丘沢静也のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
設定だけは誰もが知る不条理作品である「変身」。筋書きは全く知らなかった。
虫になった初日朝、アポありのセールス先への遅刻の心配をするところから始まり、徐々に視力やらが虫化し、そのうち家族からも疎んじられ、父親から林檎を投げ付けられたり、お手伝いさんに殺されそうになったり、とひたすら虫ケラ化していく。最後は、食事というかエサも貰えず餓死し、家族は開放感に酔う。
描写を信じる限り、虫は、足多めの巨大ゴキブリ。虫の世話で生活に困窮した家族が間借り人を三人引き入れるも巨大ゴキブリを目にされて契約を破棄されたのは、そりゃそうだろう。
もうひとつの表題作「掟の前で」は僅か3頁の掌篇ながら、名作と名高いよう。父にダメ出しされ続け、人生を思う存分には生きられなかった自分のことを寓話的に書いた作品のようだ。人性臆しては勿体無い、ということか。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ風刺を感じるトガッた小説だった。
判決 では介護問題?
変身 では障がい者問題
アカデミーで報告する では動物愛護の問題
掟の前で ではグズグズ生きて死ぬ前に後悔する人間
翻訳本の割にスルスルと読めたし、ちょっとSFチックな題材のチョイスにワクワクを感じた。
でも内容を真に理解するのがすごく難しい。というか全然理解できてない笑
判決 は、ペテルブルクの友達が出てきた意味がよくわからなかった。なんで主人公が自殺したのかも。
変身 が1番面白かったが、表現がちょっとグロテスクな上に、問題に対する出口のなさに心が痛くなる。
アカデミーで報告する は正直不完全燃焼感を感じた。サルが人間の知能を手にするという題材は面白かったが、そこからもっと話を広げてほしかった笑 著者の伝えたいことはそこにはないかもしれないけど笑
掟の前で は寓話って感じ。 -
Posted by ブクログ
砕けた言葉が使ってあるけど、すっと理解出来ない。まるで詩を読んでいるようだ。しかも、どちらかと言うと売れない詩人の。。
あのニーチェの、あのツァラトゥストラ、という予備知識、先入観無しに読んだら、多分駄作と思った気がする。
気に入った、あるいは、えーっと思ったフレーズはこんな感じ。
P26
俺が愛するのは、サイコロで自分にいい目が出ると、恥ずかしく思って、『あれっ、いかさまやっちゃった?』とたずねる人間だ。
P133
女はおもちゃであれ。まだ存在しない世界の美徳に照らされた宝石のように、純粋で上品な、おもちゃであれ。
お前たちの愛のなかで、星の光が輝いてあれ!『超人を産みたい!』が、お前たちの希望であれ。
P145
しかし、余計な人間たちでさえ、死ぬときにはもったいぶる。実が空っぽのクルミでさえ、音を立てて割られたい。
P171
君たちには、神というものを創造することができるか? できないなら、どんな神のことも語るべきではない。しかし超人を創造することなら、できる。
P182
以前、悪魔にこう言われた。「神にも地獄がある。それは、人間を愛していることだ」
そして最近、悪魔がこう言うのを聞いた。「神は死んだ。人間にたいする同情のせいで、死んでしまったのだ」
-
Posted by ブクログ
ネタバレニーチェ。皆さん読んだことありますか?
実は私は初めてででありました。
何となく中二病、のイメージがあったんです。自意識やプライドが高く、劇的で劇画的。著作のなかの「神は死んだ」「ルサンチマン」などの言い回しは、哲学に関心のない方でも耳にしたことはあるのではないでしょうか。
ただ、最近はどうでしょうか。ニーチェの研究者ってのはあまり聞かない気もします。どんくさいみたいな雰囲気なんでしょうか。殆どイメージで語りますが、哲学の専攻でも英米倫理学とか、経済学とのつながりでJ・S・ミルやベンサム、A・スミスなんかはまだ読まれているような感じがあります。分からんけど。
・・・
そんななか、今般縁あってニーチェの作品を読む機会を得ました。で、再びですが、ニーチェってどうなのよ、と自らに問えば、こう答えたいと思います。
文章は素敵、何となく面白い。でも、哲学的にはよくわからん。
はい、これであります。
・・・
取り敢えずよかった点から。
本作は、著者が発狂し入院させられる前で、最後の脱稿した作品となります。あたかも自分が再び筆を執ることはないかと悟ったかのような、自らの作品や思想の振り返りをしているのが特徴になっています。
その意味で、本作はニーチェ自身による過去の著作の回想録のような構成になっています。かつてどのようなことを語り、どのようなことを考えていたのかは、本作を読むことで概ね(概ねですよ)理解することができるのではないでしょうか。ドイツ人やドイツ的考え方の否定、常識という価値の破壊・転換、等々であります。
いみじくも裏表紙に「ニーチェ自身による最高のニーチェ公式ガイドブック!」とありますが、いいえて妙ですね。表現はなんとも軽いのですが笑。次の作品を手に取るかどうかを決めるにはもってこいの、ニーチェ作品群を見下ろす恰好の展望台でありました。
・・・
また、文章が非常に美しく、アフォリズムは鋭さの非常に印象的でした。批判はまさにナイフのように鋭く容赦なく周囲をこき下ろし、表現も二元論的(善と悪、死と生等々)なものが多く、このことからも力強い文章になっていたと思います。読中ふと感じたのは、哲学というよりもむしろ文学、という印象でありました。
・・・
そして、哲学的な意味なのですが、これははよく分からなかったです。ニーチェって何が言いたかったのか。
可能性の一つは、「クレタ人は全員嘘つき」と語るクレタ人のごとく、眼前に問題を現出させ、さあ君たち自身がニーチェを判断しなさい、と言わんばかりの実存的投げかけを演出しているのか、と。分からないけど。全体を通じてなんだか禅問答のようでもありました。
あるいは、言葉を尽くしても最終的に人は分かり合えないことを、身をもって・作品をもって表そうとしているのかもしれません。きっと俺のことわかってくれる読者なんて殆どいないんだろうなー、などと思いつつ書いていたのかな、と夢想した次第です。
・・・
ということでニーチェの著作でありました。
改めてですが、なかなか面白かったですよ。文章も素敵で。
そうそう、加えて一点申し添えると、訳が自然で読みやすかったです。ドイツ語をかつて勉強した身としては、関係節でだらだらと続くドイツ語の読みづらさは、翻訳でも「そのまま」残っていることが結構あるのですが、今回そのような困難はありませんでした。さすが新訳ですね。