天藤真のレビュー一覧

  • 陽気な容疑者たち

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    不朽の名作『大誘拐』の作者のなんと江戸川乱歩賞応募作である。文章を見るにデビュー作とは思えないほど卓越した力があり、その老成振りは現在、数多デビューを飾る新人達と比べると隔世の感がある。

    鉄工所の社長が密室の中で殺害されるという純本格的なシチュエーションで始まる本書は終始殺人事件とは一線を画した農村の和やかなムードで進み、解決に至る終章もまたそのムードを一貫して結ばれる。応募作にて既に作者特有の温かみが溢れているのである。
    短編集『遠きに目ありて』中の1編にもやむにやまれない殺人を扱った物があったが、原点である本書も正にそのテーマが通底している。ただ技法にクリスティーの例のアレをやっているの

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    2020年04月21日
  • 死角に消えた殺人者

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    崖下に落下し大破した自動車の中から収容された男女四人の遺体。運転席に人気のないことから、事故ではなく殺人事件と判断されるが、この被害者四人の間の接点が見つからず、捜査は行き詰まる。
    被害者の一人娘である主人公は犯人への復讐を決意し自ら調査を開始する――。

    あらすじだけ書くと2時間ドラマのようになってしまうのですが(実際、前半部分は読んでる最中もちょっと2時間ドラマっぽいなと思いながら読んでました)。
    派手さはないですが、次々に怪しいと思っていた同乗者達が潔白になっていった後半からの展開が、さすが天藤真って感じで面白かったです。

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    2019年01月06日
  • 死の内幕

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    登場人物がごちゃつきそうな所を、上手くグループに分けてその中でキャラの書き分けをする、そしてグループを交互に登場させることで物語をグイグイ動かしていくサスペンス仕立ての物語。時代を感じさせるところもあったり、他の有名作に比べると多少小粒な印象はありますが、面白かった。ラストの余韻が好み。

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    2018年04月30日
  • 大誘拐

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    ネタバレ

     誘拐ミステリの古典的名作。この作品の最大の魅力は,誘拐事件の被害者でありながら,誘拐事件のブレーン的な立場になる「柳川とし子」(以下「刀自」という。)のキャラクターだろう。刀自は,持山だけで全大阪府の二倍以上,紀州在住の超大富豪。体重が急激に減ったことにショックを受け,死ぬ前に…と始めた山歩きの最中,三人の誘拐犯に遭遇する。この誘拐犯の三人組のキャラクターも見事に描かれている。リーダー格の戸並健二。知能優秀,身体強健と描写されている。過去に刀自と接触したこともある。そして,肉体労働に適していると描かれる秋葉正義と,妹のためにお金が必要な三宅平太
     刀自の略取までは,戸並が中心となって計画を立

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    2016年08月04日
  • 背が高くて東大出

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     ショート・ショートから中編まで10編収録の作品集。

     天藤さんの作品のイメージは『大誘拐』のほのぼのとしたユーモアミステリのイメージだったので、収録作品のちょっとブラックな感じは少し意外でした。

     一番好きだと思ったのは「父子像」主人公が父親の職業を調べる短編です。
     これはどちらかというと天藤さんのイメージ通りの短編。宮部さんの初期作品と似たような明るさとほのぼのさがあったと思います。

     「背面の悪魔」は少しエロティックでブラックな短編です。手記が少しホラーっぽくも感じられて面白かったと思います。

     「日曜日は殺しの日」と「死神はコーナーに待つ」はどちらも100ページほどある中編。

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    2015年02月15日
  • 遠きに目ありて

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    天藤真推理小説全集を少しずつ集めながら読んでいく次第。まずは一巻が手に入っていたので本作からスタート。
    推理自体は派手さはなく、スッキリまとまっている印象を受けました。安楽椅子探偵ものとしてストーリーの流れもフォーマットにはめて、良い意味で安心して読める感じ。こういう短編集はやっぱり大事だなぁとしみじみ思える内容でした。
    特筆すべきはやはり、探偵役の信一君が脳性麻痺の障害者である点でしょうか。信一君の言動の描写には著者の愛を感じる一方で、社会的な批判には切れ味がみられます。
    安楽椅子探偵という手法も、この設定に上手く作用しているように思えます。犯人像が複数の目撃談から浮かび上がる際、 証言者達

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    2014年12月11日
  • 殺しへの招待

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    うおおぉ。ぐいぐい読ませる作品でした。内容について語るとネタバレせずにはいられないので、詳しく書けないのがもどかしい。
    夫婦の秘密、濡れ場、人間の裏の顔といった、毒気も振りまきつつ、一方では、夫婦の愛の復活や友情などちょっと救いも入れての絶妙なバランスでした。面白かったです。

