【感想・ネタバレ】物価とは何かのレビュー

あらすじ

あのバブル絶頂時、そしてその崩壊、いずれのときも意外なほどに物価は動かなかった。それはなぜか?
お菓子がどんどん小さくなっている……なぜ企業は値上げを避けるのか?
インフレもデフレも気分次第!?
物価は「作る」ものだった?

経済というものの核心に迫るための最重要キーである、物価という概念。
国内第一人者が初歩の初歩から徹底的にわかりやすく説き起こし、社会にくらす私たち全員にとって、本当に知るべき経済学のエッセンスを教える、画期的入門書の登場!

ハイパーインフレやデフレと闘う中央銀行や政府の実務家(ポリシーメーカー)たちは、何を考え何をしているのか。
それらの成果と教訓を研究者たちはどのように学び、理論を発展させてきたか。
私たちの生活そのものと直結する、生きた学問としての経済学が立ち上がっていく様を生き生きと描く!
学問としてのマクロ経済学を希求する、真摯な社会科学探究。

インフレもデフレもない安定した社会は、実現できるのか。
その大きな問いにこたえようとする、エキサイティングな一冊!

【本書より】
個々の商品の価格が、売り手や買い手の個別の事情を適切に反映して動くのは、自然なことです。そして、個々の価格は忙しく動きまわるけれど全体としてみると安定している、というのが健全な姿です。ただ、同じ「全体が動かない」場合でも、個々の価格がまったく動かず、その当然の帰結として全体も動かないということもあり得ます。しかしそれは病的だと言えるでしょう。(中略)売り手や買い手の事情で価格が上がり下がりするという、経済の健全な動きが止まっていたら、それは異変とみるべきです。後で詳しく述べますが、今の日本経済はこれに近い状態だと私はみています。

【主な内容】
はじめに
第1章 物価から何がわかるのか
第2章 何が物価を動かすのか
第3章 物価は制御できるのか――進化する理論、変化する政策
第4章 なぜデフレから抜け出せないのか――動かぬ物価の謎
第5章 物価理論はどうなっていくのか――インフレもデフレもない社会を目指して
おわりに

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Posted by ブクログ

​昨今、なにかと「物価」が話題だ。しかし、そもそも物価とは何なのか、どう決まるのか。デフレやインフレは具体的に何が悪いのか。分からないことだらけである。
そんな疑問を解消するため、本書を手に取った。

​本書は、「物価は『蚊柱』である」という例え話から始まる。
商品一つ一つの値動きはバラバラだが、遠目に見るとひとつの塊としての動きが見えてくる。個別の動きには理由がつけられても、全体としての「物価」の動きを説明するのは非常に難しい。この「蚊柱」の比喩は、物価の掴みどころのなさを実によく表している。

​本書を通じて理解できたのは、インフレ以上にデフレへの警戒が必要だという点だ。
デフレはインフレと比較して、中央銀行の介入によるコントロールが難しく、一度陥ると抜け出しにくい。デフレ下では企業が価格を決める力を失い、前向きな投資への活力も削がれてしまうのだ。

​また、「景気は気から」の言葉通り、物価の動きは人々の「予想」から生まれるという点も重要だ。
人々の予想が定まらず不安定になると、誰もが中央銀行や政府の顔色を伺うようになり、その動揺がさらなる変動を招く悪循環に陥る。
グリーンスパンは「物価安定とは、人々が中央銀行の動向に興味を持たなくなった状態」だと言ったそうだが、まさにその通りだと思う。物価や社会の安定のためには、そこを目指すべきだろう。

​では、どうすればデフレを回避し、物価を安定させられるのか。
それには国民全体が「緩やかに良くなっていく未来」を信じられることが不可欠だ。経済学者ではなく、政治家の役割は、政策を通じて明るい未来へのメッセージを共有し、人々に前向きな気持ちを持たせることにあるのではないかと強く感じた。

