【感想・ネタバレ】世界インフレの謎のレビュー

あらすじ

なぜ世界は突如として物価高の波に飲み込まれたのか?

ウクライナの戦争はその原因ではないことは、データがはっきりと示している。
では"真犯人"は……?
元日銀マンの物価理論トップランナー、異例のヒット『物価とは何か』の著者が、問題の核心を徹底考察する緊急出版!

なぜ急にインフレがはじまったのか?
だれも予想できなかったのか?
――経済学者も中央銀行も読み間違えた!

ウクライナ戦争は原因ではない?
――データが語る「意外な事実」

米欧のインフレ対策は成功する?
――物価制御「伝家の宝刀」が無効になった!

慢性デフレの日本はどうなる?
――「2つの病」に苦しむ日本には、特別な処方箋が必要だ!

本書の「謎解き」は、世界経済が大きく動くダイナミズムを描くのみならず、
日本がきわめて重大な岐路に立たされていることをも明らかにし、私たちに大きな問いかけを突きつける――
前著よりさらにわかりやすくなった、第一人者による待望の最新論考!

【本書の内容】
第1章 なぜ世界はインフレになったのか――大きな誤解と2つの謎
世界インフレの逆襲/インフレの原因は戦争ではない/真犯人はパンデミック?/より大きな、深刻な謎/変化しつつある経済のメカニズム
第2章 ウイルスはいかにして世界経済と経済学者を翻弄したか
人災と天災/何が経済被害を生み出すのか――経済学者が読み違えたもの/情報と恐怖――世界に伝播したもの/そしてインフレがやってきた
第3章 「後遺症」としての世界インフレ
世界は変わりつつある/中央銀行はいかにしてインフレを制御できるようになったか/見落とされていたファクター/「サービス経済化」トレンドの反転――消費者の行動変容/もう職場へは戻らない――労働者の行動変容/脱グローバル化――企業の行動変容/「3つの後遺症」がもたらす「新たな価格体系」への移行
第4章 日本だけが苦しむ「2つの病」――デフレという慢性病と急性インフレ
取り残された日本/デフレという「慢性病」/なぜデフレは日本に根づいてしまったのか/変化の兆しと2つのシナリオ/コラム:「安いニッポン」現象
第5章 世界はインフレとどう闘うのか
米欧の中央銀行が直面する矛盾と限界/賃金・物価スパイラルへの懸念と「賃金凍結」/日本版賃金・物価スパイラル 116
参考文献
図表出典一覧

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Posted by ブクログ

インフレやデフレの仕組みが今までよく分かっていなかったが、内容が分かりやすく初めて経済って面白いなと思った。いつものスーパーで野菜の値段が高くなってたら別のスーパーに……とか結構どこの家庭もやってることだと思うけど、日本特有だったことにびっくりした。

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2025年11月01日

Posted by ブクログ

コロナ禍-2022年ごろまでの経済趨勢をを分析する。
過去のことであるが故に、肌感覚で感じていた日本の物価高と賃金据え置きという現象の理由が、解き明かされた。

当時のインフレは供給不足にあり、この問題に直接対策する術を中央銀行は持ってないという事実に衝撃。あくまで、需要調整を目的とした政策金利の上下なんだな。

名著と名高い『物価とはなにか』でも述べていたインフレの根本原因は、国民のインフレ予想という主張も改めて学ぶ。経済って血の通ってない機会的な操作に終始すると思ってたら、人間の感情に左右されるんだという意外性は、驚きである。

あとは今回も文章の構成が秀逸。名探偵が「謎」を解き明かすため犯人ににじり寄っていく姿が脳裏に浮かび、新書ではあるがミステリーを読んでるかのような高揚感。適宜大切なポイントは繰り返し解説してくれてて、読者に寄り添う姿勢にも感激する。もはやシリーズ小説を読むような心持ちで最新作の『物価を考える』に取り掛かろう。
黒幕はいったい誰なのか?いつか謎は解き明かされるのか?ワクワク。

