渡辺努のレビュー一覧
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感想というより、メモ。
あとがきによると、2%インフレを目標にすべき&長いデフレ環境下で価格決定システムが壊れたというのは異端の主張だったらしい。本流の意見も読んでみたいところである。
・日本のデフレ状況の整理
1990年前半から2000年前半まで不景気(企業の負債と倒産。2000年が倒産のピーク)が続き、2000年前半に春闘終焉が経団連と全国労組組合から出る→賃金上がらない→物価が上がらない→ループ
※コロナによる反グローバル化→海外の賃金物価上昇→日本に反映(インフレするだろうという消費者の受容変化)(2021年からのコロナ明けアメリカ10%インフレとウクライナ戦争2022年開始)
※ウクライナ戦争によって物価上昇したという認識ではないか?(戦争はインフレの口実にならないか?)
※物価が低かった頃への郷愁がある
安倍政権下で官製春闘が行われているが上昇は2.1%で前年比+0.4%でしかない
当時はシニア層と女性の参入で賃金上がらなかった、今はこれ以上上がらない
→【感想】戦争と人口減少によりインフレが進んでいる、ということか。かなり実感に合う。
好循環のインフレになるには、消費者のインフレ予想の上昇と高い賃上げが必要になる
2022年以降のインフレはそれを満たしている
→【感想】個人的には、一般人目線だと好景気じゃないと物価を上げられない、という認識がないか?という疑問がある(賃上げから始まる物価上昇)。インフレに対する意識が全然ついてきていないので、おそらくまたデフレになると思う。
各種データを調べながら読んで気付いたことだが、日本は経済指標について考える時、平均値だけで議論することが多く、中央値のデータがないことが多いようだ。(実質賃金や実質可処分所得についてのデータを調べると、この20年間数値は悪くないが、肌感覚としては手取りや可処分所得は明らかに悪化している)
本書内でも、物価の指標はCPI(販売価格)とPCE(実際に買われた価格)の二つがあるが、経済学者が重視する後者のデータがない旨指摘されている。
政府あるいはそれに準ずる機関において、統計指標の見直しは定期的になされているのだろうか。疑問が残る。 -
Posted by ブクログ
物価の専門家である渡辺努先生の最新作。物価に関しては、誰よりも洞察が深い。著書は読ませていただいているが、毎回、とても良い勉強になっている。
「2022年春以降のインフレは輸入物価が上昇したことから始まった。海外要因が収まれば日本のインフレも沈静化するとの見方が多かったが、筆者は当初から、今回のインフレは単なる「輸入インフレ」ではなく、賃上げなど国内の化学反応から起きているので、持続性を持つと考えていた」P5
「(慢性デフレのはじまり)2002年に経団連が「春闘の終焉」を宣言し、2003年には連合がベースアップの統一要求を断念した。これにより賃上げは事実上停止し、賃金は毎年据え置かれることとなった」p8
「ソ連では価格が存在しないか、あっても需給を反映せず、資源配分が悪化した。日本では価格そのものは存在したが、それが据え置かれ続けたために、資源の効率的な移動が妨げられた。つまり、形は違えども価格メカニズムの機能不全という点で、慢性デフレ期の日本は旧ソ連と同じ問題を抱えていたのである」p13
「来るべき「インフレの時代」とは、価格メカニズムの復活によって経済のダイナミズムが改善する一方で、その裏側として格差の拡大を伴う時代なのである」p16
「慢性デフレは、① 商品の価格が上がりもせず下がりもせず、毎年据え置かれる、② 賃金が上がりもせず下がりもせず、毎年据え置かれる、という2つの特徴を持っている。価格が上がらないので労働者は賃金据え置きを受け入れる」p25
「(価格据え置きと賃上げ要請なし)筆者が知っている限り、こんなことをやっていた国は日本以外ない」p27
