野口百合子のレビュー一覧

  • 嵐の地平

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     久々に、主人公ジョー・ピケットに直球勝負で攻撃をかけてくる手強い敵手の登場。ここ数年のシリーズ作品中、最もピケット・ファミリーがピンチに襲われる強編に驚かされる一作。

     ロデオスターのダラス・ケイツを追って家出をしてしまっていた娘エイプリルが、意識不明の重症状態で発見され、救急病棟に運び込まれる。静脈麻酔薬プロポフォールで鎮静・昏睡の状態が始まる。

     キジオライチョウの大量殺戮事件に直面していた猟区管理官ジョーは、エイプリルの事件を聴いて、シリーズ中でも最大と言えるべき怒りを爆発させる。キジオライチョウの調査団員の高圧的態度に対しては冷徹な疑念を走らせながらも、エイプリル事件の容疑者に対

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    2022年07月29日
  • 発火点

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    ネタバレ

    いやー、面白かった。正直であろうとするジョー。薄汚いマクラナハンや異常者バティスタなど、多彩な人物が登場し、物語を盛り上げる。最後は悪魔の化身、ネイト! 素晴らしい! この存在感はどうだ! へなちょこ暗殺者(灰色男)を懲らしめてやってくれ、ネイト!
    人間の邪悪さ、忍耐強さ、人を信じる強い心、親子の情愛、何度目頭が熱くなったことか。傑作です。

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    2022年07月28日
  • 嵐の地平

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    〈ジョー・ピケット〉シリーズ。ジョーの養女エイプリルが殴打され放置されるところから始まり、さらにジョーの友人ネイトも撃たれる。この二つの事件に繋がりはあるのか。ジョーや家族の怒りや不安とともに進む。家族を想い行動するジョーの真っ直ぐさと無謀さは相変わらずでそこが魅力でもあるしそういうところが出れば出るほど面白くなる。

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    2022年07月06日
  • 発火点

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    初読の作家さん。シリーズものと知らず、読んだのですが思いがけずグイグイ引き込まれる面白さでした。真相に深い愛情を感じました。シリーズをこれまで全く存じ上げず、損をしてた気分です。これから取り戻したいです。何から読んだら良いですかね?年の瀬に良い出会いでした。楽しみが増えました。

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    2021年12月28日
  • 越境者

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     前作『発火点』は、全編に渡るアクション、またアクション。大自然を舞台に、闘いの大盤振る舞いとでも言いたくなるようなページターナーぶりを見せてくれた。

     本作は、復活するシリーズ・キャラクターたちというサービスを見せながら(これだけでドキドキの期待度!)、家族物語の側面(娘二人+養女一人の青春ドラマ。そして彼女らに関わるミステリアスなキャラクターの出現などなど)周辺リスクも取り上げつつ、常に何かの、誰かの、ターニング・ポイントを予感させつつ、ジョー・ピケットとその家族を、一筋縄ではゆかない宿命に向かい合わせてゆくのである。

     本書は、ワイオミング州内全域で疑われる暗殺組織とその本拠地とされ

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    2021年08月01日
  • 越境者

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    ジョー・ピケットシリーズ14作目

    前作で猟区管理官の職を辞したジョーだったが、知事に雇われ失踪事件を調査しに謎の富豪テンプルトンの支配する地区に向かうことになる。

    いつもトラブルのど真ん中にいる主人公…現代版ウェスタンとも言われたりするこのシリーズ、今回はほぼそれを地で行く展開

    敵地のど真ん中への潜入捜査…というより流れ者のカウボーイが、街のルールに関係無く正義を貫いていく感じです(ウェスタンの様にすぐさま決闘となるわけではないですが…)

    なるべく傷つく人々が減ることを願い、苦境の中でも常に解決に向けて尽力していくジョー、過去二作かなり追い込まれ法を超えた世界で再び活動をし始めた友人ネ

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    2021年07月31日
  • もう耳は貸さない

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    我らがバック・シャッツ、おかえりなさい。もう会えないかと思っていたので嬉しさもひとしおです。
    体や認知機能の衰えは否めないけれど、相変らずの毒舌ぶりが子気味良い。身内にいたら嫌かもしれないけれど好戦的なところがたまらなく好きです。そして理解ある奥様ローズに頭が下がります。次作が予定されているとのこと、楽しみです。
    「おれたちにできるのは、老いぼれすぎてもう闘えなくなるまで、信じるもののために闘うことだけだ」