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2025年06月28日

Posted by ブクログ

「物価とは何か」をゆる言語学ラジオで紹介していたところから、本書にたどり着いた。

現在の物価上昇の背景、日本特有の賃金・物価事情についてかなりテンポ良く知ることができた。

物価が上がれば金融引き締め、教科書的な理解でこれまで生きてきたが、物価上昇には需要ベースと供給ベースとがあり、今回は供給ベース(それも、要素として3つ、消費者(労働者)、企業、サプライチェーンの変容に起因)が原因となっているというのは、大変興味深く、驚きはあったものの理解は実態に合っており、スラスラと読み進められた。

日本の労働市場、物価に関しては、エネルギーを筆頭に上昇していて、物価凍結の壁は破られている?かと思う。賃上げも進んではいるが、今は転職により賃金を上げようとする流れがきているように思う。(転職、本人はいいが、転職は本人と転職元の生産性を一時的に下げる弊害があると思っており、この流れは一旦どこかで歯止めをかける必要があるのては…)
少なくとも物価と賃金が横ばいという常識は崩壊しつつあることがこれからの日本経済にどういう影響をもたらすのか、注目したい。

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2025年02月16日

Posted by ブクログ

日本経済の長期のデフレについて、消費者目線では価格の据置を前提として賃金の上昇を我慢し、企業目線では賃金の据置を前提に価格への転嫁を控える、という点に原因を見出し、今がデフレにとどまるか脱却するかの分かれ目であり、ゆるやかなインフレ予想とその状態に対応した行動、つまり消費者が物価上昇を受け入れ企業は賃金を上昇させるということを日本人が受け入れられるかどうか、という点にその判断を委ねています。
その意味では、デフレから抜け出すためには心理の変化も大いに必要なのかと。

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2024年09月18日

Posted by ブクログ

勉強になりました。人々が歴史的にどう戦ってきたのかがよく分かりました。今の政府(岸田、茂木、河野)と日銀(黒田)あとトランプが経済的にどれだけ酷いかが分かります。

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2024年08月18日

Posted by ブクログ

現在(2023年)、世界で起こっているインフレの解説書。数式はほぼなく、読みやすく、分かりやすい。著者の仮説(パンデミック→消費者・労働者の行動変容、グローバル供給網に隘路が発生→経済全体の需給が釣り合わない→世界インフレ)は、合理的であり腑に落ちた。

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2024年06月08日

Posted by ブクログ

世界でも低水準のインフレにも関わらずそれに慌てるあたり、いかに上がらない物価と賃金に日本国民が慣れきってしまったのかと改めて実感しました。

言うは易しですが、パンデミックにより起こったこのインフレの機会を逃さないようにしたいですね。

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2023年11月30日

Posted by ブクログ

ずっと積読リストに入れていたのだけれど、もっと早く読めばよかった、と後悔するほど面白い本でした!

本書を読むまでは、ロシア侵攻のせいで世界中がインフレになり、日本は円安の影響でそれが特に増幅されている、と思っていました。
が、そうではありませんでした。本書は過去の社会現象を振り返りながら、著者が現在の考えに至るまでの思考の軌跡を追う形で、素人にも理解が及ぶよう、世界インフレについて分かり易く丁寧に解説した本です。
経済学の勉強をしたことのない私にも感動的に分かり易くて、皆におススメしたいです。。

