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Posted by ブクログ
天藤真の本格推理長編第一作。殺人か自然死か、分からない状態での完全無欠の密室が出てくる。登場する容疑者たちの様子はコミカルで、この作品からすでに天藤ワールドが作り出されている。伏線のはり方があまりに自然で、気づいて材料を集め、推理するのは難しい。しかし、再読すると確かに伏線はある。最後の伏線は決定的で見事である。また、天藤真の文体には独特のリズムが感じられる。読みやすく彼の世界に容易に引き込まれる。これもまた、力作、傑作である。なぜ、江戸川乱歩の評価が低かったのか、不明(大下宇陀児は絶賛)。
文章の細部にかなりの工夫があり、再読すると驚く。語彙や表現の豊富さにも、現代の読者は戸惑うかもしれない。ちなみに、257頁の「被が迷惑する」という文は、「彼が迷惑する」なのだろうか。
Posted by ブクログ
不朽の名作『大誘拐』の作者のなんと江戸川乱歩賞応募作である。文章を見るにデビュー作とは思えないほど卓越した力があり、その老成振りは現在、数多デビューを飾る新人達と比べると隔世の感がある。
鉄工所の社長が密室の中で殺害されるという純本格的なシチュエーションで始まる本書は終始殺人事件とは一線を画した農村の和やかなムードで進み、解決に至る終章もまたそのムードを一貫して結ばれる。応募作にて既に作者特有の温かみが溢れているのである。
短編集『遠きに目ありて』中の1編にもやむにやまれない殺人を扱った物があったが、原点である本書も正にそのテーマが通底している。ただ技法にクリスティーの例のアレをやっているのは、長編第1作としては気負いすぎではないかと思うのは私だけだろうか。
何せ、登場人物が憎めないのが作者の特徴、というか美点であり本書もその例に漏れない。正に「容疑者達、万歳!!」である。
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