あらすじ
帰らない母を案じて眠れぬ一夜を明かした塩月令子は、後ろ髪引かれる思いで出社し針谷警部から凶報を受ける。駆けつけた千葉県銚子の霊安室で令子を待っていたのは、変わり果てた姿で横たわる母と耳を掩いたくなるような事実だった。その朝、屏風浦で数十メートルの断崖から海に落ちた車が見つかり、同乗四名の遺体が収容された。その一人が外ならぬ母であり、現場の状況から単なる事故ではなく謀殺に違いないというのである。懸命の捜査にも拘らず被害者間の交友関係は確認できず、容疑者はおろか動機すら判然としない。いったい誰が、何のために? 令子は自力で真相を追うが……。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
一気読み。作者を見直しました。途中でネタは割れますが、被害者をつなぐミッシングリンクの興味で引きつけます。が・・・。うーむ。期待しすぎたかな。まあ、よく考えられた話で退屈することもなく楽しめました。
Posted by ブクログ
シリアスな展開でありながらどこかユーモラス、と言うのがこの人の魅力だと思う。今回も良く考えればもの凄い悲惨な事件のはずなのにキャラの魅力が凄くてずっと面白いと思いながら読み進められる。主人公の令子の天真爛漫さとか直情潔癖さとかが鼻に付くんだけどそれ以外の脇役たちの魅力が高くその令子の魅力も強くなってるような気がする。しかもこの作品に使われているトリックの凄さといったら!ミステリに慣れていれば慣れているだけこのトリックには騙されるのではないか。二転三転する真相解明の場面、サスペンスフルな展開、どれもこれも本当にすばらしい。
Posted by ブクログ
冒頭の、関係のない4人の転落死、その事件を解決すべく結成される遺族会、そして一癖も二癖もあるいかがわしいそのメンバー、結末直前のどんでん返し、そして4人が同乗して死に至った経緯のコミカルさ、これらを取り出してみると正に天藤ワールドのエッセンスが詰まっているのだが、どこか空虚な感じが残っており、充実感がない。それは主人公令子の行動と共にストーリーが語られることにあると思うのだ。
今回の主人公は決して読者の共感を得る存在ではないだろう。勝ち気で考え方に偏りがあり、しかも厚顔無恥な所もあり、移り気が激しい。この移り気の激しい令子の行動がまた短絡的で探偵ごっこの域を出てないために、徒に時を費やしている印象が非常に強かった。
また、死んだ母親が令子の導き手として頻繁に出てくるのはどうしたことだろうか?
こういう寓話めいた構成は今までの天藤作品には全く見られなかったのに今回に限って何故このような手法を取り入れたのだろうか?作者も年を取り、ある意味、独特の死生観を持つに至ったのだろうか。これが結末にも演出として使われていたのは逆効果で、温かい余韻を持たせようという作者の魂胆が見え、私にはあざとく感じたのである。
まあたまにはこういうのもあるんでしょうな。