今回の世界インフレは、コロナの出現そのものではなく、その出現によって、人類が社会的、経済的な行動を変化させたことによってもたらされたことが原因だそうです。
具体的には、
①世界にはそれぞれ諸事情があり、通常、人々の経済活動は同期せず、需要と供給のバランスが保たれている。(いらないと思って売る人と、それを欲しがる人がいる)
それがウイルスという全世界共通の敵があらわれたことにより、世界中が同期していしまい(皆で巣ごもり)大きなインパクト(インフレ)といううねりが襲った。
人類はかつて経験したことのない供給不足が原因のインフレなので、研修者や学者や政治家も対応が手探り。(方法が分からない)
②成熟した社会では、モノは一通り揃っているので、サービスが経済活動の中心であった。
それが、パンデミックによりソーシャルディスタンスをはじめとしたサービス離れ、モノ回帰現象が起こり、コロナ後も人々の価値観が変わり、完全に以前の生活には戻らない。
モノ回帰となっても、ジムトレーナーが急に工場生産ラインで働けないように、供給不足とわかっていても労働供給は簡単には移行できないため供給不足が続く。
また、世界では日本のように定年制度はなく、自分で定年を決めるのが一般的。コロナが怖くて早期退職に踏み切る人が多く、コロナ明けも労働市場が戻らない。
③パンデミックやロシア侵攻などから、企業は供給網が常に安定的に機能するわけではないことを強く意識し、脱グローバル化が進む。
供給網の安全性と安定性を重視し、コストパフォーマンスが多少犠牲になってもやむを得ないという考え方からインフレが進む。

色々なことが重なって今のインフレが起きていることが分かり、とても勉強になりました。
また、今回のことは日本のデフレ脱却のきっかけになるかもしれなくて、価格に変化が生じ始めた今、賃上げの有無によって慢性デフレから脱却できるかの岐路にあることを感じました。

日本のデフレ脱却には、
①物価は上がるという予想が人々の間で共有され、生活を守るための賃上げ要求は正当であるという理解が広まること。←いま、この土壌は出来ている。
②賃上げに伴う人件費の増加分を価格に転嫁できる、と企業が考えること。これが一斉に行われないと、ライバル企業が値上げをしないなら顧客を奪われることを懸念して値上げが出来ず、よって賃上げもできない。
③労働供給のひっ迫が起こること、これにより賃金が上昇する。
あと一歩。政治家も力を発揮してほしいです。

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2023年11月12日

Posted by ブクログ

現在のインフレについて、非常に分かりやすく、書かれており、勉強になった。
物価が上がっている今、日本は全体的な賃上げを実施して、長年の低成長を脱却してもらいたい。

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2023年09月05日

Posted by ブクログ

なぜ今政府主体で賃上げを企業に要請するのか?まるで社会主義国のようだな。

企業は利益が出ない限り、賃上げなんて要請に答えられないのが当然で、要請に答えられる会社は儲かっている会社だけだ。って自分なりに考えていたけど、
この本を読んで考えがゴロッと変わった。

低金利政策が効果がなく、次にトリクルダウン政策が効果がなく、
その結果、次は賃上げ政策だというのが経済学者の考えだったのだ。
やはり官僚の考えることは偉い。

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2023年09月05日

Posted by ブクログ

一言で言い表すことは到底できないが、物価、インフレ、賃金に関して、本書を読む前の何倍も理解が進んだ。
今後、日本がインフレ率を上げていく(海外と同等にしていく)ために政府の役割が重要とのことだったが、それに向けて一個人である自分が何ができるのかはわからなかった。
(経済学者でさえ、できることが限られているっぽいので、個人ができないことがあるというのも当然と言えば当然だが。)

個人的には賃上げのパートが強く関心を持てたので、自分の給与に興味のある方はぜひ読んでほしい。

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2023年07月23日

Posted by ブクログ

なぜインフレ率2%がよく言われるのか、わかりました。経済は素人ですが、また時間を空けて読み直したいと思います

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2023年07月17日

Posted by ブクログ

パンデミック後の世界的なインフレ発生の要因に関する著者の探求の過程がわかりやすく語られている。またそれを入口にして、物価に関して蓄積されてきた学問的な知見について紹介されている。金融政策において、需要過熱によるインフレには打つ手があるが、供給不全によるインフレやデフレにはほぼ打つ手がないこと。物価について考えるには、モノ・サービス・労働力(賃金)それぞれの需要と供給について見ていく必要があること。近年、インフレの行方を左右するのは、その時代および社会において支配的な「インフレ予想」がどのようなものであるかということ。日本では、失われた30年の間「インフレ予想」とそれが「自己実現」した結果としてデフレが続いたこと。その流れを変えたのがパンデミックであったこと。など、色々勉強になった。特に、日本の近年の物価状況について分析(第4章)が面白かった。渡辺チャートにもとづく利上げ・利下げの評価のあたりとか。

