著者は今、あーあそこもうちょっと変えておきたかったなーと色々な部分を反省しているんだと思う。しかし、充分に深みに達しつつ、これは新書として成立している。 -
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レミゼラブルの作者ということで読んでみました。
こう言った場で感想書くのも初めてなので文才はないと思います苦笑
ある囚人の死刑執行までの物語。
古典ならではの独特の表現に?となりながらも言わんとしてることはわかる!
何より驚かされるのは作者が体験したかのような細かい情景の描写。
実際に取材したのであろうか?
特に執行までの生に対する放棄や執着がコロコロと変わる描写は死刑囚の精神的な不安定さを感じる。
刑場まで溢れんばかりの群衆!群衆!
当時の民衆にとっては娯楽であったのだろう。
王政に対する不満の捌け口か?
そのための公開処刑か?または見せしめか?
この主人子はどんな名前で何をして死刑となるのかの描写が一切なく、執行までの流れや心情にフォーカスした作品。
うーん。重い。。。 -
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ワタクシの第二の故郷フランスを代表する作家ヴィクトル・ユゴーの『死刑囚最後の日』です
ある死刑囚の死刑執行に至るまでの苦しみを克明に描き、死刑制度廃止を訴えた作品
ユゴーと言えば皆さんご存知『レ・ミゼラブル』ですが、こちらもやはりジャン・バルジャンと言う盗っ人野郎の贖罪の物語と言えなくもない
ユゴーは罪人に甘いのー
馬鹿たれ!そんな単純な話ではないわ!(# ゚Д゚)
まぁジャン・バルジャンは飢えを凌ぐための犯罪なので、むしろ社会が悪い!がユゴーの主張なんだがそれはとりあえず今置いておきます
『死刑囚…』な
うーん
まぁ、皆さんご存知の通りすでにフランスでは死刑制度は廃止されてるわけだが
どうなのよ?死刑制度?
日本にはあるわけだが、どうなのよ?
うーん
わいは正直、制度自体はあっていいと思うんよな
たぶん日本人の多くはそう思っていて、だからこそ制度として残っているわけだが
ただ、やはりね世界的には超少数な死刑制度を持つ国の国民だからこそ、こういう本なんかを積極的に読んで自分の考えをしっかり持つべきだと思うんよね
と言いつつふわふわしてますが -
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「ミステリーの人間学」にのっていたので。
19世紀のフランス、犯罪は貧困と無知ゆえだと思われいてた時代、教育があり富裕層出身の犯罪者ラスネールは、自分の犯罪を社会への復讐だと主張し、社会現象となった。
そのラスネールが残した回想録で、
自分の育ちから、犯罪歴やその主張が書かれていた。
時代と国境を越え衝撃を与えた作品らしいが、
自分の犯した罪のただの言い訳にしか読めない。
家庭内で盗みを始めたのは兄のせいだとか、
手形の偽造をはたらくやいなや、裏切られたからと殺人を犯すとか。
それにしても、まだ指紋もDNAも捜査手法になかった時代、意外と犯罪がうまくいかないのに驚いた。 -
Posted by ブクログ
「ぼく自身のつくりあげた言葉はひとつも見当たらず、だれでも一度これを読んだなら、そこに書いてある通りをうっかり口にするのではないかと心配になる」ような辞典、とフローベール自身が称したそうだ。フランスにある森羅万象について、俗説や偏見や紋切型表現を集めた本。
揶揄と諷刺を目的とした辞典といえばビアスの「悪魔の辞典」だが、あちらが攻撃的な文章ににやりとさせられる、けれんみあふれる読み物とするなら、この「紋切型辞典」にはそういったけれんが皆無である。はっきり言えば、読んでもあんまり面白くない。諷刺が直接的ではないので、さらっと読んでもよく伝わってこないのだ。攻撃対象への悪意と侮蔑が、二重三重に屈折して描かれていて、理解するのに案外骨が折れる。読み物というより、研究対象とした方がいいのかも知れない。
でも時々、こんなわかりやすい項目に出くわすこともある。
「考える〔penser〕 つらいこと。それを強いるような事柄は、ふつうなおざりにされる。」