天藤真のレビュー一覧

  • 大誘拐

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    ネタバレ

    爆問の太田さんがお薦めしていたので読んでみた。

    ネタバレになるかわからんけども、一応。
    刀自の気持ちがわかるなあ。
    国に取られるだけ取られて死んでゆくのには抗えるものなら抗ってみたい。
    何か生きた実感とか痕跡とか、そんなものも感じてみたい。
    でもそれが出来たのは、刀自の財産や知能や人望があってのことで、自分のような庶民には無理なんだろうな。
    まあ、無理と思ってる時点で無理なんでしょうが。

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    2021年07月11日
  • 遠きに目ありて

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    1976年頃の作品で、今風の書き方ではないけれど、こういう推理小説も楽しい。名探偵コナンみたい。機会を見て著者の他の作品を読みたくなった。特に映画化された大誘拐。
    探偵が警部の話を聞くだけで問題を解くから、読み手と探偵が同じ土俵に立てるところが安楽いす探偵の醍醐味です。

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    2020年11月29日
  • 遠きに目ありて

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    いつも読んでる本より少し読みにくかったですが、 
    少年が少しずつ成長するところや、推理のどんでん返し安楽椅子探偵要素など楽しめる要素がたくさんあったのがよかったです。

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    2020年11月03日
  • 遠きに目ありて

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    眞名部警部が心癒される場所は、ある少年(とその母親)の元だった。その少年は整った顔立ちをしており、明晰な頭脳を持っている。ただ、彼には行動の自由がない。なぜなら彼はからだに障害を持って生まれたからだ。
    障害を持った信一少年と、ひょんなことから知り合った眞名部警部。少年のリハビリにとはじめた事件の話だったが、信一は思わぬ推理力を発揮し始める。

    障害のある少年が探偵役という異色のミステリー。
    いわゆる安楽椅子探偵の類だが、探偵役が少年というのと、彼に事件をもたらす警部の過度な信一ダイスキ光線が微笑ましい。
    70~80年代の作品ということで、警察は正義であり、なんだかゆるくて、ずるさがなくて安心で

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    2020年11月01日
  • 殺しへの招待

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    ネタバレ

    巻措く能わず、とはこのことなのかと今回実感した。
    全343ページを5日で消化したのは近来にないハイペースだったと思う。平均にして68~69ページを1時間で読むのだからやはり速い。島田荘司氏の『アトポス』は1日100ページぐらい読んだ記憶があるが、あれとクーンツ以外には思い当たらない。
    いや、しかし、今回もなかなかに読ませる。プロット自体は特に斬新ではなく寧ろ地味なのだが、設定や登場人物の動かし方に匠の技が効いていて、350ページ弱を思う存分、愉しませてくれる。
    今回の目玉はやはり5人の男に送られた妻からの殺人予告状でこれがどの誰を指すのか判らないという点が面白い。しかし作者はこのワンアイデアで

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    2020年10月17日
  • 背が高くて東大出

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    ネタバレ

    今回の天藤作品も粒揃いの傑作ばかりで、嬉しくなる。
    今回は特に構成に凝った作品が多かったような印象が強いのだが、振り返ってみると実際に構成が凝っていたのは中編の「日曜日は殺しの日」と「死神はコーナーに待つ」のみだった。ということは如何に印象が強かったかという証左になるわけだ。特にこの2編は所謂倒叙物の体を成しており、大体犯行の目星がついているのだが、それを約100ページ強を費やして何を書くのだろうと思いきや、自明の理だと思われていた事件が他人が探るに連れ、全く予想外の証言や真相が出没し、正に頭の中を揺さぶられる感覚がした。著者の企みは正にそこにあり、読者にストーリーのあるべき方向を示唆させ、先

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    2020年08月11日
  • 雲の中の証人

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    本作は天藤版リーガル・ミステリ集とでも云おうか、9編中5編が法廷を舞台にしたミステリでそのどれもが傑作。
    設定から結末まで一貫してユニークな「公平について」はもとより、中篇の表題作の何とも云えない爽快感。天藤真氏はシンプルな題名によくダブル・ミーニングを持たせるが本作もそれ。それがさらに効果を上げている。
    そして「赤い鴉」、「或る殺人」の哀愁漂う結末。ドイルの短編「五十年後」や島田氏の『奇想、天を動かす』などに見られる膨大な人生の喪失感を思わせる深い作品となっている。特に後者は当時似たような事件があったのだろうか、行間から作者の肉体労働者に対する社会からの蔑視に対する怒りが沸々と湧き出てくるよ