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2025年10月17日

Posted by ブクログ

経済についてあまりにも知識がないので読んでみました。すごくわかりやすく書かれていて、わかった気にさせてくれる本です。

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2024年10月11日

Posted by ブクログ

昨年読んだ本だが、今年の夏祭りでフランクフルトが800円に値上げされている!と話題になっていたので再読してみた。

著者は、日経・経済図書文化賞を受賞した前作『物価とは何か』で、専門的な物価分析を鮮やかに書いた東大の経済学部教授である。

日本で物価上昇を実感し出した2022年は、ちょうどロシアのウクライナ侵攻の時期も相まって、戦争をインフレ原因とする見方が一般的だった。

しかし、欧州のインフレがじわじわ始まり出したのは2021年である。本書では戦争以外の何らかの原因を突き詰めて考察する。

前半は、米国中央銀行(FED/FRB)にとって、金融政策の検討のもっとも頼りにしているフィリップス曲線が使えなくなったために、根拠のあるインフレ予想を立てられなくなったという衝撃の事実から始まる。

後半では、日本特有の物価上昇に伴わない賃金低迷の原因・背景が非常にわかりやすく解説されている。

昨今では日本でも少しずつ「値上げ嫌い」「価格据え置き慣行」からの脱却を図る企業が増えつつある。

労働者が「賃上げ要望」を一斉にできるように、政府がいかに後押しするかが鍵となるみたい。

ーーーーーーー一以下、抜書きーーーーーーーー
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これまでの2年超にわたるパンデミック下での人々の経済行動を分析した研究が、さまざまな研究者から発表されています。それらが共通して指摘する大事なポイントは、ウイルスとの闘いにおいて、世界中の誰もが同じ行動をとってきたということです。ステイホームはその最たるものです。そして、経済再開の局面において労働者や消費者に見られる行動変容も、同様のことが言えます。この大きな特徴を言い表すキーワードが、「同期」です。
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実際には、Fedだけでなく世界各国の中央銀行が一様に後手にまわりました。そうこうしているうちにロシアがウクライナに侵攻し、世界の中央銀行は、おっとり刀で金融引き締めを行わざるを得なくなったのです。そのような事態になってしまった理由は、ふたつあります。ひとつは先ほど述べた、中央銀行の「気のゆるみ」と「過信」です。物価の問題はすでに低インフレに移行しており、高インフレはもう起こらないし、起こったとしても利上げで制圧できる、という思い込みがありました。そしてもうひとつは、研究者や中央銀行がインフレを予測する分析道具として頼りにしてきた「フィリップス曲線」が役に立たなくなったことです。
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実は、賃金が上がらない原因は、物価が上がらないことにあります。企業は、自分の売る商品の価格を上げられないので、賃金を上げてしまうと経営が成り立ちません。一方、労働者であり消費者でもある私たちにとっては、賃金が上がらない以上、価格も据え置きでないと生活が成り立ちません。このような双方の要望を満たすギリギリの妥協点として、賃金も物価もともに据え置きという状態を日本は選択してきました。この状態はそれなりに居心地がよく、だからこそ四半世紀の長きにわたってそれが続いているとも言えるでしょう。しかし、海外からインフレの波が日本にも及び物価が上昇を始めた今、この絶妙のバランスが崩れつつあります。物価は上昇、賃金は据え置きという、誰が考えても不幸な状態に突入するのか、それとも、物価も賃金も安定的なペースで毎年上昇する健全な経済へと移行するのか、日本はいま分かれ道に立っているのです。
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対照的な対策をとったスウェーデンとデンマークでしたが、結果として経済被害に大きな差は出ませんでした。国民の自主性にまかせて緩い行動規制にとどめたスウェーデンでも、厳しいロックダウンを行ったデンマークと近い割合でGDPが減少しました。これらの事実は、政府の介入の強さと経済被害の規模には関係がないことを如実に示しています。
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ここで重要なのは、ニュースを見て行動を変化させた一人ひとりには、直接の健康被害が起きていないことです。また、行動を変化させたのは政府に命令されたからでもありません。感染に関する「情報」を受け取って、人々は自主的に行動を変えました。つまり、情報が経済被害を生み出したのです。この「情報主犯説」こそが、パンデミックによる経済被害について、私が最終的にたどり着いた仮説です。
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賃金の面で日本が模範とすべきは、イタリアやベルギーのような国々です。つまり、実質賃金の伸び率は低いが名目賃金の伸び率は決して低くない、そういった状態を目指すべきなのです。もちろん欲を言えば、実質賃金も名目賃金もしっかり伸びている国、たとえばスウェーデンのような国を目指したいところですが、それには生産性の上昇が不可欠で、その実現には構造改革など時間をかけた取り組みが必要です。その努力を怠るべきでないことは言うまでもありませんが、その一歩手前の目標として、イタリアやベルギーを目指してはどうか、というのが私の提案です。

