川端裕人のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
人間の視覚のうちで色の認識は、客観的な外的事実の認知ではなく、あるスペクトラムの光をある色として認識するいわば錯覚であり、個体差が大きい。したがって、色盲、色弱と言われるカテゴリーと正常色覚を明確に区別することはできず、色覚の弱い人から、スーパーノーマルと言われる極めて色覚能力の高い人までなだらかな正規分布をなしており、正常と以上の間にギャップがない。
また、現在行われている石原式色覚検査は、偽陽性の発生頻度が極めて高く(男子で46%、女子では97%)、スティグマの弊害が大きい割に、メリットが小さく、一律に実施するのは妥当ではない。
という内容。健康診断におけるエビデンスベースの考え方を色覚検 -
Posted by ブクログ
色覚の検査、小学校の頃にやった記憶がある。
結果、「異常」の可能性ありと判定されたクラスメイトがいたことを覚えている。
たぶん、僕は、色がわからないことがどういうことか理解ができず、興味本位で彼に質問しただろう。どんな風に色が見えるのかを。
彼はニコニコしてあまり気にしていない風だった記憶がある。でも、心ではどう思っていたのだろう。
今から考えると、みんなの前で色覚について正常か異常かを診断する差別的な検査だった。
しかも「色覚異常」に治療法はないときている。
「色覚異常」が遺伝性のため結婚について注意を促したり、就ける職業を制限したりするための検査。
なんのために、そんな重荷を小学生に負わ -
Posted by ブクログ
日本には政府から独立し、しかも政府に提言できる科学者集団(アメリカのCDCのような)ものがないというのはこういうことか、と暗然たる思いになった。
突然国立感染研から北海道大学の先生が呼び出され、そのつてで何とかコロナ対策班を作る。急拵えで、しかもボランティアに支えられているというお粗末さ。
この西浦先生は今はアドバイザリーボードにいるようだが、第一線でずっとやってくれている尾身先生は本当にご苦労が絶えないと思う。科学的な分析結果をどのように伝えるか、どのように判断するか、誰が決断を下すか(これは政治に決まっているが)、はっきりしていなかったことに驚きを覚える。 -
Posted by ブクログ
海外にいたこの1年間で、コロナ対策に関して日本でどのようなことが起きていたのかキャッチアップの意味も込めて読みました。
いわゆる第一波といわれる初期の混乱の中で、著者の一人である西浦教授がどのように行政に「巻き込まれ」(敢えての表現)、時の人となりつつも専門家として熱意をもって仕事をされていたのかが伺えました。
前半で述べられている、行政とメディアに挟まれるサイエンティストとしてコミュニケーションに苦心されていた問題は多角的に議論できると思います。複雑な問題をマネジメントするリーダーの立場であれば、サイエンティストとしてのバックグラウンドであってもコミュニケーションへ投下するリソースが多く -
Posted by ブクログ
新型コロナウイルスへの対応で数理モデルがどのように活用されたのかに興味があり、この本を読み始めた。
前半は、西浦さんをはじめとする多くの人たちが、どのように行動していたかが書かれており、とてもワクワクした気持ちで読むことができた。
想像以上に泥臭い現場であったかがよくわかった。
後半は、政府や政治家とのやりとりにおける現場の葛藤が書かれている。
なぜここまで政治に関する話が出てくるのか?と疑問を抱えながら読んだが、あとがきを読んでその理由がよくわかった。
それは、数理モデルの活用をする上で、いろいろなチャネルとのコミュニケーションがいかに重要かということだった。
最後に、西浦さんと自分の -
Posted by ブクログ
本書は八割おじさんこと西浦教授が新型コロナウィル騒動の前夜である2019年の12月(一年前だ!)をプロローグに本格的に騒動が始まった2月のダイアモンドプリンセス号の対応から第一波を乗り切るまでのクラスター対策班の中心人物として過ごした体験を記したものです。殺害予告まであったようなので、政治家や官僚のとの軋轢も相当なものと思われますが、そのあたりはとてもソフトな書き方をしているのがとても印象的、もう少し毒があったほうが面白かったかもです。感染症の危険があまりなかった日本では感染症疫学の研究者は少なく、とりわけ感染症の数理モデルを扱える研究者は西浦教授とその研究室しかなかったようです。大変お疲れ様
-
Posted by ブクログ
テーマとしてはシンプルに「現在、研究の最前線を走る研究者の方々にお話を聞き、その研究内容の全貌と展望、そしてそこにたどり着くまでの彼らの道のり」が丁寧に語られる。
あとがきで著者が語っていたが、この本のタイトルを目にした読者の多くは「研究室」という言葉になんとなく理系的な雰囲気を感じ取るかもしれない。だが中身を読んでみると、たしかにいわゆる自然科学の研究室に多く触れているが、その内容を読んでいくと文系的な側面も多数見られる。
フィールドワークを行なう上で向かった先での生活や営みについて思いを馳せたり、研究対象を調べる中で哲学的な分析を行ない始めたり……。最終章の地理学者の研究に関しては、「地理 -
Posted by ブクログ
「人類学系の読み物として最高の一冊」
第2章の中盤からは次のページをめくる指が止まらない。それくらいに私たちの祖先への興味が1ページ毎にかき立てられる一冊。他のブルーバックスのように「専門を学ぶ入門書」というものよりは、「専門を旅する読み物」といった感覚の1冊。
私たちを私たちたらしめているのはテクノロジーであって、テクノロジーの進化によって種としての進化を代替している訳でもある。そしてそのテクノロジーは、世界をひとつにし、世界からガラパゴスをなくし、均質なものとすることで、種としての進化のストッパーにもなっている。
著者も問題提起していた現代の我々の大きな命題である「ダイバーシティ・ア -
Posted by ブクログ
ネタバレ【動機】
川端裕人さんにて未読だったため
【内容】
小学五年生の少年たちの川をめぐる一夏の冒険。
鳳凰池にやってきたペンギンの家族たちを中心に巻き起こる様々なできごとと、少年たちのアイデンティティの話。
【所見・まとめ】
この作者の小説が大好きで、当時大学の学部を決めたのも『リスクテイカー』という小説を読んだことがきっかけ。
本小説もとても面白かった。
ドキッとしたのはタイトルにもなっている「川の名前」の概念。
自分がどこに立っているのか、どこから来てどこへ行くのか、そしてどこに帰るのか、そんなことを考えたことは一度もなかった。
普段使用している住所が人間が作ったもので、街とか番地でしか