「(第2次安部政権の「異次元の金融緩和」2013~)は、インフレ予想も賃上げも振るわず、そのため輸入物価の上昇を国内物価の上昇につなげることができなかった。それに対して、今回はインフレ予想と賃上げの両方が大幅に上昇し、好循環の条件が満たされた」p37
「労働生産性の高まった企業や産業では、賃金が上がり、それが魅力となって企業や他産業に勤めていた労働者をひきつける。一方で、生産性の振るわない企業・産業は賃金が低く抑えられ、そのため労働力を失い、相対的に縮小していく。このようにして、有望な企業・産業で働く労働者の割合が増え、それがその国の平均的な生産性を上昇させるというメカニズムが働く。これが健全な姿だ」p53
「(コストカット経済(後ろ向きの経営)は、活力を失わせる)ミクロで見れば、後ろ向きの経営はその企業の利益を改善させる。しかし、ある企業がコストカットの一環として仕入れを減らせば取引先の企業の売上が減ってしまう。つまり、コストカットによる経営はその他の企業の売上を犠牲にしてはじめて成り立つものだ。誰もが同時に後ろ向きに転じるとなると、おたがいにコストを押し付け合うことになり、誰も救われないという事態に陥る」p60
「(「高いニッポン」から「安いニッポン」へ)慢性デフレが始まった90年代半ば、日本の賃金は世界でトップクラスになった。日本と米国の労働者の賃金を比較すると、日本の方が高かったということだ。内外の賃金で実質化した円ドルレートが過度に円高だったと言ってもよい。そうした中で、このままでは日本企業が国際競争力を維持できないとの認識が財界に広がり、円建ての賃金を引き下げる努力が始まった。これが慢性デフレの始まりだった」p66
「(OECD内での賃金順位)1995年、日本は第2位(1位はスイス)と確かに世界トップクラスだ。2000年2位、2001年5位、2002年8位、2003年11位、以後2桁順位」p68
「2000年代に起きた一連の出来事は「密約」の存在を裏付けている。第1は、2002年3月の「トヨタ・ショック」だ。この年の春闘でトヨタがベアゼロの回答をしたのだ。トヨタの収益は決して悪くなく、ベアゼロに追い込まれる状況ではなかった。しかしトヨタは、この先、国際競争で生き残ることを考えると、これまでのようなベアを続ける余裕はないと労組に宣言したのだ。その宣言は他企業にも波及し、多くの企業がベアゼロへと舵を切った」p69
「賃金の正常化が今後順調に進めば、賃金マークダウン(賃金が本来あるべき水準からどれだけ抑制されているかを示す指標)が解消されるので、少なくともその分は、実質為替レートへの円高圧力は和らぐことになる。それに伴い、日本の賃金と物価が海外との対比で安すぎるという「安いニッポン」現象も是正の方向に向かうと考えられる」p75
「名目為替レートは、①実質為替レートと、②日米の価格比で決まるが、今後、物価と賃金の正常化が進む中で、両方の要因が円高化に寄与すると考えられる」p76
「家賃や理美容代など価格粘着性の高い品目に日銀が重点的に注意を払い、金利政策をそれらの品目に強くリンクさせて判断しているのは理に適っている」p128
「(何もせずに待てばよい(植田日銀))利上げをすれば失業が増える。インフレの沈静化は必要だが、そのコストを誰も払いたくない。だったら、何もせずに待てばよい。待っているうちに不況が来る。そうすれば嫌でもインフレ率は下がる。もしその不況で十分にインフレ率が下がらないとしても、もう少し待てば次の不況が来る。そうこうしているうちにインフレ率は所望の水準まで下がるだろう。この方法であれば利上げで十分なコスト(失業)を払うことなくディスインフレを実現できる」p131
「(関税の影響)関税により国内品への代替が進むと、生産効率やコスト競争力に劣る国内品へと切り替えることにより、経済の資源配分効率が悪化し、その結果、マクロ生産性が悪化する」p136
「物価の上昇が先行し、賃上げが追いつかない状況では、物価の上昇を抑え込もうという方向に政治家の議論が迷走しがちになる。しかし進むべきはそちらではなく、一層の賃上げだ。物価は市場メカニズムに委ねる」p144
