感情タグBEST3
Posted by ブクログ
思っていたより遥かに面白い。
分かりそうで分からない失踪事件の真相、そして日本シリーズの展開。登場人物も皆いきいきとしており、解説にある通り、皆人間らしい。
ミステリとプロ野球を絡めた先が気になる展開と人間ドラマが非常によく噛み合っており、素直に面白い。これが「読者を引き込む吸引力」の為せる業なのだろう。
ラストで明かされる失踪の動機、レシーバーの真実も好み。
天藤真良さをしみじみと思い知らされた。他作品を読むのが楽しみになってきた。
Posted by ブクログ
『遠きに目ありて』をきっかけに名作『大誘拐』と読み進んできた私の天藤作品体験にある意味、決定打を打ち込んだのは数年前に古本で購入した本書であったと今にして思う。
前作『死の内幕』までの時には私の目に狂いがあったかとも思ったが、本書を久々に読んで、ああやはり間違ってはなかったと思いを新たにした。ここには天藤作品のエッセンスがぎっしり詰まっており、また本書から天藤テイストが定着したかのように感じられる。
まず登場人物全てが魅力的。
天藤作品の場合、『陽気な容疑者たち』、『死の内幕』、『大誘拐』などの傾向を見ると主人公がいるものの、万能ではなく寧ろ他の協力者と一つのチームを成して事を解決していくパターンである。前2作については些か彼ら・彼女らのキャラクターが弱く、今一歩といった感じだったが本書に至って見事に成熟された感じが強い。
次に最後の先の読めない展開。
本書もベレー帽と髭を残して監督が失踪するという仰天の発端から次から次へと収拾がつかないくらいに事件は右往左往し、終章まで散らかりぱなしといった感じで読んでいる最中は不安がいっぱいだった。
そして達者な筆捌き。
ユーモアが滲み出るその文体は事件が陰惨なものであってもほのかに温かみを感じさせる。これが最初に述べた登場人物陣の魅力を引出しているのは云うまでもない。
また今回は構成も凝っていて、何者とも判別しない電話のやり取りが随所に挿入され、事件の黒さ・壮大さを想像させられるし、何よりも今回のメインキャラクターである桂監督を最初と最後にしか登場させずに印象深い人物に仕立てている辺りの見事さは特筆物である。
さぁ、ここからが天藤ワールドの始まりである。愉しめない訳がない。
Posted by ブクログ
日本シリーズ直前、東京ヒーローズの名物監督、桂監督が「ほとんど」いなくなった。試合はどうなる…というところから次々に問題発生。
日本シリーズの勝敗が全編を通して1つの大きな問題としてあり、その周りで失踪だとか誘拐だとかが起きています。球界問題や博打屋も絡んで誰がどこにどう関わっているのか、てんやわんやの楽しさと緊張感がありました。
コロコロとスピーディーに展開する物語と凝った構成に混乱。しかし、「ほとんどいなくなった」とか「胴体だけいなくなった」とか独特のセリフとユーモアあふれる文体、個性的な登場人物達が楽しくて止まることができずに一気読みです。
野球には詳しくないので、作中での球界についてや試合などにどれほどのリアリティがあるのかなどは分かりません。ルールを知っているだけという程度のわたしですが、一進一退の展開や終盤の試合などは楽しかったです。
失踪時の状況など、ふざけているとしか思えないような事柄にきちんと整合性があるのが素晴らしい。
ラストの登場人物たちそれぞれの人間ドラマにも感動しました。
ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
東京と大阪のオーナー二人が実は失踪事件に関係なく、ただ関係上お互いを疑いながらも黙しているというのがとてもうまい。怪しい雰囲気を醸し出しているものの、事件とどうのように繋がっているのかが見えず混乱の元でした。
最後の監禁場面なんかはけっこうピンチな状況でしたが、試合の緊張感や展開と相成って盛り上がったと思います。
谷田貝がいう通り、次々に起こる事件や謎をすべて保留にしてきて、ここまできてようやく真相が見えてくるというのもうまいしすっきり。
全ては桂監督の抵抗心からの知謀だったわけですが、桂監督がなぜこのよう形をとらなければならなかったかの理由にはなるほど、と思いました。
その動機から実行されたこの事件で、立花の実力を知ることとなったというのは運命的です。
ばかばかしいような事件の状況とは裏腹に切ない幕切れでした。
Posted by ブクログ
日本シリーズを目前にしたある日、東京タワーの展望台から一方の監督が忽然と姿を消した。
代理監督を立てて試合に臨むも今度は代理監督まで?!
熱い野球の戦いの裏に隠された真実とは?
傑作野球ミステリ、ここに登場!!