渡辺努のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
経済関連本を読む期間は一旦終了。
印象的だったことは価格のバラツキのところ。
同じような商品同士(サラダ油とか)にどれくらい価格のバラツキがあるのか。ない方が生活しやすいが、日本のように物価も賃金も上がらない状況下でのバラツキのなさは健全でない。
適度に価格が上がりながらバラツキが収まっていることが理想的であって、それを実現できるのがインフレ率2%という話でした。
いくらバラツキが小さいといっても、価格が変わらない変えられないのは問題です。
企業からすれば、価格を変えられないなら、商品開発のインセンティブがないわけです。する努力の方向がステルス値上げになるのも頷けます。
このような、良い商品を作っても高く売れないという日本の構造があるせいで、GAFAMみたいな企業が生まれなかったのかもしれないなと思いました。
今後日本経済がどうなっていくのか、体感しながら見守りたいと思います。 -
Posted by ブクログ
渡辺先生の著作は2冊目。同様に印象的なのは、デフレが続きすぎた結果、日本は価格メカニズムが壊れていて、価格が上がりにくかったという論旨。
その結果、日本では見かけを変えないで実質の量を減らすといったステルス値上げに代表される非価格競争が発生し、仕入れのコスト高騰に対して、本来価格を上げて利益を追うべきところをコストを下げて利益を守るようになってしまったのでした。
また、他の本でありましたが、日本は消費者余剰が大きいという特徴があり(価格に対して商品やサービスのクオリティが高い)、その特徴も非価格競争的状況を続けられた理由なのかもしれません。
とはいえ、素人の直感でも、そんな状況では賃金は上がらなそうだし、いつか限界が来そうだと思います。
人手不足や海外からの圧力もあり、インフレになりつつある日本。物価も上がって、賃金も上がる、そんな未来を見てみたいなと興味本位ですが、思います。 -
Posted by ブクログ
コロナ感染後、ウクライナ戦争開始の時期に書かれたので若干古いところはあるが、インフレとデフレについてわかりやすく解説されている。
印象的なのは、経済というものがいかに人々の心理要因によって左右されるかということ。
今後、物価は上がるのか、景気は良くなるのかという予想が行動に反映し、経済を動かす。
バブル崩壊後、物価も賃金も上がらない、景気は良くならないという予想のもとに動いてきたのが日本経済であり、その停滞を招いたというのはなるほどと思わせる。
そうだとすれば、経済は自由放任ではなく、政府によるコントロールが有効であり、必要でもあるということとなる。
もう一つの感想は、これでは経済学が物理学のような客観的な科学になることは絶対にできないということ。経済の予測はできない、少なくとも短期的は無理であることは政治の予想が無理なのと同じ。
もちろんいくらAIが発達しても株価の予想もできない。
勉強になる本だが、根本的な疑問として、物価は上がることがいいのかというのはわからなかった。
中央銀行の金利操作がデフレに弱い為と書いていたが、根源的には同じ価格、賃金体系が続くことは、人間の予測可能性を高め、安定的な生活を送るという観点から善ではないか?
緩やかでもインフレを良しとする判断の裏には、地代や金利生活者、貯蓄で生きる者のような層から企業や勤労者への所得移転をすべきという考えがあるのではないか。
著者は、当然そこまで考えているが、物議を醸す為あえて書いていないのか。「物価とは何か」を読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ物価賃金の据え置きは1990年代後半から始まった。
消費者の信念=物の値段は上がらない、と、円高で日本の給料は高い、が悪循環の始まり。コンフリクトインフレーションの逆。喧嘩両成敗の考え方。
一過性の輸入物価の値上がりが向上的な物価上昇に繋がらなかった。
低賃金の中国に対抗するには、賃金を据え置くべき、労組は賃上げを要求せず、物価も上昇せず、というスパイラルに入った。
パンデミック以前は、サービス経済化が進んでいた。パンデミックでサービスの購入が控えられた。その結果、サービスが過剰でモノが不足する状態。
サプライチェーンの混乱で、脱グローバル化が進展。インフレの要因となる。
しかし、1970年代のインフレの経験から、インフレが猛威を振るうことにはならなかった。その結果、ペインレスディスインフレが可能になった。
日経ナウキャストで物価動向をリアルタイムで見られる。
2022年春に、消費者のインフレ予測が急上昇した。実際に値段が上がり始めた。パンデミックや戦争で、需給に変化が起きる予測ができて、仕方ないと理解した。米欧のインフレ、円安による原油高、など。
その結果、春闘での賃上げ要求につながり、企業も政府の後押しもあって、応じざるを得ないことになった。
早川仮説では、1997年頃に労使の密約があったのではないか、と推察している。雇用を守り賃上げしない。トヨタショックでベアゼロ回答を行った。
