ケイト・モートンのレビュー一覧
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「『秘密の花園』、『嵐が丘』そして『レベッカ』に胸を躍らせたあなたに謎に満ちたもうひとつの極上の物語を。」
「ダフネ・デュ・モーリアの完璧なまでの後継者。」
とまあ、なんて扇情的な文句なのでしょう。
勢いで購入したは良いものの、時間に余裕が出来るまでは、と思って取っておいた上下巻。
読み始めたら、三人の女性たち、イライザ、ネル、カサンドラに魅了されっぱなしだった。
以下、核心ネタバレは避けていますが、割と詳しくあらすじと感想を載せているので、お気をつけて。
発端は、前途洋々だったネルの出生の秘密を、実の父だと信じ込んでいたヒューによって打ち明けられる所から始まる。
実はヒューの子ではなかった!と知ったネルは、酷く傷付き、せっかくの婚約さえ解消してしまう。
では、自分は一体何者なのか。真実を知る唯一の手掛かりは、彼女が幼い頃に持っていた絵本だった。
ネルが真実に近付いてゆく一方、ネルの元を娘レズリーと孫娘カサンドラが訪れる。
無愛想で近寄りがたい祖母ネルに対して、最初は距離を感じるものの、レズリーに「置き去りにされてしまった」カサンドラ。
ネルと二人きりの生活の中で、彼女の存在に、そしてネルの死によって、彼女が抱えていた秘密に迫ってゆくことになる。
この、祖母から孫娘へのバトンタッチが巧妙。
ネルの頑なさが、同じ境遇となってしまったカサンドラに重なる、歯ブラシの夜がすごすぎる。
『西の魔女〜』を彷彿とさせる二人の、徐々に温かくなってゆく関係も楽しいのに、ケイト・モートンの構想はここで終わらない。
今度はネルが持っていた絵本の作者である、イライザ・メイクピースの幼少期に話が移る。
美しき母ジョージアナの亡き後、イライザと弟サミーは、古い物語に付きもののような意地悪オバさん、ミセス・スウィンデルとその夫の元で極貧生活を送っていた。
この姉弟のパートは、ネルとカサンドラパートのほのぼのさをひっくり返すほど、ロンドンの臭いや煙たさが充満していて、生々しく書かれる。
そしてある時、ピンチを迎えるイライザに一台の馬車がやって来る。
母ジョージアナは、マウントラチェットという名家を飛び出した、いわば貴族令嬢だったのだ。
彼女は馬車に乗り、イギリスは西の端コーンウォールの地に辿りつき……。
あー、そして、幸せになるのねー。
と思わせておいてからの、第二の意地悪オバさんアデリーン様、御登場!マジかよ。
一体、いつ、ネルの真実に行き着くのか。
イライザ、ネル、カサンドラの三人がそれぞれの視点から章を展開していき、いよいよか!と、気になる所で、語りが切り替わる(笑)
上手いです。
更に、挿話としてイライザの童話が入るのも、本当に上手いです。
私が読んだデュ・モーリア作品と比べると、うっわー、恐ろしい女だわー度はやや低め。(そんな度数があるかは置いといて)
ただ、三人が紡ぎ合う世界は、ものすごく広くて、色彩豊かで、なのにミステリーや薄暗い要素がハッキリとあって、秘密を覗いてしまった感まであって、本当に楽しませてくれる。
そう。つまり、訳も秀逸ってことですね!
