丘沢静也のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
帯に謎解きクリエイター東大生、松丸亮吾さんからの「僕を算数好きにしてくれた本!」との推薦のことば。小学生の親として、ついつい買ってしまった。
著者は数学者ではなく、ドイツの詩人、エンツェンスベルガー。子供の本から評論まで多彩な分野の文筆家。ロートラウト・スザンネ・ベルガーのかわいい挿絵とともに、主人公のロバートの夢の中の「数の悪魔」が数の秘密について、お話をしながら分かりやすく語ってくれる。「1の不思議」「素数の秘密」「パスカルの三角形」「ピタゴラスの定理」「フィボナッチ数」「オイラーの公式」「ゴールドバッハの推測」「エラトステネスのふるい」「無理数」「虚数」「二重ピラミッド」「等比級数」「等差級数」その他色々な数学の原理を分かりやすく解き明かしてくれる。動物の数が増えていくのも、木の枝が分かれていくのも、雪の結晶の形にも数学的な秘密がある。宇宙が無限大であるのと同時に針の先ほどのホコリの中も数え切れないほどの粒が詰まっている。この世の中は数学の不思議でいっぱいだ。
我が家の小3には途中で「数の悪魔」は睡魔になってしまった。帯には「さあ、読んでみよう10歳からみんな」と書いてあった。少し早かったみたいだ。確かに、「数学」を始める一歩前の小6ぐらいの子が読むと、数学に楽しく取り組めるようになると思う。
おばさんは悪魔さんのお話をゆっくり聞けずに最後のほうは結構飛ばし読みしてしまったが、スポンジみたいに柔らかな心と頭を持っていたときに出会いたかった本だ。
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Posted by ブクログ
本書は1949年に出版されたブレヒトの『暦物語』を2016年に光文社の古典新訳文庫として刊行したものだ。1898年生まれのブレヒトはドイツの劇作家、演出家、詩人である。彼は1917年、19歳の時ミュンヘン大学に入学する。主に演劇のゼミに参加していた。翌1918年、20歳の時には第一次世界大戦終了までの1ヶ月間をアウクスブルク陸戦病院で衛生兵として働く。その後1933年まで、ドイツにて多くの劇作品や詩を発表する。この年、ナチスが政権を掌握した後、北欧に亡命する。1941年にはさらにアメリカへ亡命する。そして1949年、第二次大戦後再びドイツに戻って来る。その年、出版されたのがこの本だ。全部で17編、短編が9、詩が7、小咄集が1つだ。『暦物語』というタイトルは民衆のために暦に書かれていた「おもしろくてタメになる短い話」(本書288頁)から来ている。冒頭の『アウクスブルクの白墨の輪』は最後まで読めば、ドイツ版の大岡裁きだ。しかし、30年戦争という戦時下の出来事、侵略と略奪から話が始まる。その次の『ユダヤ人相手の娼婦、マリーザンダースのバラード』はまさにブレヒトが亡命し、第二次世界大戦の契機ともなったナチスへの皮肉だ。その後、仏陀やベーコン、カエサル、ソクラテス等の歴史上の偉人たちが登場する話も一見、ちょっとした話(つまりは暦物語)に見える。しかし、以下のフレーズはそんな短編から抜粋したものだ。「資本という爆撃機の編隊」(本書60頁)、「異端審問所」(本書93頁)、「軍需産業は熱に浮かされたように戦争の準備をしている」(本書134頁)、「戦争に勝てば、下の人間までがしばらくは好戦主義者になる」(本書211頁)。こうしたフレーズが当時、どの程度のインパクトのある言葉だったのか。ブレヒトの生きた時代は、二つの大戦と亡命の日々だった。彼にとって当たり前だった生活を反映しているのか、ナチス批判、大戦、体制への批判や皮肉が頻出する。平和な現代と約70年という時代を隔てたズレ、つまりは「暦」のズレ。そのズレをちょっと考えるには、本書はちょうどいい。