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2024年07月21日

Posted by ブクログ

現在、世界が、日本が置かれているインフレ状況を、分かりやすく解説してくれる良書。はじめはグラフのマジック、数字のマジックではないかと、疑って読んでいたが、大袈裟ではない姿が見えてくる。日本はアベノミクスで中央銀行にあたる日本銀行が、「独立性」と「透明性」を失ったことが、国民のインフラ予測の上昇に寄与出来なかったのではないかと、感じている。ショッキングではあるが、国にはまだ間に合う政策を、慎重にそれでいて大胆に行なってほしい。

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2024年07月12日

Posted by ブクログ

 コロナ後に起きたインフレの原因は何か?を論じた本。
 インフレは需要が供給を上回った時に発生する。コロナ後のインフレは、労働者が職場に戻らず供給が減ったことが原因と推察している。
 インフレを含めた物価の安定は中央銀行が金利操作で行っているが、これは需要調整に有効だが供給能力には影響しない。そのため足元実施している金利上昇は、コロナで減ってしまった供給力まで需要を減らす縮小均衡によってインフレ解消を目指す動きとのこと。これは景気後退につながる。しかし他に手段がないため止むを得ず実施しているとのこと。
 景気後退が見込まれるなら、手持ちの株は売ってしまった方が良いのかな?と思いました。

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2024年06月07日

Posted by ブクログ

『物価とは何か』の著者による。二冊読めば更に理解が深まる。タイミング的にコロナ禍の終盤の出版であり、コロナ禍の経済影響についての考察はリアリティがあって分かりやすい反面、若干の古さが惜しい。それがあっても尚、有益な本だ。

アメリカではパンデミック初期の景気悪化によりレイオフが急増したが、経済再開が進むうちに次第に求人は回復していた。それにもかかわらず労働者が現場に戻ってこなかった。理由は、母国に帰った移民や退職を早めた老人など。こうした自発的離職の増大は人手不足を齎した。これがパンデミック2年目にアメリカにインフレを引き起こした原因だと著者は解説する。

インフレ率と失業率の相関を示すフィリップス曲線。因果、相関の様々な因子は複合的に存在するが、原則はフィリップス曲線に基づく論理展開だ。つまり、簡単に言うと、人が足りないという事は、産業が元気。人が足りないから賃金を上げて募集しないと。人が足りない、物を作れないほど需要が旺盛。人手不足を示す失業率とインフレは、こんな感じで結びついている。