そんなわけで、2018年末、取っておきの作品が、見事に取っておきの役割を果たしてくれて、ご機嫌です(笑)
あああ、コーンウォールで読みたかったー!! -
Posted by ブクログ
いやあ、楽しい読書でした。
子どものころ読んだイギリスのお話みたいな部分と、ハーレクインみたいな部分。
「秘密の花園」の作者、バーネット夫人もちゃんと出てきます。
推理小説として考えると物足りない。
ネルの正体は、割と簡単に想像がつきます。
けれどイライザの悲しいまでに切ないローズへの友情。或いは愛情。
本当の自分を知りたいというネルの強い欲求。
過去の後悔から自分を解き放つことのできないカサンドラ。
この3人の人生が年代を超えて複雑に織りなしていく物語なのですが、この巻ではもっぱらイライザの人生について。
自分の力で生きてきた少女時代のイライザが、母の実家であるマウントラチェット家に引き取られ、本来の自分とローズとの友情にすがる自分との間で引き裂かれていく様子が、哀しいくらいの説得力を持って迫ってくる。
貴族のお嬢様というのは、家の奥深くに隠されて、世間を知ることなく、家族と使用人しかいない世界で育つのだね。
だからとても世界が狭い。
ローズの母であるアデリーンの、どこまでも満たされない欲求が、どんどん不幸を拡散していく。
誰もそれを止めることができない。
だって、狭い世界しか知らないから。
その圧倒的な負の情念を誰も知らないから。
“「人生は自分が手に入れたもので築き上げるものよ。手に入れ損なったもので測っちゃ駄目」”
アデリーンの不幸は、手に入れた貴族の生活という幸せではなく、手に入れられなかった妻としての幸せ、そして決して泥を塗ってはいけない世間からの評価で自分の人生を測ってしまったことだ。
ローズの不幸は、そんな母から知らず知らずのうちに植えつけられていた、貴族意識。
本来は手に入れることのできないものを、どうしても欲しいという気持ちを我慢することができなかった。
我慢の必要を教えられることなく育ったローズは、自分の要求が、自分の大切な人たちと、そして自分自身をも不幸にしてしまうと最後まで理解できなかった。
誰も教えてくれなかった。
それに比べたら、一見不幸の連続のイライザは、自分の才能を知り、報われずに終わったとはいえ彼女のほうからは決して失うことのなかった友情を知り、本当に愛するべきもの、大切なものを知ったことで、前向きに人生を終えることができたのではないだろうか。
ネルは、両親が実の親ではなかったことを知って、自分の人生を半分捨ててしまったが、意に反してカサンドラと暮らすことによって、自分が本来持っていた自分自身を取り戻すことが少しはできたのではないかと思う。
そしてカサンドラ。
失ったものにとらわれていた彼女は、これからはきっと手に入れたもので人生を測ることになるだろう。
そんな女たちの大河小説。
小さな疑問というか、突っ込みどころはあるけれど、大きな流れに任せてしまえばなんともいえない物語の魅力に包まれてしまうのだ。
そんな小さな突っ込みどころの一つ。
最後まで精神的な大人になることがなかったナサニエル。
もう気持ち悪いの。
自分とジョージアナしか世界にいなくて、時間が止まっていて、生きているのに世の中に何一つ貢献できない男。
この悲劇のそもそものきっかけを作った…わけではないけど、まあ拡大した男、ナサニエル。
彼の不気味さは、これ以上の悲劇を引き起こす予感があったのですが…うーむ。
上巻の時も思いましたが、訳者あとがきがめっちゃ長い。(笑)
今回も長いですわよ。
読み終わって本を閉じて思ったこと。
あ~、面白かった。 -
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大人になったローレルが
母ドロシーの謎に迫る
傑作ミステリ。
どんでん返しに
衝撃を受けた。
ハヤカワミステリマガジン
21世紀翻訳ミステリベスト第9位。
1961年。
少女ローレルは
母が突然現れた男を
刺殺するのを目撃した。
男は不審者だったため、
母の正当防衛は認められた。
しかし、ローレルには
警察には話せない「秘密」があった。
男は母に
「やあ、ドロシー、久しぶりだね」
と言ったのだ。
50年後、大女優となったローレルは
死期の近い母が語らない、
この謎に迫っていく。
物語は
1961年の事件の発端、
2011年のローレルが母の秘密を探る旅、
1940年のドロシーの少女時代、
という3つの時代を行き来しながら、
ローレルの探偵行、
母の青春時代の姿、
を描いていく。
そして、1940年代で中心に描かれるのは
母ドロシーのロンドンでの青春時代であり、
ドロシー、ドロシーの恋人ジミー、
ドロシーが働く家の向かいに住む
ヴィヴィアンとの変化していく関係である。
そして、衝撃が訪れる。
上下巻の厚さに
少女時代から始まる
ドロシー、そして、ヴィヴィアンの
青春時代が散りばめられ、
第二次世界大戦下のロンドンで
2人の人生は出会い、交錯する。
この人生を
追体験していく
ローレル。
歴史小説の重みをもって
ミステリが描かれていく。
それを読み解いていくのは
筆舌に尽くしがたい
濃厚な体験だった。 -
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70年前に古い屋敷で起きた赤ん坊消失事件。
屋敷の持ち主はロンドン在住のミステリー作家アリス・エダヴェインだった。
当時、屋敷にはアリス等三人の娘がいて、消えた赤ん坊は待望の男の子だった。
刑事セイディは謎を解くべくアリスに連絡を取る。
複雑に絡み合う過去と現在、愛と悲しみ。
華麗かつ精微な筆致に翻弄された読者が最後の最後に辿り着く真実とは?
