渡辺努のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
2023/04/24 読み終わった
ゆる言語学ラジオで紹介されていたので。
タイトルからがっぷり四つの迫力ある本だけど、中身はもっと骨太だった。高校程度の経済知識しか持っていなかった自分には目からウロコだった。
中でも一番面白かったのは、中央銀行総裁は嘘つきが一番いいというくだり。
情報公開なんてしたらしただけいいだろうと思っていたが、昔の中央銀行はそうではなかったということや、現在中央銀行が情報公開を積極的に行っている理由が単に公平性の観点ではないということ、この辺りが心に残った。
きちんと読み込まないと理解が追いつかない部分もあった。何度も読んで理解したい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ価格の硬直性についての理論的説明が繰り広げられた。メニューコストなのか、情報の制約なのか、、そしてしまいに出てくる日本の価格を上げられない消費者の厳しい目線というカルチャー的なもの。他の会社の価格に共鳴的に営業を及ぼすような価格支配力も失われ、、日本人は必死にコスト削減に命を燃やす、、その時間、付加価値付与に当てればいいのに!!すごく残念な気持ちになったけど、読み応え抜群です。
日本は新しい商品のうみかえで価格を上げている。そうでもしないと消費者の目が厳しい日本!ひいては儲けは賃金にもつながるのに、、。
フィリップス曲線についても教科書を超えた考察で、また勉強を重ねたら振り返って読みたい。 -
Posted by ブクログ
個人的に今まで読んだ学術書の中で1位。
歴史、経済、金融、心理学など興味あるものはかじってきた人ですが、物価という身近すぎて気にしたことがなかったのですごく面白かったです。
今日本に住んでいて、デフレと言われてはいるものの、個人の体感としては物価は上がっていると感じていました。
じゃあそのデフレって何?巷の物価上昇は何?と考えるきっかけになりました。
特に興味深かったのは、インフレ率は人々のインフレ予測によるということ。
みんながデフレになると思えば、そうなるし、インフレになると思えばそうなる。
だったら中央銀行はどうするのか。影響力を持ちたいと思いつつ、持たない方がいい。
そんな矛盾することが今世界で起こっている。
それに加えて、バブル期に物価が上がっていないこと、ハイパーインフレも住んでる人からしたら大きな影響がないことはびっくりしました。
本当に物価って面白いんだなと思えます。 -
Posted by ブクログ
ずっと積読リストに入れていたのだけれど、もっと早く読めばよかった、と後悔するほど面白い本でした!
本書を読むまでは、ロシア侵攻のせいで世界中がインフレになり、日本は円安の影響でそれが特に増幅されている、と思っていました。
が、そうではありませんでした。本書は過去の社会現象を振り返りながら、著者が現在の考えに至るまでの思考の軌跡を追う形で、素人にも理解が及ぶよう、世界インフレについて分かり易く丁寧に解説した本です。
経済学の勉強をしたことのない私にも感動的に分かり易くて、皆におススメしたいです。。
今回の世界インフレは、コロナの出現そのものではなく、その出現によって、人類が社会的、経済的な行動を変化させたことによってもたらされたことが原因だそうです。
具体的には、
①世界にはそれぞれ諸事情があり、通常、人々の経済活動は同期せず、需要と供給のバランスが保たれている。(いらないと思って売る人と、それを欲しがる人がいる)
それがウイルスという全世界共通の敵があらわれたことにより、世界中が同期していしまい(皆で巣ごもり)大きなインパクト(インフレ)といううねりが襲った。
人類はかつて経験したことのない供給不足が原因のインフレなので、研修者や学者や政治家も対応が手探り。(方法が分からない)
②成熟した社会では、モノは一通り揃っているので、サービスが経済活動の中心であった。
それが、パンデミックによりソーシャルディスタンスをはじめとしたサービス離れ、モノ回帰現象が起こり、コロナ後も人々の価値観が変わり、完全に以前の生活には戻らない。
モノ回帰となっても、ジムトレーナーが急に工場生産ラインで働けないように、供給不足とわかっていても労働供給は簡単には移行できないため供給不足が続く。
また、世界では日本のように定年制度はなく、自分で定年を決めるのが一般的。コロナが怖くて早期退職に踏み切る人が多く、コロナ明けも労働市場が戻らない。
③パンデミックやロシア侵攻などから、企業は供給網が常に安定的に機能するわけではないことを強く意識し、脱グローバル化が進む。