日本だけがインフレ率が低いという状態だった。インフレ率が低いということ自体は大きな問題ではないが、率の差は、内外価格差を生む。本来、日本だけが価格不変、他国がインフレならば、「円高」になるはずであり、円高になれば、内外価格差は起こらなかったはず。サービスや賃金は国内取引が基本であり、この内外価格差は、為替レートに影響しない。パンデミックに対する各国の対応にも差が生じた。

今、気になるのは漸くインフレに向かう日本の今後の動向だ。スタグフレーションにならぬためには、同時に賃上げも必要。政府主導でなければ賃上げにも動けない日本は、最早、資本主義より社会主義に近いのかも知れない。そして、心のどこかで、それで良いと思う面もある。それでも良いから、人手不足感を保ったまま、スタグネーションにならぬよう賃上げの成功を仕上げて欲しいものだ。

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2024年03月03日

Posted by ブクログ

わかりやすい!
『物価とは』よりずっと論理がシンプル。シンプルすぎてほんとかなと思うこともなくはないが。
まだ2章目で、コロナが経済に与えた影響のところだけど、すでに面白いので評価。

時代を評する書籍の常として、時機を超えて読まれ続けるものではないので星を1マイナスしたが、今読むべき本であることに変わりない。

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2024年02月19日

Posted by ブクログ

世界インフレはコロナウイルスによって行動を変化させたことによって起こった。日本のデフレを当然のものとして捉えていたけど、世界的に見たら特異な例で、賃金、物価とも緩やかに安定的に上昇していくのが望ましいことなのだと思う。

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2024年01月12日

Posted by ブクログ

一昨年に話題ともなり、日経経済図書文化賞も受賞した『物価とは何か』の続編。日本が現在の状況を抜け出すためには賃金上昇が必要という処方箋は誰しもが思っているところではあろうが、はたして2024年はその賃金解凍スパイラルが生じていくのかどうか。岐路に立つ日本経済の行く末を見通すために必読。

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2024年01月07日

Posted by ブクログ

インフレはロシアのウクライナ侵攻前から。コロナによるパンデミックによる。
しかもこれまでのインフレと異なる。だから中央銀行が機能しない。

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2023年11月08日

Posted by ブクログ

前作の「物価とはなにか」も大変面白くタメになった本であったが、こちらは今世界で起こっているインフレの解説と、本作発売時(昨年秋)の日本のデフレ状態から、どのように脱却するかの処方箋がより分かりやすく解説されている。

本作では、今回の世界的インフレが需要過多でなく供給不足にある新しい形である事が、その対策を難しくさせている事を指摘している。このくだりは中々説得力があり、これゆえに米欧のインフレは収束に手間取る可能性が高いのかもしれない。

今現在TMFを多少買っている私は損切りも検討しないといけないかもしれない。昨年秋発売時にすぐ読んでいればよかった・・泣き

日本だけインフレがおきない状態からの脱却として、「物価賃金スパイラル」のモデルを通してその脱却法を本書では示している。上手くいくかどうかは私には判断できない。

ただ、この本が発売されてからほぼ一年。日本もすでにインフレ状態になっているのは間違いないように感じている。日銀は頑なにまだ2%のインフレが定着してないように言っているが、生活者の実感としては少なくとも1割は上がっているように感じる。

異次元緩和の副作用で、インフレになった時には金利の調整でインフレを抑えられない日本はどうするのでしょう。

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2023年09月18日

購入済み

期待どうり?