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    2021年05月01日
  • 発火点

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    え!こんなことで!と思わざるを得ないほど、発端は些末、それが人は死ぬし森林は消滅する結末に。そのスケールには驚かされます。ミサイル搭載の軍用ドローンまで登場し、後半はスペクタクル映画を彷彿とさせる展開。場面が目に浮かび、息つく間もないほどのめりこめました。広大なワイオミング州を舞台に、厳しい自然の中で正義をまとい行動するピケットに惚れ惚れ。かっこよすぎです。アンダーウッドが生き方を語るシーンも、こういう人は多いんだろうな、と思えました。次作がありそうで楽しみ。本作から読んだので、ピケットの頼もしい友人ネイトとの前日譚も紐解きたいです。

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    2021年04月03日
  • 発火点

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    ネタバレ

    ジョー・ピケット猟区管理官シリーズ第十二弾。

    何かいかにも殺されそうな連邦の役人たちが出てきたなと思ったら、
    あっという間に殺されてしまった。
    次女の友達家族がその事件に巻き込まれる。
    といっても、今回はジョーの家族が巻き込まれていないので、
    落ち着いて読めた。

    ファーカスは小狡くて全く持って「いい奴」ではないが、
    こんなに何度も登場したせいか、
    毎回ひどい目に遭うせいか、
    ちょっと同情しても良い感じがして来た。

    一方、元保安官が悪事を極めて、
    とうとう死んでしまったのには、
    このシリーズの一つの区切りを迎えた気がした。

    山火事の中を逃した馬のトビーが無事で良かったし、
    ジョーが急流下

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    2021年02月04日
  • 発火点

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    講談社から創元推理文庫に出版社が変更となったが、シリーズ翻訳が続いてよかった!本国では出版されていても日本での出版が終わるケースが多いのでこれで一安心。

    今回も実際にあった土地収用に関わる事件をベースとしているようだが、ストーリー展開は比較的単純。

    しかし、そこはボックス作品だけに陰影のあるキャラが多彩に登場(登場人物一覧の多さに驚く)するだけでなく、お馴染みのメンバーも揃って後半になるほど加速のつくストーリー展開は見事。

    いつもながら会話に味があり、ユーモラスな味付けもある一方で男同士の切ないまでの信頼関係、そして友情が胸を打つ。
    講談社より電子出版しかされていない『逃亡の峡谷』を読ん

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    2021年01月17日
  • 発火点

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    ネタバレ

    全くノーマークだった、C・J・ボックスの「猟区管理官ジョー・ピケット」シリーズ。これまた、なんで今までアンテナに引っかかってこなかったのか不思議。俺のアンテナの感度ってまだまだ穴だらけやわぁと思う。

    実に面白い。大自然の描写、官僚どもの小人物こすさぶり、田舎親父たちの骨太さ、主人公一家の家族愛…どれもこれもが実に読ませる書き方で、そういう細かい部分を丁寧に大切にしながら、物語の航路は時に大胆に舵取りする。

    前半のジワジワくるストレス「あぁ、これアメリカカントリー版池井戸潤かなぁ」、と思いきや、タイトル曰くの発火点を迎えてからの疾走感。メリハリの利き方よ!

    筋書き追うのにハンデにはならない

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    2020年12月13日
  • 発火点

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    2年ぶりの猟区管理官シリーズ新巻につい採点が甘くなるが、事情により出版元が講談社から創元社に変わったけど、この原著にしても2013年刊行ということでそもそも訳出に時間がかかっているようで…
    未訳だったシリーズ第二作が講談社の電子版で昨年刊行されていたようで、本作のハイライトにもなる峡谷越えで繋がりがあるから、早く読まなくては。

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    2020年09月06日
  • 発火点

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     昨年『鷹の王』を<このミス>一位に投票したのは、大好きなこのシリーズの頂点を極める作品と感じたからのこと。しかし続く本書も、一歩も引かぬ快作であることに、ぼくは驚く。そもそも、どの作品も、高水準のエンターテインメントとして面白く読めると同時に、大自然をバックに愚かでちっぽけな人間たちのなすあらゆる悪と闘う、善良な猟区管理官、ジョー・ピケットとその家族たちへのキャラクター愛が素敵なシリーズでもある。

     ジョーは、どこにでもいる地味なキャラに見えながら、恐ろしいほど堅物で、徹底した頑固者で、ワイオミングの荒野を守る仕事を愛してやまない。銃は得意ではないが、勇気と良識は人一倍持ち合わせている。家

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    2020年07月14日
  • 発火点

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    猟区管理官ジョー・ピケットシリーズ
    第13作目
    版元を変えて、シリーズ続刊!
    (新シーズン開始と捉えてもいい内容なので、この本から楽しめます。)

    いゃあ〜面白かった!!