供給網の安全性と安定性を重視し、コストパフォーマンスが多少犠牲になってもやむを得ないという考え方からインフレが進む。
色々なことが重なって今のインフレが起きていることが分かり、とても勉強になりました。
また、今回のことは日本のデフレ脱却のきっかけになるかもしれなくて、価格に変化が生じ始めた今、賃上げの有無によって慢性デフレから脱却できるかの岐路にあることを感じました。
日本のデフレ脱却には、
①物価は上がるという予想が人々の間で共有され、生活を守るための賃上げ要求は正当であるという理解が広まること。←いま、この土壌は出来ている。
②賃上げに伴う人件費の増加分を価格に転嫁できる、と企業が考えること。これが一斉に行われないと、ライバル企業が値上げをしないなら顧客を奪われることを懸念して値上げが出来ず、よって賃上げもできない。
③労働供給のひっ迫が起こること、これにより賃金が上昇する。
あと一歩。政治家も力を発揮してほしいです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ# 政府・日銀・民草の我々がどのようにマクロ経済を作り出しているか、学べる一冊
## 面白かったところ
- 「物価は地震に似ている」という破天荒な発見と、その裏打ちされた説得
- 財務省や日本銀行が行っているオペレーションの目的が改めて知れる点
## 微妙だったところ
特になし
## 感想
個人的に2022年に読んだ本の中で最も驚きが多かった一冊。読みやすくて面白かった。
「地震と物価のグラフや性質が似ている」なんて突拍子もないアイデアがまず面白い。
地震は頻度・規模が記録され、物価は価格更新が行われた回数(頻度)・価格変動の幅(規模)が記録される。地震は本震から時間が経つにつれて余震の感覚が開き、物価も新品として市場にが出た時からは頻繁に価格が上がったり下がったりする。
地震と言ったらあまりいいイメージではないが、急に、大きく崩してはいけない物価を見る新たな物差しとして使われることになるとは想定外である。
メニューコスト仮説により、まるで談合されたかのように市場価格が動かないことや、弁当の嵩増しから見るインフレなど、割と身の回りのトピックもソフトに取り上げている点も、読んでいて好感を抱いた点のひとつである。
また著者の別の本も読みたい。 -
Posted by ブクログ
今読むべき良書。わかりやすく、新書ながら学びも多い。
パンデミックによる消費者・労働者・企業の3つの行動変容が世界インフレの原因という解明が前半。
後半はデフレの続く日本経済の現状と処方。デフレ脱却は、消費者の物価上昇予想と労働者の賃上げがポイントと説く。安倍政権のトリクルダウン理論への言及もわかりやすい。(賃金解凍スパイラルの回転方向が逆だったので、デフレ脱却のスパイラルが起きなかった)
この本の出た2022/10時点では物価上昇の気配は出始めたが、賃上げ動向は不明だった。2023春は物価上昇は大勢となり、春闘も賃上げの流れとなり、著者の説だと日本もついにデフレ脱却へのスパイラルが始まるはず。
2023秋過ぎには結論がわかりそうで楽しみ。 -
Posted by ブクログ
◯巨額の債務があるにもかかわらず、貨幣の魅力が決済サービスのみに由来するという伝統的な考え方に固執しているという点で、日本とブラジルは同じ間違いを犯している(34p)
◯Xが低すぎる場合には、臨界点を超えると対応不能であり、その予想を潰せません。この意味で、中央銀行が物価をコントロールする能力は、インフレとデフレで非対称なのです。(112p)
◯価格据え置きの常態化は、現場の技術者から前向きな商品開発に取り組む機会を奪うというかたちで、社会に歪みを生んでいるのです。(283p)
◯緩やかな物価下落は、日本企業から価格支配力を着実に奪っていくこととなりました。(287p)
★語り口が丁寧で、講義を聞いているようだった。
★社会の変化に合わせて、現在進行形で変化している学問だと感じた。(多くの最先端の学問がそうかもしれない) -
Posted by ブクログ
-物価・インフレ研究の第一人者による日本経済分析の書。デフレが続きすぎた結果、日本は価格メカニズムが壊れて、経済が停滞していたという論旨。
-1990年代後半から2022年まで賃上げがなかったのは「賃上げの自粛」があったという筆者の考えには賛同できない。「日本経済の死角」で河野龍太郎氏が述べていたように生産性は上昇したのに実質賃金が上昇しなかったのは、企業の問題が重要で、株式市場やコーポレートガバナンスの影響も大きく、著者が重視する「インフレ予想」は主因ではないと思う。インフレが定着しても必ずしも実質賃金が上昇するわけではない。