最近の賃上げは、物価上昇分だけでなく、賃金水準も国際基準に追いつかなければならないという方向性と、人手不足によるもの。女性と高齢者の労働供給で、ルイスの転換点に来ている、という説。
植田総裁の物価と賃金の上昇まで金融緩和を続けるという発言と、最低賃金の1500円引き上げの方針。
総需要管理から総供給管理への転換。独禁法の適用の緩和によって、供給を増やすことができる。下請法の改正も、供給価格のコントロールの手段となる。
日銀は、僥倖を待っていただけ。ディスインフレの機械的アプローチ=何もせずに待てば自然と不況が来てインフレが収まる。バブルの逆を望んでも、バブルになるのではないか。
国債規模の正常化が始まったが、マネーストック(日銀の当座預金)は簡単には減少させられない。
ケインズ以前の古典派では、価格と賃金は瞬時に改定されるもの、との前提があった。
失業率が増減してもインフレ率は変わらない=フィリップス曲線によると、失業率げ減少すればインフレ率は上がる。日本の停滞期は、失業率が減少して需要はあったのに、インフレにはならなかった。慢性デフレを需要不足だけでは説明できないのではないか。
こんかいのグローバルインフレは、価格だけが上昇し、賃金上昇はそれに追いつくだけで、両方のスパイラルではない。
日本のデフレは、賃金が主役だったのではないか。
インフレ予測は、人生経験二左右される。利用可能性ヒューリスティック。
日本は自発的ロックダウンがおきたが、アメリカは法的拘束をしたにもかかわらず、行動は変容しなかった。
自発的ロックダウンの構造は、停滞期の賃上げ値上げ自粛と同じではないか。
シムズ理論=デフレには積極財政が有効。FTPL=物価水準の財政理論。日本人には、賃金上昇や減税は、いずれ不景気や増税で自分に返ってくる、というリカーディアンが多い。日本は財政改善を気にせず、金融政策は受動的にして、財政支配にしたほうが、リカーディアンを納得させやすい。
異次元緩和では、企業を先に潤すことが最初の起点だが、シムズ理論では家計にお金を回して消費を換気することが起点。
パンデミックで起きたことと同じ。家計にお金を配る。
FTPLは、最近のインフレの説明に有効か。
デノミとインフレは双子。一律10%値上げした価格にデノミすることとインフレは同じ効果がある。
インフレが進むと、価格のばらつきが拡大する。価格は硬直性があるため、一斉に値上げにはならない。
目標を0%ではなく2%にしているのは、価格の下方硬直性に対処するためと、ゼロ金利下限があるため。
慢性デフレから脱却してみると、いろいろ悪いところが見えてくる。物価が安定して過ごしやすい国だったが、価格に良いばらつきが生じる余地がないため、よりよいものを高く売ろうという発想がなくなる。
マネーは中立的=マネーが増加しても物価が上がるだけで、景気には影響しないはず。しかしデフレ脱却でマネーが増加すれば、景気にも変動が起きるのではないか。マネーの潤滑油効果=お金が手に入ると財布の紐は少しは緩む。価格が動く可能性が出てきたので、非価格競争ができるようになった。需要曲線の屈曲からくる価格支配力が喪失した。
デフレは、良い製品を高く売るという攻めの戦略ができないので、コストカットが主体となる=他の企業の売上減につながる。グリーンスパンはこのことに気づいていた。
異次元緩和は、マネーの供給で市場金利が下がる、総需要が増えれば物価は上がる、の2点で経路を読み違えた。
マイナス金利政策は、パンドラの箱を開けたと言われる。しかし預金金利がマイナスにならなかったことで、効果は今ひとつだった。
金利とマネーの量はコインの裏表、とすると金利引き上げ+金融緩和は成り立たないのではないか。大量のマネーストックがある中でも金利を上げる。
金融政策のトリレンマ=マネーの金利をゼロにしたままえ市場金利を動かすことはできない=ということは、マネーの量は自動的に決まる。フリードマンルール。マネーの量と同じように、マネーストックの量も制限はない。
パンデミックには、5類移行といううまい措置があったが、デフレにはそれはなかった。しかし慢性デフレのときの自粛は、パンデミックのときの自粛と似ている。 -
Posted by ブクログ
本書の紹介文に「学者も中央銀行も読み間違えた!」とあるように、経済理論はギャンブル要素が多い。
地震、台風、洪水などの自然災害や、パンデミック、戦争などが起きる時期や規模や影響度など予測できない。
ここ数年間の世界的インフレについては、今まで頼りにしていた経済理論では説明できないらしい。
そこで、なぞの要因"ファクターⅩ"を見つけようとしたのが本書の内容みたいだ。
経済活動なんて、人の気分次第で変動するもの。
行動経済学が注目されているように、人間の欲望や思考の癖が大きく経済活動に関係していると思う。
今のインフレは、パンデミックと戦争が供給網の寸断を招いた結果のものだと思う。
性善説を前提としたグローバル化の行き過ぎによる弊害だと思う。
何が原因でインフレになっているのか?