「日銀はインフレターゲットを設定しています。物価上昇率の足元の数字または見通しがインフレターゲットを上回ったときに利上げするのが経済学のロジックです」p155
「(消費税の増税)3回の消費税増税の経験から学ぶべきポイントは、売り手は、消費税率が変更されるタイミングを、課税前価格を変更する絶好のチャンスと捉えていたという事実である」p223
「フィンランドでは、消費税の増税では、多くが消費税前価格を値上げさせるが、消費税の減税では、さほど消費税前価格を値下げしない、ことが明らかになっている」p225
「フランスの事例では、消費税減税が行われたとしても、消費者が利得を独り占めできるわけではないという事実(レストランが消費税減税に併せて値上げすることによって利益を増やす)」がある」p226
「(ロケット羽根現象)ガソリンなど、原価上昇時には即値上げするが、原価下降時には、値下げは遅らせる現象がある」p227
「エネルギー補助金のように、「物価を下げる」ためにインフレ税収を使うのは本末転倒」p236 -
Posted by ブクログ
非常に分かりやすい書籍でしたね。渡辺先生の「物価を考える」も目から鱗でしたが、本書はより直近のインフレ動向を踏まえながら、更に簡潔にまとまっている印象です。中でも、物価の将来動向は人の気分が底流にあるという基本的な論調は、個人的にもなるほどなぁと感じる部分があります。
元々デフレに30年浸かった原因は、1990年代日本が諸外国対比賃金が高い一方でクビに出来ない分、賃金を抑える事で、日本独自のシステムが始動したという事実は中々衝撃ですよね。その後、インフレの時代に突入したきっかけ自体は、黒田前日銀総裁の奮闘虚しく、戦争などの外部的な要因でしたが、適度なインフレが今後も維持されるように、政府・日銀・企業が暗黙の了解で動き続けなければならないですね。 -
Posted by ブクログ
渡辺先生の本を読むのは、「物価とは何か」「世界インフレの謎」「物価を考える」に続く4冊目。
オビの「インフレは日本にとって正常化への前向きな変化だ」という言葉に勇気づけられます。
失われた30年はまさにデフレの時代でした。
しかし、2022年春から日本でもいよいよインフレが始まったようです。
賃上げも少しずつ定着しつつあり、物価上昇と賃上げの好循環により、緩やかなインフレのサイクルが定着していくことを期待しています。
確かに物価上昇に賃上げが追いついていないのも事実ではありますが、物価上昇を許容するマインドが定着しつつあるのは、経済正常化にとっては好材料。
慢性的なデフレは経済の活力を削ぐだけなので、経済の局面が変わりつつあることを歓迎したいと思います。
渡辺さんの物価の本は本当に勉強になります。
経済については、メディアに登場するエコノミストやコメンテーターの見立ては信用ならん部分が多く、為にする悲観論ばかり垂れ流す人たちも多いので、自分なりに勉強して判断力を養っていきたいと思います。 -
Posted by ブクログ
世界と日本に起きているインフレーションについて、両者の相違点を含めて、豊富なデータを元に考察された書。
素人にもとても分かりやすい語り口で、行動変容と同期、将来への期待と実現のスパイラル、物価と賃金に係る企業と労働者の間の鶏と卵の関係など、つくづく経済は人々の気持ちと行動に大きく影響を受けるんだなぁ〜、と感じました。
また、中央銀行が取りうる政策手段が需要サイドに働きかけるものであるのに対し、目下の物価上昇が主に供給不足(サービス経済からモノ経済への移行、労働力不足、脱グローバリゼーション)に起因しており、過去50年間の政策を十分に活かせない状況にあることも、よく理解できました。
刊行された2022年から4年が経ち、実質賃金は未だにマイナス圏で、個人的には生産性の向上に伴う賃金上昇に至っていないのでは?と感じている今の状況をどう理解し、処方すべきか、続きが気になりました。 -
Posted by ブクログ
かのオイルショックの際、狂乱物価と称された物価高に国民は悩まされました。
では、その狂乱物価の原因は何か?
