あらすじ
佐保彦の腹心・燿目が、真澄の霊力をその身に受け、無惨に焼け死んだ。真秀は燿目を死なせたのは自分だと我が身を責めて苦しんでいた。そんな彼女に近づいてきたのは、新たな佐保彦の伴人・月眉児。彼女のたおやかな容姿と優しい言葉に真秀は慰められ、その幻影を生む力が燿目と再会させてくれたことで、月眉児に心を許そうとする。だが、それは月眉児の企みだった。策謀を見破った波美王の手で、真秀はその場から助け出される。だが、波美王は突然真秀を息長から連れ去ってしまう・・・。何者かが、波美の一族に真秀の誘拐を依頼していたのだ。真秀が誘拐されたことを知った美知主らは、水面下で新たな駆け引きを始める。一方、淡海に留まる佐保彦のもとには、真秀を誘拐した犯人からある伝言が届けられ・・・。あとがきイラスト&メッセージ、飯田晴子。解説、青山美智子。古代転生ファンタジー第5巻!
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Posted by ブクログ
登場人物が増えるごとに面白さが上がる。
美知主も相当の手だれなのだけど、それを上回る波美の一族の強者のオーラがすごい。
佐保、息長の思惑も引き続き見逃せず、ストーリーは群像的な形になってきた。
真秀を救い出してしまった佐保彦は、自分の行動に戸惑い、仲間からも理解されず…。
八方塞がりのようになっているのも居た堪れなかった。
真澄に対しても感情が変わってきているし…。
古代の人々は、これだけ相手を思いやることができても、自分の立場からそれを抑制しなきゃいけない…。
真秀は真秀で、佐保彦を忘れられないし。
好きな気持ちすらまっすぐに認められない状況の二人が、かわいそうだった。
周囲は国のことで動いていて、そこももちろん面白いのだけど、主人公二人はしっかりと少女小説らしい、心理的な変化を見せてくれる。
テーマは古代ファンタジーだけど、やっぱり、真秀や佐保彦がもがきながら成長するところは、思春期の少女たちの心を掴んだ所以だと思った。
氷室冴子のあとがきにもあったように、暗いけどパワフル。こんなにも激動の人生を送りながら、しっかりと地に足をつけて生き抜こうとしている姿に、力をもらえる。
そして、あとがきの青山美智子が話した、何がなんでも氷室冴子を後世に残したい、そういう層が復刊を実現させて、氷室冴子を取り上げてもらうきっかけになっていることに、胸を打たれた。
私も氷室冴子の本を読んでいなかったら、古典を前向きなものとして受け取れなかったかもしれない。
私も氷室冴子を残したいし、ささやかながらそのお手伝いをしたい。
Posted by ブクログ
波美王のイラストがイメージどおりでまずそれに上がるけど全体を通して政治的な駆け引きが描かれ、緊張しながら読んでいました。
助演好きとしては相変わらず美知主や速穂児に感情移入しながら読んでいるのですが、今まではそんなに好きではなかった真若王や佐保彦が好きになりつつあります。多分近代より前の十代の子どもは今なら思いもしない運命や政治的駆け引きに翻弄され続けてきたのだろうななどと考えてしまいます。
相変わらず氷室冴子さんの時代を感じさせるあとがき、飯田晴子さんのイラストあとがき、そして解説の青山美智子さんの『氷室作品に育てられた我々読者たちによる「氷室冴子を絶やしてはならない」という共通した想い』というのがそのとおりすぎます。あと、その青山さんの解説で自分も敬愛していた森田じみいさんのイラストについて言及されているのも嬉しかったな。思いもしないところでこういう方々と共通の好きなものがあることを知る喜びを噛み締めました。