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    2012年01月24日
  • 背が高くて東大出

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    短編集。表題作「背が高くて東大出」が良い感じにひねりがきいててお気に入り。あとは「父子像」。ネタバレになるので詳しく書けないが、素晴らしい。
    あとこの短編集、エロ要素が含まれている作品も多いですな。

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    2011年11月09日
  • 遠きに目ありて

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    アームチェアもの。とくに目新しいところなし。重度障害者という設定を生かしきれていたのか。なんか牧歌的。

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    2011年09月25日
  • 殺しへの招待

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    おぉー...1973年。この時代にして、このスピードで
    モダンな文体。凄いなー。
    ややクドいかな?とも思えるくらいな細かい伏線と
    その収拾の丁寧な作業により、犯人がごく自然に
    分かるという、なんと丁寧なミステリーなんでしょう。

    適度なユーモアや適度な毒も凄くバランスよく
    味付けされてして、読んでいても飽きないです。

    ...あ! オリジナルの刊行は産報出版!!!
    これ自分の父親が以前に働いていた会社でした(笑)。

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    2009年10月07日
  • 大誘拐

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    誘拐モノの小説にはあるルールが存在する。
    推理作家の西澤保彦氏いわく、万にひとつも模倣犯が現れぬよう、わざと犯行過程に実行不可能な手順を紛れ込ませておく、のだそうだ。

    本作でいうならば、それは「100億円の身代金」「劇場型犯罪」「慈愛」である。
    和歌山に山林を持つ、大地主の柳川とし子を誘拐した犯人グループは当初5000万円の身代金を用意させるつもりだった。だが、とし子に「自分はそんなに安くはない」と一喝され、家族に100億円を要求する。
    まず、ありえない。

    そして、警察の手による犯人確保の隙を作らせないため、
    身代金受け渡し等の一部始終をテレビとラジオに生中継させる。
    劇場型とよばれるメデ

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    2009年10月07日
  • 遠きに目ありて

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    主人公の刑事が好きな作者と出会いが、その息子と出会うきっかけでした。
    脳性マヒで、何をするにもとても時間のかかる少年。
    そんな彼は、観察力も推理力も持ち合わせていました。

    刑事が語る事件を聞いて、それだけで推理を組み立ててしまう。
    そんな内容ですから、当然私にも同じ材料が
    文面から与えられているはずなのです。
    が、どの話もどの話も、まったく犯人もトリックも
    どうしてこうなったかすら分かりません。
    すべてにおいて、推理も何もありません(笑)

    途中で出てくる刑事の部下も、からっとしていて
    入ってくると明るい雰囲気になって楽しいですw

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    2009年10月07日
  • 死の内幕

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    「わたし、人を殺したの。」

    内縁関係の女性で作るグループの一人から、突然の電話。

    結婚するから別れてくれ、と言われ、かっとなって相手を突き飛ばしたのだという。

    架空の犯人をでっち上げたは良かったが、いないはずの人物と瓜二つの人物が現れ……。

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    2009年10月04日
  • 陽気な容疑者たち

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    氏の長編デビュー作。


    経理会社の社員である僕が、顧客で会社解散を目論む社長とそれを不服とする労働組合側の争う中。

    鉄壁の守りを誇る自慢の蔵の中で社長が急死した。


    事件?

    事故?

    あっと驚く真相に引きこまれた一冊。

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    2009年10月04日
  • 陽気な容疑者たち

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    すごいなぁ。溢れるユーモアといい事件そのものの面白さといいぐいぐい読み進められる。中盤の「女傑」の推理は読んでて聞き苦しかったけど最後に仕掛けられてる真相は驚き。まあこれが一番無難な解決だろうけど。

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    2009年10月04日
  • 背が高くて東大出

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    やっぱり面白いなぁ。天藤真は凄い。乱歩の設定した本格の形式とは離れているんだけど、これは明らかに本格。日本のミステリが如何に乱歩の影響下にあるかだね。収録短編どれもこれもユーモアに富んでいたり、展開が巧妙でぐいぐい引っ張っていったりと読んでて飽きることがない。すばらしい。

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    2009年10月04日
  • 遠きに目ありて

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    脳性麻痺で体が殆ど動かせない少年の、鋭い推理。
    登場人物の心の描写や事件そのものの姿に、全体に厳しくもやさしげな雰囲気を出しているのがこの作家の特徴だと思う。

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    2009年10月04日