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    2020年07月30日
  • 鈍い球音

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    『遠きに目ありて』をきっかけに名作『大誘拐』と読み進んできた私の天藤作品体験にある意味、決定打を打ち込んだのは数年前に古本で購入した本書であったと今にして思う。
    前作『死の内幕』までの時には私の目に狂いがあったかとも思ったが、本書を久々に読んで、ああやはり間違ってはなかったと思いを新たにした。ここには天藤作品のエッセンスがぎっしり詰まっており、また本書から天藤テイストが定着したかのように感じられる。

    まず登場人物全てが魅力的。
    天藤作品の場合、『陽気な容疑者たち』、『死の内幕』、『大誘拐』などの傾向を見ると主人公がいるものの、万能ではなく寧ろ他の協力者と一つのチームを成して事を解決していくパ

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    2020年06月06日
  • 陽気な容疑者たち

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    再読
    題名がはっきり示すとおりミステリ
    どうしてもその根幹のところが苦しいのだが
    作者のどの作品にもみられる陽性の姿勢が
    わかってやっているのだから有りとさせる
    良いとはいえなくとも

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    2018年11月13日
  • 殺しへの招待

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    ネタバレ

    よい小説とは必ずしも現実的である必要はなく、ただ作者の作った虚構の中で物語の進行に矛盾や違和感のないものであれば良質なエンターテイメントとなりえます。

    その意味で、この小説はミステリーとはかくあるべしという模範例です。

    ただし、小さな穴はあります。(以下ネタバレあり)

    共通の知人という設定ですので、中心となる人物一人を抜きにしては共通足りえないという点を考慮すればターゲットはこの時点で明らかです。

    とはいえ、最終的にはそういう結末(どんでん返し)にはなるのですが・・

    まあ、そんな小さな隙が気にならないくらい、この舞台設定を考え付いた作者の創造力に脱帽です。

    「大誘拐」「雲の中の証人

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    2018年08月20日
  • 遠きに目ありて

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    警部の真名部はある縁で小児麻痺で車椅子の信一少年と、その母咲子と知り合う。
    信一少年は実に鋭い観察眼で、警部の語る事件の様相から真相を充てる。
    警部はこの母子と会うことを楽しみにし、いつか本当の家族になりたいが、自分の心構えがまだまだ足りないんだよな…と思う。
    各話では、日本は車椅子の人が出歩くにはあまりにも不便だ、と問題提議している。
    当時の日本はバリアフリーという概念も薄く、聡明な少年も同じ年の子たちと自分を比べて気分が暗くなることもあるが、そんな少年に対して、警察官たちが車に工夫をこらして少年と接する姿が優しい。

    元は仁木悦子「青じろい季節」に脇役として出てくる少年とその母を作者の天藤

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    2018年01月21日
  • 遠きに目ありて

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    くどくなるが、この作家も創元推理文庫で作品が出ていなかったら、全く手に取ることの無かっただろう。そしてその出会いは私にとって実に有意義な物となった。

    本作は脳性麻痺で車椅子生活を強いられている信一少年が成城署の真名部警部が持ち込む捜査が難航している事件を明敏な頭脳で解き明かすという典型的な安楽椅子探偵物の連作短編集。しかし特徴的なのは安楽椅子探偵を務める信一少年が身体障害児であり、それに関する社会問題も提起しているところにあるだろう。収録されている短編の初出はなんと76年と30年以上も前のことながら、90年代になってようやく人々の意識が向きだしたバリアフリー不足の問題など、障害者が社会では生

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    2016年12月11日
  • 遠きに目ありて

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    俗に言う『安楽椅子探偵』モノ。
    とはいっても探偵役は脳性麻痺の車いすの少年。
    30年ほど前の推理小説です。
    30年と一口にいっても障害者に対する社会が現在とかなり違うという点に気がつきます。
    公的に障害者の生活しにくい環境だったのでした。
    警察署や交通機関なども利用しにくかったなんて。

    内容はネタばれになるのでここには特に書きませんが
    天藤真という作家さんを薦められて。
    故人だったのですね…
    有名な「大誘拐」を機会があったら読んでみようと思います。