話題になっていたので読んでみた。人の行動変容に一つの解を求める。あまり聞き慣れなかったので新鮮でした。

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2023年01月06日

購入済み

それでも特別な日本の状況

コロナ禍と相前後して世界中でインフレが起こっている理由を、とても平易に謎解きしてくれており、すぐに読み終えることが出来た。そんな中で日本の状況がどれだけ特殊であるか、各国のデータとのさまざまな比較があり腑に落ちる。この国の経済がこれを機会にして改善されるといいのだが、少しだけれど期待が持てる考察もあり。

#タメになる

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2022年12月29日

Posted by ブクログ

わずか3年前、現在目の前にあるインフレ、賃金上昇、人手不足がいずれも不確実視されていたことに驚く。特に人手不足は少子化もあり自明のことではなかったのか?ちょっと信じられない。

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2025年09月14日

Posted by ブクログ

コロナ感染後、ウクライナ戦争開始の時期に書かれたので若干古いところはあるが、インフレとデフレについてわかりやすく解説されている。
印象的なのは、経済というものがいかに人々の心理要因によって左右されるかということ。
今後、物価は上がるのか、景気は良くなるのかという予想が行動に反映し、経済を動かす。
ブル崩壊後、物価も賃金も上がらない、景気は良くならないという予想のもとに動いてきたのが日本経済であり、その停滞を招いたというのはなるほどと思わせる。
そうだとすれば、経済は自由放任ではなく、政府によるコントロールが有効であり、必要でもあるということとなる。
もう一つの感想は、これでは経済学が物理学のような客観的な科学になることは絶対にできないということ。経済の予測はできない、少なくとも短期的は無理であることは政治の予想が無理なのと同じ。
もちろんいくらAIが発達しても株価の予想もできない。
勉強になる本だが、根本的な疑問として、物価は上がることがいいのかというのはわからなかった。
中央銀行の金利操作がデフレに弱い為と書いていたが、根源的には同じ価格、賃金体系が続くことは、人間の予測可能性を高め、安定的な生活を送るという観点から善ではないか?
緩やかでもインフレを良しとする判断の裏には、地代や金利生活者、貯蓄で生きる者のような層から企業や勤労者への所得移転をすべきという考えがあるのではないか。
著者は、当然そこまで考えているが、物議を醸す為あえて書いていないのか。「物価とは何か」を読んでみたい。

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2025年05月08日

Posted by ブクログ

大地震とパンデミックは経済的インパクトの質がまるで違う。パンデミックによる経済停滞は政府の介入ではなく人々の情報交換による恐怖心の伝播により生じた。経済学のモデルにおける供給サイドの分析が必要。

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2024年12月28日

Posted by ブクログ

本書の紹介文に「学者も中央銀行も読み間違えた!」とあるように、経済理論はギャンブル要素が多い。
地震、台風、洪水などの自然災害や、パンデミック、戦争などが起きる時期や規模や影響度など予測できない。

ここ数年間の世界的インフレについては、今まで頼りにしていた経済理論では説明できないらしい。
そこで、なぞの要因"ファクターⅩ"を見つけようとしたのが本書の内容みたいだ。

経済活動なんて、人の気分次第で変動するもの。
行動経済学が注目されているように、人間の欲望や思考の癖が大きく経済活動に関係していると思う。
今のインフレは、パンデミックと戦争が供給網の寸断を招いた結果のものだと思う。
性善説を前提としたグローバル化の行き過ぎによる弊害だと思う。

何が原因でインフレになっているのか?
今の経済理論で説明がつかないなら、これを見つけ出すことは重要だ。

コロナ禍が収束していない2021年の6月ごろから欧米でインフレが始まった。

パンデミックがインフレの主犯であるなら、この時期に何をすべきだったかの答えを出しておく必要がある。
だが、どの国も政府の介入策は経済にあまり影響を与えなかったようだ。
ロックダウンした国も、規制をかけず自由な行動を容認した国も、その後の経済状況の変化に差異はなかった。
コロナによる死者数の違いも関係ない。
パンデミックが収束すれば、経済も元に戻ると多くの人が考えていたが、2024年になった現在もそうはなっていない。
ウクライナ戦争でインフレ率が1.5%上がっていると試算されているが、それを差し引いても高いインフレ率が続いている。

