飯田晴子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
6月6日は 氷室冴子 さんの忌日、藤花忌。
2008年、51歳。小説家として熟成されていく、まさにこれからという年齢でした。
『銀の海 金の大地』を、私はリアルタイムでは読んでいません。
「転生ファンタジー」という副題の趣旨もわからないまま、最終巻まで読み終わりました。
この巻のあとがきは1996年に書かれていて、まずこの作品が未完であることが確認されます。まだ「真秀の章」が終わったばかりなのです。
そしてここで、作品全体に関わる「転生ファンタジー」という構想の意味も明かされます。
これから読まれる方もいらっしゃると思いますので詳細は避けますが、氷室さんが用意していた壮大な構想には驚かされました。
最終巻には、最後の章に加えて二編の番外編も収録されています。
真秀と真澄だけではなく、大和という国そのものを、著者が俯瞰して創作していたことも伝わってきます。
新装版の解説は 萩尾望都 。
交流の長かった萩尾さんだからこそ知る、この作品の構想についても触れられていました。
吉屋信子 が少女小説から歴史小説へと展開していったように、氷室さんもまた、この先に多くの物語を抱えていたのだろうと思いました。
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Posted by ブクログ
中毒し佐保に留まっていた大王は回復に向かっていた。だが、大王とともに倒れた王子たちそして彼らを見舞う名目で訪れた豪族たちは佐保に留まったまま。
何より、真秀と真澄――滅びの子の訪れに、佐保の人々は慄いて……。
その頃、佐保から姿を消した佐保姫は、真秀の力で素性を偽り、自らの意志で大王不在の王宮に残っていた。真秀と瓜二つの佐保姫に出会い、驚愕する歌凝姫、そして須久泥王。
王宮で、これまで知ることのなかった人の悪意に触れた佐保姫は戸惑い、それでも真秀を慕う真心を失わないのだが……。
ついに佐保の長老・穂波は、佐保一族が生きのびるため、「滅びの子」たる真秀と真澄を殺そうと決意する。
今や誰も叶わぬ強大な霊力を顕した真秀を倒すためには、佐保の霊威そのものである「那智」の力を使うしかない。そして、「那智」の憑依坐として選ばれたのは、誰よりも佐保彦を、そして佐保一族を愛する男・速穂児だった。
真秀と速穂児の死闘の火蓋が切って落とされる。人の力を超越した凄まじい霊威がぶつかり合い、誰も二人を止めることはできない。だがその時、御影の口から思いがけない真実が明かされて――!?
オレンジ文庫紹介文随分長いわ
なるほど、佐保彦と佐保姫の存在そのものが揺らぎますね。
ラストへ向かっている感じがします。
ここまできて この古代社会に霊威が多大な影響を及ぼしていることが描かれる。
そして 著者あとがきで この巻の発売時期が阪神淡路大震災と重なっている事を知ります。古代 巫女 憑代 夢見 万葉呪術と 生活に密着していたように描かれていきます。震災の多い日本では 人智の及ばない出来事の多さは より霊的なものに傾倒していったのかもしれません。
新装版あとがきは 須賀しのぶさん。須賀さんもコバルト出身のようです。
さすれば、当然の氷室ファン。その中でも 過酷な運命の中戦う 真秀への思い入れは強そうでした。
とりあえず 最終巻を楽しみます -
Posted by ブクログ
めざめたとき、体は動かなかった。
波美王の手で攫われ、何者かに拘束された真秀。誰が、何のために自分を攫わせたのか。目的がわからぬまま必死に逃げ出そうとする真秀だったが、依頼主の妹・小由流とともに墳墓の中に閉じこめられてしまう。互いを励まし合いながら、少しずつ友情を育んでいく真秀と小由流。その背後では、佐保一族を利用しようとする大和豪族たちの駆け引きが激化していた――。
オレンジ文庫紹介文
主人公の少女真秀は、その出生、父親は誰であるかが 知れると豪族達との婚姻を取引に使われることになる。
彼女の望まざるに関わらず、拉致、そこからの逃亡、戦闘。まだ物語が始まって 半月ほどしかたっていないのに 精神も行動力も強くなっていく。
そして、今回の解説高瀬隼子さんも書いていらっしゃるが、コバルトらしからぬ
苛烈で苦しい展開が続く。
特にこの巻は 真秀が自身も返り血を浴びるほど。
高瀬さんは10歳で この小説を読み始めたと書いているが、おそらく早いほうだとは思うけれど コバルトは小学校高学年あたりはしっかりターゲット。
この大和の時代の 政略結婚と許されぬ恋愛と掠奪。
みんな 読めてたかのかな。 -
Posted by ブクログ
真澄と御影のため薬草を採りに出た草原で、真秀は刺青をした謎の男に捕らえられた。彼の名は波美王。暗殺を生業とする闇の狩人だった。彼は、真秀の佐保彦への思いを「禍つ恋」だと忠告して姿を消す。一方、佐保彦の参謀・燿目は、佐保彦の命に従い、「滅びの子」である真秀たち三人を殺そうとしていた。突然燃え上がる炎に襲われた真秀と真澄。それを見た佐保彦は…!?
