新井潤美のレビュー一覧
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英国紳士と言われると、スーツを着こなす、表紙の絵のような物腰柔らかな人物を想像していました。
しかし、彼らの中には、はっきりと階級を意識した、均一化した世界があるのだと冒頭で著者は述べています。
「紅茶にミルクを入れるタイミング」などの細かいところまで異なる社会は、想像できませんが、それは差別的なものではなく、あくまで「階級に応じた振る舞い」だそう。
しかし、その階級の中でも、「ミドルクラス」は幅が広く、ロウアー(下流)とアッパー(上流)のあいだでは、歴史的に大きな溝があり、アッパーに憧れる「ロウアーミドルクラス」はいつも嘲笑の対象となっていたようです。
『「ロウアーミドルクラス(下 -
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非常に勉強になった。与党が変わるたびに教育のあり方(パワーバランス)が変わるっていうのは日本ではあまり考えられないこと。
文中で引用されていた本にもおもしろそうなのがいっぱい。ただ、日本では訳されていないものもあり残念。検索の問題かもしれないので、巻末リストに原書だけでなく日本発行の題名も付けてくれたら、なおうれしかった…というのは単なるわがままですが。とにかく日本語で読めるものは読んでみたい。
また、自分が行っていた私立校はどの階級に属していたのか知りたいと思った。
本書を読んだ後に「美しき英国パブリック・スクール」を読むとイメージが湧きやすく理解が深まる。 -
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ハリーポッターを代表するイギリスの青少年を主人公とする物語には必ずと言っていいほど登場する全寮制の中等教育学校ーいわゆるパブリック・スクールについての解説書。
日本でも最近になって海陽学園などパブリック・スクールをモデルにした学校がフォーカスされたりしたものの、依然として数は少なく、そしておそらくこれからも増えることはないだろう。だからこそ新しい世界を見た感じがあり面白い。
本書ではそんなパブリック・スクールが形成された経緯や「紳士的な教育」がどのような変遷を遂げたか、また女子のパブリック・スクールにおける特徴など様々な視点から解説を行なっている。パブリック・スクールを扱った小説がパブリック・ -
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イギリスの貴族制度に詳しい著者による、イギリスの上流階級、中上流階級に関する本。「ダウントンアビー」などのドラマをはじめ、新聞報道や文学作品、回顧録、伝記などを基に、それぞれのシーンの意味や背後にある階級制度について詳しく説明している。とても興味深い。今でもイギリスでは、王室や貴族を中心とした、上流階級の存在感が大きいことがわかった。
「イギリスの貴族の称号はかなり複雑で、その細部まで頭に入っている人間は少ないだろう」p32
「イギリスの貴族がヨーロッパの貴族と違う最も大きな点は、爵位が長男にしか継がれないことかもしれない」p36
「イギリスの文化においては、知識や教養があっても、あるいはス -
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イギリスの上流階級(アッパー・クラス)は、イギリスのみならず、多くの人の興味の対象である。イギリスの歴史を作り、文化の源となり、彼らの礼儀作法が社会の行動規範となってきた。
一般人にとっては「雲の上」の人々。好奇心やロマンを誘う存在でもある。
著者は、英文学・比較文学の研究者。
18世紀以降の英国上流階級の実態を文学作品などから紐解いていく。
それは実のところ、そんなに楽でもないようで・・・。
アッパー・クラス(upper class)はnobilityとも言われる階級で、爵位のある貴族だけでなく、「ジェントリ」と呼ばれる地主も含む。爵位は、君主が新たに授与する(主に政治的理由から)ことも