結局、今のインフレの理由がわかっていないので、どう対処すればよいかも分かっていない。
日本以外の中央銀行は、利上げで対処しその効果を様子見しながら次の手を打とうとしている。

インフレは供給不足により生じる。
供給不足は、供給が足りないか需要が強すぎるかのいずれか。
今回のインフレは供給の過少にある。
中央銀行は供給の過少を解決する能力は持っていない。
だから、増えていない需要を下げて、少ない供給とのバランスを取ろうとしているらしい。

渡辺努さんは、マクロ経済学の専門家だ。
マクロ経済学は全体としてどうかという見方優先で、個人の生活実感と異なるのでピンとこない。

高いインフレ率を問題にしているが、そもそも適切な物価上昇率なんて定義されているの?
分からないことだらけ。
日本の実態に近い0%じゃダメなのか?
私のこの疑問の答えが書かれていたが、0%じゃ成り立たない今の資本主義に基づいた経済理論によるものだった。
「経済理論の基礎も知らないの?」と言う人達の思考回路を変える必要がありそう。

インフレになるとその国の通貨は価値が下がり安くなるはず。 
だから、日本では価格が不変で、アメリカでは価格が上昇なら、円高になるはず。
日本100円、米国1ドルだったものが、日本100円、米国2ドルになれば、1ドル50円になるはずなんだけど、そうなっていない。

データを見ると、2012年を境に円高に向かっていた為替レートが一転急激に円安に向かっている。
何があったか。
アベノミクス政策による日銀の異次元金融緩和だ。
目論見どおり1ドル80円から120円へと円安に振れ、今は150円も超えた。
国民の正常な経済活動によらず、学術的な経済理論による力づくの金融緩和政策の結果がこれだ。
私には、こうなったからくりがよく分からないが、アベノミクス政策を続けてこうなった。

輸出で儲けが出る企業や、資産家の大株主には嬉しい成果だ。
円安株高で今まで恩恵を受けた人がどれだけいるか知らないが、その結果何が起こるか今後が不安だ。
国債を大量に抱えているので安易に利上げもできない、円安介入の資金も不足してきた。
アベノミクスの失敗の後始末が使命となった植田和男日銀総裁は、打つ手がほぼない中で今のところよくやってると思っている。
銀行の金利は上げられないから株で資産形成を国が推奨しているが、損しても自己責任だからこの方針は心配だ。

政治家さんには、庶民にマネーゲームを進めるのではなく、地道に働けばそれなりの暮らしができる社会を作ることに頭を使って欲しい。

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2024年07月30日

Posted by ブクログ

2023/05/15 読み終わった

「物価とは何か」で、日本がインフレしていないのは不思議、みたいな話をしていて、その後2022年になんと日本でインフレが起こった!そのインフレを加味したアンサーソング的本。

ロシアのウクライナ侵攻より前にインフレは始まっていたよ。という論。

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2024年06月07日

Posted by ブクログ

日本だけが世界から見て異例の長期デフレを経験している。その背景とどのような施策をしたら2%のインフレ目標に到達できるのかを著者の見解と共に書かれた経済書。

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2024年01月08日

Posted by ブクログ

 今のインフレは、サプライチェーンが寸断された脱グローバル化の影響として供給過小がより進行しており、需要過剰ではなく供給不足によるインフレとの見方や、サービス産業が製造業と比べて衰退するが日本は衰退産業から成長産業への人材移動がうまくいかないという現象などについて、肌感覚として分かっていることが、言葉としてうまく説明されており分かりやすかった。
 本書で全体的に書かれていることは、巷に経済理論一般としていわれていることの焼き直し感が拭えなかったが、全体として難しくとっつき辛いテーマを、割と平易な分かりやすい言葉で説明されていた。

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2023年09月12日

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