今の経済理論で説明がつかないなら、これを見つけ出すことは重要だ。
コロナ禍が収束していない2021年の6月ごろから欧米でインフレが始まった。
パンデミックがインフレの主犯であるなら、この時期に何をすべきだったかの答えを出しておく必要がある。
だが、どの国も政府の介入策は経済にあまり影響を与えなかったようだ。
ロックダウンした国も、規制をかけず自由な行動を容認した国も、その後の経済状況の変化に差異はなかった。
コロナによる死者数の違いも関係ない。
パンデミックが収束すれば、経済も元に戻ると多くの人が考えていたが、2024年になった現在もそうはなっていない。
ウクライナ戦争でインフレ率が1.5%上がっていると試算されているが、それを差し引いても高いインフレ率が続いている。
結局、今のインフレの理由がわかっていないので、どう対処すればよいかも分かっていない。
日本以外の中央銀行は、利上げで対処しその効果を様子見しながら次の手を打とうとしている。
インフレは供給不足により生じる。
供給不足は、供給が足りないか需要が強すぎるかのいずれか。
今回のインフレは供給の過少にある。
中央銀行は供給の過少を解決する能力は持っていない。
だから、増えていない需要を下げて、少ない供給とのバランスを取ろうとしているらしい。
渡辺努さんは、マクロ経済学の専門家だ。
マクロ経済学は全体としてどうかという見方優先で、個人の生活実感と異なるのでピンとこない。
高いインフレ率を問題にしているが、そもそも適切な物価上昇率なんて定義されているの?
分からないことだらけ。
日本の実態に近い0%じゃダメなのか?
私のこの疑問の答えが書かれていたが、0%じゃ成り立たない今の資本主義に基づいた経済理論によるものだった。
「経済理論の基礎も知らないの?」と言う人達の思考回路を変える必要がありそう。
インフレになるとその国の通貨は価値が下がり安くなるはず。
だから、日本では価格が不変で、アメリカでは価格が上昇なら、円高になるはず。
日本100円、米国1ドルだったものが、日本100円、米国2ドルになれば、1ドル50円になるはずなんだけど、そうなっていない。
データを見ると、2012年を境に円高に向かっていた為替レートが一転急激に円安に向かっている。
何があったか。
アベノミクス政策による日銀の異次元金融緩和だ。
目論見どおり1ドル80円から120円へと円安に振れ、今は150円も超えた。
国民の正常な経済活動によらず、学術的な経済理論による力づくの金融緩和政策の結果がこれだ。
私には、こうなったからくりがよく分からないが、アベノミクス政策を続けてこうなった。
輸出で儲けが出る企業や、資産家の大株主には嬉しい成果だ。
円安株高で今まで恩恵を受けた人がどれだけいるか知らないが、その結果何が起こるか今後が不安だ。
国債を大量に抱えているので安易に利上げもできない、円安介入の資金も不足してきた。
アベノミクスの失敗の後始末が使命となった植田和男日銀総裁は、打つ手がほぼない中で今のところよくやってると思っている。
銀行の金利は上げられないから株で資産形成を国が推奨しているが、損しても自己責任だからこの方針は心配だ。
政治家さんには、庶民にマネーゲームを進めるのではなく、地道に働けばそれなりの暮らしができる社会を作ることに頭を使って欲しい。