​最後に、著者のスタンスが非常に印象的だった。
著者は、持論があくまで「仮説」であることを強調し、本書は教科書のようにすべてを網羅したわけではないと断っている。「人の意思決定」という不確実な要素が入る以上、経済学は自然科学のように完全な理論化が難しく、万人に共通する一つの答えを出すのは困難だ。
​だからこそ、自分も政治や経済について語るときは、自戒を込めたい。社会は不確実であり、自分一人の視野など限られた小さなものに過ぎないという認識を、常に忘れずにいたいと思う。

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2025年11月21日

Posted by ブクログ

「物価とは蚊柱である」。この概念を元に読み進めることで、物価という身近でありながら具体的にはよくわからないものについて初心者でもわかりやすく理解できる。特に物価が人々の予想に基づくことで、自己実現的に変動するというのは、集団における部分と全体の非結合性を表していると感じた。

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2025年09月10日

Posted by ブクログ

経済に関するトピックをただ聞き流すだけの日々が、なぜこうなっているのか、これからどうなっていくのか、そのために何を今するべきなのかな、を考えられるような日々に変えられそう

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2025年04月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

物価は、蚊ばしらである。世の中に何十万と存在する個別の商品それぞれが、一匹一匹の蚊に相当する。インフレを起こす仕組みとして、まず物価がX%の率で上がると皆が予想し、その予想を踏まえて企業や店舗が値札を書き換える、その結果実際にその率Xで物価が上がる、というメカニズムが考えられる。国民に働きかける中央銀行の行為の98%はトークである。人々の予測に働きかけるわけである。貨幣量を増やすと一時的に失業率は減少するが、しばらくすると貨幣量の増加をインフレ予想に織り込むことが完了し、失業率の押し下げ効果がなくなり、失業率は元の水準にもどる。
日本は物価が上がらない状態がかれこれ30年続いている。人々のインフレ予想が世の中を動かすことから、インフレ予想ができない層が増えているのは日本病の原因の一つだ。同じように企業もインフレ予想ができなくなっている。デフレが社会に定着すると、少しの値上げでも顧客が逃げてしまうのではと企業は恐れ、原価が上昇しても企業は価格に転嫁できないという状況が生まれる。それは企業の新商品開発への意欲を奪い、行き着く先はコストカットだ。物価下落自身はさほど大きな問題ではなく、企業が価格支配力を喪失し、それが経済の活力をそぐことこそが重大な問題だ。

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2025年02月01日

Posted by ブクログ

2023/04/24 読み終わった
ゆる言語学ラジオで紹介されていたので。

タイトルからがっぷり四つの迫力ある本だけど、中身はもっと骨太だった。高校程度の経済知識しか持っていなかった自分には目からウロコだった。

中でも一番面白かったのは、中央銀行総裁は嘘つきが一番いいというくだり。

情報公開なんてしたらしただけいいだろうと思っていたが、昔の中央銀行はそうではなかったということや、現在中央銀行が情報公開を積極的に行っている理由が単に公平性の観点ではないということ、この辺りが心に残った。

きちんと読み込まないと理解が追いつかない部分もあった。何度も読んで理解したい。

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2024年06月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

価格の硬直性についての理論的説明が繰り広げられた。メニューコストなのか、情報の制約なのか、、そしてしまいに出てくる日本の価格を上げられない消費者の厳しい目線というカルチャー的なもの。他の会社の価格に共鳴的に営業を及ぼすような価格支配力も失われ、、日本人は必死にコスト削減に命を燃やす、、その時間、付加価値付与に当てればいいのに!!すごく残念な気持ちになったけど、読み応え抜群です。
日本は新しい商品のうみかえで価格を上げている。そうでもしないと消費者の目が厳しい日本!ひいては儲けは賃金にもつながるのに、、。
フィリップス曲線についても教科書を超えた考察で、また勉強を重ねたら振り返って読みたい。

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2024年04月02日

Posted by ブクログ

日銀から東京大学教授を経験された著者が物価とは何か?を数式なしで分かりやすくまとめてくれている本著。マクロとミクロで考える思考が非常に参考になった。

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2024年01月04日

Posted by ブクログ

ゆる言語学ラジオでおすすめされていたので購入。物価について、経済学の研究者である著者が一般向けに書いています。価格の硬直性、デフレの原因など、過去に実際に起きた現象、とくに直近の日本のデフレをテーマにその原理となる仮説がわかりやすかったです。人々の予想によって物価が決まっていて、それに働きかけることが物価安定の取り組みであることなど、いままで何もわかっていなかったことが素人レベルでなるほどと思えて、最後まで楽しく読めました。