さて、下巻。
上巻は人物整理と時間軸の整理に追われ、なかなか苦労したが、
下巻はもうスムーズ。一気に読み上げてしまった。
話の主軸となっている消えた赤ん坊セオの行方も
段々とパズルのピースがハマっていく。
まぁ結論だけ切り取れば、まさに奇跡。んなバカなという展開。
だが、それもなかなか味わい深い内容ではあった。
全体的に登場人物たちに感じるものが、
進むにつれ見事にひっくり返っていく構成は面白かった。
例えば、上巻途中までは聡明で博識なアリスという印象なのだが、
進んでいくとそのボロが露呈されていく。
何だ、自分たちが思春期に体験したある種の恥を
この人も体現していたんだとわかり、一気に親近感が湧いたり、
ただのイタい人という印象のセイディも、
進むにつれ、その頭の回転の速さに驚かされ納得していく。
そんな登場人物たちの印象を上手くコントロールしていて楽しめた。
ただ何と言ってもアリスの母・エリナの覚悟と行動には頭が下がる思い。
母は強しとよく言われるが、これほどの強さはもう感服である。
かなり綺麗な締めくくり方で物語は幕を閉じるが、
これだけ時を隔てた構成の中で、上手くまとめ上げていたのは流石。
終わり良ければ全て良し、そんな風に思える作品だった。 -
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ネタバレ何人かの語り手が異なった時代を行ったり来たりしながらストーリーを進めるのが、ケイト・モートンスタイル。
今回はまず、1961年のサフォークでの出来事をローレルが、第二次大戦中の主にロンドンでの出来事を若かりし頃のローレルの母・ドリーが、そして現代である2011年にローレルが視点となって語る。
一番最初に一ばんショッキングなシーンが来るのも、ケイト・モートンスタイル。
16歳の少女ローレルが、ツリーハウスの中から見たのは、母が見知らぬ男に包丁を振り上げた場面。
刺殺された男は最近近隣に出没していた不審者ということになったが、ローレルはその男が母の名を呼ぶのを聞いていて、それは誰にも言えない彼女の苦しみのタネとなっていた。
戦争中に家族を全員喪った、ということしか母の過去は語られてこなかった。
しかし、母には、誰にも言えない秘密の過去があるのだ。
90歳を過ぎた母が、その秘密を抱えたまま亡くなっていくのはいいことなのか?
いや、単純に母の過去を知りたい。
いまや国を代表する大女優となっているローレルは、母の過去を探る。
というのが上巻の概要。
16歳の少女ローレルは、女優になりたいと思っている。
何よりも、こんな田舎で一生を終えるなんてまっぴらだと。
母のことは大好きだが、母のような平凡な女で終わりたくないと。
18歳の少女ドリーは、平凡な小市民である家族にうんざりしている。
何よりも、こんな田舎で一生を終えるなんてまっぴらだと。
母のことは好きだが、母のような平凡な女で終わりたくないと。
だから、家出をしてロンドンで暮らした。
ローレルの母のドロシーは、明るくて愉快な良妻賢母。
しかし18歳のドリーは野心家で自惚れやで自分勝手で空想家。
自分に自信があるから、世の中をなめ切っている世間知らず。
いったい何をやらかしてしまったのか、めちゃくちゃ気になるじゃないか。 -
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ネタバレ『忘れられた花園』を読んで以来の作者の本ですが、またもや違う時代に生きる女性二人が主人公です。
現代パートの主人公は、ネグレクト事件でのミスで有休消化という名の謹慎処分中の刑事、セイディ。
どうも彼女が過去にプライベートで起こした事件がきっかけで、そのミスが誘発されたらしいということは薄々わかります。
過去の事件に向き合いたくないがために、早く職場復帰したいセイディは時間をもてあまし、たまたま祖父が買っている犬の散歩中に見つけた荒れ果てた屋敷が、未解決の誘拐事件の舞台となった場所であることを知り、興味に駆られてその事件を調べ始めます。