オレンジ文庫紹介文
氷室さんの 「銀の海 金の大地」は、古事記がベースとされていますが、
古事記に書かれなかったその周りの世界、
地方勢力、中央との政治的な繋がりと
実態を模索しているみたいですね。
国造りの後、王族は各地を治めて 万葉呪術と思われるような特殊能力も投入。
だけど 当時のコバルト読者のための恋愛設定も追加投入。
すっかりファンタジーかと思えば たたら製鉄等 その時代設定に現実感も忘れない。まだまだ中盤にさしかかたばかりですが 早く読み終わって 古事記に再挑戦したいです。
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Posted by ブクログ
復刊につき約30年ぶりに再読。
古代日本が舞台。様々な一族が出てきて、姫や王子達の恋があり、男女の出会いが国の行く末を狂わせてゆく。
丹波の将軍美知主がかっこよすぎる。彼は佐保一族を手に入れて、自分の一族が大和という一つの国にまとめあげてみせるという熱い野望があり、目標達成の為には手段を選ばない。その知性と冷静な判断力。10代の頃にこの物語を読んでいた時は、主人公真秀の恋の行方に気を取られて美知主の魅力に全く気づいていなかった(笑)
6巻で波美の一族、波美王の言葉で「おまえは真秀という名の王国の、ただひとりの王だ。王なら、その領土をいのちがけで守れ。けっして、人にあけ渡すな。だれの支配も許すな。王にふさわしいことをしろ」という言葉が出てくる。この言葉は忘れられない。銀金シリーズが連載されていた90年代は10代の女の子達に向けられた言葉だったかなと思うけれど、解説で三宅香帆さんが「この国でーもはや性別は関係なくなったかもしれないがー男女ともに誰かの言うことに「従うことだけがすべてだと思い込ん」でいる人はやっぱり多い。」と書かれていた。令和になった今は男女問わず響く言葉ではないかと思う。
こんなに面白い話だったんだ、氷室冴子さんって素晴らしい作家さんだったんだと改めて感じました。未完ですが真秀の章としては「完」となっており、切りのよいところで終わっているので、これから初めて読む人にもおすすめしたいです。
1巻から11巻まで月に1冊ずつ書店で購入し、学生の頃に戻ったようにワクワクした楽しい1年でした。集英社さん復刊して下さってありがとうございました。 -
Posted by ブクログ
真秀の成長がより強く感じる巻。運命に翻弄されるしかない時代。自分の生まれと血筋によって運命が決められる世界。そんな中にあって、波美王の、自分の中にある王国の誇り高い王になれというメッセージは響いた。氷室冴子が少女たちにどのようなメッセージを送っていたのかがよくわかる言葉だと思う。
真秀だけではなく、そのほかの女性陣も印象的だった。歌凝姫、小由流。お互い間接的に絡んでいて、一人の男も視点が異なれば見える姿も異なってくる。群像劇的な様相が強くなってきた本作だけど、何が真実かはわからないが、自分の見えている世界しか信じることができないという波美王の考え方が潔くて好きだと思う。