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    2014年02月14日
  • 鈍い球音

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    ネタバレ

    日本シリーズ直前、東京ヒーローズの名物監督、桂監督が「ほとんど」いなくなった。試合はどうなる…というところから次々に問題発生。

    日本シリーズの勝敗が全編を通して1つの大きな問題としてあり、その周りで失踪だとか誘拐だとかが起きています。球界問題や博打屋も絡んで誰がどこにどう関わっているのか、てんやわんやの楽しさと緊張感がありました。

    コロコロとスピーディーに展開する物語と凝った構成に混乱。しかし、「ほとんどいなくなった」とか「胴体だけいなくなった」とか独特のセリフとユーモアあふれる文体、個性的な登場人物達が楽しくて止まることができずに一気読みです。

    野球には詳しくないので、作中での球界につ

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    2013年11月14日
  • 遠きに目ありて

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    ネタバレ

    「ミステリ十二か月」より。表紙が違うけど。これが1976年という、私が生まれる前に書かれたというのが、すごいよな。脳性まひの少年が探偵役。身障者が外出できない、というのがこんなにもか、というほど如実。36年の進歩は大きい。テレビのリモコンすらなかったんだから。でも今でも身障者の外出はやっぱり大変なんだろうな。推理だけでなく、そういうとこも考えさせられるお話。5編の連作短編集。最後の「完全な不在」が一番面白かった。ここまで手の込んだ犯罪、現実に起こっても見破れる人はいないんじゃないか。つーか、他人が成り変わるなんて成り立たないか。この人のやつ、他にも読んでみよう。

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    2013年08月27日
  • 遠きに目ありて

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    ネタバレ

    いろいろと考えさせられる本だった。
    仁木悦子氏の本の登場人物が主人公っていうのも不思議。
    時代はウルトラマンタロウのころかな。
    大きな団地での事件があったり、ゴミゴミした下町?での事件があったり。

    真名部警部が下心ありありで通う岩井家。お母さんが美人で素敵、居心地もよさそう。
    重度の脳性マヒでほとんど体の自由がきかない、言葉も慣れない人には聞き取れない。そんな少年、信一くんに最初は気晴らしに外の世界の話を始めたけれど、聡明な彼はどんどん事件を解き明かしていく。
    どの事件も、そんなに難問でもないから、割とすんなり犯人はわかってしまうんだけど。
    じわりじわりとこの時代にハンディキャップを持ってる

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    2016年12月21日
  • 大誘拐

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    1978年...てことは...30年前!!
    そしてこの頃は自分が愛してやまないパンクや
    パワーポップが世界中でリアルタイムで鳴り響いていた時代。
    羨ましいなぁ...。当時、自分は8歳。さすがにこういった
    作品をリアルタイムで体験するには無理がある。

    でも、作中の空気感や時代感は理屈なくしっくりと
    受け入れられる分、今の若い人がこういった古い
    作品に対するのとはきっと違うのだと思う。

    理解はされないでしょうが萩原浩の作品と似た
    温度と手触りを感じました。
    ...当然ながら全復刻作品を読み漁る
    羽目になるでしょうね(笑)。

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    2013年01月31日
  • 遠きに目ありて

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     小気味良いテンポで進む推理連作短編。
     書かれたのは1976年である。
     だけれど、今読んでもそれほど古さを感じない。

     車椅子に乗った少年が探偵役なのだけれど、少年の聡明さはもちろんのこと、周りの人物たちの視点もやわらかい。

     けれど、少しだけ思ってしまう。聡明じゃなかったら駄目なのかな……と。ただ、在るだけですばらしいと言えたらもっといいのにな、と、ね。小説にならないかもしれないけどさ。

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    2012年12月21日
  • 陽気な容疑者たち

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    軽妙で機知に富んだ語り口、“ニヤニヤ”というよりも“ニコニコ”としながら読める希有な作品。真相にさほど驚きはないが、筋立ても見事で、じんわり胸にくる読後感も良し。

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    2012年09月18日
  • 陽気な容疑者たち

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    「巻き込まれ体質な主人公」「次々に現れるクセ者たち」「密室」と、盛り沢山なミステリ小説。全体的にとぼけた空気が楽しかった。
    やたら能天気な前半と真相が明らかになる終盤、改めて読み返すと違った風景が見えるミステリの醍醐味を味わえた。

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    2012年02月25日