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2023年12月10日

Posted by ブクログ

個人的に今まで読んだ学術書の中で1位。

歴史、経済、金融、心理学など興味あるものはかじってきた人ですが、物価という身近すぎて気にしたことがなかったのですごく面白かったです。

今日本に住んでいて、デフレと言われてはいるものの、個人の体感としては物価は上がっていると感じていました。
じゃあそのデフレって何?巷の物価上昇は何?と考えるきっかけになりました。

特に興味深かったのは、インフレ率は人々のインフレ予測によるということ。
みんながデフレになると思えば、そうなるし、インフレになると思えばそうなる。

だったら中央銀行はどうするのか。影響力を持ちたいと思いつつ、持たない方がいい。
そんな矛盾することが今世界で起こっている。

それに加えて、バブル期に物価が上がっていないこと、ハイパーインフレも住んでる人からしたら大きな影響がないことはびっくりしました。

本当に物価って面白いんだなと思えます。

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2023年11月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

# 政府・日銀・民草の我々がどのようにマクロ経済を作り出しているか、学べる一冊

## 面白かったところ

- 「物価は地震に似ている」という破天荒な発見と、その裏打ちされた説得
- 財務省や日本銀行が行っているオペレーションの目的が改めて知れる点

## 微妙だったところ

特になし

## 感想

個人的に2022年に読んだ本の中で最も驚きが多かった一冊。読みやすくて面白かった。

「地震と物価のグラフや性質が似ている」なんて突拍子もないアイデアがまず面白い。

地震は頻度・規模が記録され、物価は価格更新が行われた回数(頻度)・価格変動の幅(規模)が記録される。地震は本震から時間が経つにつれて余震の感覚が開き、物価も新品として市場にが出た時からは頻繁に価格が上がったり下がったりする。

地震と言ったらあまりいいイメージではないが、急に、大きく崩してはいけない物価を見る新たな物差しとして使われることになるとは想定外である。

メニューコスト仮説により、まるで談合されたかのように市場価格が動かないことや、弁当の嵩増しから見るインフレなど、割と身の回りのトピックもソフトに取り上げている点も、読んでいて好感を抱いた点のひとつである。

また著者の別の本も読みたい。

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2023年10月14日

Posted by ブクログ

◯巨額の債務があるにもかかわらず、貨幣の魅力が決済サービスのみに由来するという伝統的な考え方に固執しているという点で、日本とブラジルは同じ間違いを犯している(34p)

◯Xが低すぎる場合には、臨界点を超えると対応不能であり、その予想を潰せません。この意味で、中央銀行が物価をコントロールする能力は、インフレとデフレで非対称なのです。(112p)

◯価格据え置きの常態化は、現場の技術者から前向きな商品開発に取り組む機会を奪うというかたちで、社会に歪みを生んでいるのです。(283p)

◯緩やかな物価下落は、日本企業から価格支配力を着実に奪っていくこととなりました。(287p)

★語り口が丁寧で、講義を聞いているようだった。

★社会の変化に合わせて、現在進行形で変化している学問だと感じた。(多くの最先端の学問がそうかもしれない)

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2023年05月07日

Posted by ブクログ

名著。筆者は研究者であるが物価理論という雲を掴むような理論を素人にも分かりやすくアウトプットする能力に著しく長けている。ページを読み進めるごとに目から鱗が落ちる感覚を味わった。また、コロナでインフレが起こることを予言する先見の明からも分かる通り研究者としての知見見識も目を見張るものがある。
堅苦しいと思われがちな種々の理論を分かりやすく噛み砕いて説明し、ステルス値上げや鳥貴族の値上げ挑戦といった身近な話題も絡めながら物価を取り巻く理論構造をわかりやすく説く。物価の謎を研究し解き明かすことは楽しいことだと思わせてくれた。

