【感想・ネタバレ】〈英国紳士〉の生態学 ことばから暮らしまでのレビュー

あらすじ

自転車を「bike」と呼ぶか「cycle」と呼ぶか、眼鏡は「spectacles」かはたまた「glass」か。イギリスの階級意識はこんなところにも現れる。言葉遣い、アクセントにはじまり、家や食べ物、ファッション、休暇を過ごす場所……あらゆるものに微妙な、あるいは明白な階級をあらわす名札がついている。「世界中でもっとも階級にとりつかれた国」、作家ジョージ・オーウェルはイギリスをそう評している。
そんなイギリスで「紳士」たらんと、ほかの階級から嘲笑を浴びつつ精一杯背伸びしてきたのが、本書の主人公「ロウアー・ミドル・クラス」の人々である。「英国紳士」と聞いて真っ先に思い浮かべるシャーロック・ホームズや、日本で人気のジーヴズは、実は彼らと同じ階級に属するヒーローなのだ。
ワーキング・クラスとは断固区別されたい、しかしアッパー・クラスには決して届かない。上の階級の趣味や持ち物をまねると、たちまち流行して彼らが所属する階級の証となり、揶揄の対象になってしまう。隣人と差をつけるべく、アップライト・ピアノを買い、レースのカーテンを飾り、ささやかなことに一喜一憂する姿は、滑稽でありながらもいじましく、愛おしい。
彼らが揶揄されはじめたヴィクトリア朝から、かつての階級を超越した「スーパー・クラス」が登場する現代に至るまで、およそ100年間の悪戦苦闘を豊かなエピソードで描きだす。ほろ苦くもおかしいイギリス階級文化論。(原本:『階級にとりつかれた人びと』中公新書、1999年)

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Posted by ブクログ


英国紳士と言われると、スーツを着こなす、表紙の絵のような物腰柔らかな人物を想像していました。

しかし、彼らの中には、はっきりと階級を意識した、均一化した世界があるのだと冒頭で著者は述べています。

「紅茶にミルクを入れるタイミング」などの細かいところまで異なる社会は、想像できませんが、それは差別的なものではなく、あくまで「階級に応じた振る舞い」だそう。

しかし、その階級の中でも、「ミドルクラス」は幅が広く、ロウアー(下流)とアッパー(上流)のあいだでは、歴史的に大きな溝があり、アッパーに憧れる「ロウアーミドルクラス」はいつも嘲笑の対象となっていたようです。

『「ロウアーミドルクラス(下流の階級)」が「アッパーミドルクラス(上流階級)」に近づけば近づくほど、アッパーミドルクラスはこの間の溝をはっきりさせようとする。』
『「リスペクダブル(もてはやされる人)」になろうとして身につけた習慣、趣味、持ち物が今度は逆ステイタスシンボルとなってしまう。』

アッパーミドルクラスと同じことをしようとすると、非難されてしまうのだそう。ここに、(少し違うかもしれませんが)日本でいうところの「成金」のような感じを抱きました。

イギリスに興味のある方は、この一冊も入れてみてはいかがでしょうか。

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2020年12月22日

Posted by ブクログ

筆者の経験と新聞や当時の小説、テレビドラマから見えるイギリスにおける階級意識について読み解いていくのは面白かった
一言にミドルクラスと言ってもその中も複雑なんだなと

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2022年11月01日

Posted by ブクログ

英国における中産階級(ミドル・クラス)の生態を知る。同じミドル・クラスでも、アッパー・ミドル・クラスとロウアー・ミドル・クラスの溝が深い。元々ミドル・クラスの美徳だった「リスペクタビリティ(勤勉、清潔、礼儀正しさ、質素、純潔)」も、悪い意味でロウアー・ミドル・クラスの属性と見なされる。内容は興味深いが、実際こういう階級意識の中で育ったとしたら……。これから読む英国小説の隠し味になりそうな一冊。

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2021年03月29日

Posted by ブクログ

イギリス階級社会の中のロウアーミドルクラスについての本。分不相応を嫌うイギリス社会の中で、必死に成り上がろうとする悲哀を感じる。 何年か前にBBCが今のイギリスは7つの階級があるなんて言ってたが、ロウアーミドルクラスが分化しただけにも思えたし、現代もやはり根強く残っているんだなぁと改めて実感。

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2020年06月05日

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