    ※あらすじは省略

    愚直な猟区管理官(現代版のカウボーイ)ジョーが、地域で起きた事件を追う。

    多分、知らないだけで他にもこういうシリーズはあるのだろう。
    自粛前の読書ペースが戻るほど夢中になって読んでしまったので
    「何故読んでしまうのか?」
    を考えました。

    ・主人公ジョーの魅力
     銃は下手、支給された車の大破記録の保持者、ジョークによる失言が多い(増えて来てない?)
     愚直で誠実な男、どの人物よりも「まともな正義」を持

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    2020年07月03日
  • もう年はとれない

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    "主人公は87歳の元殺人課の刑事。ユニークなヒーロー。孫と一緒に過去の落とし前をつけに行く羽目になる老兵。アルツハイマーにおびえながら、毎日「忘れたくないこと」を記録帳に書いている。若かりし頃のスタイルで借金取りの胴元に殴りこみにいっても、相手に傷一つ与えられない。会話の駆け引きもユーモア。
    こんなじぃさんに私はなりたい。"

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    2018年11月06日
  • ガラスの靴(新潮文庫)

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    いわゆるシンデレラの物語です。グリム童話のシンデレラは最後が怖いけど、ファージョン版は痛快で本当にうっとりときめきます。こっちの方がいいです。

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    2017年06月02日
  • もう過去はいらない

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    1作目の方が評価が高いようだが自分は断然本作の方に軍配を上げたい。本書は介護が必要な歩行器を使った老人のアクションものというよりユダヤ人問題の視点で読むとぐっとその内容に重みを感じる。米国のようなよそに比べユダヤ人が暮らしやすいと思われた地域でもこれほど差別と闘わなければならなかった。昨今米国でもユダヤ人墓地が荒らされるなどの事件が続いており、まだまだ闇は深いのだと思わされる。

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    2017年03月02日
  • もう年はとれない

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    バック・シャッツ最高!!なんて痛快なんでしょう。いうこともいちいち格好いいし笑えるし。ローズは大変かもしれないけどある意味尊敬する。家族にいたらいいなとも思うけどやっぱり孫としてがベストかなあ?
    もうホントに止まらない。読み進めるしかない。そして残りページがどんどん減っていくことに一抹の寂しさを覚える感じ。こういうの久しぶりで嬉しかった。続編も期待!
    タイプは違うけどエーランド島シリーズのイェルロフも大好きです。自分なんてまだまだ頑張りが足りないなと少し元気づけられる面もあって。

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    2016年05月09日
  • 7は秘密

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    「ニューヨーク最初の警官」の第2弾。
    「ゴッサムの神々」の続編です。
    1作目の勢いと熱気は健在。

    ティム・ワイルドは、小柄ながら頭の切れる元バーテンダー。
    兄のヴァルは大柄で町の顔役的な男。創設されたばかりの警察の分署長となっています。
    そのヴァルに強引に警察に入れられ、腕を証明したティムは、殺人事件捜査を期待される立場となっています。

    1846年の真冬。
    黒人奴隷問題で、アメリカは南北に意見が割れていました。
    解放された黒人は北部では自由だが、逃亡奴隷は南部に引き渡すことになっています。
    黒人の血を引く美しい女性ルーシーが訴えにやって来ます。悪辣な奴隷捕獲人に家族をさらわれたと‥
    兄の家

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    2016年01月25日
  • ゴッサムの神々 下

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     面白かった!
     ティムとヴァルの確執(というか、一方的にティムがヴァルを憎んでいた)は、成る程、そういう事だったのか。
     そしてその、真相が判った後のティムの心境の変化、これは上手いなぁ。

     これを書いたのが男性作家だったら、とてもとても嬉しかったろうと思う。
     女性の性に対して、この話のような見解を持つ男性が増えて欲しい。

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    2014年03月20日