過去パートの主人公は、誘拐事件のときにその屋敷に住んでいた、作家志望の少女・アリス。
彼女は現代パートでは有名なミステリ作家として名をはせています。
しかし、事件について何かを語るということは一切ありません。
それは不自然なほどに。
少女時代のアリスは、その屋敷・湖畔荘をとても愛し、結婚して家を出るくらいなら一生結婚しないでこの家で暮らしたいと考える少女でした。
その反面、恋を知ったアリスは、恋する少女特有の夢を見たりもするのですが。
最初、あまりの不穏な書き出しに、アリスが事件の被害者で、死んでしまうのではないかと心配でしたが、いけ好かない婆さま作家として長生きしていたことがわかり、安心して事件について考えることができました。
アリスの母のエリナの少女時代から語られる過去パートでまず気になったのは、アリスが語る堅苦しい母と、アリスのように自由闊達にふるまう少女エリナの乖離。
なぜ彼女は変貌したのか。
ほとんど社交というものをしなかったアリスの家庭で、年に一度開くミッドサマー・パーティ。
その夜に赤ん坊が誘拐されたわけですが、容疑者たり得るのは家族と数人の使用人だけ。
この中に犯人がいるはずですが、家族それぞれに語られない秘密があるようです。
事件は解決されないまま70年がたち、アリスと姉のデボラはそれぞれ過去と向かい合う最後の時が近づいてきたことを感じています。
セイディも、事件を追いながら自分の過去と向き合うことになるのでしょうか。
アリスの両親たちが若かった頃に起きた第一次世界大戦、アリスたちが若かった頃の第二次世界大戦も、なんらかの影響を事件に与えているようにも読めます。
いくつも散りばめられている伏線がどう回収されて、事件がどのような姿を見せるのか、下巻がとても楽しみです。
第二次大戦の時代をアリスが回想しているシーン。
”あの時代を生きた人々は現代人よりずっと禁欲的だった。己の感情をみだりに口にしなかった。怪我をしても泣くな、潔い敗者たれ、恐れを決して認めるなと、子供のころから叩きこまれたものだった。”
日本人だけがこういう教育を受けていたわけではなかったんだな。
そして、イギリス国家は、一人の餓死者も出さないよう、王立公園をつぶして畑にするなど、内政もしっかりしていた。
勝敗を分けるのはそういうところ、というわけではないにしても、彼我の違いが残念でならない。 -
Posted by ブクログ
オーストラリア出身でイギリス在住の作家「ケイト・モートン」の長篇ミステリ作品『忘れられた花園〈上〉〈下〉(原題:The Forgotten Garden)』を読みました。
「ダフネ・デュ・モーリア」の後継者… 21世紀の「ダフネ・デュ・モーリア」… 等々のキャッチコピーが気になり、読んでみることにした作品です。
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〈上〉
1913年オーストラリアの港にたったひとり取り残されていた少女。
名前もわからない少女をある夫婦が「ネル」と名付けて育て上げる。
そして2005年、祖母「ネル」を看取った孫娘「カサンドラ」は、祖母が英国、コーンウォールにコテージを遺してくれたという思いも寄らぬ事実を知らされる。
なぜそのコテージは「カサンドラ」に遺されたのか?
「ネル」とはいったい誰だったのか?
茨の迷路の先に封印された花園のあるコテージに隠された秘密とは?
〈下〉
祖母から英国コーンウォールの崖の上にあるコテージを相続した孫娘「カサンドラ」は、祖母「ネル」の書き残したノートと謎めいた古いお伽噺集を手に英国に渡る。
「ネル」はなぜ遠い地にコテージを買ったのか?
「ネル」はいったい誰だったのか?
今はホテルとなった豪壮なブラックハースト荘、その敷地のはずれ、茨の迷路の先にあるコテージの手入れを進めるうちに、「カサンドラ」は封印された庭園を見出す。
そしてブラックハースト荘の秘密とは……?