-政府債務に関して、インフレにより債務者利得が生じるのは理解できるが、反対側の支出も質を低下させなければ費用増が起こる。また、債務者利得で余剰が出たとしても使ってしまえば、借り換えで金利負担が増え、政府債務状況は悪化する。
-著者は必ずしもサナエノミクスに賛同しているわけではないが、結果的には後押ししているように感じる。黒田日銀に対しては好意的。アベノミクスについても構造改革が進展しなかった点に触れておらず、「インフレ予想」に偏った議論になっている。
-著者の論旨は明快で理論的にもおかしくはないと思うし、本書のタイトルからして仕方ないとは思うが、「物価」に焦点を当てすぎた一面的な見方であり、企業サイドや市場の動きを軽視しているように思える。
【目次】
序 章 新たな時代の始まり
第1章 賃金・物価・金利の正常化
1 本章の論点
2 慢性デフレとは何だったのか
3 賃金・物価・金利の変化
コラム:日銀はなぜ2%のインフレを目指すのか
第2章 インフレは日本経済をどう変えるのか
1 本章の論点
2 価格メカニズムの正常化
3 実質為替レートの正常化
4 政府債務の正常化
第3章 インフレと日銀
1 本章の論点
2 インフレは一過性か
3 物価予測のミスを闇に葬った日銀とエコノミストたち
4 「基調的インフレ」とは何か
5 植田日銀の利上げは機会主義的
6 利下げでトランプ関税に備えよ
7 国際的な「同期」が高インフレをもたらす可能性
コラム:日銀の追加利上げは「全く理解できない」
第4章 インフレと賃上げ
1 本章の論点
2 安いニッポンに賃上げと値上げの自粛は必要ない
3 最低賃金の引き上げはなぜ必要なのか
4 実質賃金改善のために労使は何をすべきか
5 「自然」実質賃金という考え方
6 トランプ関税を負担するのはいったい誰なのか
コラム:賃上げを社会に定着させる方法
第5章 インフレと財政
1 本章の論点
2 賃金と物価を上げるための財政支出をためらってはいけない
3 インフレ率2%経済への移行で得られるインフレ税収
4 消費税減税で潤うのは買い手ではなく売り手なのか?
コラム:高市政権の「積極財政」の可能性とリスク
第6章 インフレの変動要因
1 本章の論点
2 令和の米騒動の原因は需要か供給か
3 黒田日銀総裁が語った70万字
4 パンデミックで迷走した物価統計
5 消費者が「見た」価格と「買った」価格はどう違うのか
あとがき
図表出所一覧
初出一覧
参考文献 -
Posted by ブクログ
『インフレの時代』渡辺努(中公新書)を読む。「価格メカニズムの正常化」を掲げ、賃上げと価格転嫁を通じ、インフレをテコとして活用する価格政策の積極論を展開する。賃金・物価の好循環を促す価格政策論者である。加えるに、インフレ目標政策におけるフィリップ曲線の変動やテイラー・ルールの有効性・無効性などの基本的な知識を現実に即してやさしく解説している書である。返す刀で、日銀総裁植田を批判する。インフレを一時的現象とみて利上げを遅らせ、金融政策を慎重に調整するだけの消極論とみる。両者のスタンスは明確に異なる。積極論と消極論のいずれが正しいのかはにわかには判断できない。状況に依存するのだろう。価格・物価の動きの不確実性は侮れないのだが、生活に直結しているだけに、今後も注視せざるをえない。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ90年代後半に財界から国際競争力確保のためにベア停止の要求。 2002年3月のトヨタショック 。 連合が受け入れ、賃上げ抑制が定着。賃金マークダウンが貿易財産業で大きく、それが非貿易財価格への下押し圧力となり、実質為替レートが円安化へ。インフレは債務の実質的価値を目減りさせるので債務者に有利、債権者に不利。今の政府に180兆円のインフレ税収。インフレもデフレの人々の信念や気持ちの揺らぎ次第。新型コロナを起点とした海外の激しいインフレ(21年春~)、ウクライナ戦争の勃発、原油の高騰という報に接し、日本人の「インフレ予想」は22年春に、高まりそのまま定着。消費者が逃げなくなった分を企業は敏感に察知し、コスト上昇分を積極的に転嫁。人手不足で強気の賃上げ要求も認められると労働者・組合が判断したのがこれまでとの違い。賃上げ要求へ。賃金の粘着性。インフレに賃上げが追い付かないという実質賃金の低下が問題。最低賃金を長期的に上昇させることが有効。買うか買わないかの意思決定は、価格が昨日から変わっているかどうかによる。ステルス値上げも同じ。消費増税は価格引き上げのチャンス。米騒動の第1ステージは供給サイドが「フェアネス」を考慮して価格を上げなかったから。第2ステージ目は時間も経って「フェアネス」効果が減少し、積極的な値上げへ。