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2023年05月05日

Posted by ブクログ

出版直後に入手していたものの一字一句理解しようと読んでは戻り読んでは戻りしてようやく読み終わった。
これまで読んだ経済関連の本で一番と言っても良いのではないだろうか。経済学は社会科学の女王と称されるだけあって研究者も高尚で高貴というのが否めないが、筆者は研究のレベルの高さとは逆な意味での庶民視点が感じられる。(しかし本当の意味で庶民ではないのは明らかだが)一時、次期日銀総裁候補として名前が挙がることもあったがそれも非現実的であったのだろう。正統派としてど真ん中、正論で生きるのではなく、少し皮肉や少数派論を込めて斜めから見る態度は主役ではなくブレインが似合う。とは言え、現実の正統派はこういった亜流をうまく使いこなせず疎んでしまい、結局味方につけることができず損をすることが多い。研究者としてのレベルはあまりにかけ離れてはいるが、何やら世の中を斜めから見つつ我が道を行くところはまるで自分の様だ。
物価、それは近く遠く、裏であり表であり、どうでも良いことで重要なことであり、抽象的であり具体的なことであり、小さく大きな課題なのだろう。

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2023年03月26日

Posted by ブクログ

日本はデフレ脱却を目指し苦しんでいた。昨今は物価が上がりインフレ基調にある。デフレに慣れてしまき価格硬直性のため反発が大きいが、長い目で見るとこのインフレは必然なのかもしれない。今のところ急激といえるほどのインフレではないけど、日銀や政府は対策を迫られている。これも今までのデフレの影響が大きいのかもしれない。分かっていたつもりのインフレについて再認識できたと思う。

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2023年02月26日

Posted by ブクログ

分かりやすい本、という感想を見たのだけれど、前提知識がなさすぎる自分には、正直難しかった。

日本のゆるやかなデフレの話は、実感もあって面白かったかも。
→デフレが定着すると、少しの値上げでも顧客が逃げてしまうのではと企業は恐れ、原価が上昇しても価格に転嫁できない状況。企業は前に進む力を失い、行き着く先はコストカット、後ろ向きの経営。
新商品(世代交代)の値戻し、ステルス値上げといった変則的な値上げが生まれている。

この本が書かれたのが2022年で、今は、その時よりは値上げが行われているような気もするけれど、今はインフレなのだろうか。

物価の動きには、人々の予測とノルムが関係してくるという。この本には書かれていなかったけれど、メディアの影響も大きいのかな、と思ったり。


以下メモ

・2020年代初頭の菅政権は、携帯電話料金の値下げ施策に力を注ぎましたが、そのときにも、新聞等の解説では、この施策の結果CPI(消費者物価指数)が下がるという説明がされていました。
ただでさえデフレなのに、携帯電話料金の値下げでデフレを加速させるとは何事かという批判の声もありました。しかしこれは典型的な「会計理論」による誤謬で短絡的にすぎます。
携帯電話料金が下がれば、各家庭にその分だけ余裕が出てそれが消費行動の変化につながるのに、こうした時間の経過とともにゆっくり表れる効果を無視しているのです。


・時間の価値は人それぞれで、大きな格差があります。時間の価値の差が、その時間分働いて稼ぐことができる金額によって決まるとすれば、その差が大きくなるのは、現役世代とリタイア世代の間です。リタイア世代は現役世代よりも熱心に広告を見る。だから特売価格で購買できる、となるはずです。
米国の調査では、年齢が高くなるに連れて購買価格が下がっており、米国のリタイア世代は特売の情報収集に余念がなく、だから安い買い物ができる。
一方日本では、50歳を超すと購買価格が上がっているのです。
なぜ米国と異なるのかについて、いまのところ正確な理由は分かっていません。


・「景気は気から」と言われることがあります。
企業経営者や消費者が、景気は良いと思って強気で行動すれば、結果として景気が良くなる。つまり景気を決めているのは人々の気の持ちようという意味です。
これを、人々の「予想」の揺れと表現します。景気と同様に物価についても、上がるにせよ下がるにせよ、人々の予想次第です。


以下は、雑なまとめ
・賃金上昇率(インフレ率)が上がると失業率が下がる。負の相関がある。
しかし、失業率が上がるときにインフレ率も上がる場合(負の相関がない)がある。
→インフレ率は失業率以外に、インフレ予想にも左右される。
ではどのように、金融緩和をして失業率をさげて、インフレ予想をコントロールするのか。

金融政策が人々の予想に働きかけるための98%は「トーク」

金融政策として、金融緩和を行うとアナウンスするかどうかと、実際に行うかどうかがインフレ予想に影響する。

インフレかつ、失業率が変わらないという悪循環から逃れるためには、タカ派を銀行の総裁にする。
(失業率には無関心でとにかく低インフレを目指す人)
→中央銀行の独立性、政府と異なる価値基準で動けることが必要。


ゲーム理論:複数人が互いに影響しあいながら、意思決定を行う状況を数理モデルを使って分析する。

時間不整合の理論:アナウンス時点と実行時点で異なる選択をしている。


・インフレ予想はコントロールできるのか。
金融のプロの予想はコントロールできる。が、プロでない人の予想はコントロールできない。中央銀行の政策への無関心が理由。
今の課題→いかにして一般の消費者に中央銀行の声を届けるのか、いかにして予想をコントロールするのか。

合理的無関心(なぜ関心をもたないのか):人はどこにどれだけお金を使うのかと同時に、関心をどの話題にどれだけ振り向かせるのか決定している。自分の時間が有限であると認識したうえで、積極的に無関心になる。


・中央銀行への関心と物価上昇率の関係
物価の安定→中央銀行に関心が向かない。ただし、何かの外的要因(地震や感染症など)の時に、中央銀行のメッセージが全く届かなくなるのも問題。
物価の不安定→関心が向くと同時に、それが原因となって、企業経営や個人の生活が疎かになる。


・中央銀行への関心の程度はどのレベルが適切か?
→ナラティブ経済学:人を突き動かすのは数字で表現できるような情報でなく、単純で腹落ちするストーリー。


・時代体験が予想を変える。これまでの人生でどのようなインフレ経験をしてきたか、個人のインフレ予想に影響を与える。
→インフレを知らない子供たちのいる国、日本。


・バブルの謎
バブル時、不動産や株の価格は急上昇したが、「物価」は動かなかった。バブルがはじけたときも同様。


・価格の硬直性→メニューコスト仮説
この仮説は実際の現場では支持されない。
→情報制約仮説:値段を変更しようとすると、新たな情報を仕入れねばならず、その手間は小さくない。


・説明できない価格の動き
①マクロの価格硬直性(価格の反応速度):貨幣が10%増えたとして、すべての商品の価格がその変化をおりこみ、10%あがるまでの時間

②価格更新からの時間が経過するにしたがって、直近の価格の更新頻度が小さくなる。

→商品同士の相互作用という視点がない

振り子時計の同期(全体が部分の総和でない例え)
振り子時計を壁に2つ並べて掛けて放置すると、最初はお互いばらばらに動くが、やがて左右対称になり同期が生まれる。
これは、2つの時計が設置されている板により振動が伝わり同期を引き起こす。
振り子時計は細かな部品の組み合わせでできた、まさに全体が部分の総和。ただ、2つの時計が横板でつながっているという新しいシステムの理解をするときは相互作用の意識が必要。


・日本のデフレの特徴→慢性的な緩やかなデフレ
物価が全般的に上がっている社会では値上げが受け入れられる。(消費者は価格が上がっても、その店で購入する)
上がっていない社会では、受け入れられない。(消費者は、値段が上がっていたら、他の店に行く)
みんなが一斉に値上げする必要。

目指すべき物価安定とは何か
→経済主体が意志決定を行うにあたり、将来の一般物価水準の変動を気にかけなくてもよい状態。

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2025年10月01日

Posted by ブクログ

面白いと世評高い本。物価という難問を数式なしにわかりやすい説明に努めていることに感心した。
食料品の物価については貨幣の登場とともに政権の問題になってきたが、こんなにわかっていないことなのかと驚いた。
一言で言えば、みんなが上がると思うから上がる、上がらないと思えば上がらないという言葉に言い尽くされるのか。
そのために、中央銀行のメッセージなど苦心惨憺していることはわかるが、日銀のインフレターゲットは、そんなはずないよねと全く相手にされていないように思える。
それならば戦中にやったように、政府が直接物価に介入した方が効果的ではないか?
わからなかったのは、貨幣流通量や輸入品の値上がりなどの経済の実態と心理的なものの関係はどうなのか?
貨幣流通量が増えても心理が変わらなければ値上がりしない、ではその逆もあるのか?
最後はインフレもデフレもない社会とあるが、そこまでの書き振りは企業の活力のためにはある程度のインフレが必要ということではなかったか?
そもそもインフレもデフレもない社会って、どういう状態なのか?
前書でも書いたが、インフレとデフレは国民に等しく影響するのでなく、企業や勤労者、年金生活者では全然意味が異なる。
当然、それについての政策的観点があるべきと思うが、全く書かれてなかったのは残念。

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2025年05月12日

Posted by ブクログ

久し振りの骨太本で、かなり時間がかかってしまった。読む人にはすきま時間ではなく、このために時間を作って読み進めていくことをすすめたい。
経済にうとい僕でも物価の何某かを導入として理解でき、日本経済のジレンマを知ることができる一冊だった。

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2024年07月11日

Posted by ブクログ

元日銀マンの大学教授が物価とは何なのか詳しく教えてくれる。

「ゆる言語学ラジオ」で薦められていた。物価指数にも色々あるとか知らないことだらけ。前半は分かりやすかったんだけど、後半は難しくなった。

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2024年03月27日

Posted by ブクログ

良本、インフレやデフレといった概念をさらに細かく分解して説明していたりする。

難しい数式はなく、一般人にわかりやすい説明。

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2024年03月02日

Posted by ブクログ

大学で経済学を学んでいた頃は、理論はそうかもしれないが実態はね、と違和感を感じていた。
その後、モデルの改善は続いて、かなりわかってきた部分があるようで、納得のいく部分が増えたかなと感じる。
日本人の値上げ値下げに対する態度が非常に値上げに対して非常に厳しいと知り、ダウンサイジングは個人的には気に入らないが、企業の戦略としては巧妙だったんだと納得。
黒田バズーカも単なるバカ騒ぎではなく、経済理論に即した対応だったことを理解できた。
このところ賃上げが進んでいるが、これが継続するのか、大きな経済的なショックが起きないことを願う。

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2024年02月08日

Posted by ブクログ

久しぶりに重厚な経済理論本を読んだ感あり。
コロナの環境を読み解く嗅覚というか考察力は感服です。
言われてみりゃそうだなと思わせる力がある本は良い本かと。

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2023年12月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

物価とは人々の予想で決まる
価格硬直性がキーワード。日本は価格据え置きがスタンダードになっている。インフレに向かいづらい、
グリーンスパンによる物価安定の定義、経済主体が意思決定をおこなうにあたり、将来の物価水準の変動を気にしなくて良い状態
経済学の知識を蓄えたりすることがこの本の趣旨ではなく、読んで直感を得ることと書いてあるのが印象的だった。

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2023年06月29日

Posted by ブクログ

著者がこの本の一年後に書いた本「世界インフレの謎」を先に読み、今この本に追いついた。先日受けたセミナーで、参考書の1つとして取り上げられていた。物価だけではなく経済学全体について理解を深められる本。世界インフレの謎に比べるとぐっと難し目の記述だけれど、学者が一般人の目線に頑張って合わせて書いてくれているのがよく分かる。物価の蚊柱理論は目からウロコ。

知性が集める経済学界も、まだ理解しきれていない問題がふんだんにあり、中央銀行含めトライアンドエラーを継続している状態。例えば、中央銀行が政策内容をオープンにして市場と積極的にコミュニケーション始めたのは1990年代からとごく最近。それ以前は何を考えているのか、その行動から推し量るしかなかった。そして、最終的には中央銀行の動向に対して世間が無関心になっても経済がきれいに回るのが理想的なのだと。とすれば、今はまだまだか。

東大発ベンチャーとして物価情報を市場提供しているナウキャスト社は、有望な投資先として親会社Finatext HDを見ていた。何処かで聞いた話だなと思って四季報見たら渡辺先生の名前が出ていてなるほど。世の中は面白い。

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2023年06月15日

Posted by ブクログ

まさに「物価とは何か」に対して、日銀、大学教授、民間企業でのエコノミスト等のキャリアをバックに解説。
経済の勉強などしたことがない自分にとっては、難しくついて行けない部分があったにせよ、物価変動のメカニズム、インフレとデフレはどちらが厄介な問題か、日本の長過ぎるデフレの原因や特徴、そしてどんな解決策が考えられるか等、とても勉強になった。

以下はなるほどと思った一部。
個々の商品の価格の変動は、物価の動きとは別物で、インフレ・デフレは個々の商品の値段が上がったり下がったりするから起こる、というものではない。
物価の動きを決めているのは、貨幣への需要と、その背後にある貨幣の魅力。だから、なぜインフレなのか、なぜデフレが起こるのかという問いに答えるには、貨幣の需要が増えたり減ったりする仕組みを理解しなくてはならない。
そのとき重要なポイントになるのは、貨幣に対する需要は、今日の貨幣の魅力だけでなく、明日の魅力にも依存するということ。
例えば、明日貨幣が増発され貨幣の魅力が大きく減ることがわかっていれば、今日の魅力がいくら大きくても、今日、貨幣を持とうという気にはならない。結果、今日の貨幣需要が減り物価が上昇する。その反対に、今日の貨幣が増加したとしても、それが一過性で、明日には元の水準に戻るとわかっていれば、貨幣の魅力も需要も減らず、物価も変わらない。だから人々の関心も貨幣の魅力が「今日」どうなっているかでほなく、未来にどうなるかに注がれる。

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2023年04月27日

Posted by ブクログ

経済学のド素人の私でも理解しやすい様に、例や図表を使用して詳細に説明してくれるので、置いてけぼりにならずに物価というものが何かを理解できるようになっている。素人にこそおすすめの一冊。
物価とか経済って数字を扱うので、もっと合理的な世界なのかと思ったけど、人間の行動心理や深層心理に影響されて変化していくのだと知って、更に面白さを感じた。

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2023年04月02日

Posted by ブクログ

経済学の難しさと面白さがそのまま詰まった本。
学生の頃、授業で感じた違和感が何か気づせてくれた。
ただ、物価をちゃんと理解するの大変。この本を何度も読み直す必要あるなぁ。
経済学を学ぶなら軸は、この本でいいと思う。

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2023年02月04日

Posted by ブクログ

素人にも理解できるように説明してあることはすごいと思うけど、そんなに寄り道せずに説明してほしいというもどかしさも感じた。
周辺知識のある人からすると良書なのだと思うが、自分は素人なので、門を叩くのが少し早かったのかもしれない。
だけど、日本の物価がなぜ動かなかったのかという点や、世界の経済史を俯瞰しても異質な経緯をたどった理由などが詳しく述べられていた点は面白かった。
脳内には留めておけないけど…

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2025年11月04日

Posted by ブクログ

経済に疎すぎる、残念な大人です。インフレと失業率に関係があることすら知りませんでした。
かなりわかりやすく書いてある本だと思いますが、金利についての知識がない上に数字の話が苦手なため、前半の理論部分は正直辛かったです。
しかし後半は、ステルス値上げなど消費者として聞いたことのあるワードや、身近な物価の話で、なるほどと思うことも多かったです。
講談社現代新書の同著書の本を、読んでみようと思います。

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2024年01月19日

Posted by ブクログ

経済学の本を読んで面白いと思ったのは初めてかもしれない。興味を引く実例を示しながら基礎的なことがていねいに語られている。

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2023年07月28日

Posted by ブクログ

かなり簡単に、誰でも理解できるように書いてくれていると思うしなるほど、と思う部分も多いのだが、まだ骨肉に染み付いていないというか、腹落ちた出来てない部分もある。手元に置いて、何度か読む必要がありそう。

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2023年05月27日

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