渡辺努のレビュー一覧
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昨今、なにかと「物価」が話題だ。しかし、そもそも物価とは何なのか、どう決まるのか。デフレやインフレは具体的に何が悪いのか。分からないことだらけである。
そんな疑問を解消するため、本書を手に取った。
本書は、「物価は『蚊柱』である」という例え話から始まる。
商品一つ一つの値動きはバラバラだが、遠目に見るとひとつの塊としての動きが見えてくる。個別の動きには理由がつけられても、全体としての「物価」の動きを説明するのは非常に難しい。この「蚊柱」の比喩は、物価の掴みどころのなさを実によく表している。
本書を通じて理解できたのは、インフレ以上にデフレへの警戒が必要だという点だ。
デフレはインフレ -
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日本の物価は30年上がらなかったという特異な状況がなぜ起こったのか?について、考察されており、大変参考になりました。
日本でデフレがこんなにも長くなったのは、みんなが物価は上がらない!と信じたからという根拠は、とても面白かったです。まさにそうだと思いました。
「近年、物の値段が上がり、生活が大変だー!」ということだけが強く言われますが、賃金上昇が伴えば、物価上昇等は悪いことではなく、正常な状態に戻っているんですよー!と書かれており、全くその通りだと思いました。
インフレになると現金の価値が下がるなど色々な変化があり、各自で対策は必要だと思いますが、経済が活性化していくことは、決して悪いこ -
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渡邊努書籍3作目。『物価とは何か』の衝撃からもう著者の一般書は追っかける習慣となっている。
今回は今まさに直面している日本インフレ化を紐解く。
人生まるっとデフレで過ごしてきた私としては、今まで経験したことのない局面で期待と不安が入り混じる。そんな私に本書は今後の道筋と予測を丁寧に解説してくれる。
しかし、「97年労使密約」とか2002年「トヨタ・ショック」による賃金据え置きは今から振り返ると愚策であるが、当時は真っ当な議論だったのだろう。でも、もう少しインフレ基調に舵を切れなかったもんかねと訝しむ。
なぜ慢性デフレがここまで長期化したか。その理由も本書には書かれている。
一番心に刺さっ -
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コロナ禍-2022年ごろまでの経済趨勢をを分析する。
過去のことであるが故に、肌感覚で感じていた日本の物価高と賃金据え置きという現象の理由が、解き明かされた。
当時のインフレは供給不足にあり、この問題に直接対策する術を中央銀行は持ってないという事実に衝撃。あくまで、需要調整を目的とした政策金利の上下なんだな。
名著と名高い『物価とはなにか』でも述べていたインフレの根本原因は、国民のインフレ予想という主張も改めて学ぶ。経済って血の通ってない機会的な操作に終始すると思ってたら、人間の感情に左右されるんだという意外性は、驚きである。
あとは今回も文章の構成が秀逸。名探偵が「謎」を解き明かすため -
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前著で「ノルム」という用語が登場しましたが、それは渡辺先生が海外の研究者への説明に苦労してひねり出した用語であることが本書で明かされました。
「ノルム」は、特定の界隈でバズワードのようになっており、私も経済現象を「ノルム」でうまく説明できると思っていたのですが、はしごを外された思いです(苦笑)。
本書の終盤では、日銀券(現金ですね)に付利し、場合によってはマイナス金利をつけることによって、デフレ・インフレをコントロールするアイディアが語られます。
現金の名目的な価値は変動しない、というのは、それこそ「ノルム」のようになっていると思いますので、実現までのハードルは高いと思いますが、「ノルム」も不 -
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「物価とは何か」をゆる言語学ラジオで紹介していたところから、本書にたどり着いた。
現在の物価上昇の背景、日本特有の賃金・物価事情についてかなりテンポ良く知ることができた。
物価が上がれば金融引き締め、教科書的な理解でこれまで生きてきたが、物価上昇には需要ベースと供給ベースとがあり、今回は供給ベース(それも、要素として3つ、消費者(労働者)、企業、サプライチェーンの変容に起因)が原因となっているというのは、大変興味深く、驚きはあったものの理解は実態に合っており、スラスラと読み進められた。
日本の労働市場、物価に関しては、エネルギーを筆頭に上昇していて、物価凍結の壁は破られている?かと思う。 -
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ネタバレ物価は、蚊ばしらである。世の中に何十万と存在する個別の商品それぞれが、一匹一匹の蚊に相当する。インフレを起こす仕組みとして、まず物価がX%の率で上がると皆が予想し、その予想を踏まえて企業や店舗が値札を書き換える、その結果実際にその率Xで物価が上がる、というメカニズムが考えられる。国民に働きかける中央銀行の行為の98%はトークである。人々の予測に働きかけるわけである。貨幣量を増やすと一時的に失業率は減少するが、しばらくすると貨幣量の増加をインフレ予想に織り込むことが完了し、失業率の押し下げ効果がなくなり、失業率は元の水準にもどる。
日本は物価が上がらない状態がかれこれ30年続いている。人々のイン -
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人生の大半を「失われた30年」と言われるデフレ社会(ノルム)の中で生きてきて、価格は据え置かれることが当たり前という肌感覚が染み付いていた。
コロナ禍やウクライナ侵攻等の劇薬の副作用なのか。消費者・労働者・企業・政府・日銀等、各プレーヤーのマインドが変化し、「正常」な「賃金・物価スパイラル」がとうとう起動し、インフレが到来しようとしている。日銀による数多の異形の金融政策(バズーカ砲)をもってしてもことごとく空砲に終わっていたのに。
現在(2024.12.31時点)日本社会に起きていることは、途轍もなく劇的な変化だと感じる。
アタマと心に染み付いたデフレマインドをリセットし、緩やかなインフレ -
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2016年以降の国債の実質価格の急上昇がデフレ脱却できなかった大きな理由の一つ。
なぜ国債価格の急上昇が起こったのか。
①物価の上昇が止まってしまったため。
②国債の名目価格が上昇したため。
なぜこの二つが起きたのか
2016年はマイナス金利政策を始めた。
国債金利がマイナスになるということは、政府に利得が発生し、その利得によって財政収支が改善することで国債の魅力が高まる。
その結果、国債から商品への需要シフトがとまり、資金が再び国債へと向かうようになったため、国債実質価格が急上昇した。
ではどうすればよかったのか。
シムズいわく日銀のマイナス金利は間違っていない。
マイナス金利によって発生す -
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2023/04/24 読み終わった
ゆる言語学ラジオで紹介されていたので。
タイトルからがっぷり四つの迫力ある本だけど、中身はもっと骨太だった。高校程度の経済知識しか持っていなかった自分には目からウロコだった。
中でも一番面白かったのは、中央銀行総裁は嘘つきが一番いいというくだり。
情報公開なんてしたらしただけいいだろうと思っていたが、昔の中央銀行はそうではなかったということや、現在中央銀行が情報公開を積極的に行っている理由が単に公平性の観点ではないということ、この辺りが心に残った。
きちんと読み込まないと理解が追いつかない部分もあった。何度も読んで理解したい。