解説=「川出正樹」
*第3回翻訳ミステリー大賞受賞作
*第1位 第3回 AXNミステリー「闘うベストテン」(2011年)
*第7位『ミステリが読みたい!2012年版』海外篇
*第8位〈週刊文春〉2011ミステリーベスト10 海外部門
*第9位『このミステリーがすごい!2012年版』海外編
●数々の書評から
魔力に満ちた一冊――ニューキャッスル・ヘラルド
最後の最後に明かされる真実。驚愕の真相とはまさにこのこと――カーカス・レビュー
読者を別世界に誘う壮大で豪奢な作品――NYデイリー・ニュース
「モートン」は読者を時に驚かし、時に当惑させ、そして徹底して楽しませてくれる――スター・テレグラム
あざやかな筆致、堪能すること間違いなしの作品――デイリー・エクスプレス
「ダフネ・デュ・モーリア」の完璧なまでの後継者――ル・フィガロ
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2008年(平成20年)に発表された作品で、「ケイト・モートン」の長篇第2作目にあたる作品です、、、
舞台はオーストラリアそしてイギリスのロンドンやコーンウォール、時代は1800年代終盤から2005年と、舞台と時代を行きつ戻りつしながら、空間的にも時間的にも大きな広がりをの中で、自らの、そして祖母の出自の謎を解き明かす物語… 面白かったです。
第1次世界大戦前夜の1913年、オーストラリアの港で、ロンドンから着いた船の乗客が去ったあと、たったひとり取り残されていた少女を港の職員が見つけ、自宅に連れ帰ることに… 小さな白いトランクと少女、トランクの中身はわずかな身の回り品と、お伽噺集『少年少女のための魔法のお伽話集』が一冊、、、
名前も思い出せないらしいこの少女を連れ帰った職員は、妻とふたりで彼女を「ネル」と名づけて育てることに… その後、妹たちが生まれ、長女として明るく育った「ネル」が21歳になった夜、父親は彼女に真実を告げる。
「ネル」は、自分が何者であるのかがわからないという驚愕から、心を閉ざし、人が変わったようになってしまう… 時は流れ2005年、祖母「ネル」を看取った孫娘「カサンドラ」に、祖母の友人が驚くべき知らせを持ってくる。
「ネル」が彼女にイギリスのコーンウォールにある小さなコテージを遺してくれたというのだ… なぜ、祖母はそんなコテージを持っていたのか? いつ手に入れたのか? 祖母の遺したノートと、かたみの古びたお伽噺集を手に、彼女はコーンウォールを訪れる、、、
コテージは、今はホテルとなった豪壮な館・ブラックハースト荘の敷地のはずれ、崖の上にあった… そして、そこには茨の迷路と、閉ざされ忘れられた花園が……。
「カサンドラ」の祖母「ネル」はいったい誰だったのか? 「ネル」はブラックハースト荘とどんなつながりがあったのか? 幾重にも重なる謎を解き明かすことはできるのか!?
1880年代から1913年に至る時間内では名門「マウントラチェット家」にまつわる物語が、主に一族の女主人と娘、そして当主の姪「イライザ」の視点から描かれ、1975年前後の時間内では「ネル」によるロンドンとコーンウォールでのルーツ探しが描かれ、2005年前後の時間内では「ネル」の死後、白トランクは孫「カサンドラ」へと受け継がれ、彼女は祖母の謎を解くべく渡英して謎を解き明かそうという姿が描かれ… という3つの物語が、1つの物語として編み込まれていく展開が愉しめました、、、
「ネル」が辿り着いた真実… 「カサンドラ」が辿り着いた真実… それは、ちょっとだけ違う部分もあるのですが、読む側は全ての真実が理解できる展開となっており、モヤモヤ感がなくスッキリとした読後感が味わえました。
凶悪な殺人事件やトリックを活用した盗難事件は起きず、自分のルーツを探るという地味なテーマにも関わらず、最初から最後まで読者の興味を惹きつける展開でしたねー
「ネル」は誰と誰の子どもだったのか?
「ネル」の本当の名前は?
誰が何の目的で「ネル」を屋敷から連れ出したのか?
なぜ、その人物は「ネル」をオーストラリア行きの船に乗せたあと消えてしまったのか?
なぜ、その後、誰も「ネル」を捜しにこなかったのか?
全ての謎が解けたときのスッキリ感は、何とも言えませんでしたね… ホントに面白かったです。