実は、原油の高騰であるという説の因果関係は否定されており、真相は、日銀による貨幣の過剰供給であり、市中にお金の量が増えることによって希少性が下がったため物価が上がった、ということだそうです。
しかしその後、物価はバブル景気の際にもさほど上昇せず、バブル崩壊後の90年代以降、日本は長い長いデフレ状態に突入し、物価は上がらない、ということが常態化してしまいました。
インフレ、デフレを語る際、そして経済を語る際に物価は必須なのですが、物価が決まるメカニズムは非常に複雑です。
各国の政府や中央銀行は物価をコントロールしようと様々な策を打ち出しますが、なかなか思惑どおりにはいきません。
人々の気分や予想にも左右される様はまるで生き物のようでもありますが、物価を知ることは経済を理解することにもつながり、本書はその理論を丁寧に説明してくれる良書です。
さて、慢性デフレの状態にあったわが国ですが、賃金が上がらなくても物価が上がらなければそれでいいじゃないか、という心理状態も長く続いてきたようです。
では、一体デフレの何が悪いのか?
デフレ下のわが国にあっては、消費者は値上げを許容せず、商品価格は据え置くが減量化や小型化で対処するというステルス値上げが半ば常態化しています。
すなわち、デフレ下での企業は、商品開発などの前向きかつ攻めの経営を行うのではなく、コストカットによる埋め合わせなどという「後ろ向きかつ守りの」経営に注力せざるを得なくなります。
そうなると投資やイノベーションも縮小し、経済全体の活力が損なわれてしまう、というのがデフレの恐ろしさです。
このことは元FRB議長のグリーンスパン氏が指摘していることであり、そのために氏はデフレ回避に全力を注いだのでした。
本書が世に出たのは2022年ですが、実はその頃からインフレの気配が少しずつ感じられてきたようで、ようやくデフレからの脱却も見えてきました。
賃上げと物価高によるゆるやかなインフレが継続し、日本経済が活力を取り戻すことを期待しています。 -
Posted by ブクログ
黒田日銀総裁によるアベノミクスの金融政策、異次元金融緩和をもってしてもデフレ脱却ができなかった日本社会。しかし、パンデミック後の2022年から、輸入資材の高騰や人手不足による人件費増のコストを企業が価格に転嫁し始め、賃金も春闘により3年連続でベースアップが実現するなど上昇傾向が見られ、デフレからインフレへの転換が確認されたのではないかと著者は考える。ただし、長きにわたり物価も賃金も上がらないことが常態化し、デフレマインドにどっぷりと染まってきた日本社会では、再びデフレへと歯車が逆回転する恐れがあるという。それは今後の日本社会にとって何としても阻止しなければならないと著者は主張する。
では、そのためには何が必要か。インフレ研究における日本の第一人者である著者は、インフレが日本社会に与える影響、インフレに対する日銀の考えと取るべき政策、デフレ脱却には物価上昇に見合うだけの賃上げ実現が重要であること、デフレからインフレに転換した現時点で政府が行うべき、またチャンスとして行える財政政策、最近の米価高騰の要因分析、黒田日銀総裁がデフレ脱却のために試みた政策とその効果が出なかった理由など、様々な観点からデフレからインフレへと変わる日本社会の様相をわかりやすく論じている。
昨今の経済に関する多くの著書が、著者の立場からのポジショントーク的なものや特定の側面のみを切り取ったフレーム的内容のものであり、何が真実なのか判断に迷うものが多い中、本書は王道の経済理論により大きな枠組みでインフレ・デフレを論じており、大変勉強になる一冊である。