加藤登紀子のレビュー一覧
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本書は、加藤登紀子の「まえがき」とともに、第一章『人間はこの時代に生きられるのか』、第二章『農的幸福論』、第三章『僕の少年時代は幸せだった』、第四章『藤本敏夫が残したもの―加藤登紀子』、第五章『農村回帰の時代―甲斐良治と加藤登紀子の対談』で成り立っている。読み応えがあり、文字には活力が感じられる。藤本敏夫という人物を多面的に描き出す編集は、加藤登紀子の編集力によるものである。肝臓がんで亡くなる間際の文書やインタビューも収められており、藤本敏夫の遺書とも言える内容である。
三派全学連委員長であった藤本敏夫が有機農業を営み、大地を守る会を立ち上げたことは知っていたが、加藤登紀子による本であるこ -
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大きな歴史や出来事に打ちのめされて、日々の小さなささやかな大事な希望を見逃しているのではと気付いた。日々のニュースに目まぐるしくなっていた。世界の事ももちろん大事だけれど一人ひとりの歴史も大事。
人間は未だに命の大事さを本当に分かっていない人達がたくさん一定数いる。そういうもんなんだろうか。人間の賢さと、どうしようもない愚かさが合わさって戦争や罪が起こるのでは?欲に目が眩んで本当に大事なものを簡単に見えなくなる、どうでもいいものとして扱う。とても悲しい。
どうしようもない大きな絶望 身近な暗い絶望が私に人間全体を絶望させるけど、それに飲まれずささやかで消えそうな希望を大事にしようと思った。 -
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ホンモノの生き方をした人を知っていくことは、
人生を真っ当に生きていくために、
とっても大切なこと。
〈本から〉
「アフガニスタンからアジアが、そして世界が見える」
「目を射る純白のテイリチ・ミールは、神々しく輝いている」
「予防に勝るものはない」
「この白い峰々の下で人々は生まれ、生活し、そして死んでゆく。幾千年も変わらぬこの単調なたたずまいは、変化に疲れた我々の心をすがすがしくする」
「誰も行かないから、我々が行くのだ」
「せめて私たちは、虚構の上塗りをせず、敢えて動かぬ石でありつづけましょう」
「病気は後でも治せる。まず生きておりなさい。」
「アフガニスタンでは金はなくても生きらるr -
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藤本敏夫とは、森山良子と共に今や数少ないきちんとした社会的な面も含むメッセージ性を持った歌手の加藤登紀子が、獄中結婚した相手の元全学連委員長ということくらいしか知らず、その後たしかムツゴロウこと畑正憲のような活動をされてきたみたいに思っていました。
一応、私ごとき遥かに遅れてきた世代でも知っている名前の、最首悟や山本義隆や秋田明大や滝田修や、あっ、つかこうへいの『新・飛龍伝』では内田有紀が神林美智子という名の全共闘委員長役だったのですけれど、そういう中のひとりとしての認識もありました。
たしか2002年亡くなった年に、家の光から単行本が出たのを買いそびれていて、このたび文庫本で出たので購入 -
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あの小柄な身体には激動が詰まってる。
だから、お登紀さんの歌声はあんなにも胸を打つ。
事実は小説より奇なり、とはよく聞くけども。
ぼんやりと聞いたことはあったお登紀さんとご主人の出逢いは、本書ではっきりと知るに及び、なんだか作り物のお話を読んでいるみたいに運命的で、情熱的で、けれど不安定で、孤独が押し寄せるものだった。
学生運動の中心的人物だったご主人は、きっとカリスマだったのだろうなあ、と思う。
私は、学生運動の勢いも意義も目指したものも、その熱をも知らない。
けれど、当時学生たちがあれほどの行動を起こすには、やっぱり強い求心力がなければ始まらなかったんじゃないかと、想像する。
凡人が先頭 -
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ネタバレ「これが鉄のカーテンの向こう?!
そう、これがロシア人よ!私は嬉しくて、そう叫びたいくらいでした。」
今、このご時世で、この本を上梓した著者の心意気が素晴らしい。というか、居ても立っても居られなくなったというその心情が良く判る。
満州で生まれ、ロシア、ウクライナをはじめとする数多の出自の人と出会い、昭和、平成、令和と時代を経てきた彼女自身の歌と共にあった人生を綴った内容だが、単なる“私の履歴書”ではなく、今の時代に訴えかける熱い思いが随所に溢れている。
「戦争に負けたら国がなくなる、と言われたかもしれませんが、人が生き続けている限り、国はなくならないのです。」
ややもすると、ウ -
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著者が人生で大切にしてきたことや経験から得た知恵など、なるほどそんな考え方もあるよねと思いました。
「好きなものを人にあげよう。恋人も!」にはドキッとさせられましたが、この世は常に川や風のように流れていますし、人は結局、一人で生きて死んでいくしかない。そう考えると、人間関係も移ろうものだし、だからこそ関わる人との良い瞬間を作りたいと思う。その人との間に素晴らしい瞬間が5つくらいあればそれで十分と言う、嫉妬とか未練とかとは訣別した著者の潔さが素敵でした。
人生って何かを積み上げていくイメージがあったのですが、著者によると何度もゼロから始め、無限に繰り返す。例えるなら畑のようなものだと言う表現