あらすじ
「百万本のバラ」を作った人たちの運命、どこかでこの歌をうたっているはずの人の今――果てしない世界の放浪者のように、とぼとぼと生き続けているこの歌を改めて見つめてみると、そこには大きな歴史に翻弄されようとも、なんとか生きてきた一人一人の物語があった。ロシアと周辺国、そして加藤登紀子が生まれた満州(中国東北部)のハルビン。そこに生きる人、そこを追われた人たちとの出会いを、自身の歌と人生とともにつづる。
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Posted by ブクログ
大きな歴史や出来事に打ちのめされて、日々の小さなささやかな大事な希望を見逃しているのではと気付いた。日々のニュースに目まぐるしくなっていた。世界の事ももちろん大事だけれど一人ひとりの歴史も大事。
人間は未だに命の大事さを本当に分かっていない人達がたくさん一定数いる。そういうもんなんだろうか。人間の賢さと、どうしようもない愚かさが合わさって戦争や罪が起こるのでは?欲に目が眩んで本当に大事なものを簡単に見えなくなる、どうでもいいものとして扱う。とても悲しい。
どうしようもない大きな絶望 身近な暗い絶望が私に人間全体を絶望させるけど、それに飲まれずささやかで消えそうな希望を大事にしようと思った。
Posted by ブクログ
加藤登紀子さんのYouTubeチャンネルで山田五郎氏と対談している回で、この本の存在を知りました。ウクライナの事が知りたくて読みましたが、音楽や絵画にも興味が広がりました。自分の中で、加藤登紀子さんについての印象もより良い方向に変わりました。
Posted by ブクログ
「これが鉄のカーテンの向こう?!
そう、これがロシア人よ!私は嬉しくて、そう叫びたいくらいでした。」
今、このご時世で、この本を上梓した著者の心意気が素晴らしい。というか、居ても立っても居られなくなったというその心情が良く判る。
満州で生まれ、ロシア、ウクライナをはじめとする数多の出自の人と出会い、昭和、平成、令和と時代を経てきた彼女自身の歌と共にあった人生を綴った内容だが、単なる“私の履歴書”ではなく、今の時代に訴えかける熱い思いが随所に溢れている。
「戦争に負けたら国がなくなる、と言われたかもしれませんが、人が生き続けている限り、国はなくならないのです。」
ややもすると、ウクライナ戦争開戦当初、政治的妥協や国外退避を促す発言をしたどこぞの論客の意見に相似たりと捉えられかねないが、主旨は違うようだ。
「故郷はそれを求める人にだけある。求める力の分だけ、自分自身が故郷になれる」
と、祖国や故郷を追われ、それでも民族の生活、文化、宗教を守り「何月何日は何をしなきゃいけない、というようなしきたりを守って、素晴らしく生きていた」亡命ロシア人を目の当たりにしてきた自分の母親の暮らしぶりから、そこに「故郷」のあり方を彼女は見たのだろう。
「生きるということは、とっても具体的なことなのだ、ということを忘れないようにしようと思います。」
というメッセージは、どんな時代の荒波にも負けず生き抜いてきた力強い人生訓だ。歴史は個々の人生、いや些末な日々の生活に宿る。
生き抜くことの素晴らしさを讃えた人生賛歌。著者の生きざまもだが、その父、母の激動の人生と、そこから読み取れる前向きな心持ちに勇気をもらった。
「トコ、見てごらん、ほら青空!気持ちいいよ!」
台風の後、自宅の台所の屋根がふっ飛んでも、こう言える著者の母。実に素晴らしいなあ。