あらすじ
あのバブル絶頂時、そしてその崩壊、いずれのときも意外なほどに物価は動かなかった。それはなぜか?
お菓子がどんどん小さくなっている……なぜ企業は値上げを避けるのか?
インフレもデフレも気分次第!?
物価は「作る」ものだった?
経済というものの核心に迫るための最重要キーである、物価という概念。
国内第一人者が初歩の初歩から徹底的にわかりやすく説き起こし、社会にくらす私たち全員にとって、本当に知るべき経済学のエッセンスを教える、画期的入門書の登場!
ハイパーインフレやデフレと闘う中央銀行や政府の実務家(ポリシーメーカー)たちは、何を考え何をしているのか。
それらの成果と教訓を研究者たちはどのように学び、理論を発展させてきたか。
私たちの生活そのものと直結する、生きた学問としての経済学が立ち上がっていく様を生き生きと描く!
学問としてのマクロ経済学を希求する、真摯な社会科学探究。
インフレもデフレもない安定した社会は、実現できるのか。
その大きな問いにこたえようとする、エキサイティングな一冊!
【本書より】
個々の商品の価格が、売り手や買い手の個別の事情を適切に反映して動くのは、自然なことです。そして、個々の価格は忙しく動きまわるけれど全体としてみると安定している、というのが健全な姿です。ただ、同じ「全体が動かない」場合でも、個々の価格がまったく動かず、その当然の帰結として全体も動かないということもあり得ます。しかしそれは病的だと言えるでしょう。(中略)売り手や買い手の事情で価格が上がり下がりするという、経済の健全な動きが止まっていたら、それは異変とみるべきです。後で詳しく述べますが、今の日本経済はこれに近い状態だと私はみています。
【主な内容】
はじめに
第1章 物価から何がわかるのか
第2章 何が物価を動かすのか
第3章 物価は制御できるのか――進化する理論、変化する政策
第4章 なぜデフレから抜け出せないのか――動かぬ物価の謎
第5章 物価理論はどうなっていくのか――インフレもデフレもない社会を目指して
おわりに
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Posted by ブクログ
物価は、蚊ばしらである。世の中に何十万と存在する個別の商品それぞれが、一匹一匹の蚊に相当する。インフレを起こす仕組みとして、まず物価がX%の率で上がると皆が予想し、その予想を踏まえて企業や店舗が値札を書き換える、その結果実際にその率Xで物価が上がる、というメカニズムが考えられる。国民に働きかける中央銀行の行為の98%はトークである。人々の予測に働きかけるわけである。貨幣量を増やすと一時的に失業率は減少するが、しばらくすると貨幣量の増加をインフレ予想に織り込むことが完了し、失業率の押し下げ効果がなくなり、失業率は元の水準にもどる。
日本は物価が上がらない状態がかれこれ30年続いている。人々のインフレ予想が世の中を動かすことから、インフレ予想ができない層が増えているのは日本病の原因の一つだ。同じように企業もインフレ予想ができなくなっている。デフレが社会に定着すると、少しの値上げでも顧客が逃げてしまうのではと企業は恐れ、原価が上昇しても企業は価格に転嫁できないという状況が生まれる。それは企業の新商品開発への意欲を奪い、行き着く先はコストカットだ。物価下落自身はさほど大きな問題ではなく、企業が価格支配力を喪失し、それが経済の活力をそぐことこそが重大な問題だ。
Posted by ブクログ
価格の硬直性についての理論的説明が繰り広げられた。メニューコストなのか、情報の制約なのか、、そしてしまいに出てくる日本の価格を上げられない消費者の厳しい目線というカルチャー的なもの。他の会社の価格に共鳴的に営業を及ぼすような価格支配力も失われ、、日本人は必死にコスト削減に命を燃やす、、その時間、付加価値付与に当てればいいのに!!すごく残念な気持ちになったけど、読み応え抜群です。
日本は新しい商品のうみかえで価格を上げている。そうでもしないと消費者の目が厳しい日本!ひいては儲けは賃金にもつながるのに、、。
フィリップス曲線についても教科書を超えた考察で、また勉強を重ねたら振り返って読みたい。
Posted by ブクログ
# 政府・日銀・民草の我々がどのようにマクロ経済を作り出しているか、学べる一冊
## 面白かったところ
- 「物価は地震に似ている」という破天荒な発見と、その裏打ちされた説得
- 財務省や日本銀行が行っているオペレーションの目的が改めて知れる点
## 微妙だったところ
特になし
## 感想
個人的に2022年に読んだ本の中で最も驚きが多かった一冊。読みやすくて面白かった。
「地震と物価のグラフや性質が似ている」なんて突拍子もないアイデアがまず面白い。
地震は頻度・規模が記録され、物価は価格更新が行われた回数(頻度)・価格変動の幅(規模)が記録される。地震は本震から時間が経つにつれて余震の感覚が開き、物価も新品として市場にが出た時からは頻繁に価格が上がったり下がったりする。
地震と言ったらあまりいいイメージではないが、急に、大きく崩してはいけない物価を見る新たな物差しとして使われることになるとは想定外である。
メニューコスト仮説により、まるで談合されたかのように市場価格が動かないことや、弁当の嵩増しから見るインフレなど、割と身の回りのトピックもソフトに取り上げている点も、読んでいて好感を抱いた点のひとつである